コーヒーを淹れた後のコーヒーがら(殻)は、さまざまに有効活用できることが広く知られています。日常生活においては、玄関に置くことで虫よけや猫よけに利用できたり、冷蔵庫に設置することで活性炭のように脱臭効果を発揮したりします。他方、農業分野においては、コーヒーかすは肥料にすることができます。SDGsへの取り組みが求められる昨今にあっては、ただ捨てるだけでなく是非とも有効活用したいものです。
この記事では、コーヒーかすを使ってどう肥料を作るのか、その方法について解説します。
コーヒーかすは特殊肥料
コーヒーかすは、米ぬかや堆肥などとともに「特殊肥料」に指定されています。特殊肥料とは、肥料成分の含有量以外の価値をもつ、農家にとっては昔ながらの肥料のことです。
肥料成分の含有量以外の価値としては、土壌の物理性を向上させることなどが知られており、通気性、排水性、透水性、保水性などを向上させることができます。それにともない、土壌中のミミズなどの小動物、センチュウなどの微生物の多様性も高まり、病害虫(病気と害虫)の発生も抑制されることが期待できます。土壌中の生物多様性を保つことは、作物の連作障害を防ぐ面からも重要な意味をもちます。このように、特殊肥料は土質や地力を増進できるため、土壌改良資材としての働きがあることも広く知られています。
なお、コーヒーかすを有効活用しようとする取り組みは、数多く報告されています。その中には、雑草防除や防虫効果といった魅力的な報告もあります。ただし、コーヒーかすを肥料として利用したい場合には、そのまま土に撒いてはいけませんので、とりわけ家庭菜園やガーデニングでは注意が必要です。
コーヒーかすを直接土壌に使うと、他の未分解有機物と同じように、窒素の急激な有機化が起こって窒素飢餓を引き起こしたり、カフェインによる発芽阻害といった、成長不良を招く危険性がありますよ!
コーヒーがらからコーヒーかす肥料をつくる方法
コーヒーかすの特性
コーヒーかすは、コーヒーがら(出がらし)に手を加えること(発酵、熟成)で、コーヒーかす肥料として利用できるようになります。
コーヒーかすには窒素成分が含まれていますが、この窒素成分はそのままでは微生物に分解されにくいという難点があります。そのまま土に撒くと、窒素飢餓という肥料不足の状態に陥ります。また、カフェインが発芽阻害物質として働くことも示唆されており、使い道を誤ると作物や植物の生育に悪影響をもたらしかねません(雑草が生えることを防ぐ目的で活用することもできます)。
したがって、発酵により堆肥化させたり、ぼかし肥料にしたりすることで、コーヒーかす肥料とします。またコーヒーかすは炭のように多孔質(気孔が多いこと)であるため、特に牛糞や鶏糞といった動物性堆肥に由来する悪臭物質(アンモニア臭)を吸着する効果が期待されます。このため、動物性堆肥と一緒に使うのもおすすめです。飲み物としてのコーヒーはpH5程度の酸性ですが、コーヒーかすは中性のため資材としても利用しやすいです。
コーヒーかすから肥料を作る方法
コーヒーかす肥料は、清涼飲料製造工場やコーヒーチェーンから廃棄されるコーヒーがら(出がらし)を利用することで、工業的には大量生産されます。
一般的にコーヒーかすを使って肥料を作る方法としては、バークと混ぜる方法があります。バークと混ぜることで通気性もよくなり分解,有機物の減少が早くなると言われています。混ぜる配分の目安としてはバーク1に対し、3割くらいまでがよいでしょう。このようにコーヒーかすを発酵させるには有機物とよく混ぜるのがポイントです。野積みだけではなかなか発酵、熟成しないのです。
また同じ食品かすである「おから」とコーヒーかすを混ぜて発酵させることで肥料効果の高い良質な堆肥になるとして、積極的に利用されている農家の方もいらっしゃいます。
