作物の根やサツマイモを食べ尽くしてしまう、厄介なコガネムシの幼虫。ここではコガネムシとはどういう虫なのか、その特性と、サツマイモ(甘薯、かんしょ)栽培におすすめのコガネムシを駆除、防除するための農薬、またその他の効果的な方法、対策についても解説します。
そもそも、コガネムシはどういう害虫?
コガネムシとは?
コガネムシは、甲虫(コウチュウ)目コガネムシ科の昆虫です。成虫は、硬い鎧に覆われ、赤、紫、黒や緑色の光沢を有する色をしていることから、黄金虫(コガネムシ)と呼ばれています。
種類は多く、体長、色もまちまちです。代表的なものでは、「ヒメコガネ」や「マメコガネ」「ドウガネブイブイ」「アカビロウドコガネ」「アオドウガネ」がいます。
6月頃に土中に産卵し、7月頃に孵化します。孵化した幼虫は、土壌の有機物を餌にし、餌が不足してくると、根を食べ始めます。幼虫は寒くなってくると地下深くに潜って越冬します。暖かくなってくると、次第に地上付近に移動して蛹になり、6月頃に成虫になります。
どうしてコガネムシは害虫なのか?
コガネムシの幼虫は、土中の根を食い荒らします。鉢植えの鉢に産卵された場合、その花、植物がスポッと簡単に抜けてしまうほど根は綺麗さっぱり食べられてしまいます。
また、コガネムシは細い根から太い根までも食べるため、農作物の土中の根、また根菜類を食害し、その被害は甚大です。特にサツマイモは好物で、サツマイモ自体が食べ荒らされてしまいます。サツマイモは植え付け時期がコガネムシの産卵時期の前のため、植え付け時に土中に薬剤を入れてコガネムシを防ぐことができません。このため、サツマイモ農家にとって、防除しにくい厄介な害虫です。また、ブドウやイチゴでの食害も後を絶ちません。
サツマイモで使えるコガネムシ幼虫に効く農薬
コガネムシはメジャーな農業害虫のため、多くの適用農薬があります。幼虫は土中にいるため、粒剤を土の中に混ぜる、また液剤を土壌に散布するようにします。
コガネムシ幼虫に効く代表的な農薬
有機リン系
有機リン系殺虫剤は殺虫剤の中でも、昆虫の神経系を阻害するタイプで、殺虫剤の代表的なタイプです。代表的な有機リン系農薬は、ダーズバン、ラグビー、ダイアジノン、トクチオンがあります。
ネオニコチノイド系 アクタラ、ダントツなど
ネオニコチノイド系とは、90年代に登場した比較的新しい殺虫成分で、ニコチンの仲間です。ニコチン性アセチルコリン受容体と結合し、信号の伝達を阻止し、結果、昆虫は麻痺し、死に至ります。
浸透性、速効性、持続性が優れていることや幅広い殺虫スペクトラムを持つため、現在非常によく使用されている殺虫剤です。代表的な製剤ダントツやネオニコチノイド系農薬については下記で詳しく説明しています。ご参考ください。
家庭園芸でよく使われる住友化学の「ベニカベジフルVスプレー」や「ベニカXファインスプレー」「ベニカXネクストスプレー」「ベニカベジフルスプレー」は、ネオニコチノイド系のクロチアニジンを成分にしています。
サツマイモ栽培で使える、コガネムシ幼虫に効く農薬一覧表
RACコード別に分類した、コガネムシに効く代表的な農薬は以下のようになります。
※農薬を使用する際にはラベルをよく読み、適用作物、用法・用量を守ってお使いください。
家庭園芸でよく使われる住友化学の「ベニカベジフルVスプレー」や「ベニカXファインスプレー」「ベニカXネクストスプレー」「ベニカベジフルスプレー」は、還元澱粉糖化物やネオニコチノイド系のクロチアニジンを成分にしており、コガネムシの成虫、幼虫に適用があります。(適用作物、適用病害虫は説明書、ラベルをよく読んで確認するようにしてください。)
殺虫剤はコガネムシだけでなく、カメムシ類、カイガラムシ類やハダニ類、アブラムシ類、アザミウマ類、コナジラミ、ヨトウムシ、キスジノミハムシ、ネキリムシ、ヨコバイ、ハモグリバエ、ハマキムシ、イラガ、ウンカ、メイガ、ハムシ、ケムシ、テントウムシダマシ、ナメクジ、シンクイムシ、コオロギ、タマネギバエ、ダンゴムシ、ウリハムシ、アオムシ、ゾウムシ、ハバチ、グンバイムシ、モモハモグリガ、ハモグリガなど幅広い殺虫スペクトラムを持つものも多いので、うまく活用しましょう。
上記の農薬は水で溶かして薄めて使用する液剤や水溶性の粉剤、粒剤(粒状や顆粒)です。希釈方法等については下記をご参考ください。
害虫に薬剤抵抗性がつくのを避けるために、違うRACコードの農薬をローテーション散布すると良いでしょう。
防除する際のポイント
散布するタイミング
