地下茎を伸ばすタイプの雑草は、地上部分を刈っても抜いても何度も何度も生えてくる、非常に厄介な雑草です。ここでは、地下茎を伸ばすタイプの雑草はどんな雑草があるのか、雑草の詳細と、それぞれを駆除、防除するにはどんな方法があるのか、徹底解説していきたいと思います。
地下茎を伸ばす雑草の種類
地下茎を伸ばす雑草は多くありますが、日本の畑地や畦畔、道ばた、また庭、芝などでよく見かける代表的なものは以下です。
地下茎雑草の除草、駆除方法
基本的には夏場の最も生育する時に何回か草刈りをして草丈を下げ、地下に養分を貯めさせないようにします。それと同時に最盛期に地下茎を枯らせる除草剤(葉茎処理剤)を散布することを繰り返すことで除草していくことになります。一度で全て枯れることは難しいので、何回か繰り返しながら草密度を下げていくようにしましょう。
地下茎雑草におすすめの除草剤
地下茎雑草を除草しようとすると、地下茎をしっかり枯らす必要があります。このため、地上部のみを枯らすバスタやザクサといったグルホシネート系除草剤ではなく、下記のようなグリホサート系除草剤を使うのがおすすめです。
商品名 | ラウンドアップマックスロード | サンフーロン | ネコソギロングシャワーv9 | アースカマイラズ | カダン 除草剤 ザッソージエース | タッチダウンiQ | サンダーボルト007 | アイリスオーヤマ 除草剤 速効除草剤 | 早く効いて根まで枯らす除草剤 |
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概要 | |||||||||
販売元 | 日産化学(株) | 大成農材(株) | レインボー薬品(株) | アース製薬(株) | フマキラー(株) | シンジェンタジャパン(株) | 日本農薬(株) | アイリスオーヤマ | トムソンコーポレーション(株) |
有効成分 | グリホサートカリウム塩 | グリホサートイソプロピルアミン塩 | グリホサートイソプロピルアミン塩 | グリホサートイソプロピルアミン塩 | グリホサートカリウム塩 | グリホサートカリウム塩 | グリホサート ピラフルフェンエチル | グリホサートカリウム塩 + MCPA | グリホサートイソプロピルアミン塩 + MCPA |
農耕地使用 | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ✖️ | ✖️ |
また、グリホサートのような非選択制の除草剤を使用できない場合は、選択制で地下茎まで枯らす除草剤を使います。具体的には、アシュラムを成分としたアージランなど有名です。
除草剤の効果を高める方法
市販の除草剤を一度散布しても地下茎を完全に枯らすことはできません。地下茎雑草は思っている以上に生命力が強いものです。除草剤の効果を上げるために以下のような方法も取り入れてみましょう。
尿素を混ぜると(尿素混用)除草剤の効果が高まります
尿素は代表的なチッソ肥料ですが、農薬に少量を混ぜ込ませると、農薬の効果を高めると言われています。理由は、尿素が植物の葉の表面のワックス層やクチクラ層の細胞をゆるめ、農薬を浸達しやすくするためと言われています。混ぜ込ませる量は、20Lに一掴み程度の少量が目安です。
尿素を入れることで、除草剤に速効性が出て枯れ始めが迅速になり、また希釈濃度を薄くしても、スギナ、スベリヒユ、シロツメクサ、チドメグサ、セイタカアワダチソウ、ツユクサなどの難雑草がしっかり枯れるので、効果にムラが出にくくなります。結果、使用する除草剤の原液量が減るため減農薬となり、コストも少なくなります。大量の除草剤を撒く必要がある農家の方には、おすすめの方法と言えます。
サーファクタントのような展着剤を混ぜる
展着剤を混ぜることで雑草への除草剤の浸透を高めることができます。また、アジュバントと呼ばれる機能性展着剤は単に雑草への浸透を高めるだけでなく、速効性・難防除雑草処理・耐雨性の向上など、プラスαの効果があります。
除草剤と展着剤との組み合わせについて詳しく知りたい方は下記を参考にしてみてください。
防草シートで防ぐ
しっかりと草刈り、除草剤の散布をおこなった後、その場所に防草シートを貼ることが可能であれば、防草シートを貼ることは、非常にに有効な防除になります。防草シート(除草シート)は、光をほぼ遮光することで、植物に光合成を行えないように抑制するもので大変有効です。
防草シートについては、下記のコンテンツに詳しく説明していますので、防草シートを貼ることが可能な方は、是非参考にしてください。
地下茎雑草の除草で気をつけるポイント
草刈りは減らす効果なし。草刈り時期に注意!
