農家webかんたん栽培記録サービスのバナーです。
アザミウマ

ピーマンに発生するアザミウマを防除する農薬について

きゅうりの葉にいるミナミキイロアザミウマ アザミウマ

ピーマン栽培で使える、アザミウマに効く農薬一覧

ピーマン栽培では、「ミカンキイロアザミウマ」「 ヒラズハナアザミウマ」が発生します。これらのアザミウマは、果実表面に傷を付ける、黒く変色するなどで商品価値を落とします。

アザミウマ類を適用病害虫とする農薬は多いですが、アザミウマの種類によって農薬の効果は違いますので、それぞれに合った農薬を使うことが必要です。以下の代表的な農薬の種類と種類別の対応表を参考に、ローテーションに活用してみてください。(あくまで、参考的な情報です。地域や作物によりすでに抵抗性が発現している場合もあります)

IRACコードグループ名ミカンキイロ
アザミウマ
ヒラズハナ
アザミウマ
1B有機リンスプラサイド
4Aネオニコチノイドモスピランアドマイヤー
5スピノシン系
(マクロライド系)
ディアナSCディアナSC
13ピロール
ジニトロフェノール
スルフルラミド
コテツフロアブルコテツフロアブル
21AMEI剤ハチハチ乳剤(FRAC39)ハチハチ乳剤(FRAC39)
プレオフロアブル

※記載事項が変更、修正されている場合があります。使用する際にはラベルをよく読み、用法・用量を守ってお使いください。

また、より詳しく網羅的に使える農薬を検索したい方は、是非、この農薬検索をご利用ください。

RACコードとは??

RACコードとは、農薬を作用機構(農薬の効き方)ごとに分類して番号と記号を振ったコードになります。

例えば殺虫剤なら有機リン系は[1B]、ネオニコチノイド系は[4A]など、すべての農薬にRACコードが設定されています。

同じRACコードの農薬を繰り返し使うと害虫や病原菌に抵抗性がついてしまうのを、RACコードが違うコードの農薬を交互に使うことで防ぐことができます。「系統」とも呼ばれますが、RACコードの方が、より厳密に分類されています。 

殺虫剤は、IRAC(アイラック)コード、殺菌剤にはFRAC(エフラック)コード、除草剤にはHRAC(エイチラック)コードになっています。

殺虫剤はアザミウマ類だけでなく、カイガラムシ類やアブラムシ類、ハダニ類、ヨトウムシコナジラミコガネムシハスモンヨトウネキリムシ、ヨコバイ、ハモグリバエなど幅広い殺虫スペクトラムを持つものも多いので、うまく活用しましょう。

上記の農薬は水で溶かして薄めて使用する液剤や水溶性の粉剤、粒状タイプです。希釈方法等については下記をご参考ください。

アザウマに効く代表的な農薬

ネオニコチノイド系 モスピラン、アドマイヤーなど

ネオニコチノイド系とは、90年代に登場した比較的新しい殺虫成分で、ニコチンの仲間です。ニコチン性アセチルコリン受容体と結合し、信号の伝達を阻止し、結果、昆虫は麻痺し、死に至ります。

浸透性、速効性、持続性が優れていることや幅広い殺虫スペクトラムを持つため、現在非常によく使用されている殺虫剤です。代表的な製剤ダントツやネオニコチノイド系農薬については下記で詳しく説明しています。ご参考ください。

家庭園芸でよく使われる住友化学の「ベニカベジフルVスプレー」や「ベニカXファインスプレー」「ベニカXネクストスプレー」「ベニカベジフルスプレー」は、ネオニコチノイド系のクロチアニジンを成分にしています。

有機リン系 オルトラン、スプラサイドなど

有機リン系殺虫剤は殺虫剤の中でも、昆虫の神経系を阻害するタイプで、殺虫剤の代表的なタイプです。代表的な有機リン系農薬は、オルトランマラソンがあり、どちらもアザミウマに効く農薬です。

マラソンについては下記をご参考ください。

ディアナSC

ディアナSCはマクロライド系の有効成分スピネトラムを含む新規殺虫剤で、アザミウマ類だけでなく、チョウ目害虫、ハモグリバエ類、チュウゴクナシキジラミに卓効を示します。

有機リン系、カーバメート系、ピレスロイド系、ネオニコチノイド系など既存の殺虫剤に抵抗性を発達させた害虫に対しても効果が有るのが特徴です。また人畜に対する安全性は高く、薬害の事例が認められず、作物に対する安全性も高い薬剤で、茶を除いて登録されているすべての野菜・果樹において収穫前日まで使用することが可能です。

