除草剤は散布時期を間違えると効果が半減します。ここでは田んぼに除草剤を散布する時期やタイミングについて、除草剤の種類や枯らしたい雑草別に説明します。また除草剤の散布時期にあるノビエの葉数の数え方やタイミングについても解説します。
田んぼの除草剤の種類別の散布時期
田んぼ(水稲)の除草剤には、散布時期により水稲の除草剤は、その散布する時期と効果により「初期剤」「中期剤」「後期剤」「一発処理剤」に区分されます。それぞれの除草剤に使用適期があり、この適期を外すと除草の効果が十分発揮できません。必ずその適期にあった除草剤を使いましょう。
1回の除草剤の散布では、栽培期間全体を通した防除効果が不十分な場合は、2回以上の処理を行う体系処理が有効です。
初期剤をまく時期
初期剤の散布時期は、代かき後から田植前まで、または田植同時からノビエ1.5葉期まで。
初期剤は、水稲の移植前後、雑草の発芽前もしくは発芽直後に散布する除草剤することで、雑草の発芽や成長を止める効果が期待できます。初期剤は「土壌処理剤」と呼ばれる除草剤の種類で、水田に散布することで、水を介して土壌表面に処理層を作ります。その処理層に雑草の芽が触れることで枯らすことができます。イネの苗は、この層の下に根を下ろすため影響を受けません。
初期剤は田植と同時期に散布します。その効果期間は15日~20日と短いため、そのころに生える雑草、ヒエ(ノビエ)に対して高い効果を発揮します。田植から1か月ほどして生えるコナギ・アカシキなどの雑草には効果がないため、中期剤を使う必要があります。
中期剤をまく時期
中期除草剤の散布時期は、初期剤を散布した後、その後に生える後発雑草に対してノビエが3~4葉期になるまでに使用する除草剤です。一発剤などより後に散布するため、発生期間の長い雑草にも効果が続きます。
中期剤は「茎葉兼土壌処理剤」「ノビエ対象剤」や「広葉雑草対象剤」などがあります。初期剤と体系的に使用され、土壌処理剤と茎葉処理剤の両成分が配合されている除草剤は、発芽前の雑草の防除と、生育がある程度進んだ雑草の両方に効果があります。
後期剤をまく時期
後期剤の散布時期は、初期剤+中期剤もしくは、一発剤を使って防除した後に、残った雑草に使う除草剤です。
ここまでの除草で防除できなくなって大きくなった広葉雑草や、カヤツリグサ科雑草などの茎や葉に直接散布して作用させる「茎葉処理剤」です。ノビエ等のイネ科植物には効果がないものがほとんどです。
一発剤をまく時期
一発剤は、その薬剤により多少前後しますが散布時期は、水稲移植後からノビエ1~3葉期ごろです。
以前の水稲の除草剤は、「初期剤+中期剤」の体系処理しかありませんでしたが、省力化を図るため一度の処理で「初期剤+中期剤」の効果をもたらすことができるため、 一発処理剤、または体系是正剤と呼ばれます。現在はこちらの除草剤が主流となっています。使用できるノビエの葉齢で「初期一発剤」「初中期一発剤」という区分があります。
雑草別、除草剤の散布時期
地域により、田んぼに生える雑草はノビエ以外にもさまざまな雑草が生えます。生えてくる雑草が何かをきちんと把握し、それに合わせた除草剤を適切な時期にまくことで、除草剤は効果を発揮することができます。
いくつか代表的な田んぼの害草について、おすすめの除草剤とその散布時期について説明します。
ホタルイ(イヌホタルイ)
イヌホタルイは塊茎で繁殖する多年草で、水田や沼、池に多く発生します。生育スピードと生命力がとても高い雑草です。
イヌホタルイの防除方法は、まず、種子形成量が多いので,種子発生のものを初期除草剤や一発処理剤によってしっかり防除する必要があります。SU剤(スルホニルウレア系除草剤)に抵抗性のあるイヌホタルイの場合には、抵抗性生物型に有効な成分を含む除草剤を使うようにしましょう。
ホタルイの初期除草剤は、マーシェットが移植水稲の適用雑草として登録されています。散布時期は植代後~移植前7日又は移植直後~ノビエ1葉期 ただし、移植後30日までに散布します。
