草刈機(刈払機)は農業者の中でも非常によく使われる農機具ですが、刃物を露出させ、高速回転して雑草を刈るため、チェーンソーに並んで非常に危険な農機具と言えます。
ここでは、草刈機(刈払機)の扱いに資格は必要なのか、またどんな講習があるのか、そして刈払機を安全に使うためのポイントを解説していきます。
草刈り機を使うのに資格は必要か?
結論から言いますと、対価を受け取る業務として以上の作業を請け負う場合、資格は必要で、個人の農地、敷地内の雑草を刈るような場合、資格は必要ありません。資格は「刈払機取扱作業者」といい、刈払機取扱作業者安全衛生教育を修了した者に与えられます。
しかしながら、刈払機(草刈り機)の障害事故は、農業機械使用における事故の中で、チェーンソー以上に多く起こっています。このため、「刈払機を使用する作業に従事する者」は、「刈払機取扱作業者安全衛生教育」の講習を受けるように要請されています。
そして、「刈払機を使用する作業に従事する者」は、「作業を継続的に業務として行い、賃金を得る者」と指しますが、自分が所有する農地や敷地内での使用、ボランティア活動での使用といった場合でも、この講習を受けるよう強く薦められています。
刈払機取扱作業者安全衛生教育 とは?
刈払機取扱作業者安全衛生教育について
刈払機取扱作業者安全衛生教育とは、刈払機の作業が非常に危険で、例年事故が絶えないため、作業者の安全を確保するために安全教育を実施するよう、厚生労働省から通達があり、実施されている教育です。内容は約1日ほどの講習になります。
刈払機取扱作業者安全衛生教育を修了した者は、「刈払機取扱作業者」となります。
刈払機取扱作業者安全衛生教育講習の内容
講習の対象者は「刈払機を使用する作業に従事する者」で、刈払機を安全に使用することができるための知識や実技講習になります。具体的な内容は下記になり、5時間の学科と1時間の実技、計6時間、1日の教習で修了します。規定の教育を修了された方は修了証を交付されます。
刈払機に関する知識 | 1.0時間 |
刈払機を使用する作業に関する知識 | 1.0時間 |
刈払機の点検及び整備に関する知識 | 0.5時間 |
振動障害及びその予防に関する知識 | 2.0時間 |
関係法令 | 0.5時間 |
(実技)刈払機の作業等 | 1.0時間 |
講習費用はおおよそ1万円ほどです。
どうやって講習を受けるのか?
実際に講習を申し込もうとした場合は、どうすればいいのでしょうか?
申し込む際は、刈払機取扱作業者安全衛生教育講習を行なっている企業(日立建機、住友建機、コベルコetc.)、事業者のサイトから申し込んで教習所などで受講することになります。申し込みができる代表的なサイトは以下になります。
草刈機(刈払機)の事故は、農業機械障害事故、no.1!
刈払機の障害事故は、農業機械使用における事故の中で、一番多く起こっています。
事故の内訳として、刈刃が露出して高速回転しているため、刃に直接触れて切傷することが最も多いですが、その他にチップソーのチップや、金属刃のかけらが飛び、人体に当たる、また刃が弾いた小石が飛んで人体に当たる、などの障害事故も多数起こっています。
草刈機(刈払機)の農作業を安全に行うために注意すべきポイント!
