ここでは、ほうれん草に発生しやすい病害虫と、それを防除するためのおすすめ農薬、そしてほうれん草栽培に使える除草剤もあわせて紹介します。
より詳しいほうれん草の情報は、農家web防除暦をご利用ください。
ほうれん草に発生しやすい病害虫とおすすめ農薬
アブラムシ類
アブラムシは直接植物の汁を吸うことで作物に害を与えるだけでなく、排泄物を作物にかけ、黒いすす状のカビを増殖させたり、光合成が妨げられて作物の生育を悪化させます。
また、アブラムシはウイルスを運びます。口針を植物に探り挿入するため、ウイルスを持っていると口針から簡単にウイルスの感染が広がってしまうのです。アブラムシから広がるウイルスで有名なのは、モザイク病です。その中でも特に、キュウリモザイクウィルス(CMV)、カブモザイクウィルス(TuMV)が代表例と言えるでしょう。
ほうれん草で、アブラムシに使えるおすすめ農薬
IRACコード | グループ名 | 主な農薬 |
---|---|---|
1B | 有機リン系 | オルトラン マラソン スミチオン |
3A | ピレスロイド系 | アディオン |
4A | ネオニコチノイド系 | モスピラン ダントツ スタークル アルバリン アクタラ |
4C | スルホキシイミン系 | トランスフォーム |
23 | テトロン酸およびテトラミン 酸誘導体 | モベントフロアブル |
29 | フロニカミド | ウララDF |
ムシラップ サンクリスタル |
ネキリムシ類
ネキリムシは鱗翅目ヤガ科のカブラヤガ、タマナヤガの幼虫です。ネキリムシという名前ですが、いわゆる「根」を切ってしまうというよりは、新芽や定植した苗の根元をかじり、切ってしまいます。ある程度茎が硬くなるまで成長した野菜の苗は切ることができません。
昼間は土中に潜り、寝て過ごし、夜になると地表に出て活動する夜行性です。切った草や野菜の葉を地中で食べます。幼虫が生育すると、土壌の中で蛹になり、やがて成虫になります。
ネキリムシは夜に新芽の根元を切ってしまい、切られた苗、株はもちろん駄目になってしまいます。このように、農業において多大な食害を及ぼすため、メジャーな害虫として認識されています。
ほうれん草でネキリムシ類を防除する、おすすめ農薬
ヨトウムシ
ヨトウムシの幼虫は、雑食性で、かなり広範囲の作物を食害します。食害のレベルも非常に激しいもので、キャベツや白菜など菜類では、一晩で網の目になるほど食い荒らしてしまいます。
実は、ヨトウムシの対策については明治時代からも言い伝えられているほどで、害虫の中でも非常に歴史があると言えるでしょう。
ほうれん草で、ヨトウムシを防除する、おすすめ農薬
アザミウマ類
アザミウマはアザミウマ目に属する昆虫です。現生種は約5000種、スリップス(英名Thrips)とも呼ばれています。大きさは一般に1mm以下で翅があり、細長く、色もまちまちです。うち、農作物をエサにするのは44種と言われています。
アザミウマは直接植物の汁を吸うことで、その傷が農作物、蕾が大きくなるにつれ、非常に見た目が悪くなることや、作物の萎縮、変形、変色の原因となり、出荷できない物が増える(花木だと開花しないものが増える)といった食害があります。
また、最も厄介なのは、アザミウマはウイルスを運ぶということです。アザミウマは、果菜類、葉菜類、根菜類、豆類を含むほとんどの野菜や果樹、花きとさまざまな作物の茎葉、花弁を吸い漁りながらウイルスを広げていきます。一度、保毒すると、ウイルスを一生まき散らしてしまうのです。
ほうれん草でアザミウマ防除におすすめの農薬
べと病
べと病とは?
