ここでは、サツマイモ(甘藷)に発生しやすい病害虫と、それを防除するためのおすすめ農薬、そしてサツマイモ(甘藷)栽培に使える除草剤もあわせて紹介します。
サツマイモに発生しやすい病害虫とおすすめ農薬
ネコブセンチュウ
ネコブセンチュウはサツマイモにとって、非常に厄介な害虫の一つです。
感染すると、根が肥大化しコブのようになるのが特徴です。コブの中には雌成虫が数匹はいっていて、雌成虫には体内または尾端にあるゼリー状の卵のうに300~500個の卵がはいっています。成熟すると孵化し、孵化した幼虫は土壌中へ移動し,細根の生長点付近から組織内へ食入します。
コブになった根は、根としての機能が低下,土壌の水分や肥料を吸収できなくなってきます。その結果,茎葉が成長しなくなり、着果数も減り、奇形果など収量,品質ともに著しく劣ってしまいます。
ネコブセンチュウは約80種知られており、代表的なものは以下の通りです。
- サツマイモネコブセンチュウ
- アレナリアネコブセンチュウ
- ジャワネコブセンチュウ
- キタネコブセンチュウ
- ナンヨウネコブセンチュウ
アブラナ科の葉菜類や果菜類(キュウリ、スイカ、メロン、ナス、トマト、ピーマン)、根菜類(だいこんやニンジン、かんしょ)、また果樹類と幅広く被害を及ぼします。
ネコブセンチュウの防除方法
ネコブセンチュウの防除には、下記のような、様々な方法があります。
- 土壌消毒(薬剤・太陽熱)を行う
- 殺線虫剤を使う
- センチュウを忌避する抵抗性植物を植える
- 連作を控える
- 有機資材、石灰窒素などの資材を活用する
土壌消毒の薬剤は、下記のものを利用することができます。
殺線虫剤
手軽に土壌に散布できる農薬もあります。ガス化することなく消毒できる薬剤です。ネマトリンパワー、ネマキック、ネマショット、ネマクリーンなどが有名です。ガス化しないことから家庭菜園などでも使用しやすい薬剤となっています。
それぞれの詳しい防除方法は、下記を参考にしてください。
コガネムシ類 幼虫
コガネムシの幼虫は、土中の根を食い荒らします。鉢植えの鉢に産卵された場合、その花、植物がスポッと簡単に抜けてしまうほど根は綺麗さっぱり食べられてしまいます。
また、コガネムシは細い根から太い根までも食べるため、農作物の土中の根、また根菜類を食害し、その被害は甚大です。特にサツマイモは好物で、サツマイモ自体が食べ荒らされてしまいます。サツマイモは植え付け時期がコガネムシの産卵時期の前のため、植え付け時に土中に薬剤を入れてコガネムシを防ぐことができません。このため、サツマイモ農家にとって、防除しにくい厄介な害虫です。また、ブドウやイチゴでの食害も後を絶ちません。
コガネムシの防除方法
コガネムシの防除方法は、薬剤による化学的防除の他に、下記のような防除方法があります。薬剤散布とうまく組み合わせて、薬剤使用量を減らしていくのが理想的です。
- 全面マルチを敷く
- フェロモントラップを活用する
- マリーゴールドなどのコンパニオンプランツを植える
- 周りを除草する
- 出来るだけ、未熟有機物を使用しない
コガネムシの防除に使える農薬
イモキバガ(イモコガ)
イモキバガ(イモコガ)は、サツマイモに発生しやすい害虫で、幼虫が葉っぱを食べてしまい、大量に発生すると、収穫にも影響が出てしまいます。
葉緑の一部が裏側に折り曲がっていたり、隣り合っている葉が綴られていて、表皮だけを残したような食害の跡(食害痕)が見られたら、イモキバガ(イモコガ)の発生を疑って良いでしょう。食害が見られた葉の裏に幼虫と糞を確認することができます。
葉が白く透けて見えるほどに食害されていたり、枯れて褐色になっている葉が目立つようになったら、多発していると思われます。薬剤で適切に防除しましょう。
イモキバガの防除に使える農薬
ハスモンヨトウ
ハスモンヨトウの幼虫は、雑食性で、かなり広範囲の作物を食害します。食害のレベルも非常に激しいもので、キャベツや白菜など菜類では、一晩で葉脈だけを残して、網の目になるほど食い荒らしてしまいます。
実は、ハスモンヨトウの対策については明治時代からも言い伝えられているほどで、害虫の中でも非常に歴史があると言えるでしょう。
