桜は挿し木でふやすことができます。しかし家庭ではなかなか成功率が低いといわれる桜の挿し木ですが水栽培でも可能なのでしょうか。ここでは桜の挿し木の基本や、できるだけ手軽な方法で成功率を上げる方法について解説します。
桜の挿し木は水栽培(水挿し)でもできる?
さし木には、用土を使わず水や、土の代わりに挿し木用の培土としてロックウールや、オアシス(吸水スポンジ)を使った方法があります。
水栽培での挿し木は、挿し穂を水にいれるだけの簡単な方法ですが、この方法で発根するのは、茎が細く生命力が強い植物さし木の成功率が高いものが向いているといわれます。サクラのふやし方は実生(種まき)して育った台木に、接ぎ木して増やすのが一般的で、さし木での成功率は低いので水挿しではかなり難しいといえます。
また水挿ししで増やしても、土に植え替えないとやがて枯れてしまいます。さし床に使う赤玉土は、鉢上げ時の用土としても使うので、根が張りやすく植え替え時も容易になるため土でのさし木をおすすめします。
どうしても水栽培で芽が出てたのを確認してから土に植え替えしたい場合は、コップなどの透明な容器に、メネデール(発根促進剤)を100倍に希釈した水を入れます。そこに上記の準備した桜の挿し木を入れます。水は2日に1度かえましょう。芽がでたらすぐに、赤玉土小粒に挿し木します。手順は下記の桜の挿し木の手順にそって行います。
桜の挿し木の時期とさし枝について
挿し木の時期
サクラの挿し木は、生育期に伸びてきた新しい枝を挿して増やす「緑枝挿し」と休眠期の冬に剪定した枝を使って増やす「休眠挿し」があります。
休眠挿し
サクラは冬になると落葉し休眠します。このころ剪定した枝を使って挿し木する方法です。春さしともいいます。花芽のつく前の2月頃によく伸びた前年に生まれた枝を刈り取り、冷蔵庫の野菜室に保存するか、束ねて土の中に入れておきます。2月下旬から3月中旬になったらこの枝を、7㎝~10㎝に切り分けて挿し穂にします。
緑枝挿し
開花が終わって新芽が多く芽吹いたころ、その年に伸びてきた新しい枝を使って挿し木する方法です。適期は6月~7月上旬に行います。この頃に枝を刈り取って7㎝~10㎝ほどに切り分けて挿し穂にします。
さし枝
「サクラ切る馬鹿、ウメ切らぬ馬鹿」ということわざがあるように、桜の枝は、折ってはいけないと子供のころから教わってきた記憶がある人も多いのではないでしょうか。
それは桜は、切り口からは腐朽菌が侵入しやすく、そこから枯れ込みやすいため。家庭でも細い枝を剪定ハサミでカットし、切り口をきちんとケアすれば剪定は可能ですし、その枝を使って増やすことができます。親株の切り口に、「トップジン M ペースト」などの切口癒合剤を塗っておきましょう。もちろん、公園などで咲いている枝を勝手に切ってはいけません。
切り分けた挿し枝は、緑枝挿しの場合は葉がついているので、切り口近くの葉は、水に浸からないよう切り落とします。残っている葉っぱも半分ほどに切り取ります。切り口はカッターやナイフでスパッと斜めに切ります。先端が樹皮がとがってしまうので、反対側もカッターで切り落とします。
すぐにコップなどに水をいれ、切り口を水に浸して水揚げをします。30分ほど水揚げしておきましょう。
さし穂にする枝は、日光をよく浴びている枝で、柔らかい枝より硬い枝で新芽があるもの選ぶのが成功のポイントです!
