この記事では、亜リン酸肥料の基本と特長、効果、おすすめ商品を詳しく紹介します。
亜リン酸肥料とは
亜リン酸肥料は、一般的なリン酸肥料とは異なります。
リン酸肥料には、過リン酸石灰(過石)、重過リン酸石灰(重過石)、熔成リン肥(ようりん)、重焼リン、燐安などがありますが、これらはすべて「正リン酸塩」が含まれています。正リン酸塩は、化学式で「H3PO4」と表されます。
一方、亜リン酸は正リン酸に比べて酸素が一つ少ない「H3PO3」と表されます。この差異は、大きな違いを生みます。亜リン酸は、正リン酸と比較して主に下記の違いがあります。
- 溶解性が高い
- 作物体内での移行性(移動のしやすさ)が高い
- 土壌に吸着されにくい
亜リン酸はリン酸質肥料の中でも即効性の高い肥料と言えるでしょう。
また、亜リン酸肥料は病害発生の予防にもつながると言われています。
これらのことから、亜リン酸肥料は注目されています。
亜リン酸肥料の特長
亜リン酸肥料には、以下のような特長があります。
- 亜りん酸は従来のりん酸よりも葉面からの吸収が速く、吸収効率が良いです。液体肥料は葉面散布に使用できるものもあります。
→亜リン酸肥料の効果についてはこちら - リン酸とカリウムを補給できるため、果実肥大期や生殖生長期に特に有効です。
- 育苗時、植え付け時に使用すると、根張りの向上や健苗育成に役立ちます。
- 花芽の充実、着果・結実の促進、果実の品質向上が期待できます。
- 植物の病気への抵抗力を強くし、病気にかかりにくくします。
→亜リン酸肥料の病害への抵抗性についてはこちら
亜リン酸肥料の効果
亜リン酸肥料の具体的な効果の一例を示します。
亜リン酸を使用した栽培試験では、みかんやねぎ、アスパラガス、小麦など幅広い作物に対して収量増加や品質向上などの効果があったとされています。しかしこれは、あくまでリン酸肥料の一部を亜リン酸肥料で代替して散布したときのものです。亜リン酸がリン酸肥料のすべての栄養分を代替できるわけではありませんので注意してください。
また、亜リン酸には病害に対しての治療効果を示すこともわかっています。疫病やべと病、根腐れ病などの病害に対しての防除効果があります。これは亜リン酸が病気の抵抗性のもとになるファイトアレキシンの生成を誘導し、その結果、作物が病害にかかりにくくなるとされています。あくまで亜リン酸肥料自体が農薬登録されているわけではないので、被害軽減など補助的な目的としての使用を検討しましょう。
上記のほかにも活着促進や樹勢強化などの効果が見込めます。亜リン酸肥料に含まれているリン酸やカリウムが、根張りの向上や果実の品質の向上に寄与していると言えるでしょう。
亜リン酸肥料は病害発生を防ぐ
亜リン酸肥料には、副次的な効果として疫病、べと病、根腐れ病などの病害発生を抑制する効果があるとされています。
- ジャガイモそうか病に対する効果(出典:亜リン酸肥料の施用がジャガイモそうか病の発生に及ぼす影響について)
- ジャガイモ疫病に対する防除効果(出典:ジャガイモ疫病の発生に及ぼす亜リン酸肥料の効果)
- トマト疫病に対する効果(出典:トマト疫病の発生に及ぼす亜リン酸肥料の効果)
- イネ苗立枯病に対する効果(出典:Pythium属菌によるイネ苗立枯病の発病に及ぼす亜リン酸肥料の影響)
- ダイズ茎疫病に対する効果(出典:亜リン酸肥料がダイズ茎疫病の発生に及ぼす影響)
海外ではこれらの病原菌以外に、炭そ病、萎凋病、青枯病など多種の病原菌に対して発病抑制効果があると報告されています(出典:病害発生を防ぐ亜リン酸肥料)。
亜リン酸肥料の施用方法
亜リン酸肥料は、その形状によっても使用方法が異なります。下記に基本的なことをまとめておきますが、使用する場合には必ず商品のラベルを読んで正しく施用しましょう。
粒状の場合
粒状の場合は、土壌に散布したり、土壌に混和して使用します。植え付け時に植え穴に混和することもできます(植穴土壌混和)。液体肥料よりも効果期間が長いので、散布作業が軽減されます。
また、セルトレイ育苗時にも土壌混和、散布ができるので健苗の育成にも活用できます。
液体肥料の場合
液体肥料の場合は、潅注処理(灌注処理)・浸漬処理、もしくは葉面散布の方法で施用します。葉面散布は、使用が認められていない資材もありますので、必ずラベルを確認してください。
潅注処理(灌注処理)の場合は、希釈して株元等に散布します。散布に適した時期は、それぞれの作物によって異なるので注意してください。浸漬処理も同様に希釈して、苗を浸します。
葉面散布の場合は、希釈して葉面にかかるように散布します。
亜リン酸肥料のおすすめ商品
ホスプラス(OATアグリオ)
葉面からすばやく吸収される亜りん酸を原料とした液体肥料(液肥)で、従来の亜りん酸に比べて効果が早く現れます。基本的な使用方法は、潅注処理・浸漬処理、葉面散布です。
リン酸とカリウムをすぐに補給できるため、果実肥大期や生殖生長期に特に有効です。花芽の充実、着花・結実数の増加、果実の品質向上が期待できます。
ホストップ(サカタのタネ)
吸水性の高い亜リン酸とカリウムを主成分にし、植物の生長に必須で生育や発根を促進する肥料成分を含んだ液体肥料です。灌水チューブからの施用や葉面散布で使用します。
効果としては株張り、分けつ、着花、着果、品質の向上、抵抗力増進などがあります。また、一時的な窒素中断効果がありますので、日照不足や窒素過剰によって徒長気味になった植物をしめる効果も期待できます。
亜リン酸粒状肥料(OATアグリオ)
亜りん酸をもっと手軽に散布でき、りん酸を効率よく吸収させるための手段として開発された肥料です。基本的な使用方法は、土壌混和及び株元散布です。
粒状になったことで、土壌散布や植え穴に対する施用が容易になっただけではなく、液体肥料よりも効果の期間が長くなりました。
亜リン酸肥料の購入場所
家庭菜園等で使用する肥料は、ホームセンター、100均、インターネットなどで購入可能です。肥料を購入できる主な場所・方法は以下のとおりです。プロ農家の方は、JAや資材店等に相談すると良いでしょう。