スイセン(水仙)は、日本の気候に適しており、非常に丈夫なので、水耕栽培(水栽培)初心者の方でも失敗せずに育てられます。ここではスイセンの水耕栽培の始め方から水耕栽培の育て方、おしゃれにかざるポイントも紹介します。
スイセンの水栽培の手順
芽の出ていない球根を使った水栽培の手順を紹介します。球根から育てる場合には器はできれば根が伸びやすいように、背の高い器がおすすめです。
芽の出ている球根から始める場合は、花芽がでてから、根を傷つけないようポットから出し、苗から土を落とし水洗したものを使います。花芽が出る前は、ポットから引き抜く時に傷がつきやすく花が咲かない場合があります。
水栽培(水耕栽培)を始める時期
スイセンの球根は、8月頃から出回りますが、水栽培を始める適期は、品種にもよりますが9月中旬から~11月頃がよいでしょう。ニホンズイゼンなどは年内に開花するため、他の秋植え球根より早めに始めます。早めに買った球根は、日の当たらない風通しの良い戸外で管理しておくとよいでしょう。
またすでに芽がでている球根(芽出し球根)から、水栽培に移行することも可能です。その場合は11月頃から芽出し球根が出回るので、手に入れたらすぐに水栽培が始められます。
必要なもの
- スイセンの球根
- 水耕栽培用の器(根が見えるようにガラスなどがおすすめ。球根が支えられる形のもの。花瓶などでも代用が可能です)
- 水
- 段ボールの箱(器を包んで暗くするものなら、黒い筒や袋などでもOK)
手順
- ふっくらして大きな球根を使います、カビなどが生えていないか確認します。
- 器に水を入れる
- 球根を尖ったほうを上にして、2の器にセットする。水位は、球根の底がわずかに水にぬれる程度に調整する
- ガラスの器は、光を通すため土と同じ状況を作るために、根が十分に伸びるまで、(1か月~1か月半程度)段ボールを被せたり、黒い筒上のものを被せたりして暗くします。
- 球根は寒さに当てないと、花芽が伸びません。戸外や軒下など寒い場所で管理します。2~3か月程度たって、花芽がでたら日の当たる窓辺で管理すると美しい花を咲かせます。
- 水は3日1度、最低でも1週間に1度は替えましょう。水が濁っている場合はすぐに換えます。根が伸びたら水位を下げ、球根の根元が空気に触れるようにすることが重要です。
ハイドロカルチャーへの植えつけ
土を使わないで植物を育てる栽培方法を水耕栽培と言いますが、水耕栽培の中でも土の代わりに用土(培土)として、ハイドロコーン、ハイドロボールという丸い発泡煉石を使用したり、ゼオライトを使用して栽培する方法をハイドロカルチャーと呼びます。
水だけの栽培とは異なり、植物を固定することもでき、根域の水分量の維持をすることもでき、またインテリアとしてもハイドロカルチャーでの栽培は人気があります。
ハイドロカルチャーでの植え付けの方法を説明します。芽の出てない球根の植えつけのほか、芽出し球根の植え替えもできます。
準備するもの
- スイセンの球根
- ハイドロボールなどの人工石
- ミリオンA・ゼオライトなどの根腐れ防止剤
- 底に穴がない鉢(透明な容器であれば水位がわかりやすくなります)
- 土入れ(小さな容器に植え付けるときはスプーンなどで代用可)
- この他、水やりをするじょうろ、水やりの失敗が少ない水位計もおすすめ
手順
- 底穴のない鉢に、根腐れ防止剤としてゼオライトを底が見えなくなる程度入れる
- ハイドロボールなどの人工石をゼオライトの上にいれます。
- スイセンの球根をハイドロボールの上に置き、さらに球根が見えなくなるまでハイドロボールを上からいれます。
- 球根と容器の間に隙間がないように、割り箸等でハイドロボールを入れて固定します。
- 最後にじょうろで水やりをします。
- 水位は、球根の底が水につく程度。発根したら、水位を下げます。
スイセンの水栽培での育て方
スイセンの基礎知識
植物の栽培をするうえで、その植物の特徴を知っておくことは大切です。自生地や生育期などを知ればその植物がどのような環境で育てると枯れずに育つのかわかってきます。
スイセンは秋植え(春咲き)球根。古くから世界中の人に愛され、品種改良がおこなわれており1万種類以上の種類があるといわれています。日本でなじみの深いのはニホンズイセンで、外側の花びらは白く、花の中央にオレンジ色の筒形の副花冠があります。茎にいくつもの花を咲かせる房咲きスイセンの一種です。
地植え、鉢植え、水栽培での栽培が可能です。耐寒性が強く、雪の降る場所でも地植えも可能です。球根の内部にたっぷりと養分を蓄えているので、肥料がなくとも花が咲き、八重咲きスイセン系やラッパスイセン系は特に丈夫なので、水耕栽培に向いています。
学名 | Narcissus |
属名 | ヒガンバナ科 スイセン属 |
原産地 | 地中海沿岸、西アジア |
草丈 | 10㎝~50㎝ |
耐寒性等 | 耐寒性 強い 耐暑性 普通 |
花言葉 | 「うぬぼれ」「自己愛」 |
置き場所、日当たり
スイセンの球根は、発芽するまでは寒い場所で、光を当てずに育てます。発芽をしたら日によく当てて育てるのが基本ですがスイセンは半日陰でもよく育ちます。水栽培の場合、直射日光は容器内の水温が高くなりすぎる危険があるため、カーテン越しの光がおすすめです。
理想的なのは植え付け後2~3か月程度は、屋外と同じ温度で管理すると花茎が良く伸びます。明るい日陰の屋外や北向きの部屋などで管理しましょう。花芽が伸びたら、日当たりの良い暖かい場所に移動させまることで、美しい花を咲かせます。
