サッカー場などの競技場から公園、ご家庭の庭まで、芝生はさまざまなところに植えられています。芝生の緑色は、心安らぐ空間を与えてくれます。
芝生には様々な雑草が生えますが、その中でも厄介な雑草としてハマスゲがあります。ハマスゲは刈り取ったり、抜き取ったりしてもすぐに生えてくる最強レベルの雑草と呼ばれています。ハマスゲを駆除するためには、適切な知識を持っておく必要があります。
この記事では、芝生に生える厄介な雑草ハマスゲの適切な駆除方法、またあえてハマスゲを活用する方法について紹介します。
ハマスゲとは
科 | カヤツリグサ科 |
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種類 | 多年草 |
分布 | 関東以西 |
学名 | Cyperus rotundus L. |
別名 | 香附子(コウブシ)、ヤカラ、クグ |
ハマスゲは種子と塊茎で繁殖する夏生多年草です。茎の断面は三角形になっていて、葉は線形で先は次第に尖っています。草丈は8~15cm程(長くて40cm)、茎葉の色は濃緑色で光沢があるのが特徴です。
ハマスゲは地中の親株の基部から何本もの根茎をだして、それが小株になって、その基部が新しい塊茎になって、と増殖を繰り返す、大変厄介な雑草です。草刈り機(刈払機)で刈る、刈り込む、またロータリー耕で根茎を刈り取り、切断すると、さらに増殖してしまいます。砂浜や川原、果樹園、畑地、芝地に多く見られます。
好適な条件では1個の塊茎から、なんと300個以上もの新塊茎が形成されます。根茎が耕起などで切断されると萌芽が促進されてしまいます。
ハマスゲの特徴
ハマスゲには、雑草として厄介な特徴がいくつかあります。適切な除草方法を選択するためには、その特徴をしっかり知っておくことが必要です。
- 根茎、種子によって繁殖する
- 乾燥に強い
- 刈り取りに対する耐性が強い
- 根茎を切断すると、増殖を促進させる
根茎、種子によって繁殖する
ハマスゲは、根茎(地下茎)と種子で繁殖します。
根茎は、匍匐茎として地上付近に伸びることもありますし、地下30cm以上深いところに伸びることもあります。親株の基部から数本の根茎を出してその先端が地上に萌芽します。
気温が10℃以上になると地下の根茎(地下茎)が萌芽し始めます。厄介なのが、地下15cm〜30cmでも萌芽するということです。地上付近の根塊を除去するだけでは不十分ということになります。
また、種子からも発芽(出芽)しますので、仮に根茎(地下茎)をすべて除去できたとしても種子が残っている場合には繁殖することが可能です。
乾燥に強い
ハマスゲは、比較的乾燥に強い植物です。他の植物が生長しにくい土壌環境でも、ハマスゲは問題なく生長、繁殖できることが多いです。逆に他の植物が生えてこないため、繁殖しやすい環境にもなり得ます。
ハマスゲは感じで「浜菅」と書きます。「浜菅」という字のごとく、海岸の砂地にも多く生育する植物なのです。海岸の砂でも育つのですから、劣悪な環境でも生長できることがわかると思います。
刈り取りに対する耐性が強い
ハマスゲは、刈り取りに対する耐性が強いです。他の雑草の場合、芝生と同様に頻繁に低く刈り取ることで生長点を除去することができ、生長・繁殖を抑えることができる場合がありますが、ハマスゲの場合はそうはいきません。
ハマスゲは地上部を何度刈っても、根茎が残って生きている限り何度でも再生してきます。
根茎を切断すると、増殖を促進させる
「地中に根茎があるのであれば、それを耕運機や手で掘り起こしたりして除去すればよいではないか」と考えがちですが、それはあまり得策ではありません。
例えば、耕運機にローターを付けて耕すと根茎が切断されます。根茎が切断されると、切断されたそれぞれの根茎から萌芽が促進されることになるため、結果的に増殖を促進させることに繋がるのです。
スギナなど厄介な雑草に共通して言えることは、「下手に耕して根茎を分断させると増殖が促進される」ということです。
私も雑草のことをよく知らないときに、耕うんをしまくったせいでエライ目に遭ったことがあります。
ハマスゲの除草方法(芝生編)
厄介なハマスゲ、除草方法もいろいろ考えられますが、適切に選択することが重要です。芝生に生えるハマスゲの除草で効果のある方法は主に2つあります。
