ブドウは生命力も強く、温度変化にも強いので日本全国で育てることができます。ここでは苗木から育てる、ブドウのプランター栽培について、植え付けから収穫までの育て方の基本から、年間の栽培管理までわかりやすく説明します。
ブドウのプランター栽培 苗の植え付け方法
それではここからは、苗の植えつけ方について説明してきます。
植え付け時期
植え付けや植え替えは、ブドウの休眠期に行います。厳冬期は避け11月中旬~12月上旬または2月下旬~3月が適期です。
準備するもの
- ブドウの苗木
- 深型プランター(直径30cm、深さ30cm以上のもの)
- 果樹の培養土
- 鉢底石
- 支柱・紐
- ハサミ
苗木の選び方
ホームセンターなどでは、植え付け時期になるとブドウの苗木が販売されます。接ぎ木苗と挿し木苗があります。接ぎ木はブドウ栽培の大敵である「フィロキセラ」という根に寄生する害虫に抵抗性のある苗木に接ぎ木しています。露地栽培などでは接ぎ木がおすすめですが新しい用土を使うコンテナ栽培ではどちらでもかまいません。
ブドウの苗木は、落葉し休眠期を迎えてから掘り取るのが一般的です。早めに掘り出すと枝が青くてやわらかくなります。このような苗木は植え付け後の生育が劣りやすいので、選ばないようにしましょう。
- 節間がつまっているもの
- 枝の断面が扁平ではなく円形のもの
夏頃に見かける実つき苗は、葉が良く茂り濃緑色のものを選びましょう。植え替えはすぐ行わず11月頃までそのまま育ててから植え替えします。
容器と土
ブドウは、根が30cm~50cmほど伸びるので、できれば深めのプランターや鉢を使いましょう。縦に伸ばす場合は直径30cm、横につるを伸ばすのであれば横幅60cmほどのプランターであれば3年ほどはそのまま育てることができます。プラスチック製のプランターより、テコラッタや素焼き鉢のほうが通気性・排水性がよいのでおすすめです。
やせ地でも育つぶどうは、用土は特に選びません。水はけと通気性のよい土がおすすめです。市販の果樹用の土は土壌Ph6.5ぐらいのものが多いので、ぶどうに使う場合はマグネシウム(苦土)を少し混ぜ込むとよいでしょう。また自分で配合する場合は腐葉土7・赤玉土3などがよいでしょう。
植え付けの手順
- 手順1植え付け準備
植え付けの前日に、バケツに水をはり、その中に苗ごと根の部分を一晩水に浸けて、水を吸わせます。
直射日光の当たらない場所に置いておきます。 - 手順2苗木の切り詰め
翌日、植え付け直前に水から苗を取り出し、ポットから苗木を取り出し土を落とします。根を基部から3分の2ほど残してハサミで切り詰めます。
- 手順3植え付け
容器に、鉢底石を3㎝ほど入れその上に培養土を、容器の3分の1程度の高さまで入れます。
苗木の根を放射線状に広げ、中心部に置き培養土を入れ植えつけます。指でしっかり根と用土が密着するように押し込みます。 - 手順4枝の切り戻し
苗木の太さが1cm程度のものは30cm~50cm、1cm以下の場合は20cmの長さに、枝を切り戻します。(接ぎ木の場合は接ぎ木からの長さ)
- 手順5支柱を立てる
苗木の横に支柱をさし、地際と先端を紐でかるく結んで固定します。
植え付けが終わったら、鉢底から水がでるまでしっかり水やりをします。
ブドウのプランター栽培 年間スケジュール
- 1月~2月休眠期
寒さが厳しいこの時期は、ブドウの木は休眠しています。水やりは1週間に一度程度行います。
- 3月
- 4月発芽時期
暖かくなり、萌芽や新しい枝が成長してくる時期です。1節に2芽以上伸びている場合は芽をかきとる芽かきをしましょう。また伸びた枝は誘引しておきます。
- 5月開花期
開花の時期です。開花前に摘心・適房をしておきます。タネなし果実を作るジベレリン処理もこの時期に行います。
- 6月~9月
- 10月養分蓄積期
収穫が終わったこの時期は、根や枝、幹に養分を蓄える時期です。
水やりは欠かさず行いましょう。 - 11月~12月休眠期
葉が黄色になり落葉します。地温が12℃以下になると根も休眠します。
