夏の風物詩のスイカは、小玉の品種を選べば水耕栽培でも育てることができます。ここでは、スイカの水耕栽培について、栽培キットの作り方から苗から始める手順、収穫までの育て方をわかりやすく説明します。
スイカの水耕栽培について
スイカの基礎知識
スイカはウリ科のつる性の一年草で、原産地は南アフリカの砂漠地方ですが、日本でも古くから栽培されている夏の風物詩。大玉品種や小玉品種があり、果肉が赤や黄色、外皮の縦縞のもようもさまざまで、模様のない品種もあります。
家庭菜園では小玉スイカの栽培がおすすめです。小玉スイカは、直径が平均20cm、重さは1.5~2kgの文字通り小玉のスイカで、大玉品種より皮が薄いので小さくても可食部は多くあります。大型種より早生種(種まきから収穫までが短い)が多いので、栽培も栽培も大型種に比べ簡単です。
熱帯アフリカの砂漠が原産なので、暑さに強く寒さには弱いので、遅霜の心配がなくなってから植えつけます。植えタネからも育てることはできますが、育苗には40日~45日程度かかり、保温も必要ですので、栽培の難易度が上がります。植えつけ時期には、ホームセンターなどで、市販の苗が多く販売されているのでそこから始めるとよいでしょう。
作物名 | スイカ |
---|---|
科目 | ウリ科スイカ属 |
原産地 | 南アフリカ中央部カハリ砂漠 |
発芽適温(地温) | 25~30℃ |
生育適温 | 25~30℃ |
育てやすさ | 少し難しい |
栽培時期
スイカの栽培時期は、春にタネをまいて夏に収穫します。寒さに弱いので、植えつけは最低気温が16℃以上になってから植えつけましょう。小玉スイカの場合は、植えつけから90日程度で収穫できます。
地域 | 植え付け時期 | 収穫時期 |
---|---|---|
寒冷地 | 5月下旬~6月下旬 | 7月下旬~9月中旬 |
中間地 | 4月下旬~6月 | 7月中旬~9月 |
暖地 | 4月中旬~6月 | 7月~9月 |
スイカの水耕栽培のポイント
水耕栽培は、土を使わず「水で栽培をする方法」の一つです。水耕、水栽培などとも呼ばれます。水耕栽培は、野菜だけでなく、観葉植物や果物などのさまざまな植物を衛生的に育てることができます。
水耕栽培は、葉物野菜やハーブなどは特別な設備がなくともペットボトルやスポンジなどをつかって、簡単に栽培することができます。メロンなどの果実や実もの野菜を作る場合には、容量の大きな容器を使い、野菜の生長に必要な酸素を根に直接送れるエアポンプを使った栽培がおすすめ。用具は少し必要になりますが、エアポンプを使うと成長が早くなり、多くの収穫量が見込めます。
畑などでは、地這い栽培が一般的ですが、プランターや水耕栽培では立体栽培(空中栽培)で育てると少ないスペースでも栽培が可能です。つる性なので支柱をたてて誘引し、剪定や人工受粉などの手間がかかるので栽培の難易度は少し高めです。
スイカの水耕栽培の手順
栽培容器を作る
まずは、スイカの水耕栽培用の栽培容器を作りましょう。本格的な栽培キットなどもありますが、ここでは発泡スチロールの箱で自作する方法を説明します。
用意するもの
- 発砲スチロールの箱(蓋つき)
- スポンジ(キッチンスポンジでOK、シリコンスポンジ不可)
- エアポンプ
- カッター、キリ、定規、マジックなど
作り方の手順
- スポンジを5cm~6cm角にカットし、根を挟むための切り込みを入れます。
- 発砲スチロールのフタの部分の中央に、1で切ったスポンジより少し小さめの穴を空けます
- フタの下部の部分をカットし、そこにエアポンプの管を入れるようの穴を空けます。
- 容器に水をいれ、エアポンプをセットします。
苗の植え付け
苗の選び方
