サッカー場などの競技場から公園、ご家庭の庭まで、芝生はさまざまなところに植えられています。芝生の緑色は、心安らぐ空間を与えてくれます。
芝生の手入れ作業には、芝刈りや水やり、サッチ取り(サッチング)などのほかにもエアレーションという重要な作業があります。芝生のエアレーション作業は、通気性や透水性、根の張りの改善などのために必要な作業です。
この記事では、芝生の手入れ作業の一つ、エアレーションについて概要とやり方、実施時期について解説します。
エアレーションとは
芝生のエアレーションとは、ローンスパイクやローンパンチ、ガーデンスパイクなどの芝生に穴を開ける専用の道具で地面に穴を開ける作業を指します。
エアレーションは、水やりや施肥(肥料やり)、芝刈り、サッチング(サッチ取り)と同様に重要な作業です。穴を開けると聞くと、芝生や芝生の根が傷むと思われるかもしれませんが、逆に芝生の根を張らせて長く芝生を栽培するための重要な更新作業なのです。
芝生が育つに連れて、次第に土壌が固まり、根の発育にとって悪い土壌状態となります。そのような土壌に対してエアレーション(穴あけ)をすると、密生した根茎をほぐし発根を促すとともに、通気性や透水性(通水性)などを良くなり、芝生を若返らせることができます。根から養分もきちんと吸収してくれるようになります。
目に見える効果などは正直あまりないので「本当に必要か?」と思われるかもしれませんが、長期間芝生を綺麗に保ちたい場合には、定期的に実施するほうが良いです。ただし、サッチング(サッチ取り)などと同様に労力がかかりますので、やり方や実施時期などをしっかりと覚えて無駄がないようにしましょう。
芝生は一度植えてしまうとそのあとに耕すことはできません。通常、畑などで栽培する作物は毎作、土壌を耕起し、有機物などの資材を混ぜ合わせます。その際に、空気が混ざり、土壌微生物が活性化したり、土壌を団粒構造にして通気性や保水性のバランスが取れるようになります。
しかし、芝生はそれが不可能なので、植えた後は土が締まっていく一方となります。特に芝生は人に踏まれることで踏圧がかかり、踏み固められやすいです。
踏圧がかかると、通気性や透水性(通水性)が下がり、根の発育の状態も悪くなります。最終的に芝の生長が徐々に悪くなるでしょう。
エアレーションの効果
エアレーションをするとどのような効果があるのでしょうか?
エアレーションの効果は大きく以下の3つあります。
- 土壌に酸素を供給する(通気性向上)
- 水はけを良くする(透水性、通水性、排水性向上)
- 根の新陳代謝を促す
土壌に酸素を供給する(通気性向上)
エアレーションをすることで土壌に穴が開き、酸素を供給することができます。
土壌に酸素が供給されることで、微生物の活動が活発になりサッチや古い根が分解されやすくなったり、土壌内の微生物のバランスが良くなることで、病気のもとになる病原菌の繁殖を防ぐ効果を期待できます。
土壌が嫌気状態(酸素に触れない状態)になると、悪い菌も発生しやすくなることから、通気性を適度に保つように定期的なエアレーションが必要でしょう。
水はけを良くする(透水性、通水性、排水性向上)
エアレーションをすることで土壌がほぐれ、水はけの改善に繋がります。
人などがよく踏みつけるような場所では、土が締まり水はけの悪い芝生となりやすいです。水はけの悪い芝生は、根の生育、芝草の生長が悪くなりやがて茶色に枯れてしまうリスクもあります。
エアレーションをすることで土壌がほぐれますので、土壌の透水性、通水性、排水性が向上します。芝生に水たまりができやすいところがある場合は、目土で均すのと同時にエアレーションでしっかりと排水性を向上させることも必要です。
また、透水性が高まることで肥料などの養分も根に行き渡りやすくなると考えられます。
根の新陳代謝を促す
密生した根(根茎)を切ってほぐすことによって、発根が促されます。
芝生も長年同じ場所に植えられていると根が詰まり、新しい根が張りづらい状況になります。そのような状況が続くと、根の新陳代謝が悪くなり次第に芝生に元気がなくなってきます。
エアレーションをすることで根茎の根切りが行われるのと同時に、根を張るスペースを確保できるので、根の新陳代謝を促効果が期待できます。
後述しますが、エアレーションをするときには主にローンスパイクとローンパンチという道具を使います。ローンパンチで穴(コア)をしっかり開けるコアリング(コアエアレーション)のほうがより発根作用を促すことができます。可能であればバーチカルカットやターフカッターによる切込みも同時に施工するとより効果を高められます。
