サッカー場などの競技場から公園、ご家庭の庭まで、芝生はさまざまなところに植えられています。芝生の緑色は、心安らぐ空間を与えてくれます。
芝生を育てていると、綺麗な芝生が茶色になって「枯れてしまったのでは」とガッカリすることもあります。芝生が茶色になる原因は複数考えられます。適切な判断と対処法ができるようにおさらいしておきましょう。
この記事では、芝生が茶色に変色する原因と判断方法、対処方法について、詳しく解説します。
芝生が茶色になる原因は複数ある
芝生が茶色になる原因は複数あります。一時的に枯れる症状から再生できないものまで程度が異なりますので、まずは茶色に枯れた原因を探る必要があります。以下に芝生が枯れる主な原因を記載します。
- 時期によって枯れる(冬枯れなど)
- 芝刈りで短くし過ぎたことによって枯れる(軸刈り)
- 水不足によって枯れる(夏枯れ)
- 除草剤によって枯れる
- 害虫による被害で枯れる
- 病気による被害で枯れる
- 肥料のやりすぎや不足で枯れる
- 人やモノによって踏まれて枯れる
- そもそも購入した芝苗(芝生のシート)の品質が悪かった
- その他
また、芝の特徴によっても推定できる原因が異なる場合があります。例えば、高麗芝(コウライシバ)や野芝(ノシバ)などの日本芝と西洋芝では乾燥への強さが異なります。日本芝の場合は比較的乾燥に強いですが、西洋芝は乾燥に弱い品種が多いため、夏場は枯れやすいです。
このように品種や環境などを複合的に考えると芝生が茶色になる本当の原因にたどり着くことができるでしょう。観点を以下にまとめましたので、観察する際の参考にしてください。
- 育てている芝生の品種の特性を確認する(乾燥や寒さに強いかなど)
- 枯れる前数日〜数週間の環境を確認する(猛暑や雨が降らない日が続いたなど)
- 枯れる前数日〜1週間程度の間で何か作業を行ったか(芝刈りやサッチングなど)
正直、原因の特定はプロで無い限り難しいということもあります。そこまで気負わず、枯れてしまったら次のシーズンで張り替えるなど、気軽に考えたほうが良いでしょう。
芝生が茶色に枯れる主な原因と対処方法
以下に、芝生が枯れる主な原因と対処方法についてまとめたので、当てはまりそうな原因を見つけたら適切に対処しましょう。
時期によって枯れる(冬枯れなど)
芝生が枯れる原因の一つとして、時期によるものがあります。
芝生に使われるイネ科植物(いわゆる芝、芝草)は、一般的に15属30種類以上あると言われています。それらは生育適温や栽培地域の違いによって、大きく「暖地型」と「寒地型」に分けられます。
暖地型/寒地型 | 日本芝/西洋芝 | 芝草の種名 |
---|---|---|
暖地型 | 日本芝 | 野芝(ノシバ)、高麗芝(コウライシバ)、ビロード芝(ビロード芝・キヌシバ) |
暖地型 | 西洋芝 | バミューダグラス、ティフトン芝(ティフトンシバ)、センチピードグラス、セントオーガスチングラス、シーショア・パスパラム |
寒地型 | 西洋芝 | ケンタッキーブルーグラス、クリーピングベントグラス、トールフェスク、アニュアルライグラス、ペレニアルライグラス、クリーピングレッドフェスク、チューイングフェスク、ハードフェスク |
特に、高麗芝やバミューダグラス、ティフトン芝など暖地型の芝の場合、冬に枯れて茶色くなることがほとんどです。地上部は枯れますが、地下部分は休眠状態となるので、翌春には再度萌芽し始め緑に戻るでしょう。そのため、基本的には心配する必要はありません。
これを冬枯れと呼んでいる方もいますが、厳密には越冬できずに本格的に枯れてしまうことを冬枯れと呼びます。本格的に枯れていなければ緑が戻りますので安心してください。
