除草剤には「土壌処理剤」と「茎葉処理剤」、さらに「非選択性」と「選択性」の違いがあり、用途や使用時期によって選ぶ必要があります。農耕地と非農耕地用の区別も重要です。よく市販されている除草剤がどれにあたるのかも解説します。
「土壌処理剤」と「茎葉処理剤」 特徴と見分け方
まず、除草剤の大きなタイプ分けとして、土表面に散布して雑草の発芽を抑制したり、発芽直後に枯死させる「土壌処理剤」と、すでに伸びている雑草の葉や茎に直接かけて枯らしてしまう「茎葉処理剤」の2パターンがあります。また、この両方の効果を持つタイプもあって、「茎葉兼土壌処理剤」と呼ばれるものもあります。
「土壌処理剤」は、土壌に成分が残り、雑草の発芽成長を妨げる発芽抑制効果があるなど、茎葉処理のものより多くの植物を除去することができます。しかしながら、草丈20〜30cm以上草が生長している場合は、効き目が弱く、効果を出すためには、草刈りした後での散布が必要になってきます。
「茎葉処理剤」は、散布された薬剤に接触した部分やその延長の植物組織だけを枯らします。このタイプの薬剤は種類を限定して効果を発揮することができる選択的除草剤が多くあります。実際に除草剤を手にとっても、明確に「土壌処理剤」なのか「茎葉処理剤」なのかわからないケースがありますが、そんな時は、「土壌散布」と書かれているものは、「土壌処理剤」、「茎葉散布」と書かれているものは「茎葉処理剤」と判定してもらって間違いありません。
「土壌処理剤」と「茎葉処理剤」 の使う適期は違う
「土壌処理剤」を使用する時期は、雑草が発生する前や、まだ生え揃っていない耕耘後、または播種(定植)前後になります。既に大きくなってしまった雑草や、塊根、塊茎から出ている雑草を枯らすことは期待できません。
対して、「茎葉処理剤」は、雑草が発生して育っている時期に使用します。
葉や茎にしっかりかかると効果が出るため、あまりにも雑草が繁茂していると、全てにしっかり除草剤がかからず、残ってしまうこともあります。このため、どちらしても、雑草が茂る前に対策することが重要です。それぞれ使用する時期が異なるので、上手く使い分けることが重要です。
全てを枯らす「非選択性」か一部の雑草を枯らす「選択性」か
次に、除草剤は接触した全ての植物を枯らす「非選択性除草剤」か、対象とする植物種を枯らす「選択性除草剤」かに分けられます。除草剤の研究により、枯らす対象となる植物を絞り込む「選択性除草剤」が多く開発されています。枯らす仕組みは主に、光合成を阻害して枯らすもの、植物ホルモンを撹乱させて生長を阻害するもの、植物固有のアミノ酸の生合成を阻害して枯らすものがあります。
農耕地用か、非農耕地用か
除草剤を家の芝生や花壇、庭以外の畑などで使う場合は、その除草剤が農耕地で使用できるものかどうか、注意が必要になってきます。具体的には、農薬取締法に基づき国に農薬登録をされている除草剤(農薬として登録された除草剤のパッケージには[農林水産省登録第○○号]と表記されています)しか、畑や田んぼ、菜園、植物を植えた庭などに散布することはできません。
安全を担保するため、そのような場所での使用は、薬効、薬害・残留性、動植物への毒性・影響を調査し、農林水産省の登録がなされたものに限定されているのです。
農林水産省の登録がない除草剤を農耕地で使用した場合、「農薬取締法」違反となり、罰則の対象となるので、注意しましょう。一方、通路や空き地など、人が植えた植物がない場所に散布するときには、非農耕地用の除草剤が使用できます。非農耕地用の除草剤は、同法で「農薬として使用できない」旨の表記が義務付けられているので、パッケージを確認してみてください。
また、農薬登録されているものでも、「作物名」が「樹木等」になっている除草剤は、適用場所が「公園、庭園、堤とう、駐車場、道路、運動場、宅地など」に限られ、畑や菜園、圃場、水田は勿論、田んぼの畦畔にも使用することはできないので、注意してください。
除草剤はどうして雑草を枯らすのか
除草剤が雑草を枯らす機能は大きく、下の三つがあります。
光合成を阻害して枯らすもの
植物は、生長するために光合成を行い、空気中の二酸化炭素(炭酸ガス)と水に光のエネルギーを加えて炭水化物を生成し、酸素を放出する機能を有していますが、その中の光が関与する明反応の部分を阻害して、枯らす作用のタイプです。代表的な薬剤として、トリアジン系(CAT、シメトリンなど)、酸アミド系(ジフルフェニカンなど)、尿素系(DCMUなど)、ダイアジン系(ベタゾンなど)、ダイアゾール系がこれに当たります。
植物ホルモンを撹乱させて生長を阻害するもの
植物の生長に必要なオーキシンというホルモンの類を施用して、主に広葉の雑草の生長のリズムを撹乱(かく乱)し、整体機能を衰退させることで枯らしてしまうタイプです。代表的な薬剤として、フェノキシ系(2,4PA , MCPなど)がこれに当たります。
植物固有のアミノ酸の生合成を阻害して枯らすもの
植物固有のアミノ酸の生合成を阻害して、枯らしてしまうタイプです。代表的な薬剤として、スルホニルウレア系(ベンスルフロンメチル、イマゾフルフロン、ピラゾスルフロンメチルなど多数)、除草剤として最も使われている非選択性接触型のアミノ酸系(グリホサート、グルホシネート、ビアラホスなど)がこれに当たります。
「非選択性」「選択性」と「土壌処理剤」と「茎葉処理剤」具体的な成分、商品名を分類!
