そうか病は柑橘(かんきつ)類やじゃがいもでよく発生する病気です。ここではジャガイモ(馬鈴薯)のそうか病とは何なのか、またそうか病を防ぐために使える農薬やその他の方法もあわせて解説していきます。
そうか病はどんな病気?
そうか病とは?
そうか病(瘡痂病、瘡加病)は、柑橘(かんきつ)類やじゃがいも(馬鈴薯)でよく発生する、「かさぶた」や「いぼ」のような病斑が出る病気です。原因は糸状菌によりますが、柑橘とじゃがいもでは実は原因となる菌は異なります。(ジャガイモは「ストレプトマイセス属菌」という放線菌(細菌の一種)、柑橘系はElsinoë fawcettii Bitancourt et Jenkins(糸状菌 子のう菌類))
ジャガイモの場合は、発病すると淡褐色〜赤褐色の円形の斑点が現れ、だんだん拡大していきます。そして表皮が裂けていぼ状の隆起した病斑になり、病斑部はコルク化し、かさぶた状になります。
このようになってしまったジャガイモは、その見た目から著しく商品価値が下がってしまいます。多発生してしまうと、良品の収量が激減し、大きな打撃を被ってしまいます。
柑橘類のそうか病については、下記を参照ください。
そうか病が発生する原因とは?
ジャガイモのそうか病の発生条件は、主に以下が原因です。
- 25〜35℃の適温状態
- 土壌が乾燥した砂質
- 種いもが病気に罹っている
- 土壌のPHが高く、中〜高アルカリ性である
- 堆肥が完熟していない(未熟堆肥)
- 基盤整備・深耕(天地返しした圃場など)
- 連作などによる土壌の弱体化
つまり、種芋が健全ではない、また土壌の地力が連作等で弱くなっている、また耕盤が固く、根が張りにくい圃場では、そうか病は発生しやすいと言えるでしょう。
ジャガイモのそうか病、防除のポイント
そうか病を防ぐためには、発生条件を少なくすることが重要です。薬剤による防除もありますが、適切な種芋を使うことや、土壌の地力を上げたり、PHを適正に保つことなどIPMを心がけて総合的に防除計画を立てるのがベストです。
ジャガイモのそうか病に効果がある農薬
土壌消毒
クロルピクリン
クロルピクリンは、臭化メチル以外の土壌消毒方法として利用される土壌くん蒸剤です。クロルピクリンのガスは空気よりはるかに重く、土壌の下層まで拡散し、土壌中の微生物や雑草の種子などに非選択的に効果を及ぼします。
クロルピクリン錠剤は刺激臭による作業の困難性を改善するため,有効成分を錠剤化して水溶性のフィルムに包んだものです。このためハウス内でも使用できます。また、周辺へのガス放出の心配がないため、住宅近接地でも使用できます。
使い方は30×30cm毎(15cmの深さ)1錠処理が基本になります。また、ゴボウなどの深根性作物や病原菌が深層まで分布するような病害の場合には,より深い位置に処理することで,高い防除効果が得られます。
バスアミド微粒剤
バスアミド微粒剤は、刺激臭が少なく使いやすい微粒状の刺激のない製剤です。混和後に緩やかにガス化するので、急激に刺激性のガスにさらされることなく比較的安全に作業できます。 混和後に生成される活性成分である **メチルイソチオシアネート(MITC)** が土壌中の病原菌や雑草種子を不活性化し、連作障害の原因に対処します。 バスアミドの散布には、「バスサンバー」や「バスこまき」というバスアミド専用散布機を使用すると効率的に散布ができます。 性状は、類白色微粒になります。毒性は、劇物となりますので取扱に注意しましょう。
キルパー
土壌病害虫やセンチュウ、雑草に有効で、すでに多くの野菜類、イモ類、花き類・観葉植物などに登録があり、さらにトマト・ミニトマトのコナジラミ類蔓延防止のために適用拡大されたカーバムナトリウム塩30%を有効成分とした総合土壌消毒剤です。 全体をビニール等で被覆し、かん水チューブ(点滴チューブまたは水平型散水チューブ)で土壌表面に散布、またはかん水します。 この処理により、被覆したビニール内でタバココナジラミの成幼虫を完全に殺すことができます。
そのほか、ネビジン、ガスタード微粒剤なども土壌混和に使えます。
種イモの消毒
