トラディスカンチアは、生育旺盛で、さし木で簡単にふやすことができ、半日陰でも育つことから水耕栽培でも育てやすい植物です。この記事では、剪定したトラディスカンチアの茎をつかった水挿しや、株分けした苗を使った水耕栽培やハイドロカルチャ―への植え替え、育て方をわかりやすく説明します。
トラディスカンチアの水耕栽培の始め方・時期
水栽培を始めるには植物の生育期がおすすめです。植え替え時期と同じ、4月~9月までが適期です。暖かい時期の方が容易なので、できればの5月から7月頃の生育初期に行うのがおすすめ。
水耕栽培は、さし木と株分けから始められますがおすすめは、さし木です。トラディスカンチアは生育が旺盛なので、生長すると茎が長く伸びます。剪定した茎をつかって簡単に水挿しでふやすことができます。大きくなった株を分けても増やせますが、土で育った根は水耕栽培にうまく適応できないこともあります。
トラディスカンチアの水挿しの手順
まずはおすすめの剪定した茎をつかった、水挿しの方法を説明します。
挿し穂の準備
さし木に使う茎を、挿し穂と呼びます。まずは挿し穂の準備をしましょう。
- 茎の先端から7㎝ほど、もしくは節が4節~5節残してカットします。
- 先端の葉を2~3枚残し、下葉は取り除きます。上の葉が大きいときには、葉を半にカットします。
- 切り口は、スパッとカッターなどで斜めに切ります。
準備するもの
- 剪定したさし穂
- 透明な器(空き瓶やグラス・ペットボトルなどでもOK。ある程度の高さがあってモンステラを支えられるもの)
- メネデール(発根促進剤なくても可・気根がない場合などは発根の成功率が上がります)
手順
- 容器に水(水道水)を入れます。メネデールを使う場合は100倍に希釈した水を使います。
- トラディスカンチアの挿し穂を入れます。
- 発芽するまで2~3日に1回に水は変えましょう。
- 2週間程度は明るい日陰で室内で管理しましょう。1~2週間程度で新しい根が生えてきます。
- 根が十分に発根したら、ハイドロカルチャーや水栽培(水耕栽培)で育てましょう。
発根促進剤について
生育旺盛のトラディスカンチアは、生育期であれば水だけでも発根しますが、発根を早くしたり太く丈夫で元気な根を促進させるために、発根促進剤も有効です。植物活力素 メネデールは、発根だけでなく肥料でも農薬でもないので、発根時以外の水栽培で元気がなくなったときなどにも使えます。水替えのときに発根するまで入れると効果的です。水替えの都度でなくとも、1週間に一度でも入れてあげる、また希釈率を200倍にしても効果はあります。
トラディスカンチアの株分けから始める水耕栽培
トラディスカンチアは、生育が旺盛なので鉢がいっぱいになったら、植え替えが必要です。植え替えの時に、株分けをして一部を水耕栽培で育ててみましょう。株分けしたトラデスカンチアは、ハイドロカルチャーでの栽培がおすすめです。
- 植え替える鉢植えのトラディスカンチアは、事前にしばらく水やりをせず乾いた土の状態で始めます。
- 鉢からトラディスカンチアを取り出し、根から土を軽くほぐして落とします。
- ハサミで、2~3株程度に切り分けます。
- 水栽培に使う株は、根を水でよく洗い土を落とします。伸びすぎたり、傷んだ茎葉も剪定します。
- 傷んだ根や、長すぎる根は清潔なハサミで切ります。日陰で切った根を乾かしておくと雑菌が入りにくくなります
トラディスカンチアの水栽培の手順
準備するもの
- 水挿しで発根したトラディスカンチアの苗 or 株分けして土を洗い流したトラディスカンチアの苗
- 容器(透明なガラスのほうが根の成長も見え水量も調整しやすい)
- 根腐れ防止剤(ミリオンA・ゼオライトなど)
手順
- 器の底に根腐れ防止剤をいれます。鉢底が隠れる程度OK
- 苗を入れてます。
- 器に水道水を入れます。この時の水位は根が全部浸からない程度。3分の2が水に浸かっているぐらいがよいでしょう。せめて3㎝程度は空気に当ててください