翌春、萌芽が望めないような状態であれば、芝生の張り替えをおすすめします。
芝刈りで短くし過ぎたことによって枯れる(軸刈り)
芝生に関わらず、植物は生長点がなくなるとその軸(枝)を伸ばすことができなくなります。芝生にももちろん生長点があります。
草刈り機などで、芝生の生長点を刈ってしまい、緑の葉が生長しづらい状況に陥ってしまった状態を軸刈り(ジク刈り)した状態と呼びます。
軸刈り(ジク刈り)を防ぐためには、正しく生長点の場所を知っておくことが重要です。
芝生の生長点
芝生は緑の草の部分が目立ちますが、茎も生長しています。生長点はこの茎付近にあり、芝生が生長して分げつが進むと、生長点はどんどん高くなります。
ちょうど、葉が枯れた茶色の部分と緑色の部分の境目あたりが、生長点に近いです。
この生長点よりも下で刈る軸刈り(ジク刈り)をしてしまうと、光合成する葉や生長点がなくなってしまうため、生長が著しく鈍くなります。
軸刈り(ジク刈り)をしてしまったときの対処法
緑の芝生に戻るまでしばらく時間がかかりますが静観して、新しい芽が出てくることを待ちます。春であれば、芝生自身が蓄えている養分で再生できる場合もあります。夏場の場合は、芝草自身が蓄えている養分が少なく、また光合成も十分に行えないため、再生できない場合もあります。
このとき、芝生が弱っているからと言ってむやみに肥料をやるのは禁物です。傷んで弱っている植物に肥料をやるのはリスクが伴いますので、まずは乾燥させないように水やりから始めると良いと思います。
軸刈り(ジク刈り)を防ぐには
軸刈りが起こってしまう原因として最も多いのは、芝草が長く伸び切ったときに一気に短く刈ってしまうことです。軸刈りを防ぐために日頃から行えることは、芝草が長く伸びる前に頻度よく芝刈りを行うことです。
仮に長く伸びてしまった場合には、芝刈りのときに刈り込みの高さを調整してやる必要があります。以下の記事に、軸刈りについて詳しく解説していますので参考にしてください。
水不足によって枯れる(夏枯れ)
水不足によって芝生が一時的に枯れる場合もあります。芝生の葉を見て、黒く丸まっているようであれば水不足のサインです。特に、西洋芝は比較的乾燥に弱いため注意が必要です。
水不足によって茶色く枯れた場合は、水をしっかりと撒くことによって芝生が回復してきます。晴れた日はほぼ毎日しっかりと水やりをすることで、2週間程度で回復してくるでしょう。ただし、根から枯れているようなことがあれば、再生は望めませんので張り替えが必要となる場合があります。
西洋芝の夏枯れを防ぐためには、いかに水やりの頻度を上げられるかにかかっています。特に寒地型の西洋芝は枯れやすいので梅雨明け後から盛夏にかけては、ほぼ毎日午前中の水やりが必要となるでしょう。
除草剤によって枯れる
芝生を枯らすような除草剤を誤って散布すると、芝草は枯れてしまい再生が困難となります。芝生に生える雑草への対処は、必ず「芝生用除草剤(芝生に適用のある除草剤)」を使用してください。「芝生用除草剤」であれば、散布しても枯れるリスクはほぼありません。
もし芝生に適用のない除草剤を撒いてしまったら、その芝生の再生は諦めましょう。芝生の張り替えが必要となりますし、場合によっては土壌の入れ替えも必要になるかもしれません。
害虫による被害で枯れる
芝生には害虫もよく発生します。特にスジキリヨトウやコガネムシ類が多く発生します。「野菜と違って芝生だからそこまで被害は出ないでしょう」と思われるかもしれませんが、コガネムシ類の幼虫は地中に住みつき、芝生の根を食べて芝生を枯らしてしまうことがあります。見かけたときには適切な対処をするほうが良いでしょう。
