サッカー場などの競技場から公園、ご家庭の庭まで、芝生はさまざまなところに植えられています。芝生の緑色は、心安らぐ空間を与えてくれます。
芝生の代表的な手入れとして芝刈りがありますが、低く刈りすぎたあまり「軸刈り(ジク刈り)」の状態になってしまうことがあります。軸刈りしたところは茶色くなるので、一見「枯れてしまったかも」と思ってしまいますが、しっかりとした手入れをすることで再生することができます。
この記事では、軸刈り(ジク刈り)とは何か、軸刈りの予防方法と対処方法について解説します。
そもそも軸刈り(ジク刈り)とは
芝刈をしたら、芝生が茶色くなった経験はありませんか?その原因の一つに、軸刈り(ジク刈り)があります。
芝生に関わらず、植物は生長点がなくなるとその軸(枝)を伸ばすことができなくなります。芝生にももちろん生長点があります。
草刈り機などで、芝生の生長点を刈ってしまい、緑の葉が生長しづらい状況に陥ってしまった状態を軸刈り(ジク刈り)した状態と呼びます。
高麗芝(コウライシバ)など日本芝の場合、季節にもよりますが軸刈りの状態を1回、2回程度起こしてしまっても回復できますが、夏の西洋芝(特に寒地型西洋芝)の場合は一気に枯れてしまい、再生不可能となる場合がありますので軸刈りには注意しましょう。
軸刈り(ジク刈り)を防ぐためには、正しく生長点の場所を知っておくことが重要です。
軸刈りはなぜ起きるのか、軸刈りの原因
軸刈り(ジク刈り)はなぜ起きるのでしょうか?意図的に軸刈りを実施しない限りは、通常は知らず識らずのうちに軸刈りの状態になってしまっているのではないでしょうか?
軸刈りが引き起こされる原因としては、大きく直接的な原因と根本的な原因分けることができます。
直接的な原因:低く刈りすぎてしまう
軸刈りが起こる直接的な原因は、芝刈などのときに低く刈りすぎてしまうことが挙げられます。低く刈りすぎてしまうことで、生長点や葉を必要以上に刈り取ってしまい、生長を著しく悪化させてしまいます。
芝刈をするときには、生長点よりも低く刈り込まないように注意が必要です。
根本的な原因:芝の伸び過ぎ
軸刈りが起こる根本的な原因の一つは、芝が伸び過ぎている状態で芝刈りをすることです。
忙しくて芝刈りができなかった、初めてで芝刈りのタイミングがわからなかったなどの理由があると思いますが、芝生の管理は定期的な手入れが必須となります。
伸び放題の芝生は、葉だけではなく茎(軸)も伸びています。そのような状態で、通常と同じ刈高で芝刈りをしてしまうと、葉の部分がほとんどなくなり茶色く枯れたような見た目になります。これが軸刈りの状態となります。
そもそも、定期的な芝刈りを実施して伸び放題の状態にしないことが重要です。定期的に芝刈りをすることで、芝の分げつ・生長も促進できますし、何より見た目を綺麗に維持することができます。
根本的な原因:芝刈り機の刈高の設定が不適切
「芝の伸び過ぎ」の節でも紹介しましたが、芝刈り機の刈高の設定が不適切であると軸刈りが起こってしまいます。
芝生管理の世界でよく言われているのは、「芝生全体の長さに対して、上から3分の1までにする」ということです。これは芝生の草丈が長い場合も、短い場合も同様です。
芝生を衰退させないためにも、一度に刈り込める限界として上記の刈高の目安を覚えておきましょう。
キンボシの芝刈り機など、おすすめの芝刈り機については下記の記事をご覧ください。
根本的な原因:ハンディタイプの芝刈り機などの使い方が不適切
ハンディタイプの芝刈り機(芝刈りバリカン)などを使う場合も、適切な設定・方法で使用することが重要です。
芝生の際刈りなどでハンディタイプの芝刈り機(芝刈りバリカン)を使用することも多いと思います。芝刈りバリカンは芝刈り機のように刈高設定がしっかりとできないものがほとんどで、ほぼフリーハンドに近い形で芝刈りをすることになります。要は自分の力加減(深さ加減?)で刈高が決まってしまうのです。
そのため、感覚的にはそこまで低く刈っていないように思えても、刈り終わったあとに「低く刈り過ぎた・・・」ということがよくあります。
根本的な原因:土壌がデコボコ(凸凹・不陸・ふろく)している
根本的な原因として、芝生を生育している土壌がデコボコであることも挙げられます。
芝生がデコボコしていると、たとえ芝刈り機の刈高設定が適切に行われていたとしても、地面が盛り上がっている場所やヘコんでいる場所を行き来することで、均一の刈高にすることは難しいでしょう。特に盛り上がっている場所は軸刈りになりやすいでしょう。
土壌がデコボコしている場合は、平らに均してあげることが芝生の管理の上で重要です。
芝にデコボコがあると、ヘコんでいる場所に水分が集まり過湿状態となりやすいです。その部分は生長も悪くなってしまうでしょう。生育の観点からも可能な限り平らな場所で芝生を栽培するのが望ましいです。
軸刈りへの対処方法