水やりの回数を控えます。
休眠期には剪定を行い、翌期に備えます。新しい苗木を植えつけるのも休眠期に行います。
ブドウの鉢植え・プランター栽培の育て方
ブドウの基礎知識
ぶどうは、つる性の落葉低木です。温帯の農作物ですが、マイナス10℃ぐらいまで耐えることもできるため寒冷地以外では庭植えも可能です。庭植えのほうが収穫は多くできますが、鉢植えやプランターでも、支柱をしっかり立てて育てれば果実を収穫することができます。
やせ地でも育ち、ほとんどの品種が自家受粉をするので、人工授粉の必要性もありません。果樹は実をつけるまで通常何年もかかりますが、ブドウは植え付けの翌年から果実をつけ、3年目以降から本格的な収穫が楽しめます。
学名 | Vitis vinifera、V.labrusca |
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属名 | ブドウ科 ブドウ属 |
原産地 | ヨーロッパ、北アメリカ |
樹高・草丈 | 3m以上 |
耐寒性等 | 耐寒性 普通 耐暑性 強い |
花言葉 | 思いやり・好意・信頼・陶酔・親切・慈善など |
ブドウの品種について
ぶどうは、大きくわけて「欧州種」「米国種」「欧米雑種」の3つに分けられます。耐寒性は普通で耐暑性も強いのですが、乾燥した地域に育つ欧州種は特に多湿が苦手で日本で育てるのは難しいといわれています。米国種は病気につよいのですが、果実の味は欧州種に劣るといわれ、その両方の長所をもつ「欧米雑種」が日本がではよく栽培されています。
日本でおなじみの巨峰やピオーネ、シャインマスカットはすべて「欧米雑種」です。日本では近年栽培農家では、ぶどうの大粒化や収量の多い品種の栽培がすすんでいます。大粒品種は摘粒などの手間がかかります。家庭で育てる場合には、粒の大きさにこだわらず、糖度が高く栽培が容易な「デラウェア」「キャンベル・アーリー」「バッファロー」「ネヘロスコール」などもおすすめです。
栽培環境・水やり
ブドウは、日当たりのよい風通しの良い場所で栽培しましょう。ブドウは暑さにも強く、寒さも品種によりますが、マイナス10℃ぐらいまでは耐えます。しかし多湿は苦手で病気が発生しやすくなるので注意が必要です。
水やりは、鉢の表面が乾いたら鉢底から水が出るまでたっぷり与えます。水やりの回数の目安は、春と秋は朝に1回、夏は朝と夕方の2回、冬は1週間に1度程度。ブドウの葉茎は水によわいので、葉っぱにかからないように根元に向かって水やりをします。特に果実が膨らみ始める6月中旬以降に水切れをおこすと、実が大きくならないことがあります。
肥料
ブドウは肥料を与えすぎると、枝・葉・根などの果実は関係のない樹勢が良くなります。植物にとって果実をつくることは、タネを作って子孫を残すことです。木が弱ると子孫を残そうと植物はタネを作ることに力を注ぎます。よってぶどうは樹勢を抑えることでおいしい果実を実らせることができます。
鉢植えは、植え替えのときに元肥として、緩効性肥料を与え、その後は生長期の6月~9月に木の様子をみて元気がないようなら化成肥料を追肥をします。また収穫が終わった木には、お礼肥として追肥をしましょう。鉢植えの場合は、速効性の化成肥料を株元にばらまいて施肥します。
鉢植えの追肥には、化成肥料がおすすめ。化成肥料は早く効く速効性とゆっくり効く両方の成分を持っているものが多いです。有機肥料は、臭いや虫などが気になるためベランダなどで鉢植えで育てる場合は、有機入りの化成肥料もおすすめです。元肥にも追肥にも使える「マイガーデンベジフル」やハイポネックスジャパンが製造する「錠剤肥料シリーズ かんきつ・果樹用」などがよいでしょう。
肥料の与え方や時期については、詳しい記事がありますのでそちらも参考にしてください。
支柱立て
ブドウはつる性植物なので、支柱を立ててツルを誘引して育てます。地植えの場合は棚を設置します。支柱は鉢であればあんどん式やオベリスク式などがよいでしょう。プランターであれば垣根仕立てで、横に平行に伸ばしたり、緑のカーテンを作るように上の方向に伸ばして仕立てることもできます。
