トマトを代表するナス科果菜類に発生するトマトサビダニ。葉、茎の褐変、果実の硬化を引き起こしたりと、トマト、ナスやピーマンに被害をもたらします。ここではトマトサビダニとはどういう虫なのか、その特性とトマトサビダニを駆除、防除するためのおすすめ農薬について解説します。
トマトサビダニに効く農薬
トマトサビダニは比較的薬剤による防除が効きやすい害虫です。
同一系統の薬剤を連用すると抵抗性を持つダニの発生を促すので、以下の代表的な農薬の種類と種類別の対応表を参考に、ローテーション活用など、IPM(総合的害虫管理)をおすすめします。
トマトサビダニに効く代表的な農薬
アファーム乳剤
アファーム乳剤はマクロイド系の新しいタイプの殺虫剤で、適用作物も60種類以上あり幅広く使え、速効性にも優れた殺虫剤です。 また有効成分のエマメクチン安息香酸塩は、自然由来のため安全性の高い薬剤です。
モレスタン水和剤
キノキサリン系の薬剤で、殺菌剤としても殺虫剤としても機能します。殺虫剤としてはコナジラミ類やハダニ類に有効だけでなく、うどんこ病にも効果がある薬剤です。
コロマイト乳剤
コロマイト水和剤は微生物由来の新殺ダニ剤です。低濃度で速効的に効き、既存剤に対する抵抗性のあるダニにも有効です。また、「特別栽培農産物に係る表示ガイドライン」において、化学合成農薬にはカウントされません。
メタジアミド系 グレーシア
グレーシア乳剤は、日産化学(株)が発明した非常に新しい殺虫剤です。日産化学(株)が開発した新規化合物である、イソオキサゾリン系の有効成分「フルキサメタミド」が害虫の神経に作用して速攻的な殺虫作用を示します。
コナガなどのチョウ目や、アザミウマ目、ハエ目、ダニ目等の幅広い作物害虫に高い効果を発揮します。
そもそも、トマトサビダニはどういう害虫?
トマトサビダニとは?
トマトサビダニはダニの仲間で、クモの仲間、フシダニ科に属します。体長は0.15〜0.18mmと非常に小さく、肉眼で把握するのは困難なレベルです。
トマトサビダニは、写真のように、成虫はクサビ形、色は淡黄色、黄褐色です。産卵期間は12〜32日、合計約50個の卵を産むとされています。卵〜幼虫〜成虫の成長サイクルが早く、大量発生しやすいのが特徴です。
温暖かつ乾燥した環境を好み、雨が苦手なため、ハウスはトマトサビダニが繁殖する格好の場所と言えます。サビダニは一旦発生密度が上がってしまうと完全に防除することが困難です。このため、いかに早く発見するかが大事になります。
早期発見のポイント
トマトサビダニの発生の早期発見のポイントとして、ハウスの出入り口や暖房機付近により多く発生しやすい、というポイントがあります。
発生した主茎は褐変し、写真のようなサビ色になります。サビ色を目印に発生株を確認し、薬剤でスポット散布することが重要です。
どうしてトマトサビダニは害虫なのか?