エアレーションの適切な実施時期と回数
芝生のエアレーションに適した時期は、一般的に芝生の生長が旺盛な時期となり、春と秋が適期となります。気温が高い真夏は芝生の体力を消費しやすいため、避けましょう。同様に冬の休眠期は芝生がいたみやすいので避けましょう。
また、芝生を新規で張ったり張り替えをしたりした場合には、まだ根が張り切っていないと思われますので、1〜2年間はエアレーションが不要です。3年目くらいからエアレーションを始めましょう。
適正回数はその芝生の状況などにもよりますが、年に2回〜3回、最低でも1回は実施すると良いでしょう。
厳密には、芝生の種類によって実施時期を変えると良いでしょう。基本的には、芝生の生長が旺盛になる3月〜5月頃にエアレーションをすると効果的です。
暖地型芝生(高麗芝やティフトン芝など)のエアレーション時期
高麗芝(コウライシバ)やティフトン芝などの暖地型芝は、気温がある程度上がってくる春〜秋がエアレーションに適した時期です。真夏(7月〜8月頃)は芝生の体力が消耗しやすい時期なので避けましょう。
具体的な時期としては、関東など一般地で3月〜5月末、9月頃が適した時期です。
寒地型芝生(ベントグラスやケンタッキーブルーグラスなど)のエアレーション時期
ベントグラスやケンタッキーブルーグラスなどの寒地型芝は、地温が5℃以上になる春から梅雨入りまでの時期と少し涼しくなってくる9月〜10月頃がエアレーションに適した時期です。
具体的な時期としては、関東など一般地で3月〜5月末、9月〜10月頃が適した時期です。
エアレーションの種類と道具
エアレーションには、いくつかの方法と道具の種類があります。それぞれの概要と特徴を紹介します。
- コアリング(ローンパンチやタインを使った穴あけ)
- スパイキング(ローンスパイクを使った穴あけ)
- ガーデンスパイク(ローンスパイクサンダル)を使った穴あけ
コアリング
コアリング(コアエアレーション)とは、中が空洞になっている刃が付いたローンパンチという道具などを使って、土に穴を開ける方法です。根や土を丸ごと取り除くことによって、芝生に円筒状の穴を開けることができます。
また、タインと呼ばれる刃を機械に装着することでコアリングを機械化することができます。タインを使ったトラクターのアタッチメントや小型のエアレーション機械を使って、ラクにコアリング作業を行うことができます。
掘り起こした土の塊(コア)は綺麗に取り除く必要があります。また、穴が開いた部分は根の乾燥などを防ぐために目土入れが必須となります。スパイキングに比べると手間がかかりますが、その分、エアレーションによる効果は高いです。
また、芝生へのダメージが大きい方法でも施工する時期や状態を考えると良いでしょう。できるだけ芝生が弱っていない状態で、かつ生育が旺盛になる頃にやると良いと思います。
タインエアレーターもおすすめです。タインとは業務用のエアレーションの刃で、タインエアレーターはそれを家庭用の道具として転用したものを指します。強度もあり、また刃の間隔調節もできるのでおすすめの一品です。タインエアレーターの有名なメーカーとしてはバロネスがあります。
スパイキング
スパイキングとは、平らな刃が複数付いたローンスパイクという道具を使って、土に穴を開ける方法です。ローンパンチとは異なり、土そのものを掘り起こすことはなく、土に突き刺す形で穴を開ける方法となるため、手軽に実施することができます。
ローンパンチで実施するコアリングと比べると、エアレーションの効果が劣りますが、ある程度の粒度と深さで実施することで十分な効果が得られます。ご家庭の芝生など、高度な管理が必要とされない環境ではスパイキングのみでも良いでしょう。
ガーデンスパイク(ローンスパイクサンダル)を使った穴あけ
ガーデンスパイク(ローンスパイクサンダル)を使った穴あけは、他の道具を使用した方法に比べて手軽にできるため、ご家庭で芝生管理をされているかたには人気のやり方です。釘のようなスパイクがサンダルに付いていて、それを履いて芝生を歩き回るだけでスパイキングと同じような効果が得られます。
ただし、刃が小さく短いものが多いため、コアリングやローンスパイクを使用したスパイキングに比べると、エアレーションの効果が劣ります。普段の手入れの際にはガーデンスパイクを使用し、年に1回以上はローンパンチ、ローンスパイクを使うなど併用すると良いでしょう。
エアレーションを自動で行う手押しの機械などもあります。面倒な穴あけ作業も機械でやるととてもラクに実施できます。
