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コナジラミ

トマトに発生するコナジラミを駆除、防除する農薬について

ナスの葉裏にいるタバココナジラミ コナジラミ

コナジラミは、特にタバココナジラミがトマト黄化葉巻病ウイルスを媒介することから、施設農家の中では大変有名な、非常に厄介な害虫です。ここではコナジラミとはどういう虫なのか、その特性と、トマトに発生するコナジラミを駆除、防除するための農薬について解説します。

コナジラミに効く農薬

コナジラミは生育サイクルが早く、抵抗性を持ちやすく、そもそも薬剤に耐性を持つものもいます。以下の代表的な農薬の種類と種類別の対応表を参考に、ローテーション活用など、IPM(総合的害虫管理)をお勧めします。

トマト栽培に使える、コナジラミに効く農薬一覧表

RACコード別に分類した、トマト栽培で使える、コナジラミに効く代表的な農薬は以下のようになります。トマトとミニトマトは登録が異なります。ミニトマトに使う場合は適用作物にミニトマトがあるか個別に確認してください。

IRACコードグループ名コナジラミ類
1B有機リンオルトラン
ジェイエース
3Aピレスロイド系アディオン
トレボン
4Aネオニコチノイドアクタラ
アドマイヤー
スタークル
モスピラン
アベイル
ダントツ
ベストガード
4Cスルホキシミン系トランスフォーム
5スピノシン系
(マクロライド系)
ディアナ
6アベルメクチン系
ミルベマイシン系
(マクロライド系)
アニキ
アグリメック
7Cピリプロキシフェンラノー乳剤(施設栽培)
9Bピリジン アゾメチン誘
導体
コルト
15ベンゾイル尿素カウンター乳剤
16ブプロフェジンアプロード
21AMETI剤ダニトロン
23テトロン酸および
テトラミン酸誘導体
モベント
28ジアミド系ベネビア
ベリマーク
29フロニカミドウララ
30メタジアミド系グレーシア

他、物理的に作用する剤であり、抵抗性が発達するおそれが殆どない「サフオイル乳剤」、家庭菜園用の食品原料99.9%で出来ている「アースガーデン ロハピ」もあります。

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※記載事項が変更、修正されている場合があります。使用する際にはラベルをよく読み、用法・用量を守ってお使いください。

また、より詳しく網羅的に使える農薬を検索したい方は、是非、この農薬検索をご利用ください。

RACコードとは??

RACコードとは、農薬を作用機構(農薬の効き方)ごとに分類して番号と記号を振ったコードになります。

例えば殺虫剤なら有機リン系は[1B]、ネオニコチノイド系は[4A]など、すべての農薬にRACコードが設定されています。

同じRACコードの農薬を繰り返し使うと害虫や病原菌に抵抗性がついてしまうのを、RACコードが違うコードの農薬を交互に使うことで防ぐことができます。「系統」とも呼ばれますが、RACコードの方が、より厳密に分類されています。 

殺虫剤は、IRAC(アイラック)コード、殺菌剤にはFRAC(エフラック)コード、除草剤にはHRAC(エイチラック)コードになっています。

殺虫剤はコナジラミだけでなく、アザミウマ類、カイガラムシ類やハダニ類、アブラムシ類、ヨトウムシコガネムシハスモンヨトウネキリムシ、ヨコバイ、ハモグリバエ、ハマキムシ、イラガ、カメムシウンカ、メイガ、ハムシ、ケムシ、テントウムシダマシナメクジシンクイムシなど幅広い殺虫スペクトラムを持つものも多いので、うまく活用しましょう。

上記の農薬は原液を水で溶かして薄めて使用する液剤や水溶性の粉剤、粒状、粒タイプです。適切な量、希釈方法等については下記をご参考ください。

コナジラミに効く代表的な農薬

有機リン系 オルトラン

有機リン系殺虫剤は殺虫剤の中でも、昆虫の神経系を阻害するタイプで、殺虫剤の代表的なタイプです。代表的な有機リン系農薬は、エルサンオルトランスミチオンがあります。

ネオニコチノイド系 モスピラン、スタークル、ダントツなど

ネオニコチノイド系とは、90年代に登場した比較的新しい殺虫成分で、ニコチンの仲間です。ニコチン性アセチルコリン受容体と結合し、信号の伝達を阻止し、結果、昆虫は麻痺し、死に至ります。

浸透性、速効性、持続性が優れていることや幅広い殺虫スペクトラムを持つため、現在非常によく使用されている殺虫剤です。代表的な製剤ダントツやネオニコチノイド系農薬については下記で詳しく説明しています。ご参考ください。

家庭園芸でよく使われる住友化学の「ベニカベジフルVスプレー」や「ベニカXファインスプレー」「ベニカXネクストスプレー」「ベニカベジフルスプレー」は、ネオニコチノイド系のクロチアニジンを成分にしています。

コルト

コルト顆粒水和剤は、日本農薬などが販売する昆虫の行動を制御する昆虫行動制御剤(IBR剤)で、従来の有機リン系やネオニコチノイド系に対して抵抗性を発達させた害虫にも有効なため、ローテーションのなかに組み込みやすい殺虫剤です。

