この記事では、窒素が多く含まれている有機肥料の種類とその基礎知識、有機JAS認定の窒素肥料などについて、詳しく解説します。
窒素の多い有機肥料の種類
一言で有機肥料(有機質肥料)と言っても、様々な種類があります。また各肥料は、肥料の三要素の成分を含んでいますが、その種類によって含有されている成分の量が異なります。
下記に、主な有機肥料(有機質肥料)の種類と窒素(N)、リン酸(P)、カリウム(K)の含有量のイメージ、肥効のタイプをまとめました。
肥料 | N (窒素) | P (リン酸) | K (カリウム) | 肥効のタイプ |
---|---|---|---|---|
油かす(油粕) | 多 | 少 | 少 | 緩効性 |
魚かす(魚粕) | 多 | 中 | 少 | 緩効性・遅効性 (但し窒素分は速効性が高い) |
発酵鶏糞 | 中 | 多 | 中 | 速効性 |
骨粉 | 中 | 多 | – | 緩効性 |
米ぬか(米糠) | 少 | 多 | 中 | 遅効性 |
バットグアノ | 少 | 多 | 少 | 緩効性 |
草木灰 | – | 少 | 多 | 速効性 |
上記からもわかるとおり、窒素が多く含まれている有機肥料は、「油かす」や「魚かす」などが挙げられます。「鶏糞」や「骨粉(特に多く含まれるのは肉骨粉)」にもそれなりに窒素が含まれているため、資材としてはおすすめです。
また、近年では鶏(ニワトリ)の羽を加圧蒸製した「フェザーミール」という肥料もあります。この資材は高タンパクで窒素含有率が10%以上のものもあります。
有機質の肥料は、温度によっても窒素の現れ方(窒素の無機化)が変わってきます。一般的に、温度が低いときよりも高いときのほうが、肥効(肥料の効果)が現れやすくなります。
特に米ぬかや魚かすの窒素の無機化は、温度が下がるほど遅れます。魚かすは本来速効性のある肥料ですが、5℃〜10℃程度まで温度が下がったときには肥効の現れ方が鈍くなります(第5章 有機質資材の使い方 – 岡山県)
また、窒素だけではなくリン酸やカリウムを含んでいる有機質肥料がほとんどであるため、窒素の効果を狙った施用をしたい場合には注意が必要です。
油粕(油かす)
油粕(油かす)は、ナタネ(菜種)やダイズ(大豆)から油を搾る工程の残りかすを指し、それを主な原料として使用する有機(有機物)肥料を油かす肥料と呼びます。
油かす肥料は、その油かすの種類によっても成分が異なります。
ナタネ(菜種)油かすは、窒素が主成分で、リン酸やカリウムも多少含んでいることが特徴です。また、土壌で分解されるのが遅いため、効き目が長い、遅効の肥料ということになります。
ダイズ(大豆)油かすも、窒素が主成分ですが、リン酸やカリウムをあまり含んでいないのが特徴です。また、土壌で分解されるのが早いため、ナタネ(菜種)油かすと比較すると、効果が表れるのが早い、即効の肥料ということになります。
単位:% | ナタネ(菜種)油かす | ダイズ(大豆)油かす |
---|---|---|
窒素(N) | 5 | 7 |
リン酸(P) | 2 | 1 |
カリ(K) | 1 | 2 |
魚粕(魚かす)
魚粉肥料は、イワシ、カツオ、タラ、マグロなど生魚を原料とします。それらの魚を以下の工程で肥料にしていきます。
- 原料を水と一緒に煮沸します。
- 圧搾器を使い、水分や油脂を搾ります(この時搾った油が魚油です)。
- 乾燥、粉砕したものが魚粕(魚かす)となります。
肉質(タンパク質)が多いため、窒素含有量が高く、窒素は7%〜10%程度含まれています(肥料の成分表(有機質肥料の標準含有成分量)- ぐんまアグリネット)。また、骨も含んでいるため、リン酸も多く含まれています。
