日本の農業には「認定農業者制度」というものがあります。認定農業者になると、補助金・助成金や融資制度の優遇措置などの支援が受けやすくなります。
この記事では、認定農業者制度の概要と認定農業者になると受けやすくなる補助金について、詳しく解説します。
※この記事は2023年11月時点の情報です。補助金の内容等の変更や公募が終了している可能性もあるため、必ず各公募の公式ページをご確認ください。
認定農業者とは
認定農業者とは、認定農業者制度に従って認定された農業者のことを指します。
認定農業者制度は、農業者が市町村の農業経営基盤強化促進基本構想に示された農業経営の目標に向けて、自らの創意工夫に基づき、経営の改善を進めようとする計画を市町村等が認定(複数市町村で農業を営む農業者が経営改善計画の認定を申請する場合は、営農区域に応じて都道府県又は国が認定)し、これらの認定を受けた農業者に対して支援措置を講じようとするものです。
認定基準
市町村等から農業経営改善計画を認定されるためには、下記の要件を満たす必要があります。
- 計画が市町村基本構想に照らして適切なものであること
- 計画が農用地の効率的かつ総合的な利用を図るために適切なものであること
- 計画の達成される見込が確実であること
認定の手続き
認定を受けるためには所定の手続きが必要となります。下記の内容を記載した「農業経営改善計画書」を作成、市町村等に提出する必要があります。
- 経営規模の拡大に関する目標(作付面積、飼養頭数、作業受託面積)
- 生産方式の合理化の目標(機械・施設の導入、ほ場の連担化、新技術の導入など)
- 経営管理の合理化の目標(複式簿記での記帳など)
- 農業従事の様態等に関する改善の目標(休日制の導入など)
家族経営協定を締結した夫婦や親子などが共同で認定申請を行うこともできます。また、令和5年度から、農業者による申請手続きの手間の軽減のために、農業用施設の整備に係る許認可のワンストップ化されました。
認定農業者が受けられる支援
認定農業者が受けられる支援制度は、主に下記のものがあります。
- 認定農業者向けの補助金、交付金(経営所得安定対策)
- 融資
- 税制優遇
- 保険料支援
- 農地転用手続きの簡略化
今回は補助金、交付金をメインに解説します。
認定農業者が活用できる補助金
国による交付金
畑作物の直接支払交付金
諸外国との生産条件の格差による不利がある畑作物(麦、大豆、てん菜、でん粉原料用ばれいしょ、そば、なたね)を生産する農業者に対して、経営安定のための交付金(標準的な生産費と標準的な販売価格の差額)を直接交付します。
交付金の支払いは生産量と品質に応じて交付する数量払を基本とし、当年産の作付面積に応じて交付する面積払は数量払の先払いとして支払われます。
畑作物の直接支払交付金を申請する場合には、原則、数量払と面積払の両方を申請します。
交付対象者は、認定農業者、集落営農、認定新規就農者です(いずれも規模要件はありません。)
米・畑作物の収入減少影響緩和交付金(ナラシ対策)
収入減少による農業経営への影響を緩和するため、米、麦、大豆等の当年産の販売収入の合計が、標準的収入を下回った場合に、その差額の9割を補塡します。補塡の財源は、農業者と国が1対3の割合で負担します。
交付対象者は、認定農業者、集落営農、認定新規就農者となります(いずれも規模要件はありません)。対象作物は、米、麦、大豆、てん菜、でん粉原料用ばれいしょとなります。
新規就農者育成総合対策のうち就農準備資金・経営開始資金
ビニールハウスなどの施設やトラクターなどの機械に直接できるわけではありませんが、就農準備資金・経営開始資金も魅力的な支援です。研究期間や農業経営を始めてから経営が安定するまでの間、月々12.5万円が交付される補助事業です。
対象者の要件としては、独立・自衛就農を目指し、5年以内に認定農業者または認定新規就農者になること等があります。
