有機肥料として庭や畑によく使われる鶏ふんはトウモロコシの肥料として使えるのでしょうか。ここでは、トウモロコシ栽培に鶏ふんはおすすめなのか、鶏ふんの特性も踏まえ使い方など、丁寧に解説します。
トウモロコシに鶏ふん肥料は有効か
結論としては、「トウモロコシの肥料として鶏糞肥料はおすすめ」といえます。
鶏糞とは鶏(ニワトリ)の糞で、窒素(N)、リン酸(P)、加里(K)が程よく入り、カルシウムも多いのが特徴です。
肥料成分に加えて、土壌の物理性を向上させることなどが知られており、通気性、排水性、透水性、保水性などを向上させることができます。それにともない、土壌中のミミズなどの小動物、センチュウなどの微生物の多様性も高まり、病害虫(病気と害虫)の発生も抑制されることが期待できます。
また有機肥料の中でも、速効性に優れるため追肥として使われることが多い鶏糞ですが、トウモロコシは、吸肥力が非常に強く、堆肥や化成肥料を使って土壌を肥沃にする必要があるので、化成肥料の代わとして元肥、追肥どちらにもつかうことができます。
鶏糞肥料の使い方
元肥
植物の苗や苗木を植え付け(定植する)前に予め土壌へ施しておく肥料を「元肥(もとひ・もとごえ)」と言います。元肥は、初期生育を助ける働きがあり、肥料効果が長く続く緩効性や遅効性の肥料を施すのが一般的です。
異なる呼び方として「基肥(きひ)」「原肥(げんぴ)」などと呼ばれる場合もあります。
トウモロコシは、種まきから収穫まで約90日と成長期間が短いので元肥が大切です。畑や庭植えなどでは、牛ふん堆肥を1㎡あたり2kg~3kg・鶏糞を150g程度元肥として施肥します。
堆肥について
鶏糞は、同じ家畜糞類の牛糞や豚糞と比較されることが多いです。成分の特徴として、鶏糞では全ての成分が、牛糞ではK(加里)が、豚糞ではP(リン酸)が、多く含まれています。家畜糞類は、特殊肥料のため成分含有量に幅がありますが、かつて農林水産省が実施した調査では以下の値が示されています。
繊維分が多い方が土をふかふかにする、土壌改良効果があります。牛ふんは肥料効果が低いですが繊維が一番多く、土壌改良の堆肥に反対に鶏糞は肥料効果が高いですが繊維分が少ないので肥料として使われることが多いです。豚ふんは肥料分、繊維とも牛糞と鶏糞の中間といえます。
肥料の種類 | N(窒素)% | P(リン酸)% | K(加里)% |
---|---|---|---|
牛糞 | 1.9 | 1.2 | 3.5 |
豚糞 | 1.8 | 1.7 | 0.7 |
鶏糞 | 3.0 | 5.0 | 2.4 |
土壌と肥料について
美味しいトウモロコシを収穫するためには土作りが重要です。土作りは、4週間くらい前、遅くとも植え付けの2週間前には行いましょう。トウモロコシは、比較的土壌を選ばない植物ですが、吸肥力が非常に強いため、堆肥や化成肥料を使って土壌を肥沃にする必要があります。また、土壌酸度があまりにも酸性側に傾いているときには、石灰質肥料(苦土石灰など)による土壌酸度のアルカリ性側への矯正も必要となってきます。
- 植え付けの3〜4週間前石灰質肥料の散布、植え付け(定植)予定の3〜4週間前に苦土石灰や炭酸カルシウム(炭酸石灰)などをまいて、耕します。
- 植え付けの1〜2週間前堆肥、元肥の散布、植え付け予定の1週間前には完熟堆肥と元肥をまいて再度よく耕します。
追肥
トウモロコシの追肥は、基本的には2回。1回目は、雌穂(しすい・めすほ)が分化する直前に、本葉が5~6葉(草丈50㎝程度)になったら、2回目は株の先端に雄穂(ゆうすい・おすほ)が見えたら、追肥を行います。施肥量は1株につき一握りほどが目安です。
追肥の方法は1回目、2回目とも同じで、株元に肥料を施し、倒伏防止のため土寄せをしておきます。ペレット状になった乾燥鶏糞は、使いやすいのでおすすめです。
代表的な鶏糞肥料
鶏糞肥料には色々な製品がありますが、大まかには以下の通り「乾燥鶏糞」、「醗酵鶏糞」、「炭化鶏糞」のように分類することができます。状況に応じて、適したものを利用するようにしましょう。
乾燥鶏糞
乾燥させた鶏糞です。醗酵(発酵)処理や炭化処理をしていないため、肥効が相対的にゆっくりであることが特徴です。また、安価であることも特徴のひとつです。未発酵の状態のため、元肥として使いましょう。相対的に臭いは強めですので、住宅街では要注意です。
醗酵鶏糞
醗酵(発酵)処理をした鶏糞です。完熟していない鶏糞を散布すると、分解にともなってアンモニアガスが発生し、植物の生育障害を引き起こすことがあります。醗酵(発酵)処理済みの鶏糞では、植物の生育障害を引き起こす可能性を小さくできるほか、臭いも大幅に緩和されている特徴があります。
東商が販売する「醗酵鶏ふん」の成分含有量は、N(窒素)-P(リン酸)-K(加里)=4.3-2.5-2.1となっています。そのほか、マグネシウムや微量要素である亜鉛なども含まれています。菜園、庭木、花壇、鉢、プランターなどで幅広く利用できます。用途としても、元肥、追肥、寒肥、お礼肥など幅広く利用できます。粉状のほか、粒状あるいはペレット状(ペレットタイプ)もあります。
炭化鶏糞
鶏糞を高温処理し、炭化させたものが炭化鶏糞です。したがって、見た目は黒い粉状で、臭いもほとんどありません。一般に、高温処理された炭化鶏糞では、チッソ成分をあまり含まないので、灰分として施すと良いでしょう。
その他 トウモロコシにおすすめの肥料
有機肥料
トウモロコシには鶏糞が有効なことは説明しましたが、このほか米ぬか、油粕、ぼかし肥料などの有機肥料もつかうことができます。
化成肥料
臭いや虫などが気になるというかたには化成肥料を使いましょう。化成肥料は、不足している栄養素を補うために行うため、土によって与える肥料は異なりますが、家庭菜園などでは、元肥にはN-P-K=8-8-8など窒素とリン酸・カリウムが同量含まれている肥料などがよいでしょう。追肥には、NK化成など窒素とカリのみを含む肥料でもよいでしょう。またトウモロコシ専用の肥料も初心者の人にはおすすめです。
肥料不足について
トウモロコシは、肥料を好みます。肥料が足りないと葉が黄色くなったり、下葉が枯れたりします。肥料の過不足をきちんと確認してから、追肥をすると実つきのよいおいしいトウモロコシを収穫することができます。肥料不足の確認方法と対処法の記事もありますので参考にしてください。