夏、暑くて乾燥してくると発生するチャノホコリダニ。農作物の生長点を止めたりと、ナスやピーマン、キュウリなど幅広い農作物に被害をもたらす害虫です。ここではチャノホコリダニとはどういう虫なのか、その特性と、チャノホコリダニを駆除、防除するための農薬について解説します。
そもそも、チャノホコリダニはどういう害虫?
チャノホコリダニとは?
チャノホコリダニはダニの仲間で、クモの仲間、ホコリダニ類に属します。体長は0.2(雄)〜0.25(雌)mmと非常に小さく、肉眼で把握するのは困難なレベルです。
チャノホコリダニは、幼虫の時は乳白色で、成虫は淡黄緑色(透明なアメ色)です。産卵は1日あたり1~5個で、1~2週間にわたり産卵し、合計では、15~30個の卵を産むとされています。蛹を経ない不完全変態で、成長サイクルが早く、大量発生しやすいのが特徴です。
発育適温は10~20℃で、他の害虫に比べ低い温度でも活動し、同じダニのハダニよりも繁殖力は高い場合もあります。高温と乾燥した環境を好み、雨が苦手なため、ハウスはダニが繁殖する格好の場所と言えます。寄生は、上位3葉ぐらいまでの新葉に多いため、生育期、生長初期の早期発見が重要です。
早期発見のポイント
チャノホコリダニの発生の早期発見のポイントとして、生長点のあたりの葉が縮れてきます。また、葉の表にある小さなトゲトゲがなくなり、葉がつるっと光沢性をもち、のっぺりしてくるので、このような状態を早く把握することが重要です。
どうしてチャノホコリダニは害虫なのか?
チャノホコリダニは、広い寄主範囲を持ち、寄生された植物は、葉の奇形や芯止まりなどの被害を引き起こします。この結果、よじれて変色したり、花蕾では花弁が退色して奇形花になる、茎、果梗、へたでは加害部が褐変します。さらに虫の密度が高まると、芯止まりとなり、枯死してしまいます。
1箇所に大量発生するとダニの移動性が高まり、あっという間に周りに被害が広がっていきます。このため、早期発見、早期防除が非常に大事です。
チャノホコリダニに効く農薬
チャノホコリダニはそんなに強い害虫ではありません。通常の防除を行ったいる場合は、ほぼそれで、他の害虫と一緒に防ぐことができます。ダニに効く農薬はほぼ効果を発揮するので、うまく利用していきましょう。
同一系統の薬剤を連用すると抵抗性を持つダニの発生を促すので、以下の代表的な農薬の種類と種類別の対応表を参考に、ローテーション活用など、IPM(総合的害虫管理)をおすすめします。
チャノホコリダニに効く代表的な農薬
β- ケトニトリル誘導体 スターマイト、ダニサラバ
スターマイト、ダニサラバは、抵抗性を持つダニに効果が高く、卵から成虫までの全ステージに安定した効果を発揮するタイプの農薬です。低温時でも安定した効果を発揮し、且つ耐雨性に優れています。
メタジアミド系 グレーシア
グレーシア乳剤は、日産化学(株)が発明した非常に新しい殺虫剤です。日産化学(株)が開発した新規化合物である、イソオキサゾリン系の有効成分「フルキサメタミド」が害虫の神経に作用して速攻的な殺虫作用を示します。
コナガなどのチョウ目や、アザミウマ目、ハエ目、ダニ目等の幅広い作物害虫に高い効果を発揮します。
チャノホコリダニに効く農薬一覧表
RACコード別に分類した、チャノホコリダニに効く代表的な農薬は以下のようになります。
※農薬を使用する際にはラベルをよく読み、適用作物、用法・用量を守ってお使いください。
殺虫剤はアザミウマ類、カイガラムシ類やハダニ類、アブラムシ類、ヨトウムシ、コガネムシ、ハスモンヨトウ、ネキリムシ、ヨコバイ、ハモグリバエ、ハマキムシ、イラガ、カメムシ、ウンカ、メイガ、ハムシ、ケムシ、テントウムシダマシ、ナメクジ、シンクイムシ、オオタバコガなど幅広い殺虫スペクトラムを持つものも多いので、うまく活用しましょう。
上記の農薬は原液を水で溶かして薄めて使用する液剤や水溶性の粉剤、粒状、粒タイプです。適切な量、希釈方法等については下記をご参考ください。
