ピーマンはカロテンやビタミンCを多く含んでいる栄養価の高い野菜で、肉詰めや炒めもの、サラダなどにも使われる身近な野菜です。1株でたくさん収穫できるので家庭菜園でも人気の野菜ですが、水耕栽培でも育てることができます。
ここでは、ピーマンの水耕栽培について、苗から始める手順から収穫までの育て方を初心者の人でもわかりやすく説明します。
ピーマンの水耕栽培について
ピーマンの基礎知識
ピーマンは、ナス科のトウガラシの仲間です。とうがらしは、鷹の爪やハバネロのように辛味のある「トウガラシ」と、辛みのない「甘トウガラシ」があります。甘トウガラシのうち、ベル型に肥大するものをピーマンと呼びます。
ピーマンは、病気や害虫に強いので初心者の人でも作りやすい野菜です。種から育てると育苗の時期が2ヵ月ほどかかるので、難易度があがります。初心者の人は市販の苗から始めるとよいでしょう。
暖かい気候を好み、暑さには強いですが寒さに弱いので、遅霜の心配がなくなった春に植え付けをし、初夏から秋まで次々と実がついて収穫を楽しめます。
作物名 | ピーマン |
---|---|
科目 | ナス科トウガラシ属 |
原産地 | 熱帯アメリカ |
発芽適温(地温) | 30℃〜33℃ |
生育適温 | 25℃~30℃ |
育てやすさ | 簡単~普通 |
品種
ピーマンの品種は多くありますが、どの品種も育てやすいので好きな品種を選びましょう。水耕栽培では育てやすい中果種がおすすめです。
品種名 | 概要 | 特徴 |
---|---|---|
京みどり | つややかな濃緑色の中果種。 果肉は薄くやわらか。 | |
翠玉二号 | 高温乾燥に強いとても丈夫な中果種。 果肉は厚く、濃緑色。ウイルスにも強く作りやすい。 | |
京波 | 黒アザ果、尻ぐされ病に強い中果種。 果肉は肉厚で、草勢が強く多収。 |
栽培時期
ピーマンの栽培時期は、暖かくなってきた春にタネまきや植え付けをし、初夏から秋まで長く収穫することができます。寒さに弱いため、遅霜の心配がなくなってから植えつけしましょう。
地域 | 播種(タネまき)時期 | 植え付け時期 | 収穫時期 |
---|---|---|---|
寒冷地 | 4月下旬~6月中旬 | 5月下旬~7月中旬 | 6月下旬~9月中旬 |
中間地 | 3月下旬~6月 | 5月~7月 | 6月中旬~10月 |
暖地 | 3月~6月 | 4月下旬~7月 | 6月~10月 |
ピーマンの水耕栽培のポイント
水耕栽培は、土を使わず「水で栽培をする方法」の一つです。水耕、水栽培などとも呼ばれます。水耕栽培は、野菜だけでなく、観葉植物や果物などのさまざまな植物を衛生的に育てることができます。
水耕栽培は、サニーレタスやベビーリーフなどの葉物野菜やハーブなどは特別な設備がなくともペットボトルやスポンジなどをつかって、簡単に栽培することができます。ピーマンは簡易的なペットボトル栽培も可能ですが、あまり実が大きく成長しない、もしくは収穫量がすくなくなります。
実もの野菜を作る場合には、容量の大きな容器を使い、野菜の生長に必要な酸素を根に直接送れるエアポンプを使った栽培がおすすめ。用具は少し必要になりますが、エアポンプを使うと成長が早くなり、多くの収穫量が見込めます。
またピーマンの育苗は播種(種まき)時期と発芽温度が合わないため保温して育てる必要があります。育苗も2か月ほどかかり、実もの野菜は苗の良しあしで収穫の量や質が大きく変わるので、市販の苗から始めるとよいでしょう
ピーマンの水耕栽培の手順
栽培容器を作る
まずは、ピーマンの水耕栽培用の栽培容器を作りましょう。本格的な栽培キットなどもありますが、ここでは発泡スチロールの箱で自作する方法を説明します。
用意するもの
- 発砲スチロールの箱(蓋つき)
- スポンジ(キッチンスポンジでOK、シリコンスポンジ不可)
- エアポンプ(なくても栽培は可能)
- カッター、キリ、定規、マジックなど
作り方の手順
- スポンジを5cm~6cm角にカットし、根を挟むための切り込みを入れます。
- 発砲スチロールのフタの部分の中央に、1で切ったスポンジより少し小さめの穴を空けます
- フタの下部の部分をカットし、そこにエアポンプの管を入れるようの穴を空けます。
- 容器に水をいれ、エアポンプをセットします。
苗の植え付け
市販の苗の選び方
- 本葉8枚~10枚程度(一番花のつぼみがあるとより良い)
- 葉がきれいで、病気などにかかっていないもの。
- 茎の節と節の間が詰まっており、徒長(ひょろひょと間延び)していないもの
- 全体的に、茎が太くがっちりしているもの
準備するもの
- スポンジ(5~6cm角にカットして、切込みをいれたもの)
- 発砲スチロールのフタ
- ピーマンの苗
- 割り箸など
苗の植え付け方の手順