魚かすを粉末にしたものが、魚粉(魚かす粉末)肥料です。魚かす粉末は、普通肥料に分類され、公定規格で窒素、リン酸の含有量が規定されています。
鶏糞(鶏ふん)
鶏糞は、同じ家畜糞類の牛糞や豚糞と比較されることが多いです。家畜糞類は、特殊肥料のため成分含有量に幅がありますが、かつて農林水産省が実施した調査では以下の値が示されています。
家畜由来の肥料の種類 | N(窒素)% | P(リン酸)% | K(加里)% |
---|---|---|---|
牛糞 | 1.9 | 2.3 | 2.4 |
豚糞 | 3.0 | 5.8 | 2.6 |
鶏糞 | 3.2 | 6.5 | 3.5 |
製造・利用の現状とその成分的特徴, 2000より)
鶏糞の特徴は、下記のとおりです。
- 成分の特徴:鶏糞、牛糞ではP(リン酸)・K(加里)が、豚糞ではP(リン酸)が、比較的多く含まれています。また、牛糞や豚糞に比べて「窒素・りん酸・加里」などの肥料成分がバランス良く含まれていることが特徴です。
- 分解の速度:家畜糞類の分解速度としては、鶏糞が最も早く、牛糞と豚糞はそれより遅いです。速効性のある鶏糞は追肥に利用され、牛糞や豚糞(および馬糞)は元肥として利用されることが多いです。
- 購入のしやすさ:鶏糞は、堆肥や肥料としてホームセンターなどで安価に購入できる資材です。
米ぬか
米ぬかは、精米するときに玄米の表面が削られて粉状になったものを指します。精米の際に削り取られる外皮の部分を有機(有機物)肥料として利用できます。リン酸が多く含まれ、糖分やタンパク質も含まれているため、有用な土壌微生物の働きを活性化させる効果もあります。
米ぬかは脂質を多く含み、有機物に含まれる炭素(C)含有率(%)と窒素(N)含有率(%)の比を表すC/N比(炭素率)が高いため、土壌中での分解が相対的に遅いので、そのまま使用するよりもぼかし肥料の原材料として使用するのが一般的かと思います。
米ぬかはコイン精米機やJAのライスセンターでもらえることもありますし、資材として販売されていることもあります。
米ぬかは、油かすなどと比べるとそこまで多くの窒素を含んでいませんが、リン酸が豊富、かつカリウムも含まれていることから、有機肥料のベースになる資材です。その他の有機肥料と合わせることでバランスの良い施肥が可能となります。
有機JAS認定の窒素肥料
先述した有機質肥料や特殊肥料の他にも、有機栽培で使用できる窒素肥料はあります。それは、「有機JASに認証された肥料」です。
有機栽培と聞くと、動物や植物から何らかの方法で生成された資材のみ使用できると思いがちですが、そうではありません。天然の鉱石やかん水などから精製、回収したものや有機質を組み合わせて製造、成型したものも使用できる場合があります。
例としては、魚体の水溶性タンパク質とグルテン、米ぬかなどを混ぜ合わせて乾燥成型した指定配合肥料などがあります。いずれの資材も、その原料がすべて有機許容原料であることを前提に、有機JASによる認定を受けた資材であれば、有機栽培に使用することができます。
有機資材は個別で認証されているものもあります。有機資材リストは、農林水産省、各認証団体によって公開されています。
窒素の重要性とその効果
窒素(N)は、肥料の三要素の一つで植物の生育に最も大きく影響する要素です。光合成に必要な葉緑素、植物の体を形作るタンパク質など、植物が生長する上で重要な働きをする物質となります。窒素肥料は「葉肥(はごえ)」とも呼ばれ、生育の初期に効果的であり、茎と葉の生長に大きく影響します。
窒素を含む有機肥料の購入場所
家庭菜園等で使用する肥料は、ホームセンター、100均、インターネットなどで購入可能です。肥料を購入できる主な場所・方法は以下のとおりです。プロ農家の方は、JAや資材店等に相談すると良いでしょう。