ブルーベリーの肥料に鶏糞は使えるか、という話題をよく聞きます。この記事では、ブルーベリーの肥料に鶏糞が使えるか、その理由とともに紹介します。
ブルーベリーの肥料として鶏糞を使うことはリスクがある
結論としては、「ブルーベリーの肥料として鶏糞(鶏ふん)を使うことはリスクが伴なう」ということです。
鶏糞肥料は、窒素(N)、リン酸(P)、カリウム(K)が豊富に含まれており、かつ牛糞(牛ふん)や豚糞(豚ぷん)よりも速効性のある肥料として知られています。また、比較的安価であることから、栽培のコストを下げたいというニーズにも合致する資材です。
しかし、鶏糞肥料は石灰分(カルシウム)も多く含んでおり、その特性上、土壌酸度(pH)がアルカリ性に傾きやすくなります。ブルーベリーは酸性土壌を好みますので、アルカリ性に傾きすぎると生長に悪影響を及ぼします。また、土壌中の硝酸態窒素の濃度が知らずのうちに高まってしまう懸念もあります。
そのため、鶏糞肥料を多量に使った肥料やりはしないほうが良いでしょう。
牛糞、馬糞も不向きです。
但し、鉢植えやプランターなどで栽培する場合はそのリスクは小さくなるでしょう。追肥として鶏糞を使う場合でも、そこまで多量の鶏糞を施すことはしませんし、石灰分(カルシウム)についても水に溶けやすいため、カルシウムが土壌外へ流れ出ることも考えられます。
しっかりとした施肥設計や長年の知識、経験があれば、鶏糞を使っても問題なく栽培ができるでしょう。
しかし、ブルーベリー栽培初心者など慣れていない方は、専用肥料を使うほうが良いでしょう。
鶏糞などの有機質肥料(有機肥料)を使用する場合は、臭いや虫にも気をつける必要があります。マルチの上からそのまま有機質肥料を施すと、地上で発酵・腐敗が進み、臭いがすごいことになります。また、ハエなどの虫も寄ってきやすくなります。
ブルーベリーに使えるその他の肥料
ブルーベリーには、他にもたくさんのおすすめ肥料があります。
\ブルーベリーのおすすめ肥料一覧/
有機肥料(有機質肥料)
ブルーベリーにおすすめの有機質肥料として、以下のものがあります。
特に油かすや米ぬかなどを主体としたぼかし肥料は速効性のある肥料として使用できるのでおすすめです。
\ブルーベリーに米ぬか肥料は使えるか/
ブルーベリー専用肥料
市販されているものの中には、ブルーベリー専用肥料として販売されているものもあります。
ブルーベリーの特性である酸性土壌を好む性質に合わせた肥料配合となっているため、初心者の方でも安心して使用できます。
\ハイポネックスのブルーベリー肥料に関する詳細/
補足:鶏糞とは
鶏糞肥料とは
鶏(ニワトリ)の糞を原料に生産した肥料が「鶏糞肥料」です。
鶏糞を見た目から判別できない程度まで加工すると「普通肥料」に分類されます。一方、見た目から判別できる程度の加工であれば「特殊肥料」に分類されます。この線引きは、他の肥料でも同様で、米ぬかと脱脂ぬか、肉粕と肉骨粉、魚粕と魚粉についても、見た目から原料が判別できるかがひとつのポイントとなっています。
特殊肥料とは、肥料成分の含有量以外の価値をもつ、農家にとっては昔ながらの肥料のことです。肥料成分の含有量以外の価値としては、土壌の物理性を向上させることなどが知られており、通気性、排水性、透水性、保水性などを向上させることができます。
それにともない、土壌中のミミズなどの小動物、センチュウなどの微生物の多様性も高まり、病害虫(病気と害虫)の発生も抑制されることが期待できます。土壌中の生物多様性を保つことは、作物の連作障害を防ぐ面からも重要な意味をもちます。
このように、特殊肥料は土質や地力を増進できるため、土壌改良資材としての働きがあることも広く知られています。
鶏糞肥料の成分
鶏糞は、同じ家畜糞類の牛糞や豚糞と比較されることが多いです。家畜糞類は、特殊肥料のため成分含有量に幅がありますが、かつて農林水産省が実施した調査では以下の値が示されています。
家畜由来の肥料の種類 | N(窒素)% | P(リン酸)% | K(加里)% |
---|---|---|---|
牛糞 | 1.9 | 2.3 | 2.4 |
豚糞 | 3.0 | 5.8 | 2.6 |
鶏糞 | 3.2 | 6.5 | 3.5 |
製造・利用の現状とその成分的特徴, 2000より)
鶏糞の特徴は、下記のとおりです。
- 成分の特徴:鶏糞、牛糞ではP(リン酸)・K(加里)が、豚糞ではP(リン酸)が、比較的多く含まれています。また、牛糞や豚糞に比べて「窒素・りん酸・加里」などの肥料成分がバランス良く含まれていることが特徴です。
- 分解の速度:家畜糞類の分解速度としては、鶏糞が最も早く、牛糞と豚糞はそれより遅いです。速効性のある鶏糞は追肥に利用され、牛糞や豚糞(および馬糞)は元肥として利用されることが多いです。
- 購入のしやすさ:鶏糞は、堆肥や肥料としてホームセンターなどで安価に購入できる資材です。
補足:ブルーベリーの肥料やりの時期と与え方
それではブルーベリーの肥料はいつどのように与えればよいのでしょうか。関東地方以西を基準とした毎月の管理について、説明していきます。
- 1月・2月休眠期
冬はブルーベリーの休眠期です。肥料は与えません。
- 3月生育期
春は寒い冬の休眠期から目覚め生長期に入ります。芽生え(萌芽)・開花の時期ですのでしっかり肥料を与えましょう。
鉢植えは植え替えの適期です。2年に1度、できれば毎年植え替えをします。新しい用土に植え替えた後、元肥として、固形の緩効性肥料を株元に置き肥します。
庭植えの場合は、油かす主体の有機性肥料を、元肥(春肥)として施します。株元にドーナツ状にまいた後、用土を少し耕して混ぜ合わせます。
- 4月生育期
3月に、鉢植え・庭植えともしっかり元肥を施してあるので不要です。
- 5月生育期
新しい枝や、果実のために肥料を施します。5月中旬にハイブッシュ系の早性品種に緩効性肥料を鉢植えは置き肥し、株元にドーナツ状にまいた後、用土を少し耕して混ぜ合わせます。
- 6月〜7月生育期
晩生品種のラビット系は5月下旬から6月上旬に追肥します。鉢植えは緩効性肥料は置き肥し、庭植えは株元にドーナツ状にまいた後、用土を少し耕して混ぜ合わせます。
- 8月~10月生育期
収穫が終わった木からお礼肥として、追肥をしましょう。鉢植え・庭植えともに緩効性肥料を施します。
- 10月・11月
12月休眠期収穫後のお礼肥が終わったら、肥料は次の3月まで与えません。この時期に肥料を与えると、成長した新しい枝(新梢)が冬に凍ってしまう可能性があります。
寒冷地では11月が植え替え、庭への植え付けの適期です。この時には元肥は施しません。