このように刈払機の作業は大変危険です。ここでは、安全に行うために、絶対に欠かせないポイントを説明します。
疲労、不安がある状態で草刈り作業をしない
草刈り作業に限らないですが、刃物を扱うなど危険な作業を行うときは、何よりも自分の体力、体調が万全であることが重要です。前日、睡眠不足である、また病気明け、他に心配事があり集中できないような場合は、刈払機を使用しての農作業は控えるのが無難です。
草刈り時の服装は徹底防備で
刈払機の障害事故は、チップソーのチップや、金属刃のかけらが飛び、人体に当たる、また刃が弾いた小石が飛んで人体に当たって引き起こされることが多く、これらは防備することで防ぐことができます。下記を参考に、面倒でも、作業中の服装の徹底防備を心がけましょう。
また、日光が強い夏場の作業などでは、日射病の危険性なども考慮し、麦わら帽子などのつばの広い帽子や、首を冷やすためにタオルなどの装備も重要です。日焼け止めも忘れずに。
疲労を軽減する、安全な動かし方で草刈りする
刈払機の動かし方は、右→左、1.5m程度の範囲内を守る
刈払機の刃は、左(時計と逆方向)回りのため、刈払機を左から右に向かって動かしたり、刃の右側を障害物に当ててしまうと、大きな振動が発生して、腕や腰の負担が増したり、反対方向に跳ね返されてキックバックが起こり、事故の原因となってしまいます。
このため、刈払機は必ず、図のように、体の右側にセットし、右から左に1.5m程度の範囲内を動かすことを繰り返すようにしましょう。
そして、キックバックを防ぐため、刈刃を当てる箇所は上部の左「3分の1」を心がけてください。
前進しながら刈る・こまめにスイッチを切る
後退しながら刈ると、足元などの危険源に気付けず、大変危険です。必ず前進しながら刈るようにしてください。また、作業の都度、こまめに運転スイッチを切ってください。スイッチを切らずに体制を変えて事故が起こるケースが非常に多いです。
疲労を軽減するには
労働の疲労を軽減するには、以下の点がポイントになります。
- 刈払機の動かす範囲を限定する。右から左へ横に1.5m程度スライドさせる
- くれぐれも刈払機を振り回したり、上下に動かさない
- 広い範囲を刈る時は、思い切って肩掛式から背負式の刈払機に変える
危険な作業場所、用途など、特に注意すべきポイントは?
斜面などの傾斜地で草刈りをする場合
まず、水田の畦畔など水分を多く含む可能性がある場所では、足場の硬さ等をしっかり確認して、危険予知に努めることが何よりも重要です。まずは作業場所を歩いてみて、確認してみましょう。
斜面の草を刈り取るときは、刈払機のハンドルは、両手(U字)ハンドルではなく、ループハンドルかツーグリップハンドルに取り替えてください。
そして、斜面などの傾斜地で草刈りを行う際は、とにかく、姿勢が前屈みにならない範囲までで行ってください。前屈みは転倒する危険性が格段に増します。全てを上から刈ろうとすると、刈払機を回転しながら滑り落ちて大事故になります。
具体的には、全てを上から刈るのではなく、排水溝に降りて、下半分を刈り、後で上部を上から刈るようにしてください。
そして、繰り返しになりますが、事故を起こさない大原則は、動作範囲をできるだけ少なくすることです。刈払機を振らないこと、右→左、1.5m程度の範囲内までを心がけるようにしましょう。
コンクリート壁、電柱周りの草を刈る場合
コンクリート壁や電柱など、硬い障害物周りでの草刈りで最も気をつけるべきなのは、キックバックです。
刈払機を適切に動かしていても、障害物が多い場所ではキックバックは起こる可能性は高いと言えるでしょう。このため、ブレード(刈り刃)をチップソー、金属刃から、キワ刈りに向くナイロンコードカッターや、マキタの樹脂刃に取り付けることをおすすめします。
刈払機の刈り刃については、下記にそれぞれの特徴と購入手段を詳しく記載していますので、参考にしてみてください。アイデック(idech)、セフティ、ツムラなどの刈り刃メーカーのものも紹介しています。
まとめ
チェンソーによる伐木、伐採時の事故以上に、草刈機(刈払機)の事故は毎年多く発生しています。自分の農地なので、特に講習を受ける必要はないと思われていても、講習から得られる安全のための内容は重要です。1日、1万円ほどで済むこともあり、できるだけ受けるのがおすすめです。
(補足)各メーカー毎の草刈機(刈払機)の説明
各メーカー毎の草刈機(刈払機)が気になる方は、下記をぜひご参考にしてみてください。