メタジアミド系 グレーシア

グレーシア乳剤は、日産化学(株)が発明した非常に新しい殺虫剤です。日産化学(株)が開発した新規化合物である、イソオキサゾリン系の有効成分「フルキサメタミド」が害虫の神経に作用して速攻的な殺虫作用を示します。
コナガなどのチョウ目や、アザミウマ目、ハエ目、ダニ目等の幅広い作物害虫に高い効果を発揮します。

スルホキシイミン系 トランスフォーム

トランスフォームフロアブルは2017年12月に農薬登録が認可された新規殺虫剤です。ネオニコチノイド系や有機リン系などの既存の殺虫剤とは構造が異なる新規系統の殺虫剤なので、コルトと同様、ローテーションに組み入れやすい殺虫剤です。

抵抗性コナジラミの対処法

抵抗性コナジラミとは、農薬の種類、活用が増えることで、たまたま耐性があって生き残った特定の農薬が効かない性質のコナジラミが、世代を重ねて集団化したものです。

コナジラミは発育スピードが速く、短期間で世代を繰り返すため、ほかの害虫より抵抗性の発達スピードが速い害虫です。

殺虫剤を散布しても、翌日集団でコナジラミが生息している場合は、抵抗性を疑ってよいでしょう。

このような場合は、お使いの農薬のRACコードを確認して、タイプの異なる殺虫剤のローテーション散布を心がけること、さらには生物的、物理的、耕種的防除法を取り入れたIPM防除体系を組んで、統合的に実践することが重要です。

IPM(総合的害虫管理)とは?

農地を取り巻く環境や病害虫の対象種の個体群動態を考慮しつつ、「生物的防除」「化学的防除」「耕種的防除」「物理的防除」を組み合わせることで、病害虫の発生を経済被害を生じるレベル以下に抑えることをいいます。

  • 「生物的防除」 病害虫の天敵を導入し、病害虫密度を下げる防除法
  • 「化学的防除」 化学薬剤を使用して行う防除法
  • 「耕種的防除」 栽培法,品種、圃場の環境条件等を整え、病害虫の発生を減らす防除法
  • 「物理的防除」 防虫ネット、粘着トラップ、光熱等を利用して病害虫を制御する防除法

(IPM・・・Integrated Pest Management)

生物農薬(生物的防除)

生物農薬とは、「農薬の目的に使われる生物を使い、病害を防除する農薬」のことを言います。

その生物とは主に、昆虫、線虫、微生物で、害虫(例えばアブラムシやアザミウマ、コナジラミ、ハダニなど)を捕食する、天敵に当たる昆虫や、昆虫に寄生するもの、センチュウ、また病原菌にあたる生物になります。

天敵導入による防除は、名前でこそ「生物農薬」と呼ばれますが、化学農薬ではなく、有機JASでも勿論使用可能です。

コナジラミ対策に使えるおすすめの生物農薬は、天敵資材としてオンシツツヤコバチやスワルスキーカブリダニ、またカビの仲間である糸状菌を利用したものがあります。

商品名エンストリップツヤトップエルカードスワルスキーボタニガードESマイコタール
有効成分の種類オンシツツヤコバチオンシツツヤコバチサバクツヤコバチ成虫スワルスキーカブリダニボーベリア バシアーナ GHA株 分生子バーティシリウム・レカニ胞子
作物名野菜類(施設栽培)
ポインセチア(施設栽培)
野菜類(施設栽培)野菜類(施設栽培)野菜類(露地栽培)
野菜類(施設栽培)
花き類・観葉植物(施設栽培)
野菜類野菜類、マンゴー、きく、トルコギキョウ(施設栽培)
適用病害虫コナジラミ類コナジラミ類タバココナジラミ(シルバーリーフコナジラミを含む)
オンシツコナジラミ
アザミウマ類
チャノホコリダニ
コナジラミ類
ミカンハダニ
アブラムシ類
アザミウマ類
コナジラミ類
ハダニ類
コナガ
アオムシ など
コナジラミ類
チャノキイロアザミウマ
ミカンキイロアザミウマ

スワルスキーカブリダニを有効成分とする商品でスワマイトというものもあります。

生物農薬は、在来種以外の天敵昆虫を使用することが多く、本来の生態系に影響を与える恐れがある為、閉鎖系の圃場以外では使用、散布し難いものがあるなどの注意点もあります。

その他、生物農薬については下記に詳しく、具体的な製品も紹介していますので、ご参考ください。

物理的防除

黄色の粘着テープで捕まえる

コナジラミはアブラムシなどと同様、黄色のものに集まる習性があります。これを利用して、黄色の粘着テープを設置するのは防除に有効です。

反射シートで光を乱反射、また紫外線カットフィルムで防除

コナジラミは、キラキラと、光が乱反射するのを嫌う習性(忌避反応)があります。これを利用して、反射シートを施設の周りに設置すると、ある程度の効果が期待できます。

また、紫外線カットフィルムで覆われた施設では、コナジラミの侵入や、飛翔活動が抑制されることが判明しています。

0.4mm以下の防虫ネットを施設開口部に張る

0.4mm以下の防虫ネットを施設の開口部に張れば、物理的にコナジラミの侵入を防ぐことができます。

イノベックス 防虫ネット ダイオサンシャインスーパーソフト N-4700 目合い0.4mm 巾150cm×長さ100m
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冬季に2〜3週間施設を開放する