- 水替えは1週間に一度程度行います。根腐れ防止剤と使わない場合は2~3日に一度は替えます。
ハイドロカルチャーへの植え替え
土を使わないで植物を育てる栽培方法を水耕栽培と言いますが、水耕栽培の中でも土の代わりに用土(培土)として、ハイドロコーン、ハイドロボールという丸い発泡煉石を使用したり、ゼオライトを使用して栽培する方法をハイドロカルチャーと呼びます。水だけの栽培とは異なり、植物を固定することもでき、根域の水分量の維持をすることもでき、またインテリアとしてもハイドロカルチャーでの栽培は人気があります。
ほふくして生長するトラディスカンチアは、ハンギングバスケットで飾るのもおすすめ。ハンギングは吊るして飾るため、土は重くなってしまいます。軽量なハイドロボールなどで植え付けができるハイドロカルチャーがおすすめです。水栽培で育てて、ある程度の大きさになったらハイドロカルチャーでの植え付けするのもよいでしょう。
準備するもの
- 水挿しで発根したトラディスカンチアの苗 or 株分けして土を洗い流したトラディスカンチアの苗
- ハイドロボールなどの人工石
- ミリオンA・ゼオライトなどの根腐れ防止剤
- 底に穴がない鉢(透明な容器であれば水位がわかりやすくなります)
- 土入れ(小さな容器に植え付けるときはスプーンなどで代用可)
- ハサミ
- 割り箸等の棒状のもの
- この他、水やりをするじょうろや、ピンセットなどがあると便利です。水やりの失敗が少ない水位計もおすすめ
手順
- 底穴のない鉢に、根腐れ防止剤としてゼオライトを底が見えなくなる程度入れる
- ハイドロボールをゼオライトの上にいれます。
- トラディスカンチアの苗をハイドロボールの上に置き、根を広げます。
- 根と容器の間にハイドロボールを入れて固定します。
- 最後にじょうろで水やりを。水の量は容器の6分の1~5分の1程度与えます。水位計を使っている場合は、最適水位(OPT)まで入れましょう。
ハイドロカルチャーでの多肉植物の育て方の詳しい記事もあります。ハイドロカルチャ―の用土などにに興味のあるかたはお読みください。
トラディスカンチアの水栽培での育て方
トラディスカンチアの特徴
植物の栽培をするうえで、その植物の特徴を知っておくことは大切です。自生地や生育期などを知ればその植物がどのような環境で育てると枯れずに育つのかわかってきます。
トラディスカンチアは、70種類ほどの種類がありますが園芸種としてよく出回っているのは、フルミネンシスの品種です。葉に白やピンク・黄色の斑が入り、茎がほふくして生長します。春から秋が生育期で、寒さにも比較的強いので、暖地では屋外でも冬越しさせることができます。
常緑性で、鉢植えが人気ですがつる性なので、ハンギングバスケットにも仕立てられます。また暖地ではグランドカバーにも使われます。
学名 | Tradescantia |
属名 | ツユクサ科ムラサキツユクサ属(トラデスカンチア属) |
原産地 | 北アメリカ、熱帯アメリカ |
耐寒性等 | 耐寒性 やや強い 耐暑性 強い |
花言葉 | 「届けたい切ない気持ち」「乙女の真心」 |
置き場所、日当たり
トラディスカンチアは日向から半日陰で育てます。日に当てて育てた方が、斑が美しくでます。しかし直射日光は、水耕栽培では水の温度が高くなるリスクや、葉焼けのリスクもあります。
直射日光を避けた明るい日陰もしくは夏以外は、カーテン越しの光が当たる窓際で管理しましょう。あまり日に当てないと、ヒョロヒョロと徒長する、株が軟弱になる、葉に斑が入らなくなる可能性もあります。
暑さにもつよく、耐寒性もそれほど弱くはありません。冬は生育がゆるやかになりますが5℃以下にならないように管理すれば、冬越しも難しくありません。冬は日当たりのよい窓際などで管理しましょう。窓際は夜になると急激に温度が下がることがあるので、気をつけましょう。