- ポットから苗を取り出します
- バケツに水をいれ、バケツの中で根を傷つけないように土をできるだけ落とします
- 切込みをいれたスポンジに、株元から下の部分を挟みます
- 発砲スチロールのフタの中央の穴の部分に、スポンジごと苗をセットします。
- スポンジは、しっかり固定できるように、割り箸などで押し込みます。
- 水を入れた容器に、蓋をセットして育てます。水の水位は根が3分の1ほどつかる程度です。
水耕栽培の手順
- 手順1栽培容器の準備
発砲スチロールとスポンジでピーマンの栽培容器をつくります。
- 手順2苗の植えつけ
市販の苗や、育苗した苗を栽培容器に植え付けし、水耕栽培用の根がでるまで育てます。
根がでたら、肥料をいれて日当たりの良い場所で管理します。 - 手順3支柱立て
植えつけ後すぐに支柱を1本たてておきましょう。
ボックスの四隅に、90cm程度の支柱を固定します。
ツルが伸びてきたら、支柱に誘引して紐で結びます。 - 手順4整枝・わき芽かき
一番果がつくころ、主枝と一番果のすぐ下の側枝を2本残して、それより下のわき芽をすべて切って、3本仕立てにします。
- 手順5摘果
一番果は、株が小さいうちにつくため株が消耗しないように、ついたらすぐハサミで摘みとります。
- 手順6収穫
開花後15日~20日、長さ6cm~7㎝程度になれば収穫のタイミングです。
枝が折れやすいため、つけ根の部分をハサミで切って収穫しましょう。
ピーマンの水耕栽培 育て方
容器
水耕栽培に使う容器は、容量が大きいほど培養液(肥料を入れた水)を入れ替える手間も済みますが、場所などに合わせて容量を選びましょう。ミニタイプのピーマンなら3ℓ以上できれば5ℓ以上容量があるものがよいでしょう。
発砲スチロールは保温効果もあり高温を好むピーマンにはおすすめですが、それ以外でもコンテナやごみ箱、バケツなどをつかっても栽培が可能です。バケツやプラスチックのゴミ箱などを使う場合には、蓋の部分を発砲スチロールでつくって上にかぶせて使うとよいでしょう。
発砲スチロールの箱は、小さなものは100均などでも手に入りますし、ホームセンターなどではいろいろなサイズのものがあります。また魚介類などをインターネットで購入すると、発砲スチロールにはいってくることもありますし、スーパーや魚屋さんでもらえることもあるので、聞いてみるのもよいでしょう。
発砲スチロールは専用のカッターがあると簡単にカットできます。100均などでも置いてあることがあります。
栽培環境
ピーマンは日当たりが良く、風通しの良い場所を好みます。寒さに弱いので、気温が低い日は室内に取り込む、苗が小さい時は、ホットキャップや苗カバーなどの対策が有効です。
昼間は、可能であれば25℃〜30℃前後で管理できると良いでしょう。夜間は、可能であれば、15℃〜20℃前後で管理できると良いでしょう。夜温(夜間の温度)が高すぎると徒長しやすくなります。逆に10℃以下になってくると生長が止まり、未受精果が増えるので注意が必要です。
わき芽かきは、日照と風通しを良くするため、都度行ってください。実の付きもよくします。
水やり・水替え
水耕栽培は培養液(肥料を入れた水)で育てます。培養液が切れないよう毎日水量を確認して、培養液を継ぎ足しして育てます。培養液(肥料を入れた水)の水位は、根が2/3~1/2程度浸かる程度。水の中は空気が少ないので、根元は空気に触れるよう濡れないようにします。
水の交換は、3週間~1か月に1度は行いましょう。すべての培養液を捨て新しい培養液をいれます。根にストレスがかかるのでできれば、日照の弱い曇りの日か、夕方に行いましょう。エアポンプを使っていない場合には1週間に1度水の交換をしましょう。高い位置から水を注ぐようにして入れると空気がはいりやすくなります。
成長してくると水を良く吸うので水切れには注意が必要です。また暑い時期は水が腐りやすいので、水が濁っているときには水を交換しましょう。
肥料
水耕栽培でピーマンを育てる場合には、水だけでは育ちません。肥料が必要です。しっかり水耕栽培用の肥料を使って育てましょう。
水耕栽培用の肥料は普通の肥料とは異なり、カリ成分が高めに設定されていたり、二次要素(多量要素)や微量要素も含まれているなど、普通の肥料とは組成が異なります。水耕栽培は根が直接栄養素を吸い上げる形になりますので、培養液の組成や状態がとても重要となります。必ず水耕栽培用の肥料を使用しましょう。
家庭で使える水耕栽培用の肥料として有名なものは「ハイポニックス微粉」や「ハイポニカ液体肥料」です。苗が小さいころは、パッケージの濃度より薄めて使います。ハイポニカはプロ用のものもありますが、家庭用と成分や配合は同じです。
下記のページに水耕栽培用の肥料についてまとめておりますので、参考にしてください。
エアーポンプ