苗は元気な病気のない苗を選びましょう。ポイントは下記のとおりです。接木苗は、連作障害の病気に強い苗です。水耕栽培で育てる場合はどちらでもよいでしょう。水耕栽培では大きい苗より小さめの苗がおすすめです。
- 本葉が4枚~5枚程度ついているもの
- 節がつまっており、茎が間延びしていない。
- 葉の色が濃くツヤがあり、虫や病気などがない
- 株がしっかりしている
- ポットの下からでている根が白い
準備するもの
- スポンジ(5~6cm角にカットして、切込みをいれたもの)
- 発砲スチロールのフタ
- スイカの苗
- 割り箸など
苗の植え付け方の手順
- ポットから苗を取り出します
- バケツに水をいれ、バケツの中で根を傷つけないように土をできるだけ落とします
- 切込みをいれたスポンジに、株元から下の部分を挟みます
- 発砲スチロールのフタの中央の穴の部分に、スポンジごと苗をセットします。
- スポンジは、しっかり固定できるように、割り箸などで押し込みます。
- 水を入れた容器に、蓋をセットして育てます。水の水位は根が3分の1ほどつかる程度です。
スイカ水耕栽培管理
- 手順1栽培容器の準備
発砲スチロールとスポンジでスイカの栽培容器をつくります。
- 手順2苗の植えつけ
市販の苗や、育苗した苗を栽培容器に植え付けし、水耕栽培用の根がでるまで育てます。
根がでたら、肥料をいれて日当たりの良い場所で管理します。 - 手順3支柱立て
植え付けしたら、支柱を立てておきましょう。
ボックスの四隅に、90cm~120cm程度の支柱を固定します。
ツルが伸びてきたら、支柱に誘引して紐で結びます。 - 手順4整枝・摘心
親づるが本葉5枚~6枚になったら、先端を摘心すると、子づるが伸びてきます。元気な子づるを2本~3本残して、他の子づるは切り取ります。
- 手順5人工授粉
雌花が咲いたら、その日の朝早くできれば9時頃までに人工授粉をします。
雄花を摘みとり、花びらを取り除いて雌花の中にある雌しべの柱頭に雄しべの花粉をこすりつけます。 - 手順6摘果
実がピンポン玉ほどになったら、摘果を行います。
つる1本につき、果実は1個、1株で2果が目安です。育ちの良いものを残し後は摘果します。雌花もすべて取り除きましょう。 - 手順7果実の吊り下げ
果実がソフトボールぐらいになったら、収穫用ネットにいれ、ひもを支柱に結んで吊るします。
- 手順8収穫
小玉スイカの場合は、人工授粉から35日ぐらいで収穫のタイミングです。品種によるので、育てている品種の収穫時期を確認しておきましょう。人工授粉した日にちをメモしておくのもわすれずに。
スイカの水耕栽培 育て方
容器
水耕栽培に使う容器は、容量が大きいほど培養液(肥料を入れた水)を入れ替える手間も済みますが、場所などに合わせて容量を選びましょう。果実野菜は5ℓ以上は必要です。スイカはできれば10ℓ以上のものを、発砲スチロールは大型のものを選びましょう。
発砲スチロールは保温効果もあり高温を好むスイカにはおすすめですが、それ以外でもコンテナやごみ箱、バケツなどをつかっても栽培が可能です。バケツやプラスチックのゴミ箱などを使う場合には、蓋の部分を発砲スチロールでつくって上にかぶせて使うとよいでしょう。
発砲スチロールの箱は、小さなものは100均などでも手に入りますし、ホームセンターなどではいろいろなサイズのものがあります。また魚介類などをインターネットで購入すると、発砲スチロールにはいってくることもありますし、スーパーや魚屋さんでもらえることもあるので、聞いてみるのもよいでしょう。
発砲スチロールは専用のカッターがあると簡単にカットできます。100均などでも置いてあることがあります。
栽培環境
スイカは日の当たらない場所では、甘いスイカは育てることができません。乾燥につよく強い光を好みます。栽培期間中は、よく日の当たる風通しのよい場所で育てましょう。
