ピーマン栽培で使える、アザミウマに効く農薬一覧
ピーマン栽培では、「ミカンキイロアザミウマ」「 ヒラズハナアザミウマ」が発生します。これらのアザミウマは、果実表面に傷を付ける、黒く変色するなどで商品価値を落とします。
アザミウマ類を適用病害虫とする農薬は多いですが、アザミウマの種類によって農薬の効果は違いますので、それぞれに合った農薬を使うことが必要です。以下の代表的な農薬の種類と種類別の対応表を参考に、ローテーションに活用してみてください。(あくまで、参考的な情報です。地域や作物によりすでに抵抗性が発現している場合もあります)
※記載事項が変更、修正されている場合があります。使用する際にはラベルをよく読み、用法・用量を守ってお使いください。
また、より詳しく網羅的に使える農薬を検索したい方は、是非、この農薬検索をご利用ください。
殺虫剤はアザミウマ類だけでなく、カイガラムシ類やアブラムシ類、ハダニ類、ヨトウムシ、コナジラミ、コガネムシ、ハスモンヨトウ、ネキリムシ、ヨコバイ、ハモグリバエなど幅広い殺虫スペクトラムを持つものも多いので、うまく活用しましょう。
上記の農薬は水で溶かして薄めて使用する液剤や水溶性の粉剤、粒状タイプです。希釈方法等については下記をご参考ください。
アザウマに効く代表的な農薬
ネオニコチノイド系 モスピラン、アドマイヤーなど
ネオニコチノイド系とは、90年代に登場した比較的新しい殺虫成分で、ニコチンの仲間です。ニコチン性アセチルコリン受容体と結合し、信号の伝達を阻止し、結果、昆虫は麻痺し、死に至ります。
浸透性、速効性、持続性が優れていることや幅広い殺虫スペクトラムを持つため、現在非常によく使用されている殺虫剤です。代表的な製剤ダントツやネオニコチノイド系農薬については下記で詳しく説明しています。ご参考ください。
家庭園芸でよく使われる住友化学の「ベニカベジフルVスプレー」や「ベニカXファインスプレー」「ベニカXネクストスプレー」「ベニカベジフルスプレー」は、ネオニコチノイド系のクロチアニジンを成分にしています。
有機リン系 オルトラン、スプラサイドなど
有機リン系殺虫剤は殺虫剤の中でも、昆虫の神経系を阻害するタイプで、殺虫剤の代表的なタイプです。代表的な有機リン系農薬は、オルトランやマラソンがあり、どちらもアザミウマに効く農薬です。
マラソンについては下記をご参考ください。
ディアナSC
ディアナSCはマクロライド系の有効成分スピネトラムを含む新規殺虫剤で、アザミウマ類だけでなく、チョウ目害虫、ハモグリバエ類、チュウゴクナシキジラミに卓効を示します。
有機リン系、カーバメート系、ピレスロイド系、ネオニコチノイド系など既存の殺虫剤に抵抗性を発達させた害虫に対しても効果が有るのが特徴です。また人畜に対する安全性は高く、薬害の事例が認められず、作物に対する安全性も高い薬剤で、茶を除いて登録されているすべての野菜・果樹において収穫前日まで使用することが可能です。
ハチハチ乳剤
ハチハチ乳剤は、アザミウマ類の種類に関係なく優れた防除効果を発揮し、新しい構造を有することから、既存の殺虫剤に感受性が低下した害虫に対しても有効です。
アザミウマ類だけでなく、コナガ、アオムシ、アブラムシ類を同時に防除できます。殺虫剤ですが、殺菌剤としての効果もあり、ピーマンはうどんこ病にも優れた効果があります。
抵抗性アザミウマの対処法
抵抗性アザミウマとは、農薬の種類、活用が増えることで、たまたま耐性があって生き残った特定の農薬が効かない性質のアザミウマが、世代を重ねて集団化したものです。
アザミウマは繁殖力が高く、また発育スピードが速く、短期間で世代を繰り返すため、ほかの害虫より抵抗性の発達スピードが速い害虫です。
殺虫剤を散布しても、翌日集団でアザミウマが生息している場合は、抵抗性を疑ってよいでしょう。
このような場合は、お使いの農薬のRACコードを確認して、タイプの異なる殺虫剤のローテーション散布を心がけること、さらには生物的、物理的、耕種的防除法を取り入れたIPM防除体系を組んで、統合的に実践することが重要です。
生物農薬
生物農薬とは、「農薬の目的に使われる生物を使い、病害を防除する農薬」のことを言います。
その生物とは主に、昆虫、線虫、微生物で、害虫(例えばアブラムシやアザミウマ、コナジラミ、ハダニなど)を捕食する、天敵に当たる昆虫や、昆虫に寄生するもの、センチュウ、また病原菌にあたる生物になります。
天敵導入による防除は、名前でこそ「生物農薬」と呼ばれますが、化学農薬ではなく、有機JASでも勿論使用可能です。
アザミウマ対策に使えるおすすめの生物農薬は、以下のようなものがあります。
生物農薬は、在来種以外の天敵昆虫を使用することが多く、本来の生態系に影響を与える恐れがある為、閉鎖系の圃場以外では使用、散布し難いものがあるなどの注意点もあります。
その他、生物農薬については下記に詳しく、具体的な製品も紹介していますので、ご参考ください。
無農薬でアザミウマを駆除する方法
アザミウマは、アブラムシと同様、キラキラ光るものが苦手だったり、逆に黄色いものが好きだったりといった習性があります。この習性を利用することで、アザミウマを忌避、誘引し、防除することができます。
また、最近では赤い防虫ネットでハウスを覆うことで、アザミウマの発生を防いだり、ハウス内の雑草をしっかり除草することで、発生を減らすことができます。
無農薬でアザミウマを駆除する、物理的防除、耕種的防除について詳しく知りたい方は、下記を参考にしてみてください。
そもそも、アザミウマはどういう害虫?