- 芝生用除草剤(芝生に適用のある除草剤)を使う
- 冬季に耕起する
逆に効果の薄い除草方法としては下記のものがあります。
- 刈り取る、抜き取る
- 根茎を除去しようとする
- 適用外の除草剤(グリホサートなど)をハケ塗りする
- 熱湯をかける
- 塩を撒く
それぞれ簡単に解説します。
ハマスゲの除草方法:芝生用除草剤を使う
最も効果が出やすい方法として、芝生用除草剤(芝生に適用のある除草剤)を使うことです。除草剤を使うことに抵抗感がある方もいると思いますが、決められた用法・用量であれば芝生にも人体にも影響は出ません。
芝生用の除草剤を使うときには「適用作物名」と「適用雑草名」をしっかりと確認し、適切なものを選択する必要があります。野芝(ノシバ)や高麗芝(コウライシバ)などの日本芝、バミューダグラスなどの西洋芝など芝生の種類(適用作物名)によって使用できる除草剤や用量が異なりますので、しっかりと除草剤のラベルを確認してください。
「ハマスゲ」に除草剤を使用する場合は、ラベルの適用雑草名に「ハマスゲ」「多年生広葉雑草」が記載されているものが良いでしょう。「多年生広葉雑草」と記載されていても「ハマスゲ」には効果がない場合もありますのでパンフレット等もよく読むと良いでしょう。
ハマスゲの除草方法:冬季に耕起する
効果の高いハマスゲの除草方法として、「冬季に耕起する」ことが挙げられます。
ハマスゲの塊茎は、−5℃に2時間以上さらされるか、水分が21%以下になると死滅すると言われています。そのため、−5℃程度まで冷え込む環境のときに耕起し、根茎を外気にあてることで死滅させることができるでしょう。関東以北などでは、冬季の耕起がかなり有効な手段となるはずです。
ただ、芝生を剥がす必要も出てくるので、手間や費用などの面を考えながら、最適な選択をするべきでしょう。
効果の薄い除草方法
刈り取る・抜き取る
雑草が生えてきたときの一般的な対処方法は、刈り取る、抜き取るということです。手で抜き取ることもあれば、機械を使った草刈り、芝刈りなど方法も様々です。
基本的に雑草に対してはそのような対処でも良いでしょうが、ハマスゲなど駆除の難しい雑草に対してはそれでは不十分です。
先述したとおり、ハマスゲは根塊と種子によって繁殖します。地上部を刈り取ったり、一部だけを抜き取っても、地下に残った根茎からさらに萌芽して生長・繁殖します。
手間なども考えると、得策とは言えないでしょう。
根茎を除去しようとする
「繁殖の主原因が根茎ということであれば、根茎をすべて除去すれば良いのでは?」と考えるかもしれませんが、現実的にそれは不可能でしょう。
先述したとおり、ハマスゲの根茎(地下茎)は地下30cm程度の深さまで伸びます。また、1個の根茎から300個以上の新しい根茎ができると考えると、とてもじゃないですがすべてを除去するのは不可能ということがわかります。
また、根茎を除去したところで種が出芽(発芽)することもあります。かかる労力に対して、ハマスゲの発生を抑えられる可能性が低すぎるので、この方法もおすすめしません。
適用外の除草剤(グリホサートなど)をハケ塗りする
そもそもグリホサート系などの除草剤は適用作物に芝生が含まれていることはなく、使用してはいけません。ハマスゲの駆除効果を求めて、グリホサート系の除草剤をハケ塗りするやり方もあるようですが、効果の出現性や薬害の可能性を検討すると、かかる労力に対して見合っていないと考えます。
そもそも適用作物に含まれない農薬・除草剤を使うことは法律上、及び適正な栽培の観点からもすべきではありません。
熱湯をかける
その他植物全般を枯らすのに効果がある方法として、枯らしたい植物に熱いお湯、つまり熱湯をかける方法があります。
確かに、熱湯を浴びた植物はその箇所が焼けて、枯れますが、地下茎や根までは浸透しないため、地上部にしか効果が出ません。最近だと、地下部まで効果の出るやり方や機械が出てきていますが、費用対効果などの検証も必要でしょう。
また、土壌に熱湯をかけることで、土壌内部の細菌などに悪影響が出てしまいます。
このため、ハマスゲを駆除するために熱湯をかけることはお勧めできません。