剪定・整枝
毎年12月~3月には、よい果実と樹勢の調整・病気の予防のために剪定・整枝をしましょう。また剪定は、枝の途中で切って枝を切る切り戻し剪定で行います。切る枝の長さにより、「短梢剪定」と「長梢剪定」に分かれます
短梢剪定
鉢植えなど、枝を大きくさせたくないときにおすすめ。前年に実をつけた枝(結果枝)を、基部から1~2節残してすべて枝をきります。乾燥や寒さで枝が傷みやすいので0℃以下の日に行うのはやめましょう。
長梢剪定
前年に実をつけた枝(結果枝)を間引きして、残した枝を長めに残して切る剪定方法です。大半の枝は、基部から枝を切り取ります。残した枝を基部から7節~8節残してきります。4~6節ぐらい残す方法を中梢剪定といいます。残す節が長いほど、基部から切り取る枝を多くきります。
芽かき
4月になると新しい芽がでてきます。一節から2つ以上の芽がでてきたら一つを残して、あとはすべて落とす芽かきをしましょう。葉が6枚以上になる前に行うと、枝の消費を抑えることができます。
風通しをよくし、光があたるようにすることで大きな実がつき、病害虫の予防にもなります。
ジベレリン処理
ブドウは家でも「ジベレリン処理」をすれば種なしのぶどうをつくることはできます。でも実は種があるまま育てた方が果実は、甘く香りもよいとされています。食べやすさでは種なしに軍配があがりますが、両方そだてて食べ比べてみるのもよいかもしれません。
品種によって満開前に1回、満開後に2回目を処理する品種と、満開後に1度処理する品種があります。花房整形が終わった後行います。コップやペットボトルを切ったものにジベレリン液にいれ、花房を浸してすぐに引き上げます。ジベレリン液は、ジベレリン粉末や錠剤を水に溶かしたものです。液剤はぶどうには使えませんので注意しましょう。
摘房・花房整形
大きくて糖度の高い果実をとるためには、必ず摘房をしましょう。花が咲く前の5月に行います。一つの枝につける実は、鉢植えの場合は1つ。庭植えの場合は、大粒品種は1つ。中型~小型の品種は2つまででに切り詰めます。
枝のつけ根の花房が大きいものを残して、あとはすべての花房を切り落とします。また残した花房も、花房が2つついている場合は、大きい一つを残して切り取ります。また花房の下の肩の部分も大型種は4段、小型種は2段ほど切り取ります。
収穫時期
ぶどうは、追熟しません。追熟とは果物を収穫した後に一定期間置くと甘くなる現象のこと。完熟する前に収穫してしまうと、それ以上完熟することはありません。
農家などでは糖度計を使って調べますが、家庭では味見をしてみましょう。ぶどうは上部の方が下部より甘くなるのが早いので、下部の部分を一粒食べて甘いようでしたら、全体が甘くなっているでしょう。
病害虫
ぶどうの病気としては、うどんこ病、べと病、灰色かび病、晩腐病、黒とう病、褐斑病などがあります。雨で伝染する病気が多いので、予防としては果房に袋がけをしたり、落ち葉や枯れた枝などを取り除いてあげることも重要です。薬剤も効果的です。病気が発生したら、すぐに取り除きましょう。
害虫は、コウモリガ、ブドウトラカミキリ、ブドウスカシバ、フィロキセラ、コガネムシなどが発生します。野外であればある程、発生し易いといえます。これらの虫が発生した時は、粘着テープで除去する、また殺虫剤などの薬剤で駆除、防虫する方法があります。どちらにせよ、早く対応するに越したことはないので、発見した時はすぐに駆除し、防除を心掛けるようにしましょう。
まとめ
ぶどうは、成長力も旺盛で暑さ、寒さにも強いので日本全国で育てることができます。種類も豊富でプランターや鉢でも1株で実がなるので、庭やベランダなどでも栽培することができます。
ぜひ、好きな品種のブドウをプランターで育ててみてください。
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