発芽温度・生育温度ともに高めなので、育苗には保温が必要です。植え付け直後も、ホットポットや苗カバーなどをすると、生育がよくなり寒さで苗が傷む恐れがありません。
水やり・水替え
水耕栽培は培養液(肥料を入れた水)で育てます。培養液が切れないよう毎日水量を確認して、培養液を継ぎ足しして育てます。培養液(肥料を入れた水)の水位は、根が2/3~1/2程度浸かる程度。水の中は空気が少ないので、根元は空気に触れるよう濡れないようにします。培養液は作り置きして、日陰に置いておくとよいでしょう。
水の交換は、3週間~1か月に1度は行いましょう。すべての培養液を捨て新しい培養液をいれます。根にストレスがかかるのでできれば、日照の弱い曇りの日か、夕方に行いましょう。
成長してくると水を良く吸うので水切れには注意が必要です。また暑い時期は水が腐りやすいので、水が濁っているときには水を交換しましょう。
肥料
水耕栽培でスイカを育てる場合には、水だけでは育ちません。肥料が必要です。しっかり水耕栽培用の肥料を使って育てましょう。
水耕栽培用の肥料は普通の肥料とは異なり、カリ成分が高めに設定されていたり、二次要素(多量要素)や微量要素も含まれているなど、普通の肥料とは組成が異なります。水耕栽培は根が直接栄養素を吸い上げる形になりますので、培養液の組成や状態がとても重要となります。必ず水耕栽培用の肥料を使用しましょう。
家庭で使える水耕栽培用の肥料として有名なものは「ハイポニックス微粉」や「ハイポニカ液体肥料」です。苗が小さいころは、パッケージの濃度より薄めて使います。ハイポニカはプロ用のものもありますが、家庭用と成分や配合は同じです。
下記のページに水耕栽培用の肥料についてまとめておりますので、参考にしてください。
エアーポンプ
エアーポンプ(エアポンプ)は、必ずないと育たないというわけではありません。葉物野菜やミニトマトなどの小型な果実野菜なら、エアポンプがなくともある程度育ちます。しかし土壌栽培とことなり、水には酸素が少ないためエアーポンプを使うことで、酸素が多く根に供給され、生育が早くよく育ちます。
エアーポンプは、水耕栽培用のものもありますが熱帯魚用のものでもOK。使用する容器の大きさに合わせてものをつかいましょう。ベランダなどで育てる場合、電源がない場合もあります。そんなときには、太陽光発電ができるエアーポンプや充電が可能なエアーポンプなどもあるのでそちらがおすすめです。
またエアポンプは、水の逆流を防ぐため本体は栽培容器より高い位置に置きましょう。
支柱立て
スイカは、地面につるを這わせる「地這い栽培」が一般的ですが、プランター栽培では、支柱を立てて、立体栽培で育てると小スペースで栽培が可能です。果実が空中に浮いているように見えることから空中栽培とも呼ばれます。
水耕栽培の場合は、プランターなどと違い土に挿してプランターを支柱を立てることができません。容器にビニールひもなどで固定したり、緑のカーテンなどに使われる壁などに立てかけて使う支柱や、自立する支柱などを使うとよいでしょう。庭などで、置いてある場所が土であれば、土に直接挿すこともできます。
容器に固定する支柱は、小玉スイカなら90cm~120cmほどのものを立てるとよいでしょう。親づるが伸びてきたら、支柱につるを誘引して紐で結びます。誘引は、つるの生長に合わせてこまめに誘引してください。
果実の吊り下げ
空中栽培では、果実が大きくなると重さで落下や、鳥害から守るためにネットで、吊り下げて重さを支えます。専用の吊り下げネットもありますが、収穫用ネットや、水切りネットの両端に紐をつけて、ハンモック状に吊るせれば大丈夫です。ストッキングなども代用できます。
摘心・摘果
摘心