そもそも、芝生まで枯れることになるでしょう。
塩を撒く
最近、塩を撒くことで、除草することを勧めている記事、また除草塩という商品などが見受けられます。確かに塩分濃度が高くなると雑草は枯れるので、除草の効果はあります。また、塩は非常に土壌に残留、蓄積するので、雑草が新しく生えてくることも防ぎます。
しかしながら、塩は土の中で分解されないため、半永久的に効果が持続します。このため、未来にわたって植木や花などはもちろん、野菜や穀物などの作物が一切育たたくなってしまうのです。また、土壌はつながっています。雨などで塩が流れ出て、隣の土壌にも多大な被害を及ぼします。
このため、除草に塩を使うことはくれぐれも避けてください。
そもそも、芝生まで枯れることになるでしょう。
芝生に生えるハマスゲの除草におすすめの除草剤
芝生に生えるハマスゲの駆除におすすめの除草剤は下記のものがあります。
特にシバゲンDFという除草剤は芝生にもよく使われ、「ハマスゲ」にも効果が出やすいと言われています。現に適用表の適用雑草名にも「ハマスゲ」と堂々と記載されています。有効成分フラザスルフロンは茎葉および根部から吸収され、植物特有の分岐アミノ酸(バリン、ロイシン、イソロイシン)の生成を司るアセトラクテート合成酵素(ALS)を阻害する事によって殺草作用を発揮します。
葉茎処理剤など薬剤の使い方は下記を参考にしてください。
ハマスゲの活用、ハマスゲ芝生を作る
ハマスゲの繁殖力を逆手にとって、ハマスゲを芝生のようなカバープランツにしてしまうやり方もあるようです。
ハマスゲ芝生と呼んでいるようで、ハマスゲを芝生と同じような手入れで刈り込むことで綺麗に見せています。近くで野菜を栽培したり、他の作物を栽培するときにはひと工夫必要のようです。
私は試したことがありませんが、ハマスゲとうまく付き合う一つの方法かもしれません。ハマスゲ芝生を試してみるときには周りの環境(近くに別の誰かの圃場がないか、作物を育てていないかなど)を確認すると良いでしょう。
下記のマイナビ農業の記事が参考になりますので、ぜひご覧ください。
芝生に生える代表的なその他の雑草
芝生には、約70種類程度の雑草を見かけることができます。雑草は、生育する季節によって以下の2つに大別できます。
- 「冬雑草」秋から翌年の初夏にかけての冷涼期に生育する雑草
- 「夏雑草」春から夏の高温期に生育する雑草
雑草の中には、花を咲かせるものも多いです。「綺麗だな」と残しておくと、雑草の繁殖につながるので見かけたら抜き取ったり、駆除、防除するなどの対策が必要です。芝生に生える代表的な雑草を掲載しますので、ご自身の芝生に生えてきたら該当するものかどうか調べてみてください。
植物名 | ウラジロチチコグサ | オオイヌノフグリ | カラスノエンドウ | スズメノカタビラ | オオアレチノギク | オランダミミナグサ | セイヨウタンポポ | ハルジオン | ハコベ | ノゲシ・ハルノノゲシ | ツメクサ | ノボロギク | オオバコ | エノコログサ | カタバミ | オヒシバ | メヒシバ | カヤツリグサ | ザクロソウ | コメツブウマゴヤシ | コニシキソウ | シロツメクサ | スギナ | チガヤ | ニワゼキショウ | ハマスゲ | チドメグサ | ヒメスイバ | ヒメクグ | ヨモギ |
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写真 | (準備中) | (準備中) | (準備中) | (準備中) | (準備中) | (準備中) | (準備中) | (準備中) | (準備中) | (準備中) | (準備中) | (準備中) | (準備中) | (準備中) | (準備中) | (準備中) | (準備中) | |||||||||||||
冬雑草/夏雑草 | 冬雑草 | 冬雑草 | 冬雑草 | 冬雑草 | 冬雑草 | 冬雑草 | 冬雑草 | 冬雑草 | 冬雑草 | 冬雑草 | 冬雑草 | 冬雑草 | 夏雑草 | 夏雑草 | 夏雑草 | 夏雑草 | 夏雑草 | 夏雑草 | 夏雑草 | 夏雑草 | 夏雑草 | 夏雑草 | 夏雑草 | 夏雑草 | 夏雑草 | 夏雑草 | 夏雑草 | 夏雑草 | 夏雑草 | 夏雑草 |