ヒエは、水田の生える代表的な雑草で、いろいろな種類がありますがその総称がノビエ(野稗)です。
ヒエ(ノビエ)は、3葉期までの除草が大切といわれますが、除草剤が効かず大きくなったノビエには、後期剤をつかって除草するしかありません。この記事では大きくなったヒエにも使えるおすすめの後期剤と、その効果的な使い方について説明します。
後期剤とは
田んぼ(水稲)の除草剤には、散布時期により水稲の除草剤は、その散布する時期と効果により「初期剤」「中期剤」「後期剤」「一発処理剤」に区分されます。それぞれの除草剤に使用適期があり、この適期を外すと除草の効果が十分発揮できません。必ずその適期にあった除草剤を使いましょう。
後期剤の散布時期は、初期剤+中期剤もしくは、一発剤を使って防除した後に、残った雑草に使う除草剤です。
ここまでの除草で防除できなくなって大きくなった広葉雑草や、カヤツリグサ科雑草などの茎や葉に直接散布して作用させる「茎葉処理剤」です。後期剤はその性質から、ヒエ(ノビエ)などのイネ科植物には効果がないものが多いため、特に早めの防除が必要です。
ヒエにおすすめの後期剤
ヒエには後期剤が効かないものが多いですが、生育期間も長いヒエは初期剤や一発剤の後にも大きくなってきてしまうものです。そんな時はヒエに効果のある後期剤をつかって除草しましょう
トドメMF乳剤・トドメMF1キロ粒剤
有効成分 メタミホップ (乳剤4.9%・粒剤1.35%)
トドメMFは、ノビエ(ヒエ)専用の除草剤です。有効成分のメタミホップは、高葉齢のノビエ(ヒエ)に効果が期待できます。ヒエの他、キシュウスズメノヒエ、アゼガヤにも効果を示します。移植水稲だけでなく、直藩水稲でも使うことができます。ヒエだけが大きくなってしまった圃場には、トドメMFは1成分のみのため、複合剤より安価です。
移植水稲で粒剤はヒエ(ノビエ)5葉期、乳剤はさらに長く7葉期まで散布することができます。
トドメバスMF液剤
有効成分 ベンタゾンナトリウム塩 18.3%、 メタミホップ 1.2%
トドメバスMF液剤の、有効成分メタミホップは6葉期までの高葉齢のヒエ(ノビエ)に効き、ベンタゾンナトリウム塩は、広葉雑草に効果の高い薬剤が組み合わさった速効性のある葉茎処理剤です。生育の進んだ各種雑草に効果が期待できます。移植水稲だけでなく、直藩水稲でも使うことができます。
ヒエクリーンバサグラン粒剤
有効成分 ピリミノバックメチル 0.4%、ベンタゾン(ナトリウム塩)11.0%
ヒエクリーンバサグラン粒剤は、ヒエ(ノビエ)に対し優れた効果を示すヒエクリーン(有効成分ピリミノバックメチル)と、ノビエ以外の一年生広葉雑草や多年生雑草、オモダカ等の難防除雑草までの水田雑草に優れた効果を示すバサグラン(有効成分ベンタゾン)をひとつにした水稲用中・後期除草剤でヒエ剤の代表格です。ノビエ4葉期まで使用可能です。
SU(スルホニル尿素)剤に抵抗性を示す一年生広葉雑草(アゼナ、ミゾハコベ等)、コナギ、ホタルイ等に対しても高い除草効果を発揮します。また、多年生難防除雑草でSU抵抗性が確認されているオモダカに対しても優れた効果を示します。
クリンチャージャンボ・クリンチャーEW・クリンチャー1キロ粒剤
クリンチャーは、シハロホップブチルを有効成分とする除草剤で、残草したノビエ(ヒエ)等イネ科雑草に有効に有効な、水稲用中後期除草剤です。
クリンチャーは剤型も多くあり、粒剤の他投げ込むだけで簡単なジャンボ剤、大きくなったヒエに効果のあるEW剤もあります。それぞれノビエ(ヒエ)に散布可能な葉齢が違いますので、用途に合わせて選びましょう。クリンチャーは、広葉雑草には効かない点、また、すでに発生しているヒエの茎葉に直接成分を触れさせないと効果が出ない点に注意してください。広葉雑草にも困っているようでしたら、ヒエと広葉雑草と同時に効くクリンチャーバスME液剤もあります。
移植水稲には、粒剤・ジャンボ剤はノビエ5葉期まで、EW剤は6葉期まで枯らすことができます。
後期剤の効果的な使い方
まず除草剤の使用方法を確認しましょう。初期剤・中後期剤・一発剤などは灌水して散布するものがほとんどですが、後期剤は落水散布や浅い灌水で散布と書かれているものも多くあります。
これは、除草剤の性質によるもので、その性質に合わせた使い方が必要です。ここでは使用方法別に注意点を紹介していきます。
落水散布又はごく浅く湛水して散布
液剤や乳剤の使用方法には、「落水散布又はごく浅く湛水して散布」と書かれています。それはこの除草剤が茎葉処理剤であることから、薬剤が付着するところが多いほどよく枯れるためです。
- できるだけ落水して、散布しましょう。
- 雑草の茎葉に直接かかるよう丁寧に全体に散布します。
- 散布後雨が降ると効果が劣るため、2日間は雨の降らない日を選んで散布してください。
- 散布後少なくとも3日間(浅水処理は5日間)はそのままの状態を保ち、入水、落水、かけ流しは行わないようにします。また散布後7日間は降雨の有無にかかわらず落水、かけ流しはしないでください。
- 散布時期を適切な時期に。除草剤はその雑草にあった時期に散布しないと効果がでません。パッケージや雑草の様子をよくみて、適期に散布してください。
灌水散布
粒剤やジャンボ剤は、灌水散布することができます。灌水散布で行える場合は、水管理をしっかり行う必要があります。
- 漏水防止のため、もぐらなどの小動物の穴や、あぜからの漏水を防ぐためあぜ塗りや、畦畔シートなどを活用してしっかり漏水防止する
- 水管理が重要です。散布に当たっては、水口・水尻をしっかり止め、必ず止め水にして散布し、散布後も雑草が十分冠水状態を保つようにし、そのまま2日間ほどは田の水を動かさないようにすること。散布後7日間は落水、掛け流しを行なわないでください。
ノビエの葉期の数え方
田んぼ(水稲)の除草剤には、移植後〇日もしくは、収穫前〇日などの記載と同時に、ノビエ〇葉期までと、除草剤の使える期間が、初めの日から終わりの日まで記載されています。この時期にキチンと散布することで除草剤は効果を発揮します。
この除草剤に書かれているノビエの葉期について、きちんと理解しておきましょう。ノビエの葉期とは、田んぼに生えている中でも一番大きく育ったノビエの葉数です。ノビエの平均の葉数ではないことに注意しましょう。散布期間の真ん中ぐらいに散布できると除草剤の効果が最大になります。
ヒエが大きくなりすぎた時の対策
ヒエは1年生の雑草なので、今年育ったヒエは枯れます。しかし結実した株を放置すると種子が越冬して来年も多発生します。除草剤が効かずに残ってしまったヒエは必ず結実前に、刈り取りましょう。
刈り取ったヒエは、田んぼや畔などに放置せずに焼却等で処分します。翌年は早めに初期剤等でヒエの発生を防ぎ、中期剤、後期剤と体系的に除草剤を散布して数を減らしていきましょう。