エアーポンプ(エアポンプ)は、必ずないと育たないというわけではありません。葉物野菜やミニトマト、ミニピーマンなどの小型な果実野菜なら、エアポンプがなくともある程度育ちます。しかし土壌栽培とことなり、水には酸素が少ないためエアーポンプを使うことで、酸素が多く根に供給され、生育が早くよく育ちます。
エアーポンプは、水耕栽培用のものもありますが熱帯魚用のものでもOK。使用する容器の大きさに合わせてものをつかいましょう。ベランダなどで育てる場合、電源がない場合もあります。そんなときには、太陽光発電ができるエアーポンプや充電が可能なエアーポンプなどもあるのでそちらがおすすめです。
またエアポンプは、水の逆流を防ぐため本体は栽培容器より高い位置に置きましょう。
支柱立て
ピーマンは草丈が高くなり、実がなり始めるとその重さに耐えられなくなり倒れます。栽培当初から支柱を立てて育てましょう。
水耕栽培の場合は、プランターなどと違い土に挿してプランターを支柱を立てることができません。容器にビニールひもなどで固定したり、緑のカーテンなどに使われる壁などに立てかけて使う支柱や、自立する支柱などを使うとよいでしょう。庭などで、置いてある場所が土であれば、土に直接挿すこともできます。
容器に固定する支柱は、ピーマンは90cmほどのものを立てるとよいでしょう。親づるが伸びてきたら、支柱につるを誘引して紐で結びます。誘引は、つるの生長に合わせてこまめに誘引してください。
支柱を立てられる水耕栽培用キットも便利です。
整枝・わき芽かき
ピーマンの茎は、一番花の上で2本に分かれて、その後も花の咲くところで分岐しながら大きくなります。1番花のすぐ下とそのさらに下から出る側枝が勢いのあるものとなるので、それらを残し、ほかの側枝(わき芽)は摘み取ってしまいます。そのように2本の側枝を伸ばすことで、主枝と合わせて「3本仕立て」となります。
摘果
ピーマンは、株の小さなときに一番果がつきやすいため、一番果は摘み取ることで株の消耗を防ぎます。しかし家庭菜園では、一番果がおいしいといわれることもありますので、株が小さすぎなければ、ある程度の大きさまで育ててもよいでしょう。
ピーマンはたくさんの実を着けるため、7月下旬には実が着きづらくなったり、小さかったりする、いわゆる「なり疲れ」が多く発生します。真夏も暑さもその要因となってきます。
そのまま着果・肥大させていくと着果負担(果実が植物になることによる養分の消費)が激しくなり、株が一時的に弱る場合があります。そのようなときには、追肥をするとともに、摘果した方が長く安定的な栽培ができます。
摘花・摘果は、晴れた日に手で摘み取りましょう。花や小さな果実は手で簡単に取ることができます。
収穫
ピーマンは、緑色の未熟果を収穫します。品種にもよりますが、開花後15日~20日、長さ6cm~7㎝程度になれば収穫のタイミングです。大きくなった順に収穫しましょう。ヘタの部分をハサミで切って収穫します。
カラーピーマンといわれているものは、完熟したものです。完熟させると株の消耗が激しいので、その後の収穫に影響がでます。未熟果で収穫して、多く収穫できたら、完熟させたものをとってもよいでしょう。
病害虫
ピーマンは、夏に収穫が長くつづくため病害虫には注意が必要です。
害虫はアブラムシやカメムシ、アザミウマ、ネキリムシなどの害虫が発生することがあります。これらの虫が発生した時は、粘着テープで除去する、また殺虫剤などの薬剤で駆除、防虫する方法があります。どちらにせよ、早く対応するに越したことはないので、発見した時はすぐに駆除し、防除を心掛けるようにしましょう。
病気は、うどんこ病、疫病、斑点病、灰色かび病などにかかることがあります。葉に斑点がでたり、茶色く枯れたりしてきたら病気を疑いましょう。対策は梅雨に高温多湿によるカビの被害が多いので、梅雨は軒下で雨があたらないようにし、風通しがよく日当たりの良い場所で育てましょう。枯れ葉をとったり、枝葉を剪定して、株元が混まないようにするのも効果的です。
農薬の使用が心配な人は、オーガニック栽培でも使える食品成分から生まれた殺虫殺菌剤などもあります。
まとめ
ピーマンは、独特の苦みがくせになる夏野菜。春に植え付ければ、水耕栽培でもつぎつぎと実がなって収穫ができるます。うまく育てれば1株で50個以上収穫ができます。ぜひ、この記事を参考にしてピーマンの水耕栽培にチャレンジしてみてください。
種から育てたい場合には、ピーマンの育苗の記事を参考にしてください
『農家web』にはこのほかにも、水耕栽培のコンテンツが豊富です。野菜だけでなくハーブや、観葉植物、多肉植物、花を楽しむ球根なども水耕栽培で育てることができます。
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