各地方自治体による補助金・助成金
各地方自治体が独自に公募する認定農業者向けの補助金・助成金もあります。下記に一例をあげます。
静岡市認定農業者等経営基盤強化事業補助金(令和5年度)
静岡市は、認定農業者及び新規就農者の経営基盤の強化を促進するために、農作業の省力化、先進的技術の導入等、経営基盤の強化に資する事業を実施する認定農業者及び新規就農者に対して、補助金を交付しています。
補助率は3分の1以内、上限金額は100万円となっています。(※令和5年度の公募は2023年11月時点で終了しています)
棚倉町担い手農家支援対策事業助成金
棚倉町では、担い手農家が経営の規模拡大や効率化を図り、活力ある農業を持続するために、農業用機械や農業用施設等の導入経費の一部を助成しています。
補助率は、助成対象経費の1/3以内の額(1,000円未満切り捨て)、上限50万円となっています。
このように各地方自治体が独自で公募している場合もあるので、検索してみると良いでしょう。
農業に関する補助金・助成金の検索には「農家web補助金データベース」など補助金ポータルサイトを活用しましょう。
その他、活用できそうな交付金・補助金
強い農業づくり総合支援交付金
強い農業づくり総合支援交付金は、令和5年3月31日に改正された交付金です。特に生産事業モデル支援タイプは、農業用施設(パイプハウス、耐候性ハウス等)や農業用機械(トラクターや収穫機、播種機、定植機、選別機等)の導入にも活用できるものとなっています。
農林水産省の強い農業支援のパッケージは、基本的に農業用機械や施設(ビニールハウス、パイプハウス等)、スマート農業機器に活用できることが多いので注目しておくと良さそうです。
農地利用効率化等支援交付金
農地利用効率化等支援交付金は、下記を目的に農林水産省が公募しています。
担い手確保・経営強化支援事業(令和4年度補正予算)
担い手確保・経営強化支援事業は、下記を目的に農林水産省が公募しました。
助成対象となるものの具体的な例は、以下のとおりです。もちろん、ビニールハウスやトラクターにも使えます。
- トラクタ、田植え機、コンバインなどの農業用機械の取得
- 乾燥調製施設(乾燥機)、集出荷施設(選果機)、農畜産物加工施設(加工設備)など設備の取得
- ビニールハウスの整備
認定農業者が活用できるその他の支援制度
農業経営基盤強化資金(スーパーL資金)及び農業近代化資金の優遇措置
農業経営基盤強化資金(スーパーL資金)及び農業近代化資金は、農業用機械・施設の整備などに利用できる制度資金です。認定農業者は、農業経営改善計画の達成に必要な資金を長期かつ低利で借り入れすることができます。
さらに、目標地図に位置付けられた場合等は、貸付当初5年間実質無利子化されます。
資本性劣後ローン
日本政策金融公庫から、農業経営安定資金又は施設資金について、期限一括償還(5年1か月以上20年以内)で貸付けを受けられます。
資本性劣後ローンとは、長期間にわたり元本返済が不要であるなど融資条件の面で、負債ではなく、資本に準じたものとして取り扱われるローンを指します。
農業経営基盤強化準備金制度
農業経営基盤強化準備金制度は、簡単に言うと税制上の特例・優遇措置です。
農業者が、経営所得安定対策等の交付金を農業経営改善計画などに従い、農業経営基盤強化準備金として積み立てた場合、この積立額を個人は必要経費に、法人は損金に算入でき、さらに、農業経営改善計画などに従い、積み立てた準備金を取り崩したり、受領した交付金をそのまま用いて、農用地、農業用の建物・機械等を取得した場合、圧縮記帳できる税制上の特例です。
農業補助金検索なら農家web補助金データベースが便利
農家webでは、農業で利用できる補助金情報を「農家web補助金データベース」にまとめています。「認定農業者」などで検索することもできます。ぜひ、活用してください。