ハスモンヨトウに使える農薬
この他、中白下翅(ナカジロシタバ)、コナジラミ(粉蝨、粉白)などの害虫がいます。
サツマイモに発生しやすい病害とおすすめ農薬
軟腐病
軟腐病の病原菌はカビではなく細菌の一種で、病原菌名は「Pectobacterium carotovorum」と命名されています。通常は結球してから発生します。発病すると、はじめは結球部の軟らかい葉に(水浸状の)小斑点ができ,これがやがて急速に広がっていきます。その後、全体が褐色(飴色)に軟化腐敗してどろどろになり,悪臭を発するようになります。
発育適温は30℃前後,50℃以上で10分経過すると死滅します。イネ科,マメ科以外のほとんどの植物に寄生します。大根(ダイコン)や白菜(ハクサイ)、キャベツ、カリフラワー、レタス、ショウガ、セルリー、パセリ、ネギ、タマネギ、ニンジン、ジャガイモ、トマト、ピーマン、チンゲンサイ、小松菜(コマツナ)、ニラ、カブ、ニンニク等が軟腐病にかかる野菜で有名です。
軟腐病の病原細菌は寄生される植物の根の周辺に生存します。降雨などによるはね返りで土とともに葉上に運ばれ,植物の傷口、害虫の食害痕などから侵入します。発育適温は30℃前後なので、高温期結球のものに多く発生が見られます。具体的には、降雨の多い夏,秋の年に発生が多くなる傾向があります。
サツマイモで軟腐病の防除に使えるおすすめ農薬
黒斑病
黒斑病に感染すると、地下や地際の茎に黒い病班が発生します。悪化すると茎が巻いてしまい、苗が黄色に変色して最悪枯れてしまいます。
サツマイモで、黒斑病の防除に使えるおすすめ農薬
つる割病
サツマイモのつる割病は、フザリウム菌によってひき起こされます。つる割病に疾患すると、写真のように、つるの地際部が縦に裂けて茎の繊維部分が露出した状態になります。
サツマイモで、つる割病の防除に使えるおすすめ農薬
種イモの消毒
サツマイモの病害の予防には、何よりも病気に罹っていない無病の種いもを使う、また種いもを殺菌剤で消毒することが非常に大事です。下記のような殺菌剤を利用して、種芋を浸漬しましょう。
フロンサイドSC、フロンサイド水和剤
畑作、果樹、茶など多彩な作物に使えるフロアブル殺菌剤です。浸透移行性はほとんどない一方、残効性と耐雨性に優れます。体質によってはかぶれが出やすいことが知られていますので、注意が必要です。
さつまいもにおすすめの除草剤
ゴーゴーサン乳剤
有効成分 ペンディメタリン 30.0%(ゴーゴーサン乳剤) HRACコード3
ゴーゴーサン乳剤はBASF社が開発したジニトロアニリン系の除草成分ペンディメタリンを有効成分とする、主に畑作に使う除草剤で、さつまいも栽培に広く使われている土壌処理剤です。一年生イネ科雑草、広葉雑草の両方の効果があり、45〜60日間と長期間効果が持続します。挿苗10日後まで(雑草発生前)に畦間土壌散布して使います。さつまいもにかかると薬害が生じる恐れがあるため、作物にかからないように注意が必要です。
レンザー
有効成分 レナシル80.0% HRACコード5
レンザーは、かんしょ(さつまいも)に選択制のある土壌処理剤です。畑作の一年生イネ科雑草、広葉雑草に効果があり、選択制なのでさつまいもに薬液がかかっても、安全なため全面散布することも可能です。さつまいもには、植付後但し、収穫30日前まで使うことができます。
残効性が長く、後作物に対して影響がある可能性があります。特にいね科、まめ科、うり科、なす科及びあぶらな科作物については、薬剤使用後6カ月は栽培ができないので注意が必要です。
ワンクロスWG
有効成分 フルアジホップP7.0%、リニュロン 30.0% HRACコード 1,5
ワンクロスWGの有効成分は、特に広葉雑草に対して高い除草効果を持つリニュロンと、イネ科雑草に強いフルジアップPが2つの配合された葉茎兼土壌処理剤です。生育期(雑草発生揃期)但し、収穫60日前まで使うことができます。
雑草が生える前の土壌処理剤としても使えますが、雑草が生えそろう時期(草丈10㎝)までに、茎葉処理剤として使うと、雑草を枯らし、その後雑草の発生も抑える効果もあります。作物にかかると薬害が生じる可能性があるので、薬液がかからないように注意しましょう。
