除草剤は安全なのか
除草剤の種類でも、土表面に散布して雑草の発芽を抑制したり、発芽直後に枯死させる「土壌処理剤」と、すでに伸びている雑草の葉や茎に直接かけて枯らしてしまう「茎葉処理剤」とタイプがあります。
また、除草剤の研究により、枯らす対象となる植物を絞り込む「選択性除草剤」が多く開発されています。このため、更に「非選択性除草剤」か、対象とする植物種を枯らす「選択性除草剤」かに分けられます。
また、枯らす仕組みは主に、光合成を阻害して枯らすもの、植物ホルモンを撹乱させて生長を阻害するもの、植物固有のアミノ酸の生合成を阻害して枯らすものがあり、その機能は本当に様々です。
ですので、一概に除草剤とまとめることは出来ません。除草剤の種類については、下記に詳しく説明していますので、ご参考ください。
除草剤の安全性という観点では、農薬登録番号がある商品は、農薬取締法による審査を受け、合格している証になります。つまり、その効力、安全性、毒性、残留性などに関する試験成績を提出して審査を受け、行政庁(農林水産大臣)の承諾を取得していると言え、使用方法を守って使う限りは、安全性が担保されているものと言えます。
なので、安全性を気にする場合は、その商品に農薬登録番号があるかどうかをまず確認し、使用方法をきちんと守るようにしましょう。
除草剤を使用する時に注意すること
除草剤を散布するときの服装
除草剤は農薬に該当します。ですので、使用する際は必ず、「手袋」「軍手」に「マスク」そして「長靴」を身に付け、服装も除草剤が人体に直に付着しないように、液体等が浸透しない長袖、長ズボンを身に付けるようにしてください。
また、除草剤の性質によっては、マスクの強度も変わってきます。お使いになる除草剤の説明を読み、防塵マスク等、適するマスクを選びましょう。
もし直接自分の皮膚やペットに除草剤が付着した場合は、直ちに石鹸等でよく洗い、何らかの異常が認められた場合は、医師に相談するようにしてください。
周りへの配慮
除草剤は種類によりますが、非選択性のものが多いので、枯らしたくない庭木や果樹の樹木の幹や枝葉にかかると、その木に影響を与えてしまいます。農耕地(畑、水田)での枯らしたくない作物も同様で、除草剤がかかると枯れてしまいます。また、特に非選択性の除草剤は、魚類などの水生生物に影響を及ぼす可能性があります。このため、枯らしたくない樹木、苗木、作物や、隣の敷地、また河川、水源地、養殖池などに飛散、流入しないよう注意することが極めて重要です。特に養魚田周辺でのご使用には注意してください。
このため、風が強い日などは除草剤の散布に向かないので、散布する時は、風が少ない日に行うのが無難です。
具体的な除草剤の紹介
除草剤は種類に応じて、様々なタイプがあります。ここでは、薬剤として農薬登録がされている除草剤に絞って、タイプ別に一覧をご紹介します。
グリホサート系葉茎処理剤
グリホサートは、イネ科、広葉の一年生雑草、多年生雑草、ササ類、雑灌木などほぼすべての草種、草木に有効で、枯らす効果があります。性質は遅効性で効果の発現に3 ~ 7日、そして完全 な効果に10日~ 2カ月ほどを要します。
商品は、液剤の原液を希釈し薄めて、ジョウロや噴霧器で散布するものから、直接ボトルのノズルやシャワーヘッドから散布できるものまで幅広くあります。成分は、グリホサートカリウム塩の方が、グリホサートイソプロピルアミン塩より、雨に強いとされています。
グルホシネート系葉茎処理剤
効果の進展はグリホサートよりも早く即効性があり、1 ~ 3日で効果が発現し、5 ~ 20 日で完全な効果がでますが、吸収移行型ではないため、地下部 、つまり根までは枯死せず、雑草・草はグリホサートに比べ、再生しやすい特徴があります。
非選択性土壌処理剤
商品名 | カダン除草王 | ネコソギパワー粒剤 (ネコソギトップW) | ネコソギエースV(粒状) | クサノンEX粒剤 |
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概要 | ||||
販売元 | フマキラー(株) | レインボー薬品(株) | レインボー薬品(株) | 住友化学園芸(株) |
有効成分 | カルブチレート | アミカルバゾン ブロマシル | ヘキサジノン DBN、DCMU | ターバシル フルミオキサジン |
農耕地使用 | ○ | ○ | ○ | ○ |
グリホサート系除草剤の安全性について
グリホサートが危険であるという具体的な主張の内容
