ナスは比較的簡単に育てられる夏野菜として、家庭菜園で人気の野菜ですが、土をつかわない水耕栽培でも育てることができます。水分と栄養を必要とするため水耕栽培に向いている野菜で、小さな品種を選べばエアーポンプなどの本格設備がなくとも栽培できます。
ここではナスの水耕栽培について、苗から始める手順や収穫までの育て方や栽培キットの作り方について、わかりやすく説明します。
水耕栽培とは
水耕栽培は、土を使わず「水で栽培をする方法」の一つです。水耕、水栽培などとも呼ばれます。水耕栽培は、野菜だけでなく、観葉植物や果物などのさまざまな植物を衛生的に育てることができます。
プロの農家だけでなく、家庭園芸や家庭菜園でも人気の方法で、室内やベランダで収穫野菜を楽しんだり、栽培キットなども販売されています。
ハイドロカルチャーも土を使わず「水で栽培をする方法」の一つです。土の代わりにハイドロボールなどの無菌の培土を使い、育てます。水だけで育てるより、植物を固定することができ、空気の層があるため根が育ちやすいという特徴があります。ハーブや野菜の種を直接ハイドロボールに蒔いて育てる方法もあります。
ナスの水耕栽培について
ナスの基礎知識
ナスはインド東部原産の野菜で、日本の夏のような高温多湿を好みます。夏野菜の中でも高い温度を好むので、早く植えつけると成長が止まるので、十分に暖かくなってきてから植えつけます。
栽培は、タネまきから始めるのは、栽培期間が長く育苗も難しいので市販の苗から始めるのがよいでしょう。ホームセンターなどで手軽に手に入ります。植えつけから最初の収穫までは50日程度、その後は収穫しながら育てます。
水分と栄養分を多く必要とするため、大きな容器をつかって育てるとよく育ちます。草丈が大きくなるので、畑やプランターなどでは支柱を使って育てます。水耕栽培では小ぶりな品種を選び、収穫が終わった茎を切り詰めて育てれば、コンパクトに育てることも可能です。
作物名 | ナス |
---|---|
科目 | ナス科ナス属 |
原産地 | インド東部 |
発芽適温(地温) | 25〜30℃ |
生育適温 | 20〜30℃ |
育てやすさ | やさしい |
品種
水耕栽培では、長なすなどの大きいものより、水なすや小なすなどの小ぶりで丸みのある品種を選びましょう。いくつか紹介します。
品種名 | SL紫水 | ごちそうなす | うす皮味丸 |
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概要 | |||
特徴 | 甘くてやわらかい、丸形の水ナス。茎葉にトゲがないので栽培しやすい品種 | 甘みが強いジューシーな小なす。あくが少ないので生食も可能。 | かわいらしい小型の丸ナス。長さ5cmほどで収穫。 皮がやわらかく、漬物に最適 |
栽培時期
植え付けは、生育適温が20℃~30℃なので、暖かくなった4月下旬~6月頃に植え付けして育てます。収穫は早めに収穫することで、次々と新しい花が咲いて、実をつけるので長く収穫が楽しめます。
地域 | 植え付け時期 | 収穫時期 |
---|---|---|
寒冷地 | 5月中旬~6月中旬 | 7月中旬~9月 |
中間地 | 5月~6月 | 6月下旬~10月 |
暖地 | 4月中旬~5月 | 6月~10月 |
ナスの水耕栽培の手順
ナスの水耕栽培の手順について説明していきます。栽培の容器は、実もの野菜は容量が5ℓ以上あるものを使いましょう。容器が小さいと、根が伸びるスペースがないので、生育が悪くなり収穫少なくなります。苗が小さいうちは、2ℓのペットボトルなどを切って使ってもよいですが、大きくなったらバケツやごみ箱などをつかって育てるとよいでしょう。
用意するもの
- ナスの苗
- スポンジ(キッチンスポンジでOK、メラニンスポンジは不可)
- 発砲スチロールの板
- 5ℓ以上水が入る容器
- 水耕栽培用肥料
- カッター、ハサミ
- アルミホイルなど容器をカバーするもの
栽培容器の準備
まずは栽培容器を作りましょう。栽培の方法はいろいろありますが、ここではスポンジと、発砲スチロールをつかった方法を紹介します。
- スポンジを5cm~6cm角にカットし、根を挟むための切り込みを入れます。
- 発泡スチロールを容器より、一回り大きい形になるようにカッターで切り取ります。
- 発砲スチロールの中央に、スポンジより一回り小さい穴を空けます。
- さらに発砲スチロールの端に、直径3cm程度の空気穴を空けておきます。
- 水を入れる容器が、透明な場合はアルミホイルなどを全体に被せて、遮光します。
手順
- 手順1事前準備
スポンジを、5cm~6cm程度に四角にカットし、十字に切り込みを入れます。
発砲スチロールを、容器より大きめにカットし中央にスポンジより小さめの穴をあけ、直径3cmほどの空気穴をあける - 手順2苗の植え付け
ナスの苗は、ポットから取り出し竹串などをつかって、土を取り除く。
土を取り除いたら、根をバケツの中で水洗いする。
スポンジに苗の根の部分を挟み、発砲スチロールのフタの穴にセットする。 - 手順3容器にセット
容器に水をいれて、苗を挟んだ発砲スチロールを上に乗せる。
水量は、根が3分の2ほどつかる程度、根元は空気にふれるようにする。
一週間程度は、半日陰で水だけで栽培します。 - 手順4養液栽培を開始
