そもそも、アオムシはどういう害虫?
アオムシ(青虫)とは?
アオムシはチョウ目(鱗翅目)の幼虫のうち、長い毛で覆われておらず、緑色の幼虫を指す総称です。緑色でない幼虫を「芋虫(イモムシ)」と呼び、毛で覆われた幼虫を「毛虫(ケムシ)」と総称していますが、必ずしもチョウがアオムシで、ガ(蛾)がイモムシやケムシというわけでもありません。
アオムシはアジアなどに幅広く分布し、日本中で見ることができます。最も身近なアオムシはモンシロチョウやアゲハチョウの幼虫です。
モンシロチョウの幼虫は、体長は25mm~40mm(4cm)ほどまで大きくなります。春(4〜6月)から秋(9〜11月)にかけて寒冷地で2~3回、暖地で4~5回発生します。
成長サイクルは、卵から孵化した幼虫が蛹を経て成虫になるまでで、4回脱皮します。4回脱皮後の5齢幼虫は蛹になり、成虫になります。(冬に蛹になったものは越冬し春に羽化します)羽化した成虫は、産卵します。産卵のタイプはまちまちで、複数の卵を1箇所に産み付けるものもいれば、卵を一つずつ産み付けるものもいます。
どうしてアオムシは害虫なのか?
アオムシは、アブラナ科植物が大好きです。キャベツ、ブロッコリー、小松菜(コマツナ)、大根、カブ、ハクサイ、チンゲンサイ、ルッコラなどのアブラナ科野菜でよく見られます。
アオムシは主に葉を食害し、葉脈以外は全部食べてしまう勢いで食い尽くします。葉を大量に食べられた植物は光合成が出来にくくなり、成長が阻害され、結球が出来なくなってしまいます。結果、収穫量、良品率が減ってしまうのです。
アオムシに効く農薬
アオムシは非常に有名な害虫のため、下記のように、多くの適用農薬があります。
アオムシに効く代表的な農薬
有機リン系 エルサン、オルトラン、スミチオンなど
有機リン系殺虫剤は殺虫剤の中でも、昆虫の神経系を阻害するタイプで、殺虫剤の代表的なタイプです。代表的な有機リン系農薬は、エルサン、オルトランやスミチオンがあります。スミチオンについては下記をご参考ください。
ネオニコチノイド系 モスピランなど
ネオニコチノイド系とは、90年代に登場した比較的新しい殺虫成分で、ニコチンの仲間です。ニコチン性アセチルコリン受容体と結合し、信号の伝達を阻止し、結果、昆虫は麻痺し、死に至ります。
浸透性、速効性、持続性が優れていることや幅広い殺虫スペクトラムを持つため、現在非常によく使用されている殺虫剤です。ネオニコチノイド系農薬については下記で詳しく説明しています。ご参考ください。
家庭園芸でよく使われる住友化学の「ベニカベジフルVスプレー」や「ベニカXファインスプレー」「ベニカXネクストスプレー」「ベニカベジフルスプレー」は、ネオニコチノイド系のクロチアニジンを成分にしています。
パダン
パダンは、カルタップ塩酸塩を有効成分とした殺虫剤で、アオムシはもちろん、アワノメイガ、稲のコブノメイガ、ニカメイチュウ、イネツトムシ、茶のチャノホソガなどのような作物の茎葉を食害する害虫に特にすぐれた効果を示します。
また、有機リン系とは異なるRACコードで、害虫の抵抗性、耐性が見られる場合や、ローテーション散布に利用しやすい農薬であるといえます。
パダンは遅効性なので、パダンをベースとしつつ、目視で発生がすでに検知される場合は、即効性(速攻性)があるスミチオンをピンポイントで散布する、という使い方で成果を出されている方もいます。
アオムシに効く農薬一覧表
RACコード別に分類した、青虫に効く代表的な農薬は以下のようになります。
※農薬を使用する際にはラベルをよく読み、用法・用量を守ってお使いください。
アオムシとヨトウムシ両方に効く農薬
主に、アファーム乳剤、ディアナSC、オルトラン水和剤、トレボン乳剤、グレーシアなどがあります。
農薬使用時に注意するポイント
上記の農薬は水で溶かして薄めて使用する液剤や水溶性の粉剤、粒状、粒タイプです。希釈方法等については下記をご参考ください。
また、近年では、特定の農薬に抵抗性を持った害虫も多く発生し、農薬の効率的な使用のため、農薬のRACコードを確認して、連用を避けてタイプの異なる殺虫剤のローテーション散布を心がけること、また、農薬の使用量を減少させるために、生物的、物理的、耕種的防除法を取り入れたIPM防除体系を組んで、統合的に実践することが重要になってきています。
生物農薬
生物農薬とは、「農薬の目的に使われる生物を使い、病害を防除する農薬」のことを言います。
その生物とは主に、昆虫、線虫、微生物で、害虫(例えばアブラムシやアザミウマ、コナジラミ、ハダニなど)を捕食する、天敵に当たる昆虫や、昆虫に寄生するもの、センチュウ、また病原菌にあたる生物になります。
天敵導入による防除は、名前でこそ「生物農薬」と呼ばれますが、化学農薬ではなく、有機JASでも勿論使用可能です。アオムシの天敵としては、アオムシコマユバチ(アオムシサムライコマユバチ)が有名です。
アオムシ対策に使えるおすすめの生物農薬は、微生物殺虫剤、BT殺虫剤があります。
生物農薬は、在来種以外の天敵昆虫を使用することが多く、本来の生態系に影響を与える恐れがある為、閉鎖系の圃場以外では使用、散布し難いものがあるなどの注意点もあります。
その他、生物農薬については下記に詳しく、具体的な製品も紹介していますので、ご参考ください。
物理的防除
防虫ネット
アオムシの被害は直接的な食害なので、網目のある防虫ネットなどでモンシロチョウなどが飛来して卵を産み付けるのを防ぐのも効果的です。家庭菜園だと、寒冷紗(かんれいしゃ)でも)でも防除出来ます。
耕種的防除
コンパニオンプランツと栽培する
コンパニオンプランツとは、近くで栽培することでお互いの作物に良い影響を与え、共栄しあう複数の植物の組み合わせ、またそれに該当する植物のことを言います。
アオムシはレタスや春菊などの「キク科」や、ニンジンなどの「セリ科」の植物を嫌がる傾向があるので、アブラナ科野菜を定植する際に、キク科、セリ科の野菜も植えるとアオムシの防除に効果的です。
周りをしっかり除草する
圃場内や周りの道ばたなどに雑草があるとアオムシに限らず、様々な病害虫の住処になり、発生を促進してしまいます。圃場の周りの雑草はできるだけ除草しておくことが、被害を少なくするのに極めて重要です。
特にアブラナ科の雑草は大好物で、発生源になるので、しっかり除草するようにしましょう。
除草については、以下のコンテンツが参考になります。