芝生に現れる害虫としては、以下のものが代表的です。
- スジキリヨトウ
- コガネムシ類
- シバツトガ
小さい面積であれば手で除去するだけでも十分ですが、大きい面積だと対応が難しくなるので、必要に応じて農薬の散布を検討してください。害虫には、スミチオン乳剤(MEP乳剤)などをよく使用します。
病気による被害で枯れる
芝生がかかりやすい病気に「〇〇パッチ」と呼ばれるものが多く存在します。その名の通り、芝生のあちこちが黄色や茶色に変色する病気です。
また、葉に鉄さびのような斑点ができ、やがて橙色の粉をつけるようになるサビ病も代表的な病気です。
芝生がかかりやすい病気としては、以下のものが代表的です。
- サビ病
- ラージパッチ(葉腐病)
- カーブラリア葉枯病
- ダラースポット病
- 炭疽病(炭そ病)、ブルーグラス炭疽病(炭そ病)
- ブラウンパッチ
芝生の病気が発生する理由としては、下記のことが考えられるので当てはまるようであれば改善するようにしてください。基本的には肥料の施用量適正化と芝刈り、エアレーション、サッチ取りなどのこまめな手入れによって回復してきます。被害が酷いときには、農薬による防除も検討してください。
- 窒素肥料の不足、過多
- 土壌の水はけが悪い
芝生の病気の対処には、ポリオキシンZ水和剤(ポリオキシン水和剤)やベンレート水和剤(ベノミル水和剤)、ラリー水和剤(ミクロブタニル水和剤)などが使用されます。
肥料のやりすぎや不足で枯れる
肥料のやりすぎ、もしくは不足によっても芝生は枯れる可能性があります。
基本的に芝生に用いられる植物は肥料食い(肥料をたくさん吸収する)な植物なので、肥料やけ(肥料負け)することはほとんどありません。しかし、高濃度の肥料を一度に与えることによって、根が傷んで枯れてしまうというリスクはあります。適切なタイミングで適切な量を施すように心がけましょう。
また、生育期には養分を大量に消費することから、肥料のやる量や頻度を上げてやる必要も出てくるでしょう。生育期に葉色が冴えない芝生は肥料不足を疑いましょう。
人やモノによって踏まれて枯れる
芝生も当然植物ですから、上から踏まれた状態が続くと枯れてしまいます。特に芝の張り替えなど、まだ根付いていないときに、その上を歩いたりモノを置いたりすることで枯れてしまうケースが多いです。張りたての芝には立ち入らないのがベストでしょう。
常に重いものが乗っている状況もよくありません。大事にしたい場所には、モノを置かないようにしたほうが良いでしょう。
そもそも購入した芝苗(芝生シート)の品質が悪かった
芝の張り替えやシバ張り後、ずっと茶色のまま色づかない場合は、そもそも購入し芝苗(切芝、芝生シート)が悪くて、うまく根付かなかったということが考えられます。
ホームセンターなどで販売されている芝苗(切芝、芝生シート)は、切り出されてから数日経過しているものも多く傷んでいる場合もあります。特に平積みで置かれているものは、蒸れたり潰れたりしていることですでに枯れている場合も多いです。
購入するときには、芝苗の状態も確認して、可能な限り良い芝生を手に入れられるようにしてください。もし、そのような芝苗を購入してしまった場合は一度張ってみて、根付かないようであれば次のシーズンで張り替えをすると良いでしょう。
時間をかけて様子を見ることも重要
芝生の枯れる原因は、さまざまです。対処をしてもすぐに効果が出てこない場合もあるでしょう。心配になり、いろいろなことを同時に行ってしまうと何が効果があって、何が効果がなかったのかがわからなくなってしまいます。
落ち着いて原因を推測し、一つ一つ時間をかけて対処していくという心構えも重要でしょう。