べと病は卵菌のうちツユカビ科(Peronosporaceae科)に属する菌による病害に対して名づけられる植物病害です。「露菌(ろきん)病」とも呼ばれます。
水滴と合わさって拡大していくため、雨が続くと多発すること、また葉が湿るとベトベトになることから「べと病」と呼ばれています。
ベト病は非常に広い範囲の植物に感染しますが、特にウリ科、アブラナ科野菜(キュウリ、タマネギ、ほうれん草、ブドウ、レタス、メロン、キャベツ、ブロッコリー、すいか)・ブドウなどで大きな問題となる病気です。
ほうれん草で、べと病防除に使えるおすすめ農薬
軟腐病
軟腐病の病原菌はカビではなく細菌の一種で、病原菌名は「Pectobacterium carotovorum」と命名されています。通常は結球してから発生します。はじめは結球部の軟らかい葉に(水浸状の)小斑点ができ,これがやがて急速に広がっていきます。その後、全体が褐色(飴色)に軟化腐敗してどろどろになり,悪臭を発するようになります。
発育適温は30℃前後,50℃以上で10分経過すると死滅します。イネ科,マメ科以外のほとんどの植物に寄生します。大根(ダイコン)や白菜(ハクサイ)、キャベツ、カリフラワー、レタス、ショウガ、セルリー、パセリ、ネギ、タマネギ、ニンジン、ジャガイモ、トマト、ピーマン、チンゲンサイ、小松菜(コマツナ)、ニラ、カブ、ニンニク等が軟腐病にかかる野菜で有名です。
軟腐病の病原細菌は寄生される植物の根の周辺に生存します。降雨などによるはね返りで土とともに葉上に運ばれ,植物の傷口、害虫の食害痕などから侵入します。発育適温は30℃前後なので、高温期結球のものに多く発生が見られます。具体的には、降雨の多い夏,秋の年に発生が多くなる傾向があります。
ほうれん草で、軟腐病防除に使えるおすすめ農薬
ほうれん草栽培におすすめの土壌処理剤
アージラン液剤
有効成分 アシュラム 37.00%
アージラン液剤は、芝生の選択制茎葉処理剤としても使われますが、ほうれん草には土壌処理剤として使います。一年生、多年生雑草を問わず、広範囲の雑草に効き、多年生雑草の地下茎まで枯死させる優れものです。ほうれん草には、播種後から発芽前までに全面土壌散布して使います。雑草の発芽前に散布しましょう。25℃以上の高温期に使うと薬害が生じる可能性があるため温度にも注意が必要です。
ラッソー乳剤
有効成分 アラクロール 43.00%
ラッソー乳剤は、イネ科の一年生雑草(メヒシバ・イヌビエ・ハコベ・イヌビユなど)の抑制によく効く畑作用土壌処理除草剤です。ほうれん草には、は種後出芽前に全面土壌散布して使います。雑草の発生前に散布しないと効果がありません。砂質土壌では薬害が生じる可能性があるので使用はできません。タデ科、アカザ科などの広葉雑草には効果が劣るため、イネ科雑草が生える場所におすすめです。
クロロIPC
有効成分 IPC 45.8%
クロロIPCは、気温の低い時期に効果を発揮する土壌処理除草剤です。気温が20℃以下の時期に、冬の畑に多いズメノテッポウやスズメノカタビラ等のイネ科雑草、ハコベ、ノミノフスマ、タネツケバナ、ミチヤナギ、タデ類等の抑制によく効きます。ほうれん草栽培には、は種直後に全面散布して使います。秋まき栽培におすすめの土壌処理剤です。
土壌処理剤の使い方
土壌処理剤は、播種直後(種まき後すぐに)全面に土壌散布します。ラベルに決められた薬量を守って散布します。乳剤は希釈して使います。
- 雑草発生前に散布すること。すでに生えている雑草には効果がありません
- 播種後は、しっかり覆土をして鎮圧し水やりをした後、表面が乾いたら除草剤を散布します。
- ほうれん草の芽が出た後は薬害が生じるため、発芽前に散布しましょう。
- 噴霧器(散布機)を使って散布しましょう。ジョウロでの全面散布は薬量を超える可能性があります。
- 使い方は除草剤によって異なります。しっかりラベルを読んで使いましょう。
ほうれん草栽培におすすめの茎葉処理剤
ほうれん草栽培には土壌処理剤がおすすめですが、すでに生えている雑草には茎葉処理剤をつかって除草しましょう。ほうれん草栽培に使えるおすすめの茎葉処理剤を紹介します。
ナブ乳剤
有効成分 セトキシジム 20.00%
ナブ乳剤は、畑作のイネ科雑草に使われる選択制の茎葉処理剤です。ほうれん草には直接かかっても影響がないため、雑草への茎葉処理だけでなく、薬液がかかることを気にせず全面散布することが可能です。浸透移行性に優れているので、葉や茎に散布するだけで根まで枯らすことができます。
