除草といえば、除草剤を使った除草や、刈払機といった草刈り機、鎌で刈る、というのが一般的です。しかし最近では、農薬をあまり使いたくない、などのニーズからか、バーナーを使って雑草を焼く方法で農作業されている方も増えてきました。
除草バーナーによる除草とは一体どんなものなのか、使い方の解説から広さ、用途別のおすすめ商品、また除草以外の殺菌、殺虫などの効用についても解説していきます。
除草バーナー(草焼きバーナー)とは?
除草バーナーとは?
除草バーナー(草焼きバーナー)とは、その名の通りバーナー(火)で草や落ち葉を焼く道具です。カセット式の小型軽量のものから、灯油やプロパンガスを使った中型、大型のものまで幅広い種類があります。
草を火で簡単に焼き尽くせるのに加えて、害虫や害虫の卵も焼き払ったり、また病原菌に犯された患部を焼くことで殺菌したりと、土壌の活性化にもつながります。雑草を燃やす以外の用途にも利用できるのです。
バーナーの種類
バーナーは、燃料の種類、規模によって主に以下の3タイプに分けられます。ここでは、一般にキャンプなどで火起こしや炭、薪の着火、また除雪、雪かきに使うものというよりも、除草用に特化したバーナーを中心にご紹介します。
カセットボンベを利用するタイプ
カセットボンベを利用するタイプは一番小型のタイプになります。入手しやすく、安価で手軽に使えるのが特長です。(ニチネンなどのカセットコンロで使うボンベ(液化ブタンガス)が使える場合が多いですが、どのボンベが使えるかは確認してください。)
用途としては、家庭菜園や庭くらいの規模での除草に、またハウス内でのピンポイントでの除草や雑草が抜き難いコンクリートの狭間などでの除草に活躍します。
下記商品はガスを強制的に気化させ、強力な炎を安定持続させる、ワンタッチで使用できるなど様々な工夫が施されています。
灯油を利用するタイプ
灯油を使用するタイプは、カセット式に比べて火力が増し、灯油のタンク容量によっては長時間使い続けることができます。このため、露地栽培や空き地といったある程度の規模の除草には、灯油式バーナーがおすすめです。
強度を高めるために材質をステンレスにするなど様々な工夫がなされています。
プロパンガスを利用するタイプ
プロパンガスを使用するタイプはプロパンガスとホースを繋ぐもので最も大火力、大容量のタイプです。このため、大きな範囲を短時間で焼却することができます。業者専用のバーナーと言えます。(専門業者以外の利用は火力の大きさから控えるようにしましょう)
火口径や重さ、使用可能時間をまとめると以下のようになります。
商品名 | ちょろ焼きくん KB-110 | 草焼きバーナー CB HYPER KB-120 | 新富士バーナー KB-200 | 草焼きバーナー PRO KB-300 | 新富士バーナー KP-50E |
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概要 | |||||
火口径 × 炎長さ(mm) | 幅60×260 | 幅50×300 | φ50×300 | φ80×600 | Φ50×500 |
寸法(mm) 長さ×幅×高さ | 150×60×740 | 145×75×680 | 930 | 1,170 | 840 (ホースのみ除く全長) |
重量 (kg) | 0.41 | 0.8 | 2.0 | 3.8 | 0.8 |
使用 燃料 | カセット ボンベ(カセットガス) | カセット ボンベ(カセットガス) | 灯油 | 灯油 | プロパンガス |
使用 時間(分) | 約80 | 約10 | 約25~35 | 約25~50 | 2kgボンベで約60 |
発熱量kW (kcal/h) | 4.9 (4,200) | 25.6 (22,000) | 19.8 (17,000) | 70.9 (61,0000) | 29.0 (25,000) |
それぞれ、使用燃料から火力(発熱量kW(kcal/h))、火口 径、そして使用時間、重さも軽量のものからまちまちです。上記の表を参考に使用する場所に適するものを選ぶようにしましょう。(この他、トラスコの商品、ニチネンの火焔EX、ニューファイヤーバーナーなどがあります)
バーナーの使い方