近年、グリホサートの安全性について、様々なシーンで議論がなされています。主には、グリホサートが恐らく発がん性物質であり、ヒトの健康を害するものであるという主張、また内分泌かく乱物質であるという主張、またヒトの母乳や尿中に蓄積して、腎臓などに障害を及ぼすと言う主張、更にはグリホサートを主成分とする除草剤に含まれる界面活性剤に予期しない毒性があるという主張です。
グリホサートが発がん性物質という主張について
2015 年、IARC (国際がん研究機関)はグリホサートを検証する委員会を開催し、既発表の論文を部分的に検証したIARC(国際がん研究機関)は、グリホサートを「クラス 2A」すなわち「ヒトに対して恐らく発がん性がある」に分類しました。(IARC, 2015)
これに加え、学校の校庭整備の業務で使用したラウンドアップが要因で、悪性リンパ腫を発症した、と主張した末期がん患者との裁判で、アメリカ合衆国カリフォルニア州サンフランシスコ市の陪審は2018年8月10日、ラウンドアップ 販売会社のモンサントに、損害賠償金2億8,900万ドル(約320億円)の支払いを命じました。
しかしながら、本件は、モンサントを買収したバイエルが、ラウンドアップ の責任、不正行為は認めることはないまま、和解を成立させています。
現在では、アメリカ合衆国、カナダ、ニュージーランド、オーストラリア、欧州連合(EU)では、それぞれ「ヒトの発がんリスクの可能性は低い」「ヒトにおけるグリホサートばく露及び発がんとの関連に確証的なエビデンスはない」「グリホサートはヒトに発がんリスクをもたらさない」と結論づけていますし、米環境保護庁(EPA)は、除草剤に用いられているグリホサートに「発がんのおそれがある」と表示することを禁止するガイダンスを発布しています。
また、日本でラウンドアップ を販売している日産化学工業も、グリホサートに発がん性は無いと判断している声明を発表し、内閣府食品安全委員会も、発がん性・遺伝毒性は認められなかったと結論を出しています。
他のリスクの主張について
他のリスクの主張についても、米環境保護庁(EPA)は、グリホサートは内分泌かく乱物質ではない、また、検知可能な量のグリホサートが残留していても健康上の懸念とならないこと、母乳には蓄積しないこと、ヒトの腎臓などに障害を及ぼさないことを述べています。
また、グリホサート 系除草剤に含まれている界面活性剤については、グリホサートを含む除草剤及びこれに含まれる界面活性剤について、生態毒性のリスク評価を実施し、水生生息地以外の野生生物に重大なリスクとならないとの結論を出しています。(モンサント 2016年7月)
さらに、メーカーのHPで、土に落ちたラウンドアップの成分は、処理後1時間以内のごく短時間で、土中の土の粒子に吸着し、その後微生物により自然物に分解され、約3~21日で半減、やがて消失すると記載されています。
グルホシネートの安全性について
グルホシネートは、グリホサートよりも効果に速効性がある上、微生物によって分解され、約半日~1日で半減するなど、グルホシネートの土壌中での分解は非常に速く、土壌、環境に優しい除草剤と言われています。
しかしながら、グルホネシートの残留物は冷凍食品に最長2年間残ることがあり、化学物質は熱湯で食品を調理しても簡単に破壊されないとの報告もなされています。(Pesticide Action Network,2008)
また、日本ではグルホシネート、グルホシネートPナトリウム塩は農薬登録されており、使用方法の規制がある中で、グリホサートの一日摂取許容量を、1mg/kg 体重/dayに対し、グルホシネートは0.0091 mg/kg 体重/day としていることから、グルホネシートのほうが人畜に対して毒性が強いと判断していると解釈できます。
また、ヨーロッパでは、除草剤としての登録が2018年に期限切れになっていることや、フランスで、2017年に食品安全、環境および労働のための国家機関によって生殖毒性化学物質(R1b)として分類されたため、現在では、グルホネシート系除草剤は市場から撤退しています。
まとめ
除草剤は、農薬登録番号を取得してある除草剤を正しい使用方法で使用すれば、一般に思われているほど危険なものではありません。残留物等も話題になりますが、最もよく使われるグリホサート系除草剤は、上記の通り、安全性は一定レベル担保されていると言えます。
除草行為での危険度で言えば、草刈り、草むしり時に、草刈り機による事故は毎年一定数起こっていて、こちらの方がはるかに危険です。また近年猛暑日が多く、除草という農作業自体が危険になっていて、除草剤が多年生でしつこい難雑草のスギナやドクダミなどを枯らして作業自体を少なくし、草刈り機による事故を減らしているのも事実です。
除草剤を散布、撒く場合は、用法に従い、正しい服装で、上記のポイントを守って、使用すれば、安全性は大丈夫と言えます。