青汁でおなじみのケールは、栄養が豊富な健康野菜です。苦いイメージがありますが、収穫したてのケールはクセがなく食べやすいので、家庭菜園におすすめです。本来は高さ20cm~30cmほどで収穫しますが、水耕栽培では小さくやわらかな葉を収穫します。
ここではケールの水耕栽培について、タネまきから収穫までの育て方について、初心者の人にもわかりやすく説明します。
水耕栽培とは
水耕栽培は、土を使わず「水で栽培をする方法」の一つです。水耕、水栽培などとも呼ばれます。水耕栽培は、野菜だけでなく、観葉植物や果物などのさまざまな植物を衛生的に育てることができます。
プロの農家だけでなく、家庭園芸や家庭菜園でも人気の方法で、室内やベランダで収穫野菜を楽しんだり、栽培キットなども販売されています。
ハイドロカルチャーも土を使わず「水で栽培をする方法」の一つです。土の代わりにハイドロボールなどの無菌の培土を使い、育てます。水だけで育てるより、植物を固定することができ、空気の層があるため根が育ちやすいという特徴があります。ハーブや野菜の種を直接ハイドロボールに蒔いて育てる方法もあります。
ケールの水耕栽培について
ケールの基礎知識
ケールはアブラナ科の二年草、キャベツやブロッコリーの祖先ともいわれ、キャベツの原種と似ており、葉はひらいたままで結球しません。栄養価が高い緑黄色野菜で、野菜の王様やスーパーフードと呼ばれています。
生育温度が18℃~25℃ですが、暑さ寒さにも比較的強く生育が旺盛で丈夫なので、キャベツの仲間のなかでも作りやすい野菜です。タネまきから収穫までは2ヵ月程度。外側の葉からかき取って収穫すると長く収穫が楽しめます。
作物名 | ケール |
---|---|
科目 | アブラナ科アブラナ属 |
原産地 | 地中海沿岸 |
発芽適温(地温) | 20℃〜25℃ |
生育適温 | 18℃~25℃ |
育てやすさ | 簡単 |
品種
ケールには、苦みの少ない、葉の縁が縮れているカーリーケールや、青汁によく使われる、縮れのない大きな柔らかな葉のコーラル系ケール、小ぶりなシベリアンケールなどの種類があります。
品種名 | 概要 | 特徴 |
---|---|---|
青汁用ケール | コーラル系ケール。 葉が大きく青汁以外にも炒めものに使えます。 | |
カリーノケール・ミスタ | 葉の縁が縮れるカリー・ケール。 苦味や青臭さがなく生のままサラダとして食べれます。 | |
カーボロネロ | イタリヤ野菜のカーボネロもケールの仲間です。 日本では黒キャベツといわれ、煮込み料理に使われます。 | |
切葉レッドケール | ベビーリーフ用の改良品種 プランターに直接種をまいて、葉が5cmほどになったら 収穫できます。 |
栽培時期
ケールの発芽適温は20℃〜25℃ですが、15℃程度でも発芽は可能です。土壌栽培では春まきか夏秋まきが一般的です。水耕栽培は室内で育てるので、発芽温度が保てればいつでも栽培は可能ですが、タネの袋にかかれた播種時期に始めると失敗がすくないでしょう。下記はプランター栽培時の目安の栽培時期です。
地域 | 播種(種まき)時期 | 収穫 |
---|---|---|
寒冷地 | 5月~7月 | 7月下旬~11月上旬 |
中間地 | 3月~4月(春まき) 7月中旬~8月(夏秋まき) | 5月下旬~9月 10月中旬~12月 |
暖地 | 2月~5月(春まき) 7月~9月(夏秋まき) | 5月~10月 10月~翌年1月 |
ケールの水耕栽培のポイント
- ケールの種は、光がないと発芽しない「好光性種子」です。タネまき後は明るい場所で発芽させます
- 草丈が大きくなるので、水耕栽培では少し小さめで収穫します。小さい葉はやわらかく苦味も少ないので食べやすいケールが収穫できます。
- 収穫は、外側の葉から少しづつ収穫するとまた新しい葉がでるので、長く収穫が楽しめます。
ケールの種まき
ケールの水耕栽培は、スポンジに種子をまいて育てるところから始めましょう。最終的にスポンジ1個につき1苗になるので、育てたい株数分同様に種をまいて育てましょう。
用意するもの
- ケールの種
- スポンジ(キッチンスポンジで代用可、メラニンスポンジは不可)
- タッパーなど、スポンジを入れておく容器
- ラップ、竹串、ハサミなど
手順
- スポンジを、2㎝~3㎝程度に四角にカットし、十字に切り込みを入れます。
- 切ったスポンジにしっかり水を吸わせます。
- スポンジの十字の切り込みに、ケールの種子を4~5粒まきます。
- 容器にスポンジをいれ、底がつかる程度水をいれます。
- 乾かないようにラップをして、竹串などで数か所穴をあけて日当たりの良い場所で管理します。
- 双葉がそろったら3本に、本葉が1~2枚で2本に間引いたら、水耕栽培用の容器に移し替えます。
ケールの水耕栽培の手順
用意するもの
- スポンジで発芽させた苗
- ペットボトル(1.5ℓ以上のもの)
- 水耕栽培用肥料
- アルミホイル
手順
- 手順1ペットボトルの準備