バーナーは基本的にはグリップ式で火力を調節しながら使用します。各種類によって火力も異なりますし、灯油を使用する場合は引火などの危険性もあり、注意が必要になります。
また、ガスはさらに火力が強く広範囲なため、扱いに大変注意しなければなりません。商品の取扱説明書をしっかり読んで確認するようにしましょう。
バーナー除草のメリット、デメリット
バーナーによる除草のメリットは主に下記です。
- 抜き難い場所の雑草も燃やして処理できる
- 短時間で除草ができる
- 種や芽も焼却するので雑草が生えにくくなる
- 殺虫、土壌殺菌ができ、土壌の活性化につながります
この「種を焼く」ことがバーナーを使った雑草退治の一番の特徴です。種が焼け、小さな雑草の芽も焼けることで、焼いた後に生えてくる雑草が少なくなります。
デメリットは以下です。
- 燃料代が別途かかる
- 繁茂した雑草は枯らしにくく、燃え上がってしまい危険
- 騒音が大きい
大きな雑草は枯らしにくいですが、別の効果もあります。
使用するにあたって注意すべき点
草が繁茂したり、草丈が高くなりすぎてしまったり、枯れ草が多い場合は、バーナーを使わず、刈払機や鎌で草を刈り、草丈を低くするようにしてからバーナーを使用するようにしましょう。燃えるものが多いと炎が上がって大変危険です。
また、風が強い日はバーナーの炎が揺られて隣地に飛び火したりして大変危険です。風が強い日は使用しないようにしましょう。
また、ガス、灯油を燃料に使用するため、機器本体が部品、ポンプ、配管などと、きちんと説明書通りにセットされているか確認をしっかりするようにしてください。ガスの場合、点火後にボンベを揺らしたり、逆さにすると、生ガスというガスが発生し、火災の原因となります。古い燃料を使うのも危険です。しっかり取扱説明書を確認するようにしましょう。
除草バーナー(草焼きバーナー)、除草以外の用途
殺菌に使える
除草バーナーを殺菌に使えるとしてうまく使っている農家の方も多くいらっしゃいます。
例えばかいよう病にかかった果樹の褐色の樹液(菌泥)が漏出する部分をバーナーで炙り、樹液をぶくぶくっと泡立てさせることを何回も繰り返して、かいよう病を克服した方もいます。
また、褐色斑点病や落葉病などの病気にかかった木は、その落ち葉に菌が付いて越冬し、春に胞子を飛散させて感染を広げてしまいます。これらの落ち葉をバーナーで焼き尽くすことで翌年の感染を減らすことができます。
殺虫にも使える
また、除草バーナーは殺虫にも使えます。雑草に付着した害虫を雑草と一緒に燃焼させることができますし、雑草の葉などに産卵された卵も焼却することができます。火炎放射器を使って田んぼのアゼ草についているカメムシの卵を草ごと焼いて防除している農家の方もいらっしゃいます。この卵ごと焼却する方法は害虫の発生を顕著に減らす効果的な防除方法です。
まとめ
除草バーナーの使い方から、広さ、用途別のおすすめ商品、また除草以外の殺菌、殺虫などの効用についても解説しました。除草剤を使いたくない人の間でよく使用されるようになった草焼きバーナー。様々なタイプと使い方ができるので、是非試してみてください。
バーナーは根まで焼くことはできません。圃場に多年生雑草が多く、根までしっかり壊死させたい、雑草駆除したい方は、茎葉処理剤のグリホサート系除草剤を使用するのがおすすめです。
商品名 | ラウンドアップマックスロード | サンフーロン | エイトアップ | ネコソギロングシャワーV9 | グリホエースプロ | はやわざ | アースカマイラズ | カダン 除草剤 ザッソージエース | タッチダウンiQ | サンダーボルト007 | アイリスオーヤマ 除草剤 速効除草剤 | 早く効いて根まで枯らす除草剤 | はや効き! |
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概要 | |||||||||||||
販売元 | 日産化学(株) | 大成農材(株) | (有)チャレンジサービス | レインボー薬品(株) | (株)ハート | (株)ハート | アース製薬(株) | フマキラー(株) | シンジェンタジャパン(株) | 日本農薬(株) | アイリスオーヤマ | トムソンコーポレーション(株) | シンセイ(株) |
