ハダニは大量発生しやすく、あっという間に広がってしまむ厄介な害虫です。ここではハダニとはどういう虫なのか、その特性と、みかん(ミカン)に発生するハダニを駆除、防除するためのおすすめ農薬を紹介します。また、農薬を使わないで防虫する、防除方法もあわせて紹介します。
ハダニに効く農薬
ハダニは生育サイクルが早く、抵抗性が持ちやすく、すでに薬剤に耐性を持つものもいます。以下の代表的な農薬の種類と種類別の対応表を参考に、ローテーション活用など、IPM(総合的害虫管理)をお勧めします。
みかんで使える、ハダニに効く農薬一覧
みかん栽培で使用できるハダニ用の農薬は以下が代表的です。
IRACコード | グループ名 | 主な農薬 |
---|---|---|
1B | 有機リン系 | マラソン |
3A | ピレスロイド系 | ロディー マブリックジェット |
6 | アベルメクチン系 ミルベマイシン系 (マクロライド系) | コロマイト メビウスフロアブル |
10A | クロフェンテジン ヘキシチアゾクス ジフロビダジン(IGR) | ニッソラン |
10B | エトキサゾール(IGR) | バロック |
12C | プロパルギット | オマイト水和剤 |
12D | テトラジホン | デデオン |
15 | ベンゾイル尿素系 | カスケード乳剤 |
19 | アミトラズ | ダニカット乳剤20 |
20B | アセキノシル | カネマイトフロアブル |
20D | ビフィナゼート | マイトコーネフロアブル |
21A | METI剤 | ピラニカ水和剤 ダニトロン |
23 | テトロン酸および テトラミン酸誘導体 | ダニエモンフロアブル |
25A | β- ケトニトリル誘導体 | スターマイト ダニサラバ |
25B | カルボキサニリド系 | ダニコング |
※記載事項が変更、修正されている場合があります。使用する際にはラベルをよく読み、用法・用量を守ってお使いください。
また、より詳しく網羅的に使える農薬を検索したい方は、是非、この農薬検索をご利用ください。
殺虫剤はハダニ類だけでなく、カイガラムシ類やアブラムシ類、アザミウマ類、ヨトウムシ、コナジラミ、コガネムシ、ハスモンヨトウ、ネキリムシ、ヨコバイ、ハモグリバエなど幅広い殺虫スペクトラムを持つものも多いので、うまく活用しましょう。
上記の農薬は水で溶かして薄めて使用する液剤や水溶性の粉剤、粒状タイプです。希釈方法等については下記をご参考ください。
そもそも、ハダニはどういう害虫?
ハダニとは?
ハダニはダニの仲間で、クモの仲間、ハダニ上科に属します。体長は0.3~0.8mmと非常に小さく、吐糸管から糸を出すため、英名は「Spider mite」と呼ばれています。ハダニの種類は非常に多く、主なものでは、ミカンハダニ、カンザワハダニ、ナミハダニなどがいます。農業上でよく問題になるハダニは赤いアカダニ(ミカンハダニ、カンザワハダニ、リンゴハダニなど)を指すことが多いです。(チャノホコリダニは乳白色です)
高温と乾燥した環境を好み、雨が苦手なため、ハウスはハダニが繁殖する格好の場所と言えます。ハダニは卵期間2~3日、幼虫~若虫期間6~7日で成虫になる、蛹を経ない不完全変態で、成長サイクルが早く、大量発生しやすい害虫です。
どうしてハダニは害虫なのか?