タバココナジラミの中には、バイオタイプB(シルバーリーフコナジラミ)のように寒さに弱いタイプがいます。このため、5度以下の冬季に、栽培休止期間を設けて2〜3週間施設を開放し、寒気で換気することは、コナジラミの駆除に役立ちます。

耕種的防除

ハウス内、周りの雑草をしっかり除草する

圃場の周りに生長した雑草、草花があると、コナジラミの越冬を促し、大量発生を促進する危険性があります。

除草については、以下のコンテンツが参考になります。

そもそも、コナジラミはどういう害虫?

コナジラミとは?

コナジラミはカメムシ目に属する白い外見の昆虫です。1500種以上と非常に多くの種類が存在します。大きさは一般に、タバココナジラミが1mm前後、オンシツコナジラミが1〜2mmほどで、大きな翅があり、粉状の蝋質で覆われています。

コナジラミは葉の裏に産卵し、1齢幼虫から4齢幼虫を経て蛹になり、成虫になります。

ナスの葉裏にいるタバココナジラミの幼虫
タバココナジラミ©病害虫被害画像データベース クリエイティブ・コモンズ・ライセンス(表示4.0 国際)https://creativecommons.org/licenses/by/4.0/

育苗時に発生していた苗の持ち込みや、施設周辺の雑草から、飛来して飛び込んでくるのが主な発生要因で、20〜25度くらいが生育の適温ですが、加温している施設では冬季でも多発することもあります。

卵から成虫になるまでにかかる日数は20日強で、発育スピード、生育サイクルが速く、短期間で世代を繰り返し増殖します。このため、ほかの害虫より抵抗性の発達スピードが速いのが特徴です。ハウスなどの施設では周年発生します。

どうしてコナジラミは害虫なのか?

コナジラミは直接植物の汁を吸うことで、その傷が農作物、蕾が大きくなるにつれ、非常に見た目が悪くなることや、農産物の萎縮、変形、変色の原因になるといった食害があります。

またアブラムシのように、甘露の排泄物を葉につける事で表面にすす病が発生して黒く汚れてしまいます。

さらに、最も厄介なのは、コナジラミはウイルスを運ぶということです。オンシツコナジラミはキュウリ黄化病の病原ウイルスを媒介し、タバココナジラミはトマト黄化葉巻病やウリ類退緑黄化病の病原ウイルスを媒介します。このウイルスによって、キュウリ、トマト、メロンなどの産地に大きな被害を発生させています。

トマト黄化葉巻病とは?

病原ウイルスはTYLCV(Tomato yellow leaf curl virus)で、トマト、ミニトマト、トルコギキョウで発病します。日本では平成8年に初発生が確認されました。

発病初期は、上位葉が縁から黄化しながら葉巻症状が見られるようになり、葉脈間が黄化して縮葉となります。病状が進行すると株全体が萎縮し、発病後は開花しても結実しないことが多くなります。

農業害虫として代表的なコナジラミ

日本の畑地に出る、害虫として問題になっているコナジラミは以下の種類です。(シルバーリーフコナジラミの原産はイスラエル周辺の中近東、最近の新タイプのタバココナジラミの原産はイベリア半島と言われています。)

種類名オンシツコナジラミタバココナジラミ
体長(成虫(雌))1〜2mm1mm前後
学名Trialeurodes vaporariorumBemisia tabaci
特徴キュウリ黄化病の病原ウイルスを媒介する。トマト黄化葉巻病やウリ類退緑黄化病の病原ウイルスを媒介する。
シルバーリーフコナジラミと呼ばれるものも同一種で、シルバーリーフコナジラミはバイオタイプB、最近問題になっている、薬剤抵抗性の強い新タイプはバイオタイプQに分類される。
バイオタイプは高いトマト黄化葉巻病の病原ウイルス(TYLCV)媒介能力を持つ。

まとめ

コナジラミはウイルスを媒介し、農産物に病気をもたらします。そして、小さくて発見しにくく、また農薬に強い形状だったり、耐性もあったりで、大変厄介な害虫です。

ここで紹介した農薬は、JA販売店やホームセンターのガーデニング・資材、庭木コーナーにあるものもあります。ほ場で早期発見し、適切な薬剤や防除方法でしっかり発生を予防、退治できると、農薬散布と言った農作業の回数を減らすことができます。

執筆者・監修者情報
執筆者・監修者

農家web編集部のメンバーが「農業者による農業者のための情報サイト」をコンセプトに、農業に関するあらゆる情報を丁寧にまとめてお届けしていきます。
編集部のメンバーは皆、実際に農業に携わりながら情報をまとめています。農学を極め樹木医の資格を持つ者、法人の経営・財務管理に長けている者、大規模農場の営農経験者などバラエティに富んだメンバーで構成されています。他にも農機具やスマート農業機器、ITなどのスキルも兼ね備えています。

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