何百ヘクタールにも及ぶ作付面積の水稲に自動で農薬散布するドローン、誤差数センチメートルレベルの精度で飛行ができるドローン、離陸着陸を含め自動航行が可能なドローン、全て未来のニュースのようにも思えてしまう内容です。しかし、すでに発売されている新型モデルのドローンでは、いずれも実現できてしまうというから驚きです。
まさに今、農業用ドローンの導入を検討中という人もいるかもしれません。一方で、進化が著しいドローン業界なだけに、自分にとって最適なドローンがよくわからないということもあるかもしれません。この記事では、農業用ドローンの主なメーカーと市場シェアをあわせて紹介します。
農業用ドローンを使ってできること
近年急激に身近になってきているドローンですが、営農や農作業の場面においても、さまざまな用途でドローンの活用が検討されています。
農薬・肥料・種子の散布
これまで、農薬・肥料・種子の空中散布には主として無人ヘリコプターが利用されてきました。近年では無人ヘリコプターに加え、ドローンが利用されるようになってきています。無人ヘリコプターと比較して、機体が小型で廉価であるため、労働負担の軽減や作業性の向上(山間部における果樹への散布等)、コスト削減効果などが期待されています。
リモートセンシング
カメラを搭載したドローンでほ場を空撮して画像の分析を行うことにより、作物の生育状況、病害虫の発生等の可視化が可能となります。これらは人工衛星から撮影された画像を活用して行われてきたものですが、ドローンの活用により、より容易に情報を取得することができるようになり、これまで目視(視認)で行ってきたほ場の見回り、生育状況の確認に要する時間を大幅に削減しつつ、適切な防除や追肥、収穫による品質・収量の向上が期待されます(精密農業もしくはスマート農業とよばれることがあります)。
鳥獣被害対策
赤外線カメラを搭載したドローンからの空撮による鳥獣の生息実態把握や、ドローンによる撮影をリアルタイムで通信して捕獲現場の見回り等を行うことにより、負担軽減、捕獲作業の効率化等が期待されています。
主なメーカー
日本国内のドローンメーカーは、増加傾向にあります。その中でも、農業の現場でよく名前の挙がる会社を主なメーカーとして紹介します。
DJI
世界中で使用されるドローンの70%以上が、DJI製ともいわれるほど圧倒的なシェアを誇る中国創業のグローバルメーカーです。トイドローンはもちろん、農業をはじめとする産業用ドローンの分野でも巨人たる存在感を放っています。DJIの農業用ドローンは、大容量タンク、高性能ノズル、カセット式バッテリー、全方向デジタルレーダー、マルチスペクトルカメラなど革新的な改良により、日本市場においても確固たるポジションを確立しています。農薬・肥料・種子の散布を主目的とする「AGRAS」シリーズ、リモートセンシングに使用する「Phantom」シリーズなどがあります。
クボタ
クボタの農業用ドローンは、製造元がDJIとなっており、OEMに近いかたちで販売されています。型式「T20K」のように、末尾にKUBOTAのKがついています。全国のクボタグループ販売店などを通じたアフターサービス網が整備されているため、購入後も安心して使えるのも嬉しい点です。
ヤンマー
ヤンマーの農業用ドローンへの取り組みとして、自社製品の開発販売ではなく、DJIの代理店となっています。したがって、販売製品としてはDJIのドローンになりますが、ヤンマーから購入する場合には、他のヤンマー農機(トラクターなど)やスマート農業への応用がスムーズであることが期待されます。動画も公開されており、大変参考になります。
ヤマハ発動機
ヤマハ発動機からは、自社製品として2機種のドローンが販売されています。ヤマハ発動機の農業用ドローンは、長年にわたる無人ヘリコプターで培ったノウハウ、モノ創り哲学が凝縮されたドローンです。具体的には、7年(総計350時間のフライトを想定)以上使用できるという他製品と比べても高い耐久性を誇ります。また、下方向へ吹きつける力であるダウンウォッシュが強いことも特長で、たとえば液剤を散布した場合でも、ドリフトが少なく、さらに作物によく展着するという優れたポイントがあります。