ペットボトルの上部をカッターやハサミなどで切り取ります。上部を逆さにして下部にセットして使います。
- 手順2苗の植え付け
切り取ったペットボトルの上部の飲み口の部分にスポンジごと苗をセットします。飲み口の部分から根がでるように、セットします。苗を傷つけないように注意しましょう。
ペットボトルの下部にアルミホイルなどをいれ、遮光します。そこに培養液(肥料を入れた水)をいれ、上部をセットします。水位は根が出ている場合は、根が3分の1程度つかる程度です。
- 手順3育苗
日当たりの良い場所に置いて育てます。本葉が3枚になったら、1本に間引きましょう。
培養液が減ったら継ぎ足します。2週間に1度は全部交換しながら育てます。 - 手順4収穫
本葉が5枚以上になったら収穫ができます。大きく育った外葉から順次ハサミで葉のつけ根から切り取って、収穫します。全部収穫せず、外葉からかき取り収穫すると、長く収穫できます。葉を5枚以上残して収穫しましょう。
ケールの水耕栽培 育て方のポイント
容器
容器はペットボトルであれば、できれば1ℓ以上ある大きなものがおすすめです。葉物野菜は小さなペットボトルでも栽培が可能ですが、大きい容器を使えば、根が大きく広がるスペースができ酸素を取り込みやすくなります。
ペットボトル以外でも、空き瓶やタッパーなどを使っても栽培は可能です。スポンジをセットする上部のフタには、タッパーのフタを切り抜いてつかったり、発泡スチロールを切り抜いてつかったりもできます。2株一緒に栽培したいときは、株間は10cmほど空けて育てましょう。
栽培環境・置き場所
ケールは、日の当たらない場所で育てると、ひょろひょろと細い茎が伸びてしまう徒長が起きてしまいます。室内で育てる場合も、日当たりの良い窓辺で育てましょう。半日程度日が当たる場所で管理します。
ただし暑さには弱いので、夏に栽培がかかる場合には、直射日光を避け温度が上がりすぎない場所で育てましょう。冬に栽培がかかる場合は、耐寒性は強いので、発芽した後は室内で管理していれば特に気にする必要はありません。
水やり
水の交換は、2週間に1度程度でかまいませんが、苗が大きくなると水を吸収します。水切れするとすぐに枯れてしまうので、継ぎ足しながら育てましょう。また暑い時期は水が腐りやすいので、水が濁っているときには水を交換しましょう。
土での栽培と異なり、栄養は肥料でしかとれません。必ず水耕栽培用の肥料を一緒にいれて水やりをしましょう。培養液(肥料を入れた水)の水位は、根が1/3~1/2程度浸かる程度。水の中は空気が少ないので、根元は空気に触れるよう濡れないようにします。
肥料
水耕栽培でケールを育てる場合には、水だけでは育ちません。肥料が必要です。水耕栽培用の肥料を使って育てましょう。
水耕栽培用の肥料は普通の肥料とは異なり、カリ成分が高めに設定されていたり、二次要素(多量要素)や微量要素も含まれているなど、普通の肥料とは組成が異なります。水耕栽培は根が直接栄養素を吸い上げる形になりますので、培養液の組成や状態がとても重要となります。必ず水耕栽培用の肥料を使用しましょう。
家庭で使える水耕栽培用の肥料として有名なものは「ハイポニックス微粉」や「ハイポニカ液体肥料」です。苗が小さいころは、パッケージの濃度より薄めて使います。
下記のページに水耕栽培用の肥料についてまとめておりますので、参考にしてください。
収穫
ケールは、株ごと収穫することもできますが、外葉から使う分だけ、摘み取り栽培も可能です。株を弱らせないように、株に5枚程度残しながら収穫すると、新しい葉がでてきてまた収穫できます。
エアーポンプ・水耕栽培キット
葉物野菜は、エアーポンプなしでも十分育ちますが、土壌栽培のように大きく育てたい場合や、実がなる野菜などの栽培では、容器内に酸素を送るため、エアーポンプを水の中にいれてつかいます。エアーポンプは熱帯魚用のものでOK。使う容器の大きさに合わせて選びます。
また水耕栽培用のキットなども多く販売されています。日が当たらない場所で育てたい場合にはLEDライト付きのもの、自動水やりができるものなどもあるので初心者の人でも大きく元気な野菜やハーブなどが収穫できます
まとめ
ケールは、和名で「羽衣甘藍(はごろもかんらん)」「緑葉甘藍(りょくようかんらん)」ともよばれ、観賞用の葉牡丹もケールを品質改良されたものといわれます。青汁だけでなく、サラダや炒めものにも使えます。加熱すると甘みが増すので、スープやおひたしなどでもおいしく食べられます。
苦いイメージのあるケールですが、水耕栽培でやわらかい葉のうちに収穫すればクセが少ないのでおすすめです。苦味が苦手な人は苦味の少ない品種で栽培するとよりよいでしょう。
大きく育てたい場合には、プランター栽培がおすすめです。
『農家web』にはこのほかにも、水耕栽培のコンテンツが豊富です。野菜だけでなくハーブや、観葉植物、多肉植物、花を楽しむ球根なども水耕栽培で育てることができます。
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