有効成分 | グリホサートカリウム塩 | グリホサートイソプロピルアミン塩 | グリホサートイソプロピルアミン塩 | グリホサート イソプロピルアミン塩 | グリホサート イソプロピルアミン塩 | グリホサート イソプロピルアミン塩 + MCPA | グリホサート イソプロピルアミン塩 | グリホサートカリウム塩 | グリホサートカリウム塩 | グリホサート ピラフルフェンエチル | グリホサートカリウム塩 + MCPA | グリホサート イソプロピルアミン塩 + MCP A | グリホサート イソプロピルアミン塩 + MCP |
農耕地使用 | ○ | ○ | ○ | ✖️ | ✖️ | ✖️ | ✖️ | ほぼ✖️ | ○ | ○ | ✖️ | ✖️ | ✖️ |
バーナー、トーチはガーデニング・資材、工具コーナーにたくさん置かれています。暖房、ストーブなどで余ったボンベも利用できて便利です。
雑草の様々な防除、駆除方法は下の記事がおすすめです。
また、特に防草シート(除草シート)を敷く防除、均一な貼り方、砂利、コンクリート、花壇との組み合わせ方に興味ある方は下の記事をご参考ください。
刈払機(草刈り機)や草取り、草を刈る道具については、下記が役立ちます。
また農家webは、スギナ、ドクダミ、苔(ゼニゴケ)、竹、笹、ヤブガラシ、オヒシバ、メヒシバ、カタバミ、クローバー、スベリヒユ、セイタカアワダチソウといった主に畑作、芝生に生える雑草、また、クログワイやコナギ、イボクサといった水田雑草、それぞれの対策記事もあります。
更に、ハダニやアブラムシ、スリップス、コガネムシ、カイガラムシ、キスジノミハムシ、ヨトウムシ、ナメクジなどの害 虫、病害虫対策記事もあるので是非参考にしてください!
ネコソギシリーズやカダン、アースカマライズ、ラウンドアップ、サンフーロンといった個別の除草剤の解説、購入ができるコンテンツもあります。
おまけ
雑草対策、除草に塩、除草塩は有効?
植物の生理上、確かに塩分濃度が高くなると枯れるので、塩を撒くことで、雑草駆除、除草の効果はあります。また、塩は非常に土壌に残留、蓄積するので、雑草が新しく生えてくることも防ぐ、防草の効果もあります。
しかしながら、塩は土の中で分解されないため、半永久的に効果が持続します。このため、未来にわたって植木や花などはもちろん、野菜や穀物などの作物が塩害で一切育たたくなってしまうのです。また、土壌はつながっています。雨が降り、土壌の塩が流れ出て塩水となり、隣の土壌にも多大な塩害をもたらす危険性があります。
また、海水が流れ込んで周辺の鉄筋コンクリート構造物に影響が出るのと同様、鉄筋コンクリートに塩化ナトリウムの影響で剥離したり、劣化したりと塩害による被害が起こります。建物だけでなく、下水道などの地中の水道管などの配管、電信柱など、様々なインフラにも当然悪影響を及ぼします。
よく、墓地用に、清める意味も込めて、「除草塩」という商品があります。しかしながら墓地の近くには、農耕地があることも多いでしょう。塩を使うことで、降雨で隣の農家の方に被害をもたらしてしまうことがあるのです。また、お墓以外の庭や空き地でも同様です。近くの農耕地や水田、菜園、隣の庭の植物に塩害をもたらしてしまいます。このため、除草に食塩、天日塩、岩塩など、塩を使うことはくれぐれも避けてください。
雑草対策、除草にお湯は有効?
熱湯をかけると、植物全般を枯らすのに効果があると言われますが、それは事実です。やり方は単純で、枯らしたい植物に熱いお湯、熱湯を根元や茎に直接かければいいのです。
確かに、熱湯を浴びた植物はその箇所が焼け、その後枯れます。しかしながら、地下茎や根までは浸透しないため、地上部の雑草にしか効果が出ません。また、非常に重要なのは、土壌はたくさんの生きている微生物によって成り立っているということです。土壌に熱湯をかけることで、地中の細菌、微生物に深刻な悪影響が出てしまいます。土壌内の環境が壊れてしまうのです。ですので、特に耕す予定の農耕地にお湯をかけるのは危険です。また物理的にも熱湯を雑草にたくさんかけることは難しく、お湯を沸かして重いやかんを持ってかけるという行動は、手間がかかり費用対効果も合わないかと思います。
このため、雑草対策、除草のために、雑草に熱湯をかけることはお勧めできません。
最近ではこれを解消するため、高圧ノズルで湯を噴射して隙間などを除草する高圧スチーム除草もあります。
コーヒーかす、重曹、お酢の除草効果については下記を参考ください。