水の量と交換時期
植物は葉や茎そして根からも酸素を吸収しています。水栽培で育てている場合は土やハイドロカルチャーに比べて、酸素が吸収しにくくなります。水の温度が上がると酸素の溶け込む量がすくなくなるため、弱って枯れてしまう可能性もあります。特に夏場は注意が必要です。
理想的な水栽培の水位は、根の半分から3分の2が浸かる程度。少なくとも根元3㎝は空気に触れるようにします。水は週に1回程度、ただし気温が高くなると水が濁るので濁ったら水を交換します。容器に苔がつくことがあります。水替えの時に容器も洗ってあげましょう。
葉が乾燥すると傷みやすいので、乾燥が強い時には霧吹き等で葉水を与えてください。
ハイドロカルチャーの水やり
ハイドロカルチャーは、水を鉢の中に溜めて育てるます。ハイドロボールなどは外から乾いているようでも鉢の中側は湿っていることも多いです。生育期である春から夏は、鉢の中が乾いてから2日~3日ほど待ってから与えましょう。
水は鉢の5分の1~6分の1程度まで、容器にもよりますが鉢底1cm程度で大丈夫です。水位計を使っている場合も同様に、水位計の針がmin(水切れ)まで下がってから2~3日ほど待ってから水をopt(適正水位)まで入れます。秋から水やりの回数を減らし、休眠期の冬は、月に1~2回、霧吹きで水を上げる葉水で行います。また乾燥で葉が傷みやすいので、乾燥しているときには葉水を上げましょう。
もし水を入れすぎてしまったら、鉢の上からタオルなどで押さえて、鉢を傾けて水を出しましょう。水耕栽培は新鮮な水を与えることが大切です。水をいれすぎると、根腐れのほかにも、水が腐る可能性もあります。
ハイドロカルチャーの水やりは意外と難しいので、水位計があると安心です
肥料
トラディスカンチアは、肥料はそれほどなくとも育ちます。しかし水栽培は土から栄養が取れないため肥料を使うと生育が早くなったり、葉が大きく広がります。水栽培の肥料は、粉末を水に溶かすか、液体肥料(液肥)を薄めて使います。春から秋まで月に2回ほど液体肥料を与えます。水の交換のときか、ハイドロカルチャーの場合は水やりのときに水代わりに規定量より薄めて使います。肥料を使うと藻が発生しやすいので、水草用の肥料もおすすめです。
水栽培やハイドロカルチャーに使える液肥は、ハイポネックスやハイポニカ液体肥料や水草用メネデールなどがあります。
剪定・摘心
生長して茎が伸びすぎたら、剪定して株姿を整えましょう。また斑入り品種で、斑が入らない葉がでてきたら、根元から切り戻しておきましょう。先祖返りした緑色の葉は、強くあっと今に斑入りの葉を凌駕してしまいます。
生育期に強めに切り戻しても、生育旺盛なトラディスカンチアは新芽をどんどん出して成長します。徒長したり、斑がぼやけてしまったら切り戻しましょう。一年に一度剪定すると株姿がコンパクトに維持することができます。
まとめ
トラディスカンチアは、小さなものなら100均でも手に入る手軽な観葉植物です。和名ではシマムラサキツユクサと呼ばれるセブリナもトラデスカンチアですが、紫色の葉と銀の縞模様が美しく幻想的です。
水耕栽培は、土や病気の心配も少なく手入れも簡単です。初心者の方でも思いついたら、水とペットボトル・空き瓶などの器があればすぐ始められる栽培方法です。ハーブや野菜などを育てることもでき、収穫も楽しめます。家の中にグリーンがあると癒されます。ぜひこの記事を参考にしての水耕栽培を始めて、おしゃれにお部屋に飾ってみてください。
インターネットなどで買えるハイドロカルチャーは、容器が水耕栽培用のものや、水位計がセットになっているものも多くあり失敗しにくいので、水耕栽培用のセットもおすすめです。
『農家web』にはこのほかにも、水耕栽培のコンテンツが豊富です。観葉植物だけでなく、野菜やハーブなどは収穫も楽しめます。
品種名から栽培方法を探すことができます。