オプティム
オプティムではドローン機体の販売は行っていませんが、同社の得意とするAIやIoTの技術を用いたドローンの研究開発が行われています。オプティムの農業用ドローンでは、「ピンポイント農薬散布・施肥テクノロジー」や「土壌状態に応じたドローンによる播種制御」といった特許、他社との協業などを通じて、新しい価値を創造することを目指しています。薬剤の散布が少ない安心な農産物をつくる取組み、ドローンオペレーターと農家のマッチングサービスなども展開しています。同社の技術の粋を集めたフラッグシップモデルの動画が、公開されています。
市場シェア
農林水産省が2019年3月に発行している「農業用ドローンの普及に向けて(農業用ドローン普及計画)」という資料に、市場シェアがうかがえるデータが記載されています。これによると、2018年12月の時点で、一般社団法人農林水産航空協会に登録されていたドローン機体は1437台で、その内訳は以下の通りです(括弧内の数字が、市場シェアに近似されると考えられます)。
DJI | 576台(40%) |
---|---|
丸山製作所 | 236台(16%) |
エンルート | 218台(15%) |
クボタ | 183台(13%) |
その他 | 224台(16%) |
これ以外には、市場シェアを示す公的なデータはほとんどありませんが、ドローンメーカーや代理店はそれぞれ販売状況の情報をもっています。それらの情報を総合すると、最近の大まかな市場シェアは、DJIが8割(クボタ4割+ヤンマー2割+その他代理店2割)、ヤマハ発動機が1割、その他メーカーが1割くらいのようです。
農業用ドローンを買うには?
農業用ドローンは直販されていないものが多いので、次のいずれかの方法で購入する必要があります。
販売店やJA
各社グループ販売店、農機販売店、JAなどを経由して購入することができます。それぞれ窓口に連絡し、購入意思を伝えればOKです。
ヤフオク!やメルカリ
お目当ての商品が、なかなか手の出しづらい価格であっても諦めないでください。ヤフオク!やメルカリといったフリマサイトに出品されている可能性があります。お目当ての商品に出会えるかは時の運ですが、最近では農業用ドローンへの注目度の向上に加え、フリマサイトの人気化も加わって、流通量は増加傾向にあります。ぜひ一度のぞいてみましょう。
=>ヤフオク!で検索してみる農業用ドローンを飛ばすには?
農業用ドローンを飛ばして操作や操縦するには、国土交通省から許可を受ける必要があります。詳しくは、一般社団法人農林水産航空協会が作成する「産業用マルチローター安全対策マニュアル(オペレーター・ナビゲーター)」にまとめられています。ドローンスクールや講習の情報などもあるので、チェックしてみましょう。
まとめ
農業用ドローンの飛行や操縦は規制緩和を経て、普及段階に突入しました。さらに、高齢化の進む担い手不足の農村でドローンを活かす取組み、雑草や病虫害を検知し自動で農薬散布することで残留農薬を減らす取組みなど様々な実証実験も行われており、今の社会がかかえる様々な問題を解決しうる可能性も秘めています。あるいは農業における重労働を取り除き、労力を軽減することで、新規就農者の奮闘をサポートする存在になるかもしれません。農業用ドローンは、今後ますます重要な役割を担うことが期待されています。
今回ご紹介したほかにも、素晴らしい製品を世に送り出しているドローンメーカーも少なくありません。以下は農業用ドローンにおいて実績のあるドローンメーカーですので、ドローンの購入にあたっては是非あわせて検討してみてください。
- 丸山製作所
- 東光鉄工
- 東京ドローンプラス
- Nileworks
- ciRobotics
- Drone Work System
- TEAD
- PRODRONE
- enroute
- FLIGHTS
- MAZEX
- SAiTOTEC