親づる(最初に成長した茎)が伸びてきたら、親づるの生長をとめ実のつく子づるを伸ばすために、親づるの芽を取る摘心を行います。
摘心は、親づるに葉が5枚~6枚ほどついたら、親づるの先端の芽を手か消毒したハサミで除去します。子づるが勢いよく育ってきたら元気のよい、3~4つるを残して後の子づるは摘み取ります。左右に誘導してつるが混みあわないようにします。
摘果
人工受粉をして、成功するものもあれば失敗して実がつかないものもあります。成功してたくさんの実がついたとしても、全部育てると実に栄養がいかず小さくておいしくない実になってしまうため、摘果を行いましょう。目安は、小玉は1本のつるに1果、1株に2~3果までです。
受粉後10日ほどたってから、追肥をするタイミングで形が整った大きな実を残しあとは、取り除きましょう。
人工授粉
スイカを確実に着果させたいなら、人工授粉が必要です。雌花が咲いたら人工受粉をしましょう。まず先に雄花が咲き始めます。子づるが育つと、雌花が咲きます。雌花と雄花の違いは、蕾の下がふくらんでいるかいないか。蕾の下がふくらんでいるほうが雌花です。
ただし、最初に子づるについた雄花は、うまく育たないため人工授粉させず摘みとりましょう。2番目以降に咲いた10節~15節ほどについた雌花に授粉させます。
授粉は朝8時~9時に行いましょう。雄花を摘みとり花弁を取り除きます。雄しべ(葯)を当日咲いた雌花の柱頭に軽くなすりつけましょう。交配日をラベルに書いておきましょう。
収穫のタイミング
意外と難しいのがスイカの収穫のタイミングです。大きさだけでは完熟したかどうかわかりません。一番重要なことは、人工授粉の日を記入したラベルをつけておくことです。収穫時期は小玉スイカは約35日といわれていますが、品種によって異なるため苗や種に書かれた日付に従いましょう。
積算温度(毎日の気温の平均を足した温度)が小玉で850~900℃で完熟するといわれるので、そちらを目安にする方法もあります。果実が叩くとポンポンとした音がなる、巻きひげの色が茶色く枯れてくるなどの目安もありますが、見た目では難しいので総合的に判断しましょう。
病害虫
病気
スイカは、うどんこ病、疫病、炭疽病(たんそびょう)、つる枯病、つる割病などの病気にかかりやすいです。葉に斑点がでたり、茶色く枯れたりしてきたら病気を疑いましょう。
対策としては梅雨に高温多湿によるカビの被害が多いので、風通しがよく日当たりの良い場所で育てましょう。早期発見が大切です。また発生してしまったら殺菌剤の使用も効果的です。
害虫
スイカの葉が食害を受けたり、色が変色している場合は害虫の可能性もあります。スイカはアブラムシ、ハダニ、ウリハムシ、ミナミキイロアザミウマなどの害虫がつきやすいです。これらの虫が発生した時は、粘着テープで除去する、また殺虫剤などの薬剤で駆除、防虫する方法があります。どちらにせよ、早く対応するに越したことはないので、発見した時はすぐに駆除し、防除を心掛けるようにしましょう。
まとめ
スイカは、栽培管理が大変ですがその分収穫の喜びは格別です。つる性なのでらせん状にツルを誘引すれば、観賞用に、網などに誘引すればグリーンカーテンとしても使えます。
メロンと栽培時期や栽培方法が似ているので、スイカを一緒にそだててみるのもいいでしょう。土を使わない分、連作障害もありませんしエアーポンプを使えば、土壌栽培より早く育つこともあります。まずは、栽培が簡単な小型の品種から始めてみましょう。
『農家web』にはこのほかにも、水耕栽培のコンテンツが豊富です。野菜だけでなくハーブや、観葉植物、多肉植物、花を楽しむ球根なども水耕栽培で育てることができます。
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