この記事では、家庭で簡単に作れる有機肥料として、ぼかし肥料や堆肥の作り方をメインにその作り方や効果を詳しく解説します。
有機肥料の作り方の基本
家庭でも作れる有機肥料ですが、前提としてホームセンターなどで販売されている有機質肥料のような下記のものは簡単に作れません。
家庭で作れるもののメインは、「堆肥」と「ぼかし肥料」となります。
家庭で作れる有機肥料とは
先述したとおり、家庭で作れる有機肥料のメインは「堆肥」と「ぼかし肥料」です。そのほかにもバナナの皮から液体肥料を抽出したりすることもできます。
以下に、各素材を利用した堆肥やぼかし肥料など、肥料の作り方を記載します。
生ゴミを利用した堆肥・ぼかし肥料の作り方
生ゴミを使用して、主に以下の2種類の肥料を作ることができます。
厳密には、堆肥とぼかし肥料は別物となります。堆肥とぼかし肥料の大きな違いは「土に入れたときに栄養素として分解されるスピード」です。
ぼかし肥料と比較して、堆肥のほうが微生物による分解に時間が長くかかります(遅効性が高い)。
ぼかし肥料は、乳酸菌や酵母など微生物による分解が進んだ状態となりますので、栄養素として吸収されやすいです(速効性が高い)。
世間一般的に、生ゴミ堆肥として紹介されているものは、発酵の進行度合いによってはぼかし肥料に近いかたちであり、厳密には「堆肥(完熟堆肥)」とは言えないかもしれません。
農家webでは、生ゴミの堆肥とぼかし肥料を論理的に以下のように区別することにします。
生ゴミ堆肥・ぼかし肥料の作り方は、次の記事で詳しく解説していますので参考にしてください。使用しないほうが良い生ゴミの種類なども紹介しています。一番手軽にできるのは「牛乳パックを使った生ゴミ堆肥づくり」です。
コーヒーかす・茶殻やバナナの皮を利用した肥料、堆肥の作り方
コーヒーかすや茶殻、バナナの皮からも肥料や堆肥が作れます。
コーヒーかすや茶殻から堆肥を作る
基本的には生ゴミの堆肥化と同じ方法で作ります。ダンボールを容器として作ることもでき、手軽に試すことができます。下記にダンボール箱を使ったコーヒーかす堆肥の作り方を掲載します。
- ドリップ等、使用済みのコーヒーがら(出がらし)は水分を含んでいるので、ベランダなど外で天日干し、電子レンジ、フライパンによる加熱などの方法により乾燥させる
- 箱状に組み立てた段ボールを容器とし、その底に新聞紙を敷く(バケツでもOKですが、紙材質のものの方が効果的です)
- 新聞紙の上に、腐葉土と米ぬかを入れ、乾燥させ終えたコーヒーがら(出がらし)と必要に応じてアロマオイルを加える
- 段ボールの蓋を閉じ、タオルもしくは布で覆う
- 雨のあたらない風通しのよい場所に置く(風通しを保つため地面から離して設置する)
- できるだけ毎日段ボールを振り、中身をかき混ぜることで空気を取り込む(コーヒーがらを追加で足すことも可能)
- 発酵が進むと熱が発生し温度が上昇するので、段ボールから温かみが感じられるようになる
- 目安として3か月程度経過すると、コーヒーかす肥料が完成
そのほかにも詳しい作り方を掲載していますので、参考にしてください。
バナナの皮を使った有機液体肥料の作り方
バナナなど果物の皮から液体肥料を作ることもできます。特にバナナの皮は、カリウムが多く含まれている素材です。詳しい作り方は、下記の記事を参考にしてください。
落ち葉や枝を利用した堆肥の作り方
庭や玄関などの掃除で集まった落ち葉や木の枝も堆肥にすることができます。生ゴミの堆肥化などと同じようなやり方で発酵、熟成させることで、植物由来の肥料となります。
具体的な作り方は、以下のとおりです。
- コンポストなど容器を準備します。
- 落ち葉や木の枝をコンポストに投入します。このとき、量は1/5程度が良いでしょう。投入したらよく踏みつけます。