イネ科以外の広葉雑草やカヤツリグサ科には効果がないため、それらの雑草が生えている場所にはこれ以外の除草剤と組み合わせて使う必要があります。
グルホシネート系除草剤
有効成分にグルホシネートを含む除草剤は、非選択性の接触型の茎葉処理剤です。ほうれん草には収穫7日前まで使うことができます。
イネ科、広葉、一年生、多年生を問わず、ほとんどの雑草に効果を発揮します。1~3日で効果が発現し、5 ~ 20 日で完全な効果がでる強力除草剤ですが、吸収移行型ではないため、地下部 、つまり根までは枯死せん。非選択のため、畑地、圃場での散布の際に、農作物にかからないよう注意が必要になります。代表的な製品として、バスタ液剤とザクサ液剤があります。
商品名 | バスタ液剤 | ザクサ液剤 |
---|---|---|
概要 | ||
販売元 | BASFジャパン(株) | 明治製菓ファルマ(株) |
有効成分 | グルホシネート | グルホシネートPナトリウム塩 |
農耕地使用 | ○ | ○ |
グリホサート系除草剤
有効成分にグリホサートを含む除草剤は、非選択性の茎葉処理剤です。イネ科、広葉の一年生雑草、多年生雑草、ササ類、雑灌木などほぼすべての草種に有効で、枯らす効果があります。性質は遅効性で効果の発現に3 ~7日、そして完全 な効果に10日~2カ月ほどを要します。
グリホサート系の除草剤は、葉や茎に薬液をかけるだけで根まで枯らす効果があるので、ほうれん草の栽培中ではなく、耕起前までに大きくなってしまった雑草に散布して使います。畑で使えるグリホサート系の除草剤は下記のものなどがあります。散布可能時期はそれぞれの除草剤のラベルを確認してつかってください。
商品名 | ラウンドアップマックスロード | サンフーロン | タッチダウンiQ | サンダーボルト007 |
---|---|---|---|---|
概要 | ||||
販売元 | 日産化学(株) | 大成農材(株) | シンジェンタジャパン(株) | 日本農薬(株) |
有効成分 | グリホサートカリウム塩 | グリホサートイソプロピルアミン塩 | グリホサートカリウム塩 | グリホサート ピラフルフェンエチル |
農耕地使用 | ○ | ○ | ○ | ○ |
サンフーロンはラウンドアップ のジェネリック商品になります。
その他ほうれん草に関する情報
栽培に役立つ 農家webのサービス
農家web 農薬検索データベース
作物に適用がある農薬を一覧で探したいときには、「農家web農薬検索データベース」が便利です。
検索機能は、適用作物・適用病害虫に合致する農薬を探す「農薬検索」、「除草剤検索」をはじめ、さまざまなキーワードで検索できる「クイック検索」、農薬・除草剤の製品名で検索できる「製品検索」、農薬・除草剤に含まれる成分名で検索できる「成分検索」の4つで、農薬・除草剤の作用性を分類したRACコードや特性、 効果を発揮するためのポイントなど実際の使用に役立つ情報も知ることができます。
農家webかんたん農薬希釈計算アプリ
除草剤、殺虫剤を代表する農薬の液剤は、かなりの割合が原液で、水で希釈して散布するのが一般的です。希釈倍率に合わせて水と混ぜるのですが、希釈倍率が500倍、1000倍と大きく、g(グラム)やL(リットル)などが入り混じっていて、計算が難解だと感じる方も多いのではないでしょうか。
「農家webかんたん農薬希釈計算アプリ」は、使用する農薬の希釈倍数を入力し、散布する面積などから薬量・液量を算出します。面積の単位や薬剤の単位も簡単に行えます。
ラベルを見て希釈倍率を入力するだけでなく、農薬検索データベースと連携しているので、使いたい製品・適用ラベルを選択することで、希釈倍数を自動入力することができます。
農家web かんたん栽培記録
作物を栽培するときに、植え付けから収穫までの栽培記録をつけることは、作物の安全性を守る他にも、ノウハウを蓄積し、よりよい作物を栽培するためにも大切な作業です。
農家webのかんたん栽培記録はこれひとつで、無料で作物ごとに栽培記録できるだけでなく、その作物に発生しやすい病害虫やおすすめ農薬、また農薬に頼らない防除方法も、簡単にカレンダーから確認することができます。会員登録すれば、LINEに予察情報も届きます。パソコン等が苦手でも、タップで簡単に作業日誌をつけられます。