地下茎を持つ雑草は、地上部を刈払機(草刈り機)や鎌などで刈り取っても、活動していなかった地下茎の発芽、萌芽が誘発され、地下茎の密度を増やし、再生してきます。
このため、草刈りは地下茎雑草を除草する効果はないのです。特に夏場でたっぷり光合成をして養分を蓄えた雑草に、秋の時期草刈りをしても雑草を弱らせる効果すらありません。草刈りで雑草を弱らせ、少しでも地下に溜め込む養分を減らそうとするのであれば、一番養分を溜め込む、梅雨明けから真夏の時期に草丈を高くさせない程度に何回か刈るのが効果的です。
春から梅雨明けまでの耕起はNG
耕起は地下茎を切断してしまい、栄養繁殖体を増やしてしまうので増殖の手助けをするようなものです。とくに春季から梅雨明け後の間に耕起することは避けるようにしましょう。
しかし、寒い時期(11月下旬〜2月)は、切断されて掘り起こされた地下茎を地表に出すことで、低温と乾燥で死滅させる効果があるので、冬季の耕起は有効です。
葉茎処理剤の除草剤を散布する時期は最も生育する時に
地下茎に効く除草剤(グリホサート系など)を散布する時期は、雑草が最も光合成産物が地下に送られ始める時期(養分転換期)がベストです。具体的には、7月初めやセイタカアワダチソウのような秋に目立つ雑草は9月になります。
個別の詳しい雑草対策
スギナ
ドクダミ
カタバミ
クローバー
ヤブガラシ
チガヤ
セイタカアワダチソウ
科 | キク科 |
種類 | 多年草 |
分布 | 日本全土 |
学名 | Solidago altissima L. |
別名 | セイタカアキノキリンソウ |
セイタカアワダチソウの特徴
セイタカアワダチソウはもともと北アメリカ原産で、明治時代に日本に導入された植物です。地中に長い地上茎を横行させ、種子と根茎で繁殖し、越年する多年生の雑草です。空き地や駐車場によく見られますが、酸性土壌では生長が弱くなるため、きちんと耕起された圃場、菜園では種子が入ってきてもそんなに繁殖はしません。
セイタカアワダチソウの防除方法
基本的には、土壌を酸性にし、繁殖を防ぐ方法があります。また、生育してしまっている場合は、複数回地上部分を草刈りし、草丈と花木を抑えることが有効です。駆除するためには、地下茎を枯らす必要があるので、出来ればグリホサート系の葉茎処理剤タイプの除草剤を散布すると地下茎まで枯れるので、使用をおすすめします。一度の処理での根絶は難しいので、再生しなくなるまで定期的に何度も散布してください。
ススキ
科 | イネ科 |
種類 | 多年草 |
分布 | 日本全土 |
学名 | Miscanthus sinensis Andersson |
別名 | オバナ |
ススキの特徴
美しい穂が特徴の日本の田園風景を代表する、種子と根茎で繁殖する細長い草丈の高い多年草です。花粉症の原因にもなる雑草で、道端、田んぼの畔畦、湿地によく見られ、群生し、種子を飛ばし、根を張り巡らせます。
ススキの防除方法
基本的には非選択性の除草剤の使用が可能な場合は、グリホサートなどの薬剤を散布するのが地下部の根茎を枯らすので有効ですが、畑、圃場ではイネ科雑草に有効な選択性の除草剤を試していくことになります。また、ススキは耕起すると急激に群落が衰退するので、地表の基部を刈り取り、耕起による防除も有効です。
ガガイモ
科 | キョウチクトウ科 |
種類 | つる性の夏生多年草 |
分布 | 日本全土 |
学名 | Metaplexis japonica (Thunb.) Makino |
別名 | – |
ガガイモの特徴
ガガイモは地下部の5〜10cmあたりに細長い根を水平方向に長く発達させ、その所々から芽を出し、増殖します。つるの長さは2〜4mになり、切断すると白い乳液がでるのが特徴です。
地上部は冬期に枯死するものの、クリーピングルートと呼ばれる地中を横行する根から繁殖する多年生の雑草です。
ガガイモの防除方法
基本的には、地下から新芽が出てきたら早めに抜き取り、根を増殖、繁殖させないことが重要です。草刈りは刈った部分からの繁殖を促すため、おすすめできません。茎が伸長している場合は、非選択性の除草剤が使用可能であれば、グリホサート系の葉茎処理剤タイプの除草剤を散布するのが良いでしょう。また、ホルモン型の選択性除草剤も有効と言われています。
まとめ
地下を這う地下茎を伸ばす雑草は、長期間土中で生育し越冬する、駆除、退治が困難な手強い雑草ばかりです。アスファルトの隙間や道ばたでも広範囲に伸びて繁殖します。紹介したもののほかにも、トクサ、コニシキソウ、エノコログサ、ネコジャラシ、カラスノエンドウなどがあります。
まずは早期発見、早期の撤去を軸としつつ、生育したものに対しては、適切なタイミングで除草剤を散布するようにしましょう。
また、除草、草刈りのための農機具、農具、草刈機(刈払機)、ブレード(チップソーなど)、資材については、こちらをご参考ください。
除草剤を使用するとき、草刈りするとき、どんな服装をする必要があるのか、まとめたのは下記になります。
また、特にザバーンなどの防草シート(除草シート)での防除、砂利、人工芝との組み合わせに興味ある方は下の記事をご参考ください。
また農家webは、ハダニやアブラムシ、スリップス、コガネムシ、カイガラムシ、ナメクジ、キスジノミハムシ、ヨトウムシなどの害虫対策記事もあります!