肥料を入れた水で栽培を開始します。パッケージに書かれている通りの希釈率で希釈した水をいれて栽培します。水位は根が3分の1ほどつかる程度にして育てます。
水は1週間に1度交換を、水切れしないように注意し継ぎ足しながら育てます。 - 手順5支柱を立てる
小さな品種であれば、支柱がなくとも育てることができますが、茎が倒れてくるようなら支柱を立てましょう。
容器の外側に、支柱をビニールひもなどをつかって固定し、麻紐などを使って茎を支柱と結び、誘引します。 - 手順6一番果の収穫
最初の花に実がついたら、小ぶりなうちに収穫します。これにより株の消耗を防ぐため、大きくならないうちに早めに収穫しましょう。
- 手順7収穫
品種にもよりますが実が5cm~8cmほどになったら、収穫のタイミングです。ヘタの少し上をハサミで切り取って収穫します。
ナスの水耕栽培の育て方
栽培環境・置き場所
ナスは日当たりの悪い場所では、うまく育ちません。容器を遮光して屋外の日当たりの良い場所で管理しましょう。暑さに強いナスですが、水耕栽培の場合は、夏の直射日光に長時間当たると、容器内の水が熱くなってしまうことがあります。ベランダなどの場合はコンクリートに直接容器を置かないようにし、水温が上がりすぎていないかチェックしましょう。
水やり
水耕栽培は培養液(肥料を入れた水)で育てます。培養液が切れないよう毎日水量を確認して、培養液を継ぎ足しして育てます。培養液(肥料を入れた水)の水位は、根が2/3~1/2程度浸かる程度。水の中は空気が少ないので、根元は空気に触れるよう濡れないようにします。
水の交換は、3週間~1か月に1度は行いましょう。すべての培養液を捨て新しい培養液をいれます。根にストレスがかかるのでできれば、日照の弱い曇りの日か、夕方に行いましょう。
成長してくると水を良く吸うので水切れには注意が必要です。また暑い時期は水が腐りやすいので、水が濁っているときには水を交換しましょう。
肥料
水耕栽培でナスを育てる場合には、水だけでは育ちません。肥料が必要です。特にナスは肥料を好むので、しっかり水耕栽培用の肥料を使って育てましょう。
水耕栽培用の肥料は普通の肥料とは異なり、カリ成分が高めに設定されていたり、二次要素(多量要素)や微量要素も含まれているなど、普通の肥料とは組成が異なります。水耕栽培は根が直接栄養素を吸い上げる形になりますので、培養液の組成や状態がとても重要となります。必ず水耕栽培用の肥料を使用しましょう。
家庭で使える水耕栽培用の肥料として有名なものは「ハイポニックス微粉」や「ハイポニカ液体肥料」です。苗が小さいころは、パッケージの濃度より薄めて使います。
下記のページに水耕栽培用の肥料についてまとめておりますので、参考にしてください。
人工受粉
屋外では人工受粉は必要ありませんが、屋内でLEDライトなどを使って育てている場合は、昆虫や風による受粉ができないことがあるため、花が開いたら午前中の早いうちに、枝を軽くゆすって人工受粉させるとよいでしょう。
支柱
土壌栽培では、土に直接支柱を立てることができますが、水耕栽培の場合は容器に支柱を固定する、ベランダの壁などに網をかけて、誘引するという方法もあります。
バケツなどである程度の大きさがあるものでしたら、ビニール紐をつかって支柱と容器を結ぶか、容器に穴を空けて結束バンドで結ぶなどする方法もあります。支柱の立てられるプランターを使えば、プランターに支柱がセットできるのでそちらもおすすめです。プランターを使う場合は底に穴があいているので、ゴミ袋などをかけて使います。
収穫・剪定
なすの収穫は、一番果は株の消耗を防ぐために早めに収穫するのが基本です。一番果を収穫すると、枝葉が茂り実がなります。とりおくれると種ができて風味が落ちるので、早めに収穫しましょう。
コンパクトに育てたいなら、1本の枝で2果収穫したらその先の葉を一枚のこして、先端をカットしましょう。重みで枝が垂れ下がるのを防ぐことができます。
エアポンプ・水耕栽培キット
小ナスであれば、エアポンプなしでも育ちますが、エアポンプを使って、容器内に酸素を送ると、格段に生育も収穫量も変わります。電源さえあれば容器の中にいれるだけですので、意外に簡単ですし安価なものも出回っています。エアポンプは熱帯魚用のものでOK。使う容器の大きさに合わせて選びます。
また水耕栽培用のキットなども多く販売されています。キットは本格的なものから簡易的なものまで多くあります。
「私の畑ポットタイプ」は支柱が立てられるようになっているので、ナスやトマト、キュウリ、ゴーヤなどの栽培が簡単にできます。水やりも自動なので水切れの心配もありません。
まとめ
ナスは、トマトやキュウリなどと並び家庭菜園で人気の野菜です。サニーレタスなどの葉物野菜やハーブの栽培が水耕栽培は簡単なので人気ですが、ナスやミニトマトなどの実もの野菜も、小型なものを選べば立派な果菜を、水耕栽培で育てることができます。
実もの野菜は、苗がとても重要です。育苗は温度管理などが難しいものが多いので、少量であれば苗からがおすすめ。人気の野菜は栽培時期になると、ホームセンターなどでも簡単に手に入ります。
『農家web』にはこのほかにも、水耕栽培のコンテンツが豊富です。野菜だけでなくハーブや、観葉植物、多肉植物、花を楽しむ球根なども水耕栽培で育てることができます。
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