一発処理剤では、日産化学が開発した「アルテア」成分が配合された一発処理剤(銀河、天空など)は、SU剤(スルホニルウレア系除草剤)に抵抗性のあるイヌホタルイにも効果があります。アルテアは多年生雑草に強く、地上部だけでなく塊茎も減らすことが可能な水稲用一発処理除草剤です。アルテリア配合の銀河の散布時期は、移植水稲の場合、移植直後~ノビエ3葉期で、ホタルイが3葉期までに散布します。
クログワイ
クログワイは生育期が長く、断続的に根塊から繁殖していき、稲(イネ)の成長を阻害します。他の水田雑草と比べて除草剤が効きにくい多年草のため生き残りやすく、完全に枯死、枯殺して除去するのが難しい雑草です。このため、稲作農家にとっては、難防除雑草の代名詞となっています。
クログアイには体系的防除が大切です。初期剤や一発剤で生育を抑制し、茎葉処理剤の中後期剤を組み合わせて、数年間つづけていくと塊茎の数が減っていくでしょう。乾燥には弱いので、冬に田んぼを起こして塊茎を外気に触れさせて乾燥させて枯死させるのも効果が高いので除草剤と合わせて根気よく続けることで根絶を目指しましょう
初期剤や一発剤には、SU剤が有効です。上記ホタルイの初期剤として紹介した、日産アクト粒剤もクログワイに適用雑草として登録されています。散布時期は、移植後5日~ノビエ2.5葉期、クログワイ発生始期までです。
クログワイは生育期間が長く断続的に発芽してきます。初期剤の効果期間は15日~20日と短いため、初期剤を使った後には中期剤を散布しましょう。中期剤は、有効成分ベンフレセートを使った、「ザーベックスSM粒剤」などがおすすめです。散布時期は、移植後20日以降、初期剤の効果が切れた後、クログワイ発生始期までです。
初期・中期剤で生育を抑制しても、クログワイが伸びてきた場合には茎葉処理剤の中後期剤を使って、葉茎に直接散布して枯死させます。成分ベンタゾンが含有されているクリンチャーバス、バサグラン粒剤、液剤などが良いでしょう。クリンチャーバス・バサグランの散布時期はクログアイ発生盛期(クリンチャーバス草丈10㎝~20㎝・バサグラン草丈15㎝~30㎝)です。
オモダカ
オモダカは一度発生すると稲(イネ)よりも成長し、除草剤の効きにくい多年生広葉雑草として有名です。水田で、主として塊茎で繁殖し、翌年の発生源になります。多肥栽培の水田において生育が旺盛になりやすく、農家にとって頭を悩ませる雑草です。
オモダカはかわいい白い花が咲くのですが、この頃には翌年の塊茎ができてしまいます。花を咲かせるまでに生長を止めることが大切です。
オモダカの効果的な防除方法は、田植え後の一発処理剤の施用が挙げられます。残効の長いSU剤を使うか、SU剤(スルホニルウレア系除草剤)に抵抗性のあるオモダカが発生している場合には、抵抗性生物型に有効な成分を含む除草剤を使いましょう。
一発剤のゼータプラスは、残効の長いSU剤であるプロピリスルフロンとSU剤抵抗性のあるオモダカにも効果がのある、フェンキノトリオンを含んだ除草剤のため、オモダカに効果を発揮します。散布時期は、移植時から散布でき、オモダカ発生前からヘラ葉期までです。
ノビエの葉期の数え方
水稲の除草剤のラベルをみると、移植後〇日もしくは、収穫前〇日などの記載と同時に、ノビエ〇葉期までと、除草剤の使える期間が、初めの日から終わりの日まで記載されています。
ノビエの葉期は、田んぼに生えている中でも一番大きく育ったノビエの葉数です。ノビエの平均の葉数ではないことに注意しましょう。期間内の始めと終わりの期間ギリギリより真ん中ぐらいに余裕をもって散布しましょう。
ノビエは、水稲と異なり、鞘葉の次にすぐ本葉が抽出します。これを1葉として数えます。0.5葉は成長が止まった時の葉の大きさを1としたときに、伸長中の葉の長さが、半分ほどになった時の頃を指します。