トマトサビダニに寄生された植物は、葉の奇形や芯止まり、果実の硬化などの多くの被害を引き起こします。多発すると、葉が枯れ上がってしまい、果実も寄生されると下記のように、緑褐色になってひび割れてしまいます。
1箇所に大量発生するとダニの移動性が高まり、あっという間に周りに被害が広がっていきます。このため、早期発見、早期防除が非常に大事です。
トマトサビダニに効く農薬一覧表
RACコード別に分類した、トマトサビダニに効く代表的な農薬は以下のようになります。
※農薬を使用する際にはラベルをよく読み、適用作物、用法・用量を守ってお使いください。
殺虫剤はアザミウマ類、カイガラムシ類やハダニ類、アブラムシ類、ヨトウムシ、コガネムシ、ハスモンヨトウ、ネキリムシ、ヨコバイ、ハモグリバエ、ハマキムシ、イラガ、カメムシ、ウンカ、メイガ、ハムシ、ケムシ、テントウムシダマシ、ナメクジ、シンクイムシ、オオタバコガなど幅広い殺虫スペクトラムを持つものも多いので、うまく活用しましょう。
上記の農薬は原液を水で溶かして薄めて使用する液剤や水溶性の粉剤、粒状、粒タイプです。適切な量、希釈方法等については下記をご参考ください。
生物農薬(生物的防除)
生物農薬とは、「農薬の目的に使われる生物を使い、病害を防除する農薬」のことを言います。
その生物とは主に、昆虫、線虫、微生物で、害虫(例えばアブラムシやアザミウマ、コナジラミ、ハダニなど)を捕食する、天敵に当たる昆虫や、昆虫に寄生するもの、センチュウ、また病原菌にあたる生物になります。
天敵導入による防除は、名前でこそ「生物農薬」と呼ばれますが、化学農薬ではなく、有機JASでも勿論使用可能です。
この他、スワルスキーカブリダニを有効成分とする商品でスワマイドというものもあります。
生物農薬は、在来種以外の天敵昆虫を使用することが多く、本来の生態系に影響を与える恐れがある為、閉鎖系の圃場以外では使用、散布し難いものがあるなどの注意点もあります。
その他、生物農薬については下記に詳しく、具体的な製品も紹介していますので、ご参考ください。
農薬散布時のポイント
散布効果を上げるために、スポット散布、葉裏にしっかり付着させる
ダニははじめ局所的に発生するので、早期発見してスポット散布ができると無駄な散布を減らすことができます。また、葉裏に生息するため、葉裏に丁寧に薬剤が付着するように散布することが大事です。
農薬の必要以上の散布は、ダニの土着天敵であるハナカメムシなども殺してしまい、かえってダニの増殖を促してしまうので、注意しましょう。
マシン油乳剤を有効活用しよう
ダニは生長サイクルが早く、抵抗性を持ちやすい害虫です。このため、薬害抵抗性発達の恐れがないマシン油乳剤は非常に有効なダニ対策の農薬と言えます。
有効な薬剤のローテーション散布を前提として、積極的なマシン油乳剤の使用をおすすめします。
耕種的防除
一にも二にも早期発見
ダニは発見から増殖までが非常に短いので、何よりも早期発見し、早め早めに防除することが大事です。しかし、小さいため、高齢化してくると見えていたはずのダニがだんだん見えにくくなってきます。
このため、葉裏をルーペや虫メガネで見る、面倒な場合は、販売されているダニ捕獲器を利用するのも良いでしょう。天敵が少なく、ダニしかいない場合は薬剤散布のタイミングです。このように定期的にモニタリングして収穫時にダメージを受けないよう早期防除に努めることが重要です。
周りの雑草をしっかり除草する
どの害虫対策にも言えることですが、圃場の周りに生長した雑草、草花があると、ダニの発生源となり、大量発生を促進する危険性があります。しっかり除草するようにしましょう。
除草については、以下のコンテンツが参考になります。
まとめ
トマトサビダニはチャノホコリダニといった他のダニと同様、大量発生しやすく、防除が遅れると瞬く間に農園に多発します。
早期発見する仕組みを取り入れ、抵抗性を高めないために、マシン油を取り入れ、化学的農薬をローテーション散布、そして生物農薬を有効活用したIPM(総合的害虫管理)が重要です。本コンテンツが防除の一助となれば幸いです。
ここで紹介した農薬は、JA販売店やホームセンターのガーデニング・資材、庭木コーナーにあるものもあります。ほ場で早期発見し、適切な薬剤や防除方法でしっかり発生を予防、退治できると、農薬散布と言った農作業の回数を減らすことができます。
農家webでは、殺虫剤以外にも、うどんこ病、灰色かび病、根こぶ病、黒星病、半身萎凋病どを防ぐ殺菌剤、展着剤のコンテンツもありますよ!
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農家webかんたん農薬希釈計算アプリ
除草剤、殺虫剤を代表する農薬の液剤は、かなりの割合が原液で、水で希釈して散布するのが一般的です。希釈倍率に合わせて水と混ぜるのですが、希釈倍率が500倍、1000倍と大きく、g(グラム)やL(リットル)などが入り混じっていて、計算が難解だと感じる方も多いのではないでしょうか。
「農家webかんたん農薬希釈計算アプリ」は、使用する農薬の希釈倍数を入力し、散布する面積などから薬量・液量を算出します。面積の単位や薬剤の単位も簡単に行えます。
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