令和4年(令和4年2月1日~5年1月31日)の新規就農者は、4万5840人で前年に比べ12.3%減少し、このうち49歳以下は1万6870人で、8.4%減少しています(出典:令和4年新規就農者調査結果 – 農林水産省)。
このような事態を打開すべく、国や地方自治体は新規就農者・認定新規就農者向けの支援制度を拡充しています。
この記事では、農業を始める新規就農者・認定新規就農者向けの補助金について、概要から具体的な事業までご紹介します。
※この記事は2023年11月時点の情報です。補助金の内容等の変更や公募が終了している可能性もあるため、必ず各公募の公式ページをご確認ください。
新規就農者・認定新規就農者とは
新規就農者とは、新規自営農業就農者1、新規雇用就農者2、新規参入者3をまとめて指します。簡単に言えば、新規に何らかの形で農業に従事するようになった者を指します。
また、「新たに農業を始める方が作成する青年等就農計画を市町村が認定し、その計画に沿って農業を営む認定新規就農者に対して重点的に支援措置を講じようとするための制度」として、「認定新規就農者制度」があります。
- 個人経営体の世帯員で、調査期日前1年間の生活の主な状態が、「学生」から「自営農業への従事が主」になった者及び「他に雇われて勤務が主」から「自営農業への従事が主」になった者をいう。 ↩︎
- 調査期日前1年間に新たに法人等に常雇い(年間7か月以上)として雇用されることにより、農業に従事することとなった者(外国人技能実習生及び特定技能で受け入れた外国人並びに雇用される直前の就業状態が農業従事者であった場合を除く。)をいう。 ↩︎
- 土地や資金を独自に調達(相続・贈与等により親の農地を譲り受けた場合を除く。)し、調査期日前1年間に新たに農業経営を開始した経営の責任者及び共同経営者をいう。なお、共同経営者とは、夫婦がそろって就農、あるいは複数の新規就農者が法人を新設して共同経営を行っている場合における、経営の責任者の配偶者又はその他の共同経営者をいう。 ↩︎
認定新規就農者になるためには
認定新規就農者に認定されると、応募・加入できる補助金・支援制度がさらに拡充されます。そのため、新規就農する方は認定新規就農者になるほうが、早期に農業経営の安定化が図れます。認定新規就農者になるためには、青年等就農計画を事前に策定し、申請する必要があります。
対象者の要件は、下記のとおりです。
- 青年(原則18歳以上45歳未満)
- 特定の知識・技能を有する中高年齢者(65歳未満)
- 上記の者が役員の過半数を占める法人
農業経営を開始して一定の期間(5年)を経過しない者を含みます。認定農業者は含みません。
青年等就農計画の作成・認定の流れは、下記のとおりです。
- 新規就農者が「青年等就農計画認定申請書」を作成し、市町村に申請(提出)
- 市町村が同計画を審査・認定
- 市町村は青年等就農計画を認定後、当該計画申請者に通知
- 市町村、都道府県等関係機関により、計画達成をフォローアップ等
認定新規就農者が受けられる支援
認定新規就農者が受けられる支援制度は、主に下記のものがあります。
- 認定新規就農者向けの補助金、交付金
- 融資
- 税制優遇
- 保険料支援
- 農地転用手続きの簡略化
今回は補助金、交付金をメインに解説します。
新規就農者・認定新規就農者向けの補助金
国による交付金・補助金
新規就農者育成総合対策のうち経営発展支援事業
新規就農される方に、機械・施設等導入にかかる経費の上限1,000万円(経営開始資金の交付対象者は上限500万円)に対し、都道府県支援分の2倍を国が支援する補助事業です。
助成の対象は、下記1〜3の取組であって、自らの経営においてそれらを使用するものであることとなっています。
- 機械・施設等の取得、改良又はリース
- 家畜の導入、果樹・茶の新植・改植
- 農地等の造成、改良または復旧
事例集には、パイプハウスと自動灌水装置、環境制御装置を導入した事例などが掲載されていますので、参考にすると良いでしょう。
就農準備資金・経営開始資金(農業次世代人材投資資金)
新たに農業に参入する農業従事者に対して、研修期間や農業経営を始めてから経営が安定するまでの間、月々12.5万円が交付される補助事業です。
就農準備資金は、道府県農業大学校や先進農家などで研修を受ける場合、研修期間中に月12.5万円(年間最大150万円)を最長2年間交付します。
経営開始資金は、新規就農される方に、農業経営を始めてから経営が安定するまでの最大3年間、月12.5万円(年間150万円)を交付します。
雇用就農資金
雇用就農者の確保・育成を推進するため、就農希望者を新たに雇用する農業法人等に対して資金を助成する制度です。また、農業法人等がその職員等を次世代の経営者として育成するために国内外の先進的な農業法人や異業種の法人へ派遣して実施する研修を支援します。
農業従事者の育成支援を、農業法人等を通じて行う画期的な制度です。
雇用就農資金には以下の3タイプがあります。
- 雇用就農者育成・独立支援タイプ
- 新法人設立支援タイプ
- 次世代経営者育成タイプ
就農者が直接受け取るタイプの補助金ではありませんが、後継の担い手や次世代の経営者を育成するために活用できるため、間接的に新規就農者の支援に繋がっています。
就職氷河期世代の新規就農促進事業
就職氷河期世代の就農を後押しするため、研修期間に必要な資金を交付する事業です。
就職氷河期世代(事業申請時の年齢が30歳以上で、かつ、就農予定時の年齢が49歳以下の者)に対して、研修期間1年あたり150万円(最長2年間)の補助金が交付されます。
各地方自治体による補助金
各地方自治体が独自に公募する新規就農者向けの補助金・助成金も多くあります。各地域とも、担い手不足が深刻化しているため、新規就農者向けの補助金制度はしっかりと設けられている印象です。
下記、いくつか具体例を紹介します。
安曇野市 新規就農者支援事業(住居費補助事業)
安曇野市では、農業の担い手として市の農業の活性化に貢献することができると認められる新規就農者に対して住居費の補助を行っています。
住居の用に供する住居(付属施設等を含む)の賃借料について、月額10,000円を補助します。
高山市 農業後継者就農支援給付金
高山市は、経営リスクを負っている農業後継者が経営を継承または経営に参画する際、その経営体を支援する事業を行っています。
1回限りとなりますが、100万円の交付を実施します。
横手市 農業研修奨励金
横手市は、新規就農者や新部門開始に必要な技術を身に付けるための研修に係る経費の一部を助成しています。
研修期間、月10万円の補助が交付されます。
その他の新規就農者・認定新規就農者向けの支援制度
その他にも下記、支援制度が用意されています。
青年等就農資金(新規就農者向けの無利子資金制度)
新たに農業経営を営もうとする青年等に対し、農業経営を開始するために必要な資金を長期、無利子で貸し付ける青年等就農資金により支援します。
農協等向け新規就農者税制
農協等が機械設備や農業用ハウスを取得し、人・農地プランの中心経営体に位置付けられた認定新規就農者に利用させる場合、その固定資産税を軽減します。
農業補助金検索なら農家web補助金データベースが便利
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