桜の挿し木の手順
上記のさし枝が準備できたら、挿し木を始めましょう。手軽に家にあるものでできます。発根促進剤は絶対必要ではないですが、あると格段に成功率があがります。
準備するもの
- サクラのさし枝
- 土(赤玉土小粒)
- 鉢
- 発根促進剤(メデール・ルートン)
手順
- 手順1鉢の準備
鉢に、赤玉土小粒を入れ、割り箸などで挿し穂を挿す穴を開けます。
- 手順2植え付け
手順1で開けた穴に、水揚げしたサクラを枝の半分ほど挿します。ルートンを使う場合はこの時に枝にルートンを適量添付してから挿します。
- 手順3水やり
ジョウロでたっぷり水を与え、半日ほど日向で管理します。
- 手順4置き場所
発根するまでは、半日陰で管理します。発根したら徐々に日の当たる環境に移行しましょう。それまでは肥料も与える必要はありません。夏は直射日光に当てないように注意します。
- 手順5鉢上げ
翌年の春3月頃に鉢上げをします。
成功率を上げる方法
発根促進剤
発根促進剤をつかうことで、さし木の成功率はUPします。家庭用のさし木でよく使われホームセンターなどでも手軽に購入できる発根促進剤について説明します。
ルートンは、さし木、さし苗の発根を促進させる植物成長調整剤です。粉末状ですので枝の切り口3㎝ぐらいを水に浸して、粉末をまぶして使います。ホームセンターなどでも300円程度で買える手軽な商品ですが農薬ですので、使用に際しては必ず商品の説明をよく読んで、記載内容に従ってお使いください。
植物活力素 メネデールは、発根だけでなく発根時以外でも植木に元気がなくなったときや切り花などにも使えます。液肥でも農薬でもないためいつでも使うことができます。
サクラの水挿しには、水揚げのときにメネデールをいれる。また水やりのときにはメネデールを入れた水で水やりをするとよいでしょう。
密閉さし
さし木には、湿度を保って蒸散を抑えることが成功のポイント。そこで、さし木した鉢にビニール袋などをかけて葉や茎からの蒸散を防ぐ「密閉さし」をして、さし木の成功率を高めます。
ペットボトルを使ったさし木(密閉さし)
最近は、手軽にペットボトルを育苗ポットの代わりに使った密閉さしも人気があります。
- ペットボトルは、中身をよく洗い一度乾燥させておきます。(殺菌をふせぐため)
- ペットボトルを半分に切ります。
- 底に穴を開けます。
- 鹿沼土か赤玉土を入れます。
- 割り箸などで、挿し穂をいれるための穴を開けます
- 挿し穂をいれます。枝の半分が埋まる程度。底の近くまで挿すと、水が溜まり腐りやすくなります。土の入れる量にも注意しましょう。
- 水をジョウロで枝にもかかるようにたっぷり与えます。鉢底から水が出るまで与えてください。
- 切り取ったペットボトルの上部をかぶせます。上部の切り口をドライヤーなどであぶり下の容器の内側に入るようにします。(下のペットボトルに切り口をいれてもOK)
- 明るい日陰で管理しましょう。キャップで、中の湿気を調整します。
- 発根が確認できたらペットボトルの上部を外し、通常の環境で管理します。
このほか、鉢にラップなどをまいてもいいですし、ビニール袋を上からかけて、マスキングテープやひもで固定するだけでもできます。密閉するのでカビが発生しやすくなります。ビニールに切り目を入れて空気をいれたり、ラップなら針で穴をあけたりします。あまり大きくしすぎると密閉さしの意味がなくなりますので気をつけましょう。
品種について
さし木に向いている品種もあります。オオシマザクラ、ケイオウザクラ、マメサクラ、十月桜などは比較的容易にさし木で増やすことができます。
鉢上げ(土への植え替え)
根っこがしっかり伸びてきたら、鉢上げして土に植え替えましょう。時期は翌年の2月中旬から3月中旬ごろに行います。
準備するもの
- 発根したサクラ
- 鉢(2号鉢程度)
- 用土(赤玉土小粒7・腐葉土3)
- 鉢底石
手順
- 土が乾いた状態で、鉢から苗を取り出しだし、軽く土を落とします。
- 新しい鉢の底に鉢底石を入れ、用土を鉢の3分の1程度入れます。
- 桜の苗をいれ、根を広げます
- 3の上から用土を入れて、最後に鉢底をトントンと打ち付けてならしましょう。
- 水を鉢底から出るまで与えます。
- 肥料はきちんと根付いてから緩効性肥料を与えましょう。
まとめ
サクラは家で育てるのは難しいと思われている方も多いと思いますが、鉢植えで育てられる品種もあります。盆栽にもよく使われています。サクラというとケムシなどの害虫が多いイメージですが鉢植えならそれほど病害中も多くありません。
それぞれの環境や品種によっても、発根や育て方はかわるものです。今年上手くいっても来年うまくいかないこともあります。試行錯誤しながら育てるのも植物を育てるのも一つの楽しみです。家でさし木した桜を咲かすことができたらと思うとワクワクしますね。
ぜひこの記事を参考にしながら自分なりのやり方を見つけてみてください。
農家webには、このほかにも植物の栽培記事が多くあります。
さくらんぼの育て方の記事もありますので、さくらんぼの木を育てたい人はこちらも参考にしてください