斑点米はカメムシの吸汁被害が原因で発生します。防除対策として、稲の出穂前に除草し、適切なタイミングで農薬を散布することが重要です。RACコードを確認し、異なる農薬をローテーションで使用すると効果的です。
カメムシとは?
カメムシは、カメムシ目のカメムシ亜目に属します。頭は先端が尖った三角形の形状、体は五角形に近しい形状が特徴です。非常にたくさんの種類があり、四角いミドリカメムシから細長いクモヘリカメムシなど、形は様々です。
日本では、カメムシを「クサムシ」「ヘコキムシ」「ヘッピリ」「クサンボ」「ジャコ」などと呼んでいる地方もあります。
カメムシの特徴として、敵の攻撃などを避けるため、腹面から悪臭の分泌液を飛ばします。この匂いが強烈なため、カメムシは忌み嫌われています。
ほとんどのカメムシは、落ち葉の中、樹上などで成虫で越冬し、春になって活動を開始します。その後夏になるにつけ、ヤシャブシ、ヒノキ、スギなどに移り、幼虫が増殖し、8月に新成虫が活動するようになります。大量発生した年は、ヒノキ、スギから果樹など他の木にやってくる数が増え、農作物に被害を及ぼします。
日本では特にウンカ、イナゴと並んで稲作に危害を加える害虫で忌避されています。
どうしてカメムシは害虫なのか? 斑点米の被害
カメムシの中で、茎葉、果実から汁を吸うタイプがいます。これらが吸汁すると、吸汁された果実は、形が萎縮、変形し、落果したり、最悪腐敗してしまい、果樹、葉菜類、花き問わず、多大な被害が出てしまいます。水稲だと、下の写真のように、カメムシの吸汁加害によって玄米が部分的に黒く変色し、通称「斑点米」になって米の等級が下がる被害が有名です。
カメムシの中でも、特に甚大な病害を与えるのは、ホオズキカメムシ、チャバネアオカメムシ、ツヤアオカメムシ、クサギカメムシです。そして、稲に被害をもたらすのは、クモヘリカメムシ、オオトゲシラホシカメムシ、アオクサカメ、クロカメムシ、ミナミアオカメムシ、ツマグロヨコバイ、カスミカメムシ類(アカスジカスミカメ、アカヒゲホソミドリカスミカメ)、ホソハリカメムシが有名です。
斑点米を防ぐために〜 カメムシの防除について
畦畔の除草・防草による防除
カメムシは雑草に身を隠すため、雑草が多いと、カメムシの発生を助長してしまいます。また、イネ科雑草(特にスズメノカタビラ、メヒシバなど)を好んで寄生植物にします。このため、圃場をしっかり除草することは斑点米を減らすために、非常に重要です。
草刈りするタイミング
カメムシはイネ科植物の出穂期が大好きです。このことから、「稲の出穂期にカメムシを稲の付近に発生させない」ことが大原則になります。
具体的には、「稲の出穂1ヶ月前と、その2〜3週間後に2回畦畔の草刈りを行うことで稲の出穂期に畦畔の雑草に出穂させず、カメムシを発生させないようにする」という方法になります。
ここで重要なのは、稲の出穂期に畦畔の雑草に出穂させないことです。出穂した後に畦畔を草刈りすると、その雑草の穂が田んぼに入って、カメムシを呼び込んでしまうので注意が必要です。特に2回目の草刈りは、雑草の出穂前に行うようにしましょう。
草刈り、除草については、以下のコンテンツが参考になります。
除草剤による除草
畦畔(けいはん)の除草は、労力がかかり農家の悩みの一つでもあります。畦畔の雑草は、大きくなりすぎると景観を悪くするだけでなく、害虫の発生にもつながります。しかし、畔は雑草の根が張ることにより、畔を維持しているため、安易な除草剤の利用は、畦畔や法面が崩れる原因ともなります。
おすすめできるのは、根まで枯らさないバスタやザクサといったグルホシネート系の除草剤や、抑制剤として使える除草剤です。詳しくは下記を参考にしてみてください。
その他
また雑草をうまく生かして、抑制させる、「雑草抑制シート」なども開発されています。
さらに、カメムシが大好きなイネ科雑草を減らすために、シソ科の多年草であるミント系を植えて、イネ科雑草を駆逐させ、減らす方法をとっている方もいらっしゃるようです。このように、イネ科の雑草が繁殖しないようにグランドカバープランツを有効活用するのもおすすめです。
農薬による防除
カメムシは農作物の代表的な害虫のため、カメムシ防除に使える多くの適用農薬があります。既に水田で複数の発生が確認された場合は、速効性がある農薬は非常に有効な手段になります。
カメムシに効く代表的な農薬の種類
有機リン系 エルサン、スミチオン
有機リン系殺虫剤は殺虫剤の中でも、昆虫の神経系を阻害するタイプで、殺虫剤の代表的なタイプです。代表的な有機リン系農薬は、エルサン、オルトランやスミチオンがあり、カメムシの場合、エルサンが適用できます。
ネオニコチノイド系 ダントツ、スタークル、アドマイヤーなど
ネオニコチノイド系とは、90年代に登場した比較的新しい殺虫成分で、ニコチンの仲間です。ニコチン性アセチルコリン受容体と結合し、信号の伝達を阻止し、結果、昆虫は麻痺し、死に至ります。
浸透性、速効性、持続性が優れていることや幅広い殺虫スペクトラムを持つため、現在非常によく使用されている殺虫剤です。ネオニコチノイド系農薬については下記で詳しく説明しています。ご参考ください。
家庭園芸でよく使われる住友化学の「ベニカベジフルVスプレー」や「ベニカXファインスプレー」「ベニカXネクストスプレー」「ベニカベジフルスプレー」は、ネオニコチノイド系のクロチアニジンを成分にしています。
水稲(稲)で使えるカメムシに効く農薬一覧
※薬剤を使用する際にはラベルをよく読み、用法・用量を守ってお使いください。特に薬害を避けるためにも、収穫前何日以内まで散布可能か、適期を確認するようにして下さい。
上記の農薬は水で溶かして薄めて使用する液剤(乳剤など)や水溶性の粉剤、粒剤(粒状や顆粒)です。希釈方法等については下記をご参考ください。
また、農薬の散布には噴霧器など適切なツールを使うと効果が格段に上がります。噴霧器、散布機につては下記を参考にしてみてください。
ぜひ、上記で紹介した斑点米カメムシ対策を試してみて下さい。