「軸刈りは起きてしまったらどうしようもない」というわけではありません。もちろん、すぐに元に戻せるわけではありませんが、適切な対処をすることによって回復させることができます。下記に、具体的な対処方法の一例を解説しますので、参考にしてください。
軸刈りへの具体的な対処方法
軸刈り状態となった芝生に対する具体的な対処方法としては、以下の2点を重点的に行うことが重要となります。
- 目土を入れる
- 水やりをしっかりとする
目土は乾燥をおさえ、適度な温度と水分を供給してするために入れます。目土は、芝生の茎(軸)の先まで埋まらないくらいまで入れます。
その後、乾燥を防ぎ新しい葉を出させるために水やりをしっかりと行います。夏場であればほぼ毎日水やりが必要となります。乾燥させないようにこまめに水やりをしましょう。
目土を入れなくても回復はしますが、目土を入れたほうが見た目もよくなる上に乾燥状態を防ぐことにもつながるので、可能であれば目土入れをしたほうが良いでしょう。
軸刈りから回復するまでの期間
軸刈りから回復するまでの時間は、時期(季節)や芝草の状態によって様々なので一概には言えません。
一部が軸刈りの状態になっていて、葉が多く残っている場合は目土を入れて1週間〜2週間程度で緑色が戻る場合があります。しかし、茶色が全面に目立つほど軸刈りをしてしまった場合には、それ以上に時間がかかると思われます。
また、季節によっても回復のスピードに大きく影響します。
例えば、夏場など芝生の養分の消費が激しい季節に軸刈りをしてしまうと、養分の吸収ができなくなるうえに蓄えた養分も少ないため、復活するスピードも遅くなります(最悪の場合、復活せずに枯れます)。
休眠期の秋に軸刈りした場合には、翌春まで待って初めて今後の生長具合がわかります。
軸刈りの予防方法
軸刈りは、基本的には行わないほうが良いです。それでは、どのように防げば良いでしょうか?いくつかのパターンで軸刈りの予防方法をまとめましたので、参考にしてください。
頻度高く芝刈りを行う
まず第一に頻度高く芝刈りを行うことが重要です。芝刈りをせずに草丈を伸ばしてしまうような管理はやめましょう。見た目も悪くなりますし、何より今後の栽培管理が難しくなります。
定期的に芝刈りを行うことによって栽培管理もしやすくなるので、サボらずにやることが重要です。もちろん、芝刈り以外のエアレーション、サッチ取り(サッチング)、施肥(肥料やり)、病気、害虫管理などの作業も重要です。
芝刈り機の刈高の設定を適切に行う
芝刈りするときには、芝刈り機の刈高の設定を毎回見直しましょう。意図せず刈高の設定が変わっている場合もあります。
刈高設定は、目標とする芝生の高さに合わせてください。そのうえで、一定の芝生の高さになったタイミングで芝刈りをするようにしましょう。例えば、目標とする芝生の高さが15mmの場合は、芝生の高さが23mm前後になったタイミングで芝刈りをすると軸刈りもせず、安全に芝刈りができます。下記に目標とする芝生の高さと芝刈りを実施する目安のタイミングを示した表を掲載しますので参考にしてください。
目標とする芝生の高さ(刈高) | 芝刈りをするタイミングの目安 |
---|---|
5mm | 8mm |
6mm | 9mm |
7mm | 11mm |
8mm | 12mm |
9mm | 14mm |
10mm | 15mm |
11mm | 17mm |
12mm | 18mm |
13mm | 20mm |
14mm | 21mm |
15mm | 23mm |
16mm | 24mm |
17mm | 26mm |
18mm | 27mm |
19mm | 29mm |
20mm | 30mm |
21mm | 32mm |
22mm | 33mm |
23mm | 35mm |
24mm | 36mm |
25mm | 38mm |
26mm | 39mm |
27mm | 41mm |
28mm | 42mm |
29mm | 44mm |
30mm | 45mm |
このとき、芝生の高さが伸びすぎてしまっている場合には、「芝生全体の長さに対して、上から3分の1までにする」ことを守るように複数回に分けて目標の芝生の高さに近づけていってください。
ハンディタイプの芝刈り機などの特性を知る
先述したとおり、芝刈りバリカン(ハンディタイプの芝刈り機)は、刈高の設定ができないものが多くフリーハンドで芝刈りを実施することになります。その特性を理解した上で、芝刈りを実施しましょう。
実際にハンディタイプの芝刈り機を使うときには、低く刈りすぎないように少し浮かせた状態で平行にして使いましょう。つい刈りすぎてしまうので、刈高には注意です。
デコボコ(凸凹・不陸・ふろく)をなくす
目土をすることで、芝生のデコボコをなくします。デコボコをなくすことで、芝刈りの刈高のムラがなくなります。
目土を入れるときには、芝の葉が完全に隠れるほど過剰に入れる必要はありません。そのような状態は、芝の光合成を阻害してしまうことになるので好ましくありません。目土後は、レーキで整地しましょう。