エアレーションのやり方
ローンスパイクを使った方法もローンパンチを使った方法も基本的なエアレーションのやり方は同じです。ローンスパイクの場合は、コア(抜いた土の塊)の収集や目土入れが不要です。以下に、エアレーションのやり方の手順を掲載します。
ローンスパイクを使ったエアレーション(スパイキング)の手順
- 芝刈りをする
- サッチング(サッチ取り)をする
- 穴をあける
- 目土(目砂)入れをする(必須ではない)
- 目土(目砂)を擦り込む(必須ではない)
- 水やりをする
ローンパンチを使ったエアレーション(コアリング)の手順
- 芝刈りをする
- サッチング(サッチ取り)をする
- 穴をあける
- コア(抜いた土の塊)を収集する
- 目土(目砂)入れをする
- 目土(目砂)の擦り込みをする
- 水やりをする
エアレーションのやり方 詳細
今回はローンパンチを使ったエアレーションのやり方について、詳しく解説します。ローンスパイクの場合も同様ですが、目土(目砂)入れは必須ではないので状況に応じて実施してください。
- 手順1芝刈りをする
穴を開けたあとに目砂や目土が芝の間に入りやすいように予め芝刈りをしておきます。
- 手順2サッチングをする
サッチ層が多い状態であると、穴を開けづらいだけではなく、穴を開けたあとに目土や目砂が入れづらくなります。予めサッチングをしておきましょう。
- 手順3穴を開ける
準備ができたら、穴を開けていきましょう。
穴をあける間隔は短ければ短いほど良いです。可能であれば5cm〜10cmくらいの間隔で穴をあけると良いでしょう。また、深さはその刃の長さにもよると思いますが、5cm〜10cm程度あれば良いでしょう。
編集さん排水性の悪い土壌は、ロングタインを付けたタインエアレーターを使うのもおすすめです。高い排水性を期待できます。
芝生を上から見た図です。このような形でまんべんなく均等に穴を開けられると良いでしょう。
追加でターフカッターによる切り込みを適度に入れても良いでしょう。
- 手順4コア(抜いた土の塊)を収集する
ローンパンチの場合、土を丸ごと抜き取るため、芝生の上に土の塊(コア)が残ります。一旦少し乾くまで放置し、その後にほうきやトンボを使って集めます。
集めたコアは、基本的には廃棄するか、脇で崩して土に戻します。コアに根が詰まっていない場合は崩したあとに目土として再利用することもできます。
- 手順5目土(目砂)入れをする
穴あけが終わったら、芝生の根が直射日光にさらされ乾燥しないように目土(目砂)を2〜3mm程度入れます。ローンパンチで穴あけをした場合は、目土入れは必ず実施してください。そのまま放置すると根が痛む原因となります。
目土を使うか、目砂を使うかはその土壌の水はけを考えて選択してください。水はけが悪い場合は、川砂など目砂を使うと排水性が向上します。
- 手順6目土(目砂)の擦り込みをする
散布した目土、目砂を土壌や開けた穴に入れるため、擦り込みをします。
擦り込みをするためには、専用の擦り込みブラシやトンボを使うと良いでしょう。身近にあるもので代用するのであれば、竹箒やデッキブラシがおすすめです。
開けた穴に落とすように表面の砂を芝の根本に擦り込みます。芝の葉面を傷つけにくい柔らかめのブラシがおすすめです。
- 手順7水やりをする
下記の理由のため、水やりをしましょう。
- コアリングした穴に目土(目砂)が埋まりやすいようにする。
- 根の発根を促す。
編集さん施肥(肥料やり)の時期の場合は、水やりと同時に施肥をしても構いません。
エアレーション後は、1ヶ月間程度養生してあまり踏みつけないようにすると良いでしょう。
エアレーションのポイント
エアレーションのポイントをいくつか挙げます。
可能な限り短い間隔で穴をあける
可能な限り短い間隔で穴をあけることで、エアレーション効果を高めることができます。具体的には5cm〜10cmくらいの間隔で穴が開けられると良いでしょう。芝生全体に対して均一に開けることも重要です。
可能な限り深く穴をあける
可能な限り深く穴をあけることで、エアレーション効果を高めることができます。ローンパンチやローンスパイクの刃の長さにもよりますが、可能な限り深く挿し込んで穴を開けましょう。
エアレーションは無理に実施しない
エアレーションは、無理に実施しなくても良いです。特に、芝生に庭木など他の植物が植わっている場合は、他の植物への影響を避けるため、その部分はエアレーションしないほうが良いでしょう。できる範囲で均一にエアレーションすることが基本です。