生物農薬(生物的防除)
生物農薬とは、「農薬の目的に使われる生物を使い、病害を防除する農薬」のことを言います。
その生物とは主に、昆虫、線虫、微生物で、害虫(例えばアブラムシやアザミウマ、コナジラミ、ハダニなど)を捕食する、天敵に当たる昆虫や、昆虫に寄生するもの、センチュウ、また病原菌にあたる生物になります。
天敵導入による防除は、名前でこそ「生物農薬」と呼ばれますが、化学農薬ではなく、有機JASでも勿論使用可能です。
チャノホコリダニには、カブリダニといった有効な天敵が存在します。生物農薬をうまく活用することがハダニ防除には重要です。
この他、スワルスキーカブリダニを有効成分とする商品でスワマイドというものもあります。
生物農薬は、在来種以外の天敵昆虫を使用することが多く、本来の生態系に影響を与える恐れがある為、閉鎖系の圃場以外では使用、散布し難いものがあるなどの注意点もあります。
その他、生物農薬については下記に詳しく、具体的な製品も紹介していますので、ご参考ください。
イナワラマルチでカブリダニを増加させる
ある現場では、ポリマルチの畑に比べて、イナワラマルチをしている場合、チャノホコリダニの天敵であるカブリダニが増加するという結果が出ています。
これは、ワラ(藁)が土に接して分解が進む際に、その分解物をカブリダニが食べるために増加すると考えられています。有機農法で使用できる農薬が限られている場合などに活用してみたい方法です。
農薬散布時のポイント
散布効果を上げるために、スポット散布、葉裏にしっかり付着させる
ダニははじめ局所的に発生するので、早期発見してスポット散布ができると無駄な散布を減らすことができます。また、葉裏に生息するため、葉裏に丁寧に薬剤が付着するように散布することが大事です。
農薬の必要以上の散布は、ダニの土着天敵であるハナカメムシなども殺してしまい、かえってダニの増殖を促してしまうので、注意しましょう。
マシン油乳剤を有効活用しよう
ダニは生長サイクルが早く、抵抗性を持ちやすい害虫です。このため、薬害抵抗性発達の恐れがないマシン油乳剤は非常に有効なダニ対策の農薬と言えます。
有効な薬剤のローテーション散布を前提として、積極的なマシン油乳剤の使用をおすすめします。
耕種的防除
一にも二にも早期発見
ダニは発見から増殖までが非常に短いので、何よりも早期発見し、早め早めに防除することが大事です。しかし、小さいため、高齢化してくると見えていたはずのダニがだんだん見えにくくなってきます。
このため、葉裏をルーペや虫メガネで見る、面倒な場合は、販売されているダニ捕獲器を利用するのも良いでしょう。天敵が少なく、ダニしかいない場合は薬剤散布のタイミングです。このように定期的にモニタリングして収穫時にダメージを受けないよう早期防除に努めることが重要です。
周りの雑草をしっかり除草する
どの害虫対策にも言えることですが、圃場の周りに生長した雑草、草花があると、ダニの発生源となり、大量発生を促進する危険性があります。しっかり除草するようにしましょう。
除草については、以下のコンテンツが参考になります。
まとめ
チャノホコリダニは大量発生しやすく、幅広い農作物に食害をもたらす害虫です。ナスやピーマン、サザンカ、チャ(茶)、イチゴは特に大好きで多発します。
早期発見する仕組みを取り入れ、抵抗性を高めないために、マシン油を取り入れ、化学的農薬をローテーション散布、そして生物農薬を有効活用したIPM(総合的害虫管理)が重要です。本コンテンツが防除の一助となれば幸いです。
ここで紹介した農薬は、JA販売店やホームセンターのガーデニング・資材、庭木コーナーにあるものもあります。ほ場で早期発見し、適切な薬剤や防除方法でしっかり発生を予防、退治できると、農薬散布と言った農作業の回数を減らすことができます。
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