水持ちが悪い田んぼは除草剤の効果が低いといわれます。この記事では、水持ちの悪い田んぼでも、除草剤の効果を最大限にする防水処理からおすすめの除草剤、効果的な散布方法について説明します。
水持ちが悪い田んぼは除草剤が効かない?
水持ちの悪い田んぼは、除草剤の効きが悪いとよくいわれますが、なぜでしょうか。
初期剤や一発剤は、「土壌処理剤」と呼ばれる除草剤の種類で、水田に散布することで、水を介して数日間かけて土壌表面に処理層を作ります。その処理層に雑草の芽が触れることで枯らすことができます。イネの苗は、この層の下に根を下ろすため影響を受けません。
この処理層ができるには散布後散布後24時間~72時間ほどかかります。そのまえに、水が流れ出てしまうと除草剤の成分も流亡してしまいます。また水の流れにより稲に薬害が出る可能性もあります。そのため除草剤の使用上の注意にも、3~4日は通常の湛水状態を保ち、散水後7日間は落水・かけ流ししないと書いてあります。
除草剤の効果をUPさせる田んぼの防水処理
まずは、少しでも水持ちをよくすための、田んぼの準備をしましょう。
畦畔管理
- 漏水防止のため、もぐらなどの小動物の穴を補修します。畦畔シートや畔波板などを使うと簡単に行えます。
- 水田の泥水を畔に盛る「畔塗り」をすることで畔からの漏水を防ぐことができます。畔塗り機を使うと省力化できます。
荒起こし・代かき
- 荒起こしには、雑草を防ぐ効果や平らな田んぼを作るために必要な作業です。
- 代かきは浅水で丁寧にできれば2回以上行いましょう。田んぼが凸凹だと湛水の深さに高低差がでて、薬害や除草剤の効果に大きな差がでます。平らな田んぼは水持ちをよくさせます
水持ちの悪い田んぼにおすすめの除草剤の剤型
除草剤には、粒剤、フロアブル剤、ジャンボ剤、豆つぶ剤、液剤など多くの種類がありますが、水持ちの悪い田んぼには、粒剤がおすすめ。
ジャンボ剤やフロアブル剤、豆つぶ剤は、水の中を自分で動いて広がっていきます。また広がって溶けた後に、地面に沈殿してから処理膜をつくります。そのため粒剤よりも、湛水は深めに保たなければいけません。
粒剤は水の中での移動が少なく、散布と同時に土壌に定着してから水に溶けて処理膜を張るため、田んぼ全体に散布しなければならないという手間はかかりますが、効果は持続しやすい剤型です。
水持ちの悪い田んぼにおすすめの除草剤
水持ちの悪い田んぼには、初期剤や一発処理剤では、土壌吸着性の高い成分が入った除草剤がおすすめです。また中後期の除草剤などは、落水して使う茎葉処理剤をつかって駆除しきれなかった雑草を除草します。
ユートピア粒剤15
有効成分 シクロスルファムロン 0.2%、ペントキサゾン 1.5%
ユートピア粒剤15は、移植時、移植後~ノビエ1.5葉に使い、効果が50日~60日と長き持続型の除草剤です。有効成分のシンクロスルファムロンは、多くの広葉雑草に効果があり、ペントキサゾンはノビエに効果を発揮します。またペントキサゾンは水溶解度が低く土壌吸着性が強いため、土壌表層に安定した処理層を形成することができます。
半蔵1キロ粒剤
有効成分 シクロスルファムロン 0.50%、ベンゾビシクロン 2.0%、ペントキサゾン 3.9%
半蔵1キロ粒剤は、有効成分ベンゾビシクロン、ペントキサゾンの効果によりSU抵抗性雑草(ホタルイ、コナギ、アゼナ類)にも高い効果が期待できる初期一発除草剤です。ペントキサゾンは水溶解度が低く土壌吸着性が強いため、土壌表層に安定した処理層を形成することができます
クリンチャーEW
有効成分 シハロホップブチル30%
クリンチャーEWは、発芽後から5葉期又は6葉期まで使える茎葉処理剤で、大きくなってしまったノビエに茎葉処理することにより、速やかに雑草体内に吸収されます。アゼガヤ、キシュウスズメノヒエにも有効です。クリンチャーには他に粒剤、ジャンボ剤、液剤があります。
バサグラン液剤
有効成分 ベンタゾンナトリウム塩 40.0%
バサグラン液剤は、雑草の生育期の散布に効果がある茎葉処理剤で、土壌に落ちた薬剤は根からも吸収されて効果を発揮します。ナズナやハコベ、イヌタデ、アメリカセンダングサなどの一年生広葉雑草に 高い効果を示しますが、イネ科雑草およびヒユ類などには効果が劣るため、水稲・稲作の農家の方に使い勝手の良い除草剤です。初期剤や一発剤との体系処理が大切です。
効果的な除草剤散布のポイント
- 水稲をしっかり植え付ける。代かき不足による浮き苗や浅植えは、稲に薬害が生じる可能性があります。
- 水口・水尻をしっかり止め、散布後7日間は落水、掛け流しを行わないこと。7日間水が持たない場合は2日~3日であれば、田面が露出しても除草剤効果に影響ありません。ただし、栽培上水が必要、もしくは田がひび割れるようなことがあれば、静かに水を足します。オーバーフローに注意しましょう。
- 散布時期を適切な時期に。除草剤はその雑草にあった時期に散布しないと効果がでません。パッケージや雑草の様子をよくみて、適期に散布するしてください