ハダニは直接植物の葉、果実の汁を吸うこと(吸汁)で、小さな白班が点々とできてしまいます。吸汁が増えると植物の株、葉茎の伸長が悪くなり、最悪、落葉したり、枯れてしまいます(枯死)。
1箇所に大量発生するとハダニの移動性が高まり、あっという間に周りに被害が広がっていきます。このため、早期発見、早期防除が非常に大事です。
ハダニに効く農薬
ハダニは生育サイクルが早く、抵抗性を持ちやすく、そもそも薬剤に耐性を持つものもいます。以下の代表的な農薬の種類と種類別の対応表を参考に、ローテーション活用など、IPM(総合的害虫管理)をお勧めします。
ハダニに効く代表的な農薬
エトキサゾール(IGR) バロック
新しいタイプの化合物で、ダニ類の成長を阻害します。ハダニ類に対して卓効を示し、 ミカンハダニ、リンゴハダニ、ナミハダニ、カンザワハダニなど各種ハダニ類に優れた殺卵・ 殺幼若虫作用が期待できます。
β- ケトニトリル誘導体 スターマイト、ダニサラバ
抵抗性ハダニに効果が高く、卵から成虫までの全ステージに安定した効果を発揮するタイプの農薬です。低温時でも安定した効果を発揮し、且つ耐雨性に優れています。
抵抗性ハダニの対処法
抵抗性ハダニとは、農薬の種類、活用が増えることで、たまたま耐性があって生き残った特定の農薬が効かない性質のハダニが、世代を重ねて集団化したものです。
ハダニは発育スピードが速く、短期間で世代を繰り返すため、ほかの害虫より抵抗性の発達スピードが速い害虫です。
殺虫剤を散布しても、翌日集団でハダニが生息している場合は、抵抗性を疑ってよいでしょう。
ハダニの防除は、お使いの農薬のRACコードを確認して、タイプの異なる殺虫剤のローテーション散布を心がけること、下記の生物的、物理的、耕種的防除法を取り入れたIPM防除体系を組んで、統合的に実践することが重要です。
有機JAS縛りでハダニ駆除に使える農薬
有機JASで使用できる農薬の代表的なものは、生物農薬が挙げられます。生物農薬については下記に詳しく、具体的な製品も紹介していますので、ご参考ください。
また、還元澱粉糖化物を有効成分とする農薬、商品名だと、「キモンブロック液剤」「ベニカマイルドスプレー」「ベニカマイルド液剤」もハダニ駆除に使えます。
またマシン油乳剤は、薬剤抵抗性発達の恐れもないのでハダニ駆除には有効です。マシン油乳剤には様々な種類があり、最もメジャーな「ハーベストオイル」は殺ダニ効果、機能性展着剤効果に優れますが、果実糖度に若干影響があること、また「スプレーオイル」は、効果はやや劣るものの、果実糖度は下がらない、「アタックオイル」はその中間、などそれぞれに特性があります。
その他、微生物由来の「コロマイト水和剤」は、新殺ダニ剤で水和剤のため、乳剤の使いにくいミカンにも利用が可能です。
こちらの農薬検索サイトでは、有機栽培仕様可能薬剤(推定)も調べることができます。
無農薬でハダニを駆除する方法
天敵防除
みかん栽培には、ミカンサビダニ、ミカンハダニが寄生します。天敵には、カブリダニ類(ミヤコカブリダニ、スワルスキーカブリダニ、チリカブリダニ)、キアシクロヒメテントウ、ハダニアザウマなどがいます。最近の研究では、ミカンサビダニにはコウズケカブリダニの有効性が実証されています。
ミヤコカブリダニやコウズケカブリダニは、カンキツ園に土着して生息していますがコウズケカブリダニは、ハダニの捕食だけでは増殖しないのでエサとして花粉を加えるとより増殖しハダニの被害を縮小させます。
ハダニの密度が高いと効果が薄れます。すでに発生してしまっている場合には薬剤など、密度を下げてから使う必要があります。
思うようカブリダニが増えない場合には、天敵製剤のミヤコカブリダニ剤や、スワルスキーカブリダニ剤、チリカブリダニ剤を放飼する方法もあります。
物理的防除
ミカン栽培は農薬の抵抗性が問題となっており、上記でも説明した土着天敵類の活用が広がっています。かんきつ類の防除として、土壌天敵をふやすために下草にナギナタガヤやバミューダグラスを植えると天敵が増え、除草の手間も減らすことができます。また剪定、マルチや防虫シートなども効果があります。
まとめ
ハダニは大量発生しやすく、幅広い農作物に食害をもたらす害虫です。特にみかん(ミカン)にとっては、非常に厄介な害虫です。早期発見する仕組みを取り入れ、抵抗性を高めないために、農薬をローテーション散布、生物農薬を有効活用したIPM(総合的害虫管理)が重要です。