そうか病に罹っていない無病の種いもを使う、また種いもを殺菌剤で消毒することは、感染源を減らすために、非常に大切な作業です。下記のような殺菌剤を利用して、種芋を浸漬しましょう。
ストレプトマイシン液剤
ストレプトマイシンは、軟腐病をはじめその他、疫病、褐斑病、褐点病、褐紋病、黒星病、黒斑病、蛇眼病、炭そ病、つる枯病、つる割病、葉枯病、斑点病、斑点細菌病、べと病、輪紋病、褐色斑点病、せん孔細菌病など幅広い殺菌に効果があり、種いも消毒に適用があります。ストマイ、アグレプト、アグリマイシン、アタッキン、バクテサイドなどがあります。
セイビアーフロアブル20
各作物の灰色かび病・菌核病に対し、発生前からの散布で高い防除効果(予防効果)を示します。
フロンサイドSC、フロンサイド水和剤
畑作、果樹、茶など多彩な作物に使えるフロアブル殺菌剤です。浸透移行性はほとんどない一方、残効性と耐雨性に優れます。体質によってはかぶれが出やすいことが知られていますので、注意が必要です。
この他、スキャブロックSCも有効です。
有効な防除方法
前述の通り、そうか病を防除するためには、薬剤以外の様々な防除方法を総合的に行うことが重要です。以下の方法を防除計画に取り入れてみてください。
地力を高める
完熟堆肥の投入、深耕
土壌の有機物が未熟ですと、そうか病多発の原因になってしまいます。完熟堆肥を投入することで堆肥の発酵を促せます。ある農家の方は、すき込む際に、毎年30cm以上土を起こすようにすることで、そうか病の発生を減少させた方もいます。
クリノゼオライトの利用
ゼオライトはアンモニア態窒素を吸着することで、長く肥効が続かせることができ、土壌改良材としてよく使用されます。
クリノゼオライトはアルミナ性(リン酸吸収係数)に対する高い抑制効果をもっているため、リン酸肥効を向上させ、そうか病の発生を抑える効果があると言われています。
ソルゴーの利用・緑肥の利用
ソルゴーなどを栽培して土壌にすき込むことで(緑肥)、土壌のクリーニングを行い、地力の改善を図ることは有効です。
輪作体系の確立
連作により地力が低下し、そうか病は蔓延しやすくなるため、それを避けるために輪作を行うことは大変効果的です。
代表的な輪作体系としては、
主に、豆(マメ)科の植物や麦などをジャガイモの前作に入れて、輪作体系を作っている方が多く見られます。
土壌pHを下げる
一概に言えませんが、土壌pHを低く調整することはそうか病の多発を防除するのに有効とされています。輪作、緑肥を行うことで調整効果もある他、土壌調整剤を利用して酸度を調節したり、アルカリ資材の投入量を制限したりする方法があります。
耐病性がある品種を使う
近年、品種の改良により、そうか病にかかりにくい品種(抵抗製品種)も多くあります。これらを利用するのも、おすすめです。
抵抗性品種には、スタークイーン、ユキラシャ、春あかり、スノーマーチ、北育7号などがあります。
粉状そうか病について
また、そうか病と似た病気に、粉状そうか病があります。塊茎に斑点ができ、その円形の斑点が大きくなり、表皮が破れていぼ状の病班になるところはそうか病と同じです。見分け方は、根がこぶ状のゴールを作ること、また病班を削り取ると、粉状の胞子であることが確認できることから見分けることができます。
多雨で温度が20℃未満のときに発生しやすく、保水力が強い土壌でよく見られます。
防除方法は、そうか病と同じく、種いもの消毒、地力の改善、輪作です。また、そうか病と粉状そうか病は農薬の適用表で分かれているので、そうか病で使用できる農薬が常に粉状そうか病で使えるとは限りません。参考に粉状そうか病で使える農薬を下記に紹介します。
まとめ
そうか病は収穫時に多発生していると、収益に大打撃を与える厄介な病気です。
ここで紹介した農薬は、JA販売店やホームセンターのガーデニング・資材、庭木コーナーにあるものもあります。また草花、観葉植物などの家庭園芸用の農薬として、フマキラーが販売するカダンK(有効成分はマシン油、アレスリン(ピレスロイド系))、住友化学園芸のボルン(有効成分はマシン油)、カイガラムシエアゾールなどもあります。手に取ってみて、確認してみてください。
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