ハチハチ乳剤

ハチハチ乳剤は、アザミウマ類の種類に関係なく優れた防除効果を発揮し、新しい構造を有することから、既存の殺虫剤に感受性が低下した害虫に対しても有効です。

アザミウマ類だけでなく、コナガ、アオムシ、アブラムシ類を同時に防除できます。殺虫剤ですが、殺菌剤としての効果もあり、ピーマンはうどんこ病にも優れた効果があります。

抵抗性アザミウマの対処法

抵抗性アザミウマとは、農薬の種類、活用が増えることで、たまたま耐性があって生き残った特定の農薬が効かない性質のアザミウマが、世代を重ねて集団化したものです。

アザミウマは繁殖力が高く、また発育スピードが速く、短期間で世代を繰り返すため、ほかの害虫より抵抗性の発達スピードが速い害虫です。

殺虫剤を散布しても、翌日集団でアザミウマが生息している場合は、抵抗性を疑ってよいでしょう。

このような場合は、お使いの農薬のRACコードを確認して、タイプの異なる殺虫剤のローテーション散布を心がけること、さらには生物的、物理的、耕種的防除法を取り入れたIPM防除体系を組んで、統合的に実践することが重要です。

IPM(総合的害虫管理)とは?

農地を取り巻く環境や病害虫の対象種の個体群動態を考慮しつつ、「生物的防除」「化学的防除」「耕種的防除」「物理的防除」を組み合わせることで、病害虫の発生を経済被害を生じるレベル以下に抑えることをいいます。

  • 「生物的防除」 病害虫の天敵を導入し、病害虫密度を下げる防除法
  • 「化学的防除」 化学薬剤を使用して行う防除法
  • 「耕種的防除」 栽培法,品種、圃場の環境条件等を整え、病害虫の発生を減らす防除法
  • 「物理的防除」 防虫ネット、粘着トラップ、光熱等を利用して病害虫を制御する防除法

(IPM・・・Integrated Pest Management)

生物農薬

生物農薬とは、「農薬の目的に使われる生物を使い、病害を防除する農薬」のことを言います。

その生物とは主に、昆虫、線虫、微生物で、害虫(例えばアブラムシやアザミウマ、コナジラミ、ハダニなど)を捕食する、天敵に当たる昆虫や、昆虫に寄生するもの、センチュウ、また病原菌にあたる生物になります。

天敵導入による防除は、名前でこそ「生物農薬」と呼ばれますが、化学農薬ではなく、有機JASでも勿論使用可能です。

アザミウマ対策に使えるおすすめの生物農薬は、以下のようなものがあります。

商品名ククメリスオリスターAスワルスキーボタニガードES
有効成分の種類ククメリスカブリダニタイリクヒメハナカメムシスワルスキーカブリダニボーベリア バシアーナ GHA株 分生子
作物名野菜類(施設栽培)
シクラメン(施設栽培)
野菜類(施設栽培)野菜類(露地栽培)
野菜類(施設栽培)
花き類・観葉植物(施設栽培)
野菜類
適用病害虫アザミウマ類
ケナガコナダニ
アザミウマ類アザミウマ類
チャノホコリダニ
コナジラミ類
ミカンハダニ
アブラムシ類
アザミウマ類
コナジラミ類
ハダニ類
コナガ
アオムシ など

生物農薬は、在来種以外の天敵昆虫を使用することが多く、本来の生態系に影響を与える恐れがある為、閉鎖系の圃場以外では使用、散布し難いものがあるなどの注意点もあります。

その他、生物農薬については下記に詳しく、具体的な製品も紹介していますので、ご参考ください。

無農薬でアザミウマを駆除する方法

アザミウマは、アブラムシと同様、キラキラ光るものが苦手だったり、逆に黄色いものが好きだったりといった習性があります。この習性を利用することで、アザミウマを忌避、誘引し、防除することができます。

また、最近では赤い防虫ネットでハウスを覆うことで、アザミウマの発生を防いだり、ハウス内の雑草をしっかり除草することで、発生を減らすことができます。

無農薬でアザミウマを駆除する、物理的防除、耕種的防除について詳しく知りたい方は、下記を参考にしてみてください。

そもそも、アザミウマはどういう害虫?

アザミウマとは?