グルホシネート系除草剤
有効成分にグルホシネートを含む除草剤は、非選択性の接触型の茎葉処理剤です。さつまいもには、雑草生育期の植えつけ前又は植え付け後の畦間処理で収穫14日前まで使うことができます。
イネ科、広葉、一年生、多年生を問わず、ほとんどの雑草に効果を発揮します。1~3日で効果が発現し、5 ~20 日で完全な効果がでる強力除草剤ですが、吸収移行型ではないため、地下部 、つまり根までは枯死しません。非選択のため、畑地、圃場での散布の際に、農作物にかからないよう注意が必要になります。代表的な製品として、バスタ液剤とザクサ液剤があります。
商品名 | バスタ液剤 | ザクサ液剤 |
---|---|---|
概要 | ||
販売元 | BASFジャパン(株) | 明治製菓ファルマ(株) |
有効成分 | グルホシネート | グルホシネートPナトリウム塩 |
農耕地使用 | ○ | ○ |
プリグロックスL
プリグロックスLは、速効性を持つ、パラコート系の除草剤です。有効成分が光により変化して草を速効的に枯らします。葉や茎をすぐに枯らすので、1年草にぴったりです。光があれば温度の影響をほとんど受けず、展着剤添加で効果がアップします。
雑草発生期の植付前か、植え付け後の畦間処理で収穫30日前まで使うことができます。農薬上の毒物にあたりますので、取扱には十分な注意が必要です。劇物を取り扱っている農薬販売店、JAなどで購入できます。
この他、サツマイモに適用がある農薬
この他、さつまいもに適用がある農薬は、「農家web 農薬検索サービス」からも探せます。作物名は、農薬では「かんしょ」で探してください。
グリホサート系の除草剤は、基本的には植え付け前に使えますが、植え付け後に使える除草剤はあまりありません。ラウンドアップマックスロードは、畝間除草としても使えます。ツルやマルチなどに飛散すると、作物に影響があるため散布時には専用のノズルを使って飛散しないように注意することが大切です。
その他、サツマイモに関する記事
その他、サツマイモ(甘薯、かんしょ)に関する記事は栽培方法含め、たくさんあります。塊根植物であるサツマイモ。下記をどうぞ参考にしてみてください。
栽培に役立つ 農家webのサービス
農家web 農薬検索データベース
作物に適用がある農薬を一覧で探したいときには、「農家web農薬検索データベース」が便利です。
検索機能は、適用作物・適用病害虫に合致する農薬を探す「農薬検索」、「除草剤検索」をはじめ、さまざまなキーワードで検索できる「クイック検索」、農薬・除草剤の製品名で検索できる「製品検索」、農薬・除草剤に含まれる成分名で検索できる「成分検索」の4つで、農薬・除草剤の作用性を分類したRACコードや特性、 効果を発揮するためのポイントなど実際の使用に役立つ情報も知ることができます。
農家webかんたん農薬希釈計算アプリ
除草剤、殺虫剤を代表する農薬の液剤は、かなりの割合が原液で、水で希釈して散布するのが一般的です。希釈倍率に合わせて水と混ぜるのですが、希釈倍率が500倍、1000倍と大きく、g(グラム)やL(リットル)などが入り混じっていて、計算が難解だと感じる方も多いのではないでしょうか。
「農家webかんたん農薬希釈計算アプリ」は、使用する農薬の希釈倍数を入力し、散布する面積などから薬量・液量を算出します。面積の単位や薬剤の単位も簡単に行えます。
ラベルを見て希釈倍率を入力するだけでなく、農薬検索データベースと連携しているので、使いたい製品・適用ラベルを選択することで、希釈倍数を自動入力することができます。
農家web かんたん栽培記録
作物を栽培するときに、植え付けから収穫までの栽培記録をつけることは、作物の安全性を守る他にも、ノウハウを蓄積し、よりよい作物を栽培するためにも大切な作業です。
農家webのかんたん栽培記録はこれひとつで、無料で作物ごとに栽培記録できるだけでなく、その作物に発生しやすい病害虫やおすすめ農薬、また農薬に頼らない防除方法も、簡単にカレンダーから確認することができます。会員登録すれば、LINEに予察情報も届きます。パソコン等が苦手でも、タップで簡単に作業日誌をつけられます。