成虫は土壌外にいるため、薬剤の散布が効果的ですが、幼虫は土中にいるため、粒剤を土の中に混ぜる、また液剤を土壌に散布するようにします。
IPM防除体系
近年では、特定の農薬に抵抗性を持った害虫も多く発生し、農薬の効率的な使用のため、農薬のRACコードを確認して、タイプの異なる殺虫剤のローテーション散布を心がけること、また、農薬の使用量を減少させ、薬害を少なくするために、生物的、物理的、耕種的防除法を取り入れたIPM防除体系を組んで、統合的に実践することが重要になってきています。
生物農薬(生物的防除)
生物農薬とは、「農薬の目的に使われる生物を使い、病害を防除する農薬」のことを言います。
その生物とは主に、昆虫、線虫、微生物で、害虫(例えばアブラムシやアザミウマ、コナジラミ、ハダニなど)を捕食する、天敵に当たる昆虫や、昆虫に寄生するもの、センチュウ、また病原菌にあたる生物になります。
天敵導入による防除は、名前でこそ「生物農薬」と呼ばれますが、化学農薬ではなく、有機JASでも勿論使用可能です。
コガネムシの天敵はカエルやヤモリ、鳥類、蜘蛛などになってくるため、市販されている生物農薬はありませんが、他の害虫に適用する生物農薬は多くあります。
生物農薬については下記に詳しく、具体的な製品も紹介していますので、ご興味ある方はご参考ください。
物理的防除
鉢植えの場合は土を露出させないようにする
鉢の土が露出していると、産卵される可能性があるので、土が露出しないようにダンボールや布などで覆うのは物理的に防除効果があります。
耕種的防除
全面マルチを敷く
通常のマルチ栽培では、ウネ(畝)間の土に卵を産みつけるため、そこから幼虫が移動するため、効果はありませんが、ウネ間より広い幅のマルチ(135cmなど)を張って、土の露出を防げば、産卵を防ぎ、虫害をかなり抑えることができます。
フェロモントラップ ニューウインズパックを設置する
雄を誘引する性フェロモンと両性を誘引する食物誘引剤を使用し、コガネムシの成虫を誘引、捕獲することで、産卵を防ぐことができます。
コンパニオンプランツを植える
コガネムシが嫌う忌避植物の、マリーゴールドやスイセン、キャットニップ、チャイブ、ニンニクを植えるのもある程度の防除効果があるでしょう。
完熟した有機物を畑に使用する
未熟有機物を畑に使用すると,コガネムシ成虫の産卵を促してしまいます。このため、有機物を混ぜる場合は、完熟した有機物を使用するようにしましょう。
周りをしっかり除草する
圃場の周り、芝生の場合は芝の中に雑草があると、コガネムシの発生を促進してしまいます。圃場の周りの雑草はできるだけ除草しておくことが、被害を少なくするのに極めて重要です。
除草については、以下のコンテンツが参考になります。
まとめ
作物の根やサツマイモを食べ尽くしてしまう、厄介なコガネムシの幼虫。農作物だけでなく、ガーデニング、観葉植物、花木の根も食い荒らして、苗から育った植物まで枯死させてしまう害虫です。
本記事が、適切に退治、防除を行うためのコガネムシ対策の一助となれば幸いです。
ここで紹介した農薬は、JA販売店やホームセンターのガーデニング・資材、庭木コーナーにあるものもあります。ほ場で早期発見し、適切な薬剤や防除方法でしっかり発生を予防、ガードできると、農薬散布と言った農作業の回数を減らすことができます。
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その他、サツマイモに関する記事
その他、サツマイモ(甘薯、かんしょ)に関する記事は栽培方法含め、たくさんあります。塊根植物であるサツマイモ。下記をどうぞ参考にしてみてください。
栽培に役立つ 農家webのサービス
農家web 農薬検索データベース
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農家webかんたん農薬希釈計算アプリ
除草剤、殺虫剤を代表する農薬の液剤は、かなりの割合が原液で、水で希釈して散布するのが一般的です。希釈倍率に合わせて水と混ぜるのですが、希釈倍率が500倍、1000倍と大きく、g(グラム)やL(リットル)などが入り混じっていて、計算が難解だと感じる方も多いのではないでしょうか。
「農家webかんたん農薬希釈計算アプリ」は、使用する農薬の希釈倍数を入力し、散布する面積などから薬量・液量を算出します。面積の単位や薬剤の単位も簡単に行えます。
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