アザミウマはアザミウマ目に属する昆虫です。現生種は約5000種、スリップス(英名Thrips)とも呼ばれています。大きさは一般に1mm以下で翅があり、細長く、色もまちまちです。うち、農作物をエサにするのは44種と言われています。

アザミウマは産卵管を葉に突き刺し、細胞内に1つずつ産卵し、多いもので死ぬまでに250個以上産卵します。そして、アザミウマの幼虫は、土中(土壌中)で1齢蛹から脱皮し、2齢蛹を経て成虫になります。

翅で飛来し、小さいためハウスへの侵入も容易です。また、購入した株や苗から持ち込まれるケースも多く見られます。

このように繁殖力が高く、また発育スピード、生育サイクルが速く、短期間で世代を繰り返すため、ほかの害虫より抵抗性の発達スピードが速いのが特徴です。暖かいところでは年中発生するため、ハウスなどの施設では一年中発生します。

どうしてアザミウマは害虫なのか?

キュウリの葉にいるミカンキイロアザミウマ
ミカンキイロアザミウマ © 病害虫被害画像データベース クリエイティブ・コモンズ・ライセンス(表示4.0 国際)https://creativecommons.org/licenses/by/4.0/

アザミウマは直接植物の汁を吸うことで、その傷が農作物、蕾が大きくなるにつれ、非常に見た目が悪くなることや、作物の萎縮、変形、変色の原因となり、出荷できない物が増える(花木だと開花しないものが増える)といった食害があります。

また、最も厄介なのは、アザミウマはウイルスを運ぶということです。アザミウマは、果菜類、葉菜類、根菜類、豆類を含むほとんどの野菜や果樹、花きとさまざまな作物の茎葉、花弁を吸い漁りながらウイルスを広げていきます。一度、保毒すると、ウイルスを一生まき散らしてしまうのです。

アザミウマが媒介するウイルスは主に以下のようになります。

ウイルス名主な発生植物媒介するアザミウマの種類
トマト黄化えそウイルス(TSWV)トマト、ピーマン、ナス、レタスや、トルコギキョウ、マリーゴールド、ガーベラなどの花きなどミカンキイロアザミウマ
ヒラズハナアザミウマ
ネギアザミウマ
ダイズウスイロアザミウマ
スイカ灰白色斑紋ウイルス(WSMoV)スイカ、トウガン、ニガウリ、キュウリミナミキイロアザミウマ
メロン黄化えそウイルス(MYSV)メロン、キュウリ、スイカミナミキイロアザミウマ
インパチェンスネクロティックスポットウイルス(INSV)トルコギキョウ、シクラメンミカンキイロアザミウマ
ヒラズハナアザミウマ
アイリスイエロースポットウイルス(IYSV)タマネギ、ネギ、ニラ、トルコギキョウネギアザミウマ
えそウイルスとは?

植物が、えそウイルスに感染すると、葉では退緑輪紋や褐色のえそ輪紋、えそ斑点を生じ、茎にはえそ条斑を生じるのが特徴です。えそウイルスに感染した植物は、えそ斑点による奇形果になったり、場合によっては、生長点が枯死したり、最悪、萎凋枯死するケースがあります。

アザミウマによって媒介される代表的なウイルスです。

ウイルスを媒介する代表的なアザミウマ

日本の畑地に出る、ウイルスを媒介するアザミウマは主に以下の5種類です。

種類名ネギアザミウマミナミキイロアザミウマミカンキイロアザミウマヒラズハナアザミウマチャノキイロアザミウマ
体長(成虫(雌))1.1〜1.6mm1.2〜1.4mm1.4〜1.7mm
1.3〜1.7mm0.8〜1.0mm
夏:淡黄色~黄褐色
冬:褐色
黄色夏:黄土色
冬:茶褐色
褐色系黄色
特徴周年発生
幅広い作物に出現
寒さに弱い
ナスやピーマン、トウガラシ類、キュウリ、スイカといった果菜類によく発生
ナス科、バラ科によく発生ピーマン、トウガラシ類、トマト、イチゴ、バラ科を中心に幅広い作物で発生茶やブドウ、かんきつを中心に幅広い作物で発生
ネギアザミウマの成虫
写真提供:HP埼玉の農作物病害虫写真集  ネギアザミウマの成虫
ミナミキイロアザミウマの成虫
写真提供:HP埼玉の農作物病害虫写真集 ミナミキイロアザミウマの成虫
ミカンキイロアザミウマの成虫
写真提供:HP埼玉の農作物病害虫写真集 ミカンキイロアザミウマの成虫
チャノキイロアザミウマの成虫
写真提供:HP埼玉の農作物病害虫写真集 チャノキイロアザミウマの成虫

まとめ

アザミウマはウイルスを媒介し、小さくて発見しにくい、ハウスだと一年中発生する、また農薬に対する耐性もあったりで、大変厄介な害虫です。

ここで紹介した農薬は、JA販売店やホームセンターのガーデニング・資材、庭木コーナーにあるものもあります。ほ場で早期発見し、適切な薬剤や防除方法でしっかり発生を予防、ガードできると、農薬散布と言った農作業の回数を減らすことができます。

