この記事では、窒素が少ない肥料の見分け方・選び方と特徴、代表的な肥料の種類について、詳しく解説します。
窒素が少ない肥料の見分け方
窒素が少ない肥料の見分け方を解説します。
一番簡単で手軽に見分けることができる方法は、商品パッケージの裏側などにある「保証票」を確認することです。
普通肥料の場合は、保証成分量(主要な成分の含有量)や正味重量などを記載した保証票の添付が必要となりますので、必ず記載されています。
保証成分量に記載されている成分のうち、「窒素全量(TN)」、「アンモニア性窒素(AN)」、「硝酸性窒素(NN)」など、窒素と記載されているものの割合(%)が他のものと比べて低ければ、窒素の少ない肥料と言えるでしょう。
窒素の中でも、アンモニア性窒素と硝酸性窒素ではその効能の現れ方などが異なります。
また、特殊肥料のうち「堆肥」や「動物の排せつ物」については、同様に品質表示がされているはずです(出典:肥料の表示について 特殊肥料の品質表示 – FAMIC)。
窒素(N)、リン酸(P)、カリウム(K)のうち、窒素の含有量が少ない肥料タイプを山型、上がり型と読んだりします。(出典:肥料を使い分ける – KOMERI.COM)
窒素が少ない代表的な肥料
一般的な化成肥料
窒素の少ない肥料は、主に草花や鉢花、果樹用に作られた商品が多いです。
住友化学園芸の「花工場」もリン酸が他の成分に比べて多く配合されています。また、ハイポネックスジャパンの「ハイポネックス 専用液肥 開花促進」は窒素が含まれておらずリン酸が多量に含まれているので、花器類やラン類の花芽形成期やキクなどの止め肥の時期などに使用できます。
窒素の含有量を確認して、購入すると良いでしょう。
PK化成肥料
主にリン酸(P)とカリウム(K)を含んだ肥料です。基盤整備後の水田や造成後の草地、牧野によく使われています。
窒素を含まない、りん酸・加里・苦土を含有する高度化成肥料が多く、土壌中の窒素成分が高く、リン酸を効かせたいときに利用できます。
りん酸質肥料、加里質肥料
りん酸質肥料、加里質肥料とされている化学肥料には、窒素が含まれていません。それぞれ、用途に合わせて選択し、施用すると良いでしょう。
有機質肥料(有機肥料)
有機質肥料(有機肥料)の中でも各種類でそれぞれ特徴があり、米ぬかやバットグアノなどは他のものと比べて窒素が少ない肥料となっています。
肥料 | N (窒素) | P (リン酸) | K (カリウム) | 肥効のタイプ |
---|---|---|---|---|
油かす(油粕) | 多 | 少 | 少 | 緩効性 |
魚かす(魚粕) | 多 | 中 | 少 | 緩効性・遅効性 (但し窒素分は速効性が高い) |
発酵鶏糞 | 中 | 多 | 中 | 速効性 |
骨粉 | 中 | 多 | – | 緩効性 |
米ぬか(米糠) | 少 | 多 | 中 | 遅効性 |
バットグアノ | 少 | 多 | 少 | 緩効性 |
草木灰 | – | 少 | 多 | 速効性 |
窒素を投入したくない状況とは
窒素は、植物の生長には欠かせない要素の一つのはずです。それではなぜ窒素を投入したくない状況に陥るのでしょうか?
土壌中の窒素が過剰気味の場合
圃場の土壌性質や毎作の土作りにおける施肥によって窒素が蓄積し、過剰気味となる場合があります。
野菜や花木など植物の窒素吸収率は、一般的にリン酸などと比べると高いですが、それでも植物を早く生長させようとして肥料を上げすぎ、結果的に窒素過剰の状態となってしまうことが多くあります。
適量、適時の施肥が望ましいですが、仮に繁茂など窒素過剰気味となってしまった場合には、窒素が含まれない、もしくは窒素が少ない肥料を施用して、植物をコントロールします。
窒素よりもリン酸、カリウムの吸収が重要な植物や時期がある
植物によっては、窒素よりもリン酸、カリウムの吸収が大事なものもあります。例えば、花木は、美しく花を咲かせ、実を成らせるためには、窒素よりもリン酸のほうが重要です。逆に窒素を施用しすぎてしまうと、花や実の品質低下を招きやすくなります。
また、時期によっても窒素の施用をできるだけ抑えたいということがあります。みかんなど柑橘類については、果実肥大期以降に窒素栄養が豊富な状態である場合、炭水化物が伸び始めたばかりの新梢に強く転流していくので、果実肥大がよくならないということがあります。
そのため、時期によって、含有される成分量が異なる肥料を施用することも多いです。
窒素の含有量の考え方
「有機肥料のほうが窒素が少なくて、化成肥料のほうが窒素が多いんでしょ?」と勘違いする人がいます。結論から話すと、有機肥料であること、化成肥料であることが窒素の量を左右することはありません。「その肥料にどれだけの窒素成分が含まれているか」が重要なのです。
と言っても有機肥料の窒素は有機態窒素であり、その全量が無機態窒素に変わるということはないので、有機肥料のほうが正味の窒素含有量は少ないのですが。
購入、使用する肥料のラベルを確認してみてください。N-P-Kの数字が記載されていませんか?その「N」の成分保証率(%)を確認してください。例えば、正味量10kgの肥料でNが8%と記載されていれば、
10(kg)×0.08(8%)=800(g)
の窒素成分が含まれていることになります。もう一つの例として、正味量10kgの肥料でNが16%と記載されていれば、
10(kg)×0.16(16%)=1600(g)
の窒素成分が含まれていることになります。このことからわかるように、成分保証率によって、肥料の中にどれだけの窒素成分が含まれているかが大きく変わります。肥料を購入・使用するときには必ずラベルを確認して、窒素肥料がどれだけ含まれているのかなどを自分で確認することが大事です。