一方で、家庭でコーヒーかす肥料をつくる方法はコンポストを利用するほか、たとえば以下のような作り方があります。
- ドリップ等、使用済みのコーヒーがら(出がらし)は水分を含んでいるので、ベランダなど外で天日干し、電子レンジ、フライパンによる加熱などの方法により乾燥させる
- 箱状に組み立てた段ボールを容器とし、その底に新聞紙を敷く(バケツでもOKですが、紙材質のものの方が効果的です)
- 新聞紙の上に、腐葉土と米ぬかを入れ、乾燥させ終えたコーヒーがら(出がらし)と必要に応じてアロマオイルを加える
- 段ボールの蓋を閉じ、タオルもしくは布で覆う
- 雨のあたらない風通しのよい場所に置く(風通しを保つため地面から離して設置する)
- できるだけ毎日段ボールを振り、中身をかき混ぜることで空気を取り込む(コーヒーがらを追加で足すことも可能)
- 発酵が進むと熱が発生し温度が上昇するので、段ボールから温かみが感じられるようになる
- 目安として3か月程度経過すると、コーヒーかす肥料が完成
(補足)有機物を発酵させた肥料について
このように、有機質を発酵させた肥料は「ぼかし肥料」とも呼ばれます。
ぼかし肥料とは、米ぬかや油粕などの有機物が含まれた有機肥料を土やもみがらなどと混ぜて、微生物の力を借りて一次発酵させた肥料です。散布する前に微生物の力で分解させておくことによって、未発酵の有機肥料よりも効き目が表れるのが早まります(速効性肥料に近づきます)。
また、一次発酵で分解されていない有機物はそのまま残りますので施肥後にそれらが分解されて肥効が長続きします。有機質肥料であり、土壌の物理性や生物性の改良にも繋がります。
ぼかし肥料は、その原材料となる有機物資材によって成分比が変わってきます。
ぼかし肥料の原料に向いている主な有機物資材の成分をまとめてみましたので、参考にしてください(製品によって、成分比が異なる場合がありますので注意してください)。
ぼかし肥料についてより詳しい情報が知りたい方は下記を参考にしてみてください。
市販されているコーヒーかす肥料
コーヒーがらを乾かして発酵させコーヒーかす肥料をつくるのは、手間に感じる人もいるでしょう。そうした人には、まずは市販されているコーヒーかす肥料を使ってみることをおすすめします。完成したコーヒーかす肥料を見ることで自らつくる場合のイメージも湧きやすくなるとともに、作物や植物に施用した場合の効果を試すこともできます。
土のリサイクル材コーヒーの恵み
プロトリーフが販売する堆肥です。コーヒーかす、もみがらが材料で、さらに菌根菌も配合しています。土の物理性、微生物相を改善し、病害虫にも強い環境をつくります。動物性堆肥と異なり、臭いも気になりません。使い方は簡単で、用土に対して1~2割程度混ぜ込めばOKです。材料はすべて有機物なので、安心して使用できます。
コーヒー豆からできたかるーいたい肥
ホームセンターのナフコブランドで販売されている堆肥です。コーヒーかす、もみがらといった食品由来の材料を使用しています。植物性堆肥なので悪臭を回避でき、プランター、花壇、庭、畑など場所を選ばず使えます。腐葉土と同じように混ぜ込み、土づくりに利用します。全体を混ぜ合わせると、軽い用土が出来上がります。
珈琲ハイバイオ
タカショーが販売する土壌改良資材です。成分含有量は、N(窒素)-P(リン酸)-K(加里)=3.70-0.29-0.61となっています。その他、腐植酸、炭素、カルシウム、マグネシウム、鉄、亜鉛なども含まれていますが、肥料ではなく土壌改良資材として捉えるようにしましょう。用土に対し、草花では2%、野菜では5%程度の割合で混ぜ、別途20%程度の堆肥を加える使用法が推奨されています。珈琲ハイバイオが有用微生物の定着を促すことで、連作障害の防止、開花や収穫量の向上が期待されます。