アザミウマとは?
アザミウマはアザミウマ目に属する昆虫です。現生種は約5000種、スリップス(英名Thrips)とも呼ばれています。大きさは一般に1mm以下で翅があり、細長く、色もまちまちです。うち、農作物をエサにするのは44種と言われています。
アザミウマは産卵管を葉に突き刺し、細胞内に1つずつ産卵し、多いもので死ぬまでに250個以上産卵します。そして、アザミウマの幼虫は、土中(土壌中)で1齢蛹から脱皮し、2齢蛹を経て成虫になります。
翅で飛来し、小さいためハウスへの侵入も容易です。また、購入した株や苗から持ち込まれるケースも多く見られます。
このように繁殖力が高く、また発育スピード、生育サイクルが速く、短期間で世代を繰り返すため、ほかの害虫より抵抗性の発達スピードが速いのが特徴です。暖かいところでは年中発生するため、ハウスなどの施設では一年中発生します。
どうしてアザミウマは害虫なのか?
アザミウマは直接植物の汁を吸うことで、その傷が農作物、蕾が大きくなるにつれ、非常に見た目が悪くなることや、作物の萎縮、変形、変色の原因となり、出荷できない物が増える(花木だと開花しないものが増える)といった食害があります。
また、最も厄介なのは、アザミウマはウイルスを運ぶということです。アザミウマは、果菜類、葉菜類、根菜類、豆類を含むほとんどの野菜や果樹、花きとさまざまな作物の茎葉、花弁を吸い漁りながらウイルスを広げていきます。一度、保毒すると、ウイルスを一生まき散らしてしまうのです。
アザミウマが媒介するウイルスは主に以下のようになります。
ウイルス名 | 主な発生植物 | 媒介するアザミウマの種類 |
---|---|---|
トマト黄化えそウイルス(TSWV) | トマト、ピーマン、ナス、レタスや、トルコギキョウ、マリーゴールド、ガーベラなどの花きなど | ミカンキイロアザミウマ ヒラズハナアザミウマ ネギアザミウマ ダイズウスイロアザミウマ |
スイカ灰白色斑紋ウイルス(WSMoV) | スイカ、トウガン、ニガウリ、キュウリ | ミナミキイロアザミウマ |
メロン黄化えそウイルス(MYSV) | メロン、キュウリ、スイカ | ミナミキイロアザミウマ |
インパチェンスネクロティックスポットウイルス(INSV) | トルコギキョウ、シクラメン | ミカンキイロアザミウマ ヒラズハナアザミウマ |
アイリスイエロースポットウイルス(IYSV) | タマネギ、ネギ、ニラ、トルコギキョウ | ネギアザミウマ |
ウイルスを媒介する代表的なアザミウマ
日本の畑地に出る、ウイルスを媒介するアザミウマは主に以下の5種類です。
種類名 | ネギアザミウマ | ミナミキイロアザミウマ | ミカンキイロアザミウマ | ヒラズハナアザミウマ | チャノキイロアザミウマ |
---|---|---|---|---|---|
体長(成虫(雌)) | 1.1〜1.6mm | 1.2〜1.4mm | 1.4〜1.7mm | 1.3〜1.7mm | 0.8〜1.0mm |
色 | 夏:淡黄色~黄褐色 冬:褐色 | 黄色 | 夏:黄土色 冬:茶褐色 | 褐色系 | 黄色 |
特徴 | 周年発生 幅広い作物に出現 | 寒さに弱い ナスやピーマン、トウガラシ類、キュウリ、スイカといった果菜類によく発生 | ナス科、バラ科によく発生 | ピーマン、トウガラシ類、トマト、イチゴ、バラ科を中心に幅広い作物で発生 | 茶やブドウ、かんきつを中心に幅広い作物で発生 |
まとめ
アザミウマはウイルスを媒介し、小さくて発見しにくい、ハウスだと一年中発生する、また農薬に対する耐性もあったりで、大変厄介な害虫です。
ここで紹介した農薬は、JA販売店やホームセンターのガーデニング・資材、庭木コーナーにあるものもあります。ほ場で早期発見し、適切な薬剤や防除方法でしっかり発生を予防、ガードできると、農薬散布と言った農作業の回数を減らすことができます。