「非選択性」かつ「茎葉処理剤」
グリホサート系
グリホサートは、イネ科、広葉の一年生雑草、多年生雑草、ササ類、雑灌木などほぼすべての草種に有効で、枯らす効果があります。性質は遅効性で効果の発現に3 ~ 7日、そして完全 な効果に10日~ 2カ月ほどを要します。グリホサートは、(茎葉)吸収移行型のため、葉だけでなく、接触した植物の地下茎、根も含めて全体を枯らす効果があるため、根を残したい田んぼの畔や傾斜地には向きません。非選択性のため、農業に使用する場合など、散布の際に、作物にかからないよう注意する必要があります。
また、グリホサートイソプロピルアミン塩よりも、ラウンドアップマックスロードやザッソージエースのような、グリホサートカリウム塩の方が、散布後の雨に強く、雨が降っても効果が持続しやすい特性があります。
液体の除草剤であり、商品によっては、原液を希釈して薄めて使用する必要があるものと、希釈せずにそのままシャワーヘッド(ジョウロ)等が付属し、噴霧器などを使わずとも、すぐに使用できる液剤があります。また、サンダーボ ルト 007のように、移行性のあるグリホサートに、接触型のピラフルフェンエチルを混合した、速効力と持続力を合わせもつ強力な非選択性茎葉処理型除草剤もあります。ツユクサ類やヒルガオ類 への効果が補強されています。
さらに、早く効いて根まで枯らす除草剤(MCPA入り)やアイリスオーヤマ 除草剤 速効除草剤 SJS
の薬剤のように、グリホサートにMCPAを配合した速効性の高い強力な非農耕地用除草剤も存在しています。どちらも非農耕地用除草剤なので、通路や空き地など、人が植えた植物がない場所に使用が限られます。
商品名 | ラウンドアップマックスロード | サンフーロン | グリホエース | ネコソギロングシャワーV8 | アースカマイラズ | カダン 除草王 ザッソージエース | タッチダウンiQ | サンダーボルト007 | アイリスオーヤマ 除草剤 速効除草剤 | 早く効いて根まで枯らす除草剤 |
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概要 | ||||||||||
販売元 | 日産化学(株) | 大成農材(株) | (株)ハート | レインボー薬品(株) | アース製薬(株) | フマキラー(株) | シンジェンタジャパン(株) | 日本農薬(株) | アイリスオーヤマ | トムソンコーポレーション(株) |
有効成分 | グリホサートカリウム塩 | グリホサートイソプロピルアミン塩 | グリホサートイソプロピルアミン塩 | グリホサートイソプロピルアミン塩 | グリホサートイソプロピルアミン塩 | グリホサートカリウム塩 | グリホサートカリウム塩 | グリホサート ピラフルフェンエチル | グリホサートカリウム塩 + MCPA | グリホサートイソプロピルアミン塩 + MCPA |
農耕地使用 | ○ | ○ | ✖️ | ✖️ | ✖️ | ほぼ✖️ | ○ | ○ | ✖️ | ✖️ |
グルホシネート系
効果の進展はグリホサートよりも早く、1 ~ 3日で効果が発現し、5 ~ 20 日で完全な効果がでる強力除草剤ですが、吸収移行型ではないため、地下部 、つまり根までは枯死せず、雑草・草はグリホサートに比べ、再生しやすい特徴があります。こちらも非選択のため、農業に使用する場合など、散布の際に、農作物にかからないよう注意が必要になります。代表的な製品として、バスタ液剤とザクサ液剤があります。
商品名 | バスタ液剤 | ザクサ液剤 |
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概要 | ||
販売元 | BASFジャパン(株) | 明治製菓ファルマ(株) |
有効成分 | グルホシネート | グルホシネートPナトリウム塩 |
農耕地使用 | ○ | ○ |
「選択性」かつ「茎葉処理剤」
ナブ乳剤・ホーネスト乳剤
成分 セトキシジム、テプラロキシジム
スズメノカタビラを除く一年生イネ科雑草、多年生イネ科雑草に対して高い効果を発揮します。逆にイネ科雑草専用剤なので広葉植物には効きません。この特性を活かして、ダイズやジャガイモの畑に全面散布して、メヒシバやヒエ類などのイネ科雑草だけを枯らすことができます。
バサグラン液剤・アクチノール乳剤
成分 ベンタゾンナトリウム塩・アイオキシニル