ピーマン栽培 芽かき・摘芯(摘心)・摘果の方法
ピーマン栽培では、よい果実を多く収穫するためには芽かきや摘芯・摘果という作業をする必要があります。ここではピーマン栽培の「芽かき」・「摘芯(摘心)」・「摘果」の作業について、そのタイミングや、位置などイラストを使ってわかりやすく説明します。
ピーマン水耕栽培 苗から始める手順や育て方
実もの野菜のピーマンは、苗からなら簡単に水耕栽培が可能です。ここでは、ピーマンの水耕栽培について、苗から始める手順から収穫までの育て方を、初心者の人にもわかりやすく説明します。
手軽に始める! ピーマンのプランター栽培方法 
ピーマンの栽培は病気や害虫に強く初心者の人でもプランターで簡単に栽培することができます。ここでは、ピーマンのプランター栽培について、タネや苗から始める手順から収穫までの育て方を、初心者の人にもわかりやすく説明します。
ピーマンに発生するアザミウマを防除する農薬について
ピーマン栽培におけるアザミウマ防除には、ディアナSCやコテツフロアブル、またネオニコチノイド系や有機リン系の農薬などが効果的です。農薬抵抗性の発生を防ぐためにローテーション散布を推奨し、生物農薬や物理的防除も併用すルコとが重要です。
ピーマンに発生するアブラムシを防除する農薬について
アブラムシはピーマンに害を与え、ウイルスを媒介する厄介な害虫です。防除には農薬や無農薬の方法があり、早期発見が重要です。農薬はRACコードに基づき、ローテーション散布が推奨されます。
ピーマンに発生するカメムシを防除する農薬について
カメムシはピーマンに被害を与える害虫で、有機リン系やピレスロイド系、ネオニコチノイド系の農薬が有効です。草刈りや除草なども防除に効果的です。この記事はこれらの防除方法を詳しく解説しています。
ピーマンの種まきと育苗の方法
ピーマンの種まき(播種)と育苗の方法について説明します。ピーマンは種子から育てることもできますし、ホームセンターで苗を購入することも可能です。種まきの方法は2つあり、それぞれの作業手順を記載しています。またホームセンターでの苗の選び方、そのあとの育苗の方法まで記載しています。
ピーマン栽培の肥料の基本とやり方
ピーマン栽培において、仕立て(整枝)、摘果などとともに重要となってくるのは施肥(元肥・追肥)です。施肥がしっかりと管理され、適切に行われると病害虫にも強くなり、綺麗で美味しいピーマンを収穫することができます。この記事では、ピーマン栽培に向いている肥料の種類や肥料のやり方、栽培方法別の肥料の違いなどをわかりやすく説明します。
ピーマン栽培における簡単、丈夫な支柱の立て方
ピーマンなど果菜類の栽培で重要になってくる要素として、「丈夫な支柱をしっかり立てられるか」があります。ピーマンは長期間栽培しますし、果実をたくさん着けることから、支柱を立てて植物をしっかり支える必要があります。この記事では、簡単で丈夫な支柱の立て方について解説します。
読めば流れがわかる!ピーマンの基礎知識と栽培方法の基本とコツ
この記事では、ピーマンの基本知識や家庭菜園などで使える栽培方法の基本、重要事項、注意点について解説します。記事が長いため、目次を見て必要な部分から読み進めてください。 ピーマンの基礎知識 作物名科目原産地育てやすさ種の価格の価格(円/1粒)苗の価格の価格(円/...
執筆者・監修者情報
執筆者・監修者

農家web編集部のメンバーが「農業者による農業者のための情報サイト」をコンセプトに、農業に関するあらゆる情報を丁寧にまとめてお届けしていきます。
編集部のメンバーは皆、実際に農業に携わりながら情報をまとめています。農学を極め樹木医の資格を持つ者、法人の経営・財務管理に長けている者、大規模農場の営農経験者などバラエティに富んだメンバーで構成されています。他にも農機具やスマート農業機器、ITなどのスキルも兼ね備えています。

農薬販売届 受付番号:210-0099

皆さまに本当に有益な情報をお伝えできるよう、心を込めて運営しています。
執筆者・監修者の詳細についてはこちら

\SNSはじめました!フォローお願いします!/

掲載内容については、調査のうえ、情報の正当性、公平性に万全を期して執筆しておりますが、誤記や誤りなどが見受けられる場合には「お問い合わせ」よりご連絡お願い申し上げます。

スポンサーリンク
\良い!と思ったらシェアお願いします/
\SNSはじめました!フォローお願いします!/
タイトルとURLをコピーしました