水の量と交換時期
植物は葉や茎そして根からも酸素を吸収しています。水栽培で育てている場合は土やハイドロカルチャーに比べて、酸素が吸収しにくくなります。
理想的な水栽培の水位は、発根するまでは、球根の底に水が触れる程度、発根したら根の半分から3分の2が浸かる程度。少なくとも根元3㎝は空気に触れるようにします。水の交換は週に1回程度、ただし気温が高くなると水が濁るので濁ったら交換します。容器に苔がつくことがあります。水替えの時に容器も洗ってあげましょう。
ハイドロカルチャーの水やり
ハイドロカルチャーは、水を鉢の中に溜めて育てます。ハイドロボールなどは外から乾いているようでも鉢の中側は湿っていることも多いため、水のやりすぎに注意します。
水位は、水だけで育てている時と基本は同じです。根するまでは、球根の底に水が触れる程度、発根したら根の半分から3分の2が浸かる程度。少なくとも根元3㎝は空気に触れるようにします。
もし水を入れすぎてしまったら、鉢の上からタオルなどで押さえて、鉢を傾けて水を出しましょう。水耕栽培は新鮮な水を与えることが大切です。水をいれすぎると、根腐れのほかにも、水が腐る可能性もあります。
肥料
スイセンの球根の水栽培の場合、肥料は基本的には必要がありません。肥料がなくても球根に蓄えた栄養を使って美しい花を咲かせることができます。肥料を使いたい場合には、水栽培用の肥料を使うか、活力剤もおすすめです。球根には「ハイポネックス キュート cute」が使えます。うすめずそのまま鉢の中の水にひと押しするだけなので簡単です。スイセンには、芽が出た後に水の交換と一緒にあげるとよいでしょう。
スイセンの花が咲いた後について(球根の養生)
水栽培の球根は、球根の中にある養分を使いきってしまうので、1年で使い切りというのが一般的です。しかし土に植え替えることで翌年も花を咲かせる可能性があります。
- 花が咲き終わったら、花がらを摘む
- 植木鉢に培養土を半分ほどいれ、球根を根を広げておきます。その上から球根が見えなくなるまで、土を入れて固定します。
- 鉢から水がでるまで水やりをし、日当たりの良い屋外で管理します。
- 肥料は固形肥料を1か月に1度与えるか、液体肥料(液肥)を10日に1度与えます。(水栽培と土の肥料は異なります。土用の肥料を使いましょう)
- 春に葉が枯れたら、水やりをやめて休眠させます。雨のあたらない軒下などで管理しましょう。秋になったら水やりを再開します。
スイセンが発根しない、花茎が伸びないときは
1カ月以上たっても、発根しないのは根元が腐ってしまった可能性があります。根元の部分がぶよぶよとしていたら、残念ながら腐ってしまっているのであきらめるしかありません。カビが生えたり、病気の予防のため、植え付けの前に殺菌剤(ベンレート水和剤・オーソサイド水和剤)に浸けてから植えるのもよいでしょう。
花芽が伸びずに、開花したり、開花が途中で止まってしまった場合は寒さに当っていないことによる生育障害です。低温に十分当てることが、球根の生育に重要です。なるべく花茎が伸びるまでは、外と同じくらいの温度で管理するようにしましょう。
ひょろひょろと、茎が伸びてしまっている場合は日照不足による徒長です。なるべく明るい場所で育てましょう。
おしゃれに飾るポイント
器にこだわる
水栽培は、穴が開いていない器ならどんなものでも使えます。わざわざ買わなくても、お気に入りの花瓶やコップなどを使うことができます。スイセンは立ち姿が美しい花なので、カクテル用のロンググラスなども似合います。
複数の瓶を並べたり、吊るして飾ったりすることもできます。インターネットでもいろいろな画像があるので、イメージに近いものを探して真似してみるのもおすすめです。専用のバルブべースは、おしゃれで簡単に水を換えることもできます。
資材にこだわる
上記で紹介したハイドロボールの他にも水栽培に使える資材はあります。たとえばカラーゼオライト、セラミスグラニュー、水苔、プラントビーズなどの他、ビー玉や砂利などをつかってもよいでしょう。育て方が不安であれば、器を2重にして水栽培で育て周りに、ビーズなどを入れて使うという手もあります。
ビー玉やおはじきなどを使う場合も、根腐れ防止剤(ゼオライト)は使いましょう。100均でも買えます。
毒に注意
スイセンは、球根から葉、茎にいたるまで全草に毒があります。食べると30分以内に、嘔吐、下痢、頭痛などをおこします。葉がにらと似ていることから、間違えて中毒症状がでてニュースでも聞かれます。
家庭の水耕栽培では、人間は大丈夫かと思いますが、特にペットを飼われている方は注意しましょう。葉が猫草に似ていることから、犬や猫が間違って食べてしまう可能性があります。手が届かない場所で管理するか、ペットが入らない部屋で管理することをおすすめします。
まとめ
球根植物は、「バルバスプランツ」とも呼ばれ、最近ではバルブベースを使った水栽培が、根まで楽しめると人気がでてきています。スイセンの他、ムスカリ、ヒヤシンスやクロッカスなどは水栽培に向いている球根です。スイセンなどでコツをつかんだら、チューリップなどにも挑戦してみましょう。球根の品種ごとの育て方は、下記の記事から探せます。
水栽培は、毎日水替えをしなくてもいいですし、虫などもわきにくくキッチンなどにも置けるので、手軽にガーデニングが始められます。サボテンや多肉植物なども水栽培やハイドロカルチャーで育てることもできます。スイセンは、多くの種類があるので自分のお気に入りの品種をみつけて、ぜひこの秋は、球根をつかった水栽培に挑戦してみてください。