ナズナやハコベ、イヌタデ、アメリカ センダングサなどの一年生広葉雑草に 高い効果を示しますが、イネ科雑草およびヒユ類などには効果が劣るため、水稲・稲作の農家の方に使い勝手の良い除草剤です。
シバキープエースシャワー (レインボー薬品(株))
成分 アシュラム(酸アミド系)、MCPP(フェノキシ酸系)
一年生イネ科雑草と多年生広葉雑草 に効果のある、芝生用の液体除草剤です。芝生に生える雑草の中でも難防除で ある、シロツメクサ、カタバミ、ヤブガラシ、メヒシバ、 スズメノカタビラにも高い除草効果を発揮します。
尿素を混ぜると(尿素混用)除草剤の効果が高まります
尿素は代表的なチッソ肥料ですが、農薬に少量を混ぜ込ませると、農薬の効果を高めると言われています。理由は、尿素が植物の葉の表面のワックス層やクチクラ層の細胞をゆるめ、農薬を浸達しやすくするためと言われています。混ぜ込ませる量は、20Lに一掴み程度の少量が目安です。
尿素を入れることで、除草剤に速効性が出て枯れ始めが迅速になり、また希釈濃度を薄くしてもしっかり効果が出る強力除草剤に変身するので、効果にムラが出にくくなります。結果、使用する除草剤の原液量が減るため減農薬となり、コストも少なくなります。大量の除草剤を撒く必要がある農家の方には、おすすめの方法と言えます。
「非選択的」かつ「土壌処理剤」
カダン除草王(フマキラー(株))
成分 カルブチレート
カルブチレートは、非ホルモン型吸収移行性の尿素系の除草剤であり、雑草・草の光合成阻害により除草します。
カダン除草王は、細粒の非選択制除草剤で、メヒシバ、オヒシバ、スズメノカタビラ、ブタクサ、ツユクサ、ハコベなど一年生雑草といわれる一般的な雑草から、セイタカアワダチソウ、ヨモギ、スギナといった多年生広葉雑草、ススキ、チガヤといった多年生イネ科雑草、ササ類など枯れにくい雑草まで、根っこまで枯らすことができます。効果は最大約6ヵ月間と長期間持続することも特徴です。
非選択性で全ての植物、庭木に影響を与えるため、植物、庭木を植えている、植える予定の花壇やまた畑、水田といった農地ではなく、道路や空き地等で撒けることを想定した商品です。
ネコソギパワー粒剤 (ネコソギトップW) (レインボー薬品(株))
成分 アミカルバゾン、ブロマシル
粒のまま地面にパラパラ撒くタイプの粒状の除草剤で、除草効果が約5~9ヶ月間という非常に長期間持続するのが特徴です。1~2週間で枯れ始め、30日前後でほとんど枯らすことができ、成分が土壌に一定期間とどまるので、新しい雑草の発生を予防できます。
ネコソギエースV (粒状)(レインボー薬品(株))
成分 ヘキサジノン、DBN、DCMU
粒のまま地面にパラパラ撒くタイプの顆粒除草剤で、除草効果が約4~6ヶ月持続します。1~2週間で枯れ始め、30日前後でほとんど枯らすことができ、成分が土壌に一定期間とどまるので、新しい雑草の発生を予防できます。
クサノンEX粒剤 (住友化学園芸(株))
成分 ターバシル・フルミオキサジン
2種類の有効成分で、スギナ・ススキ・ヤブガラシなど各種雑草の葉や茎だけでなく根までスッキリ枯らすことができる土壌処理剤です。低温時にも使え、植栽地を除く樹木等の周辺地に撒くことを想定した薬剤です。
商品名 | カダン除草王 | ネコソギパワー粒剤 (ネコソギトップW) | ネコソギエースV(粒状) | クサノンEX粒剤 |
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概要 | ||||
販売元 | フマキラー(株) | レインボー薬品(株) | レインボー薬品(株) | 住友化学園芸(株) |
有効成分 | カルブチレート | アミカルバゾン ブロマシル | ヘキサジノン DBN、DCMU | ターバシル フルミオキサジン |
農耕地使用 | ✖️ | ✖️ | ✖️ | ✖️ |
「選択的」かつ「土壌処理剤」
シバキープⅢ粒剤
成分 メコプロップPカリウム塩、DBN(ニトリル系)
パラパラまくだけで日本芝(コウライシバ)の中に生えた雑草に効く顆粒の除草剤です。芝生は枯らさず、生えてくる雑草をしっかり抑えることができます。効果も約4ヶ月も持続します。
シバキーププラスα(肥料入り) (レインボー薬品(株))
成分 トリアジフラム(トリアジン系)、DBN(ニトリル系)
この商品は、除草効果に加え、チッソ(窒素)、リンサン(リン酸)、カリウムの三大要素のほか、二次要素であるマグネシウムまでも含有し、除草しながら施肥できる商品になります。