- 米ぬかや鶏糞などの有機質の原料とコーランネオなどの発酵促進剤を混ぜ合わせたものを上から全面的にふりかけます。
- 手順2〜3を繰り返し、積み上げます。
- 1ヶ月放置したあと、切り返しを実施します(かき混ぜます)。
- さらに2ヶ月〜3ヶ月経つと堆肥ができます。その間、15日に1回程度切り返しを実施し、水分が不足してそうであれば加えます。
米ぬかや油かすを利用したぼかし肥料の作り方
米ぬかや油かす、籾殻(もみ殻)などを混ぜ合わせて、ぼかし肥料を作ることもできます。ぼかし肥料にすることによって、微生物が活性化・有機物が分解された状態となり、速効性の高い肥料として使用することができます。
また、米ぬかはリン酸が多く含まれているのでおすすめです。
有機肥料とは
有機肥料(有機質肥料)とは、動植物由来(油粕や米ぬかなど植物性の有機物、鶏糞や魚粉、骨粉などの動物性の有機物)の原料を使って作られている肥料を指します。表示された成分以外にも生育に必要な成分(動植物由来のアミノ酸など)が含まれていることもあります。
有機肥料は、有機物を土壌微生物が分解することで、植物が吸収できる養分に変化します。そのため、肥料の効き始めがやや遅く、肥効が長く続きやすい肥料が多いです(緩効性肥料、遅効性肥料)。
肥料 | N (窒素) | P (リン酸) | K (カリウム) | 肥効のタイプ |
---|---|---|---|---|
油かす(油粕) | 多 | 少 | 少 | 緩効性 |
魚かす(魚粕) | 多 | 中 | 少 | 緩効性・遅効性 (但し窒素分は速効性が高い) |
発酵鶏糞 | 中 | 多 | 中 | 速効性 |
骨粉 | 中 | 多 | – | 緩効性 |
米ぬか(米糠) | 少 | 多 | 中 | 遅効性 |
バットグアノ | 少 | 多 | 少 | 緩効性 |
草木灰 | – | 少 | 多 | 速効性 |
堆肥とは
堆肥とは、稲わらや落ち葉、家畜ふん尿(牛糞、豚糞、鶏糞など)、食品残渣などの様々な有機物を微生物の力を使って分解させ、成分的に安定化するまで腐熟させたものです。その過程を「堆肥化」と呼びます。
堆肥化の過程で有機物が分解するときに発生する発酵熱によって、堆肥の温度が上昇し、水分の蒸発が
促進され、堆肥の水分が低下します。また、このときの高温によって病原菌や雑草の種子などを死滅することで、衛生的な堆肥が製造されます。
ぼかし肥料とは
ぼかし肥料とは、油かすや米ぬか、籾殻(もみ殻)、鶏糞(鶏ふん)など複数の有機質資材を配合させたものに土(土着菌)や発酵促進剤などを加えて、発酵させた肥料のことを指します。昔は有機質を土などで肥料分を薄めて肥効を「ぼかす」としていたことから、ぼかし肥料という名前がついたと言われています。
ぼかし肥料は、昔の農家では自分たちで独自で作っていましたが、化学肥料が発明されて窒素、リン酸、カリウム(加里)などの養分が手軽に補えるようになったことから、製造、使用されることも少なくなりました。しかし、近年は可能な限り化学肥料を使わない栽培方法(特別栽培や有機栽培)が人気となり、再び「ぼかし肥料」に注目が集まっています。
発酵させることにより、有機肥料(有機質肥料)に比べて植物が吸収することができるアンモニア態窒素、硝酸態窒素に無機化されるため、施してからすぐに肥料が効き始める速効性が備わっています。緩効性、遅効性という有機肥料の特長に、速効性を併せ持つことによって、より使い方の幅が広がる肥料となっています。
また、自分でぼかし肥料を作ることもできます。正直、良質なぼかし肥料を作るのは結構難しく手間のかかる作業なので、家庭菜園や園芸などで有機栽培に挑戦されたいという方は購入されることをおすすめします。