ツバキやサザンカ、サクラ(桜)の木の葉っぱでよく見かけるチャドクガ。その名の通り、お茶畑でも大量発生し、その毛が刺さると非常に長く痒み、腫れが続いてしまう、厄介な害虫です。ここではチャドクガとはどういう虫なのか、その特性と、チャドクガを駆除、防除するための農薬、またその他の効果的な方法、対策についても解説します。
そもそも、チャドクガはどういう害虫?
チャドクガとは?
チャドクガはチョウ目ドクガ科の昆虫で、日本では本州以南のあちこちで見られる毒蛾の代表的な一種です。チャドクガの幼虫は淡い黄褐色の体で、成長すると25mm程度まで大きくなります。全身に0.1mmほどの毒針毛を持ち、触れると炎症をおこして痒くなり、かぶれます。いわゆる「毛虫(ケムシ)」の代表格と言えます。
4、5月と8、9月にかけて年に2回発生します。葉裏に産み付けられた卵塊で越冬します。
どうしてチャドクガは害虫なのか?
チャドクガは、幼虫、成虫にかかわらず、たくさんの毒針毛を飛散させ、それに触れた部分はかぶれ、長時間のかゆみ、炎症を引き起こしてしまいます。
またチャドクガの幼虫は、葉を食害します。食害のレベルも非常に激しいもので、樹木や茶の葉を全て食べ散らかして無くなってしまうほどです。
以上から、チャドクガは人体にまた食害のある害虫と言えるでしょう。
チャドクガに効く農薬
チャドクガは代表的な害虫のため、下記のように、シンジェンタジャパンや住友化学園芸などのメーカーから多くの適用農薬が販売されています。下記の農薬(殺虫剤)は、基本的に成虫、卵の状態に散布しても駆除することはできません。
チャドクガに効く代表的な農薬
チャドクガには、ピレスロイド系のトレボンや有機リン系のオルトランなど、多くの適用農薬があります。
有機リン系
有機リン系殺虫剤は殺虫剤の中でも、昆虫の神経系を阻害するタイプで、殺虫剤の代表的なタイプです。代表的な有機リン系農薬は、エルサン、オルトランやスミチオン、マラソンがあります。
ネオニコチノイド系 モスピラン、アルバリンなど
ネオニコチノイド系とは、90年代に登場した比較的新しい殺虫成分で、ニコチンの仲間です。ニコチン性アセチルコリン受容体と結合し、信号の伝達を阻止し、結果、昆虫は麻痺し、死に至ります。
浸透性、速効性、持続性が優れていることや幅広い殺虫スペクトラムを持つため、現在非常によく使用されている殺虫剤です。ネオニコチノイド系農薬については下記で詳しく説明しています。ご参考ください。
家庭園芸でよく使われる住友化学の「ベニカベジフルVスプレー」や「ベニカXファインスプレー」「ベニカXネクストスプレー」「ベニカベジフルスプレー」は、ネオニコチノイド系のクロチアニジンを成分にしています。
チャドクガに効く農薬一覧表
RACコード別に分類した、チャドクガに効く代表的な農薬は以下のようになります。
※農薬を使用する際にはラベルをよく読み、適用作物、用法・用量を守ってお使いください。
家庭園芸でよく使われる住友化学の「ベニカベジフルVスプレー」や「ベニカXファインスプレー」「ベニカXネクストスプレー」「ベニカベジフルスプレー」は、還元澱粉糖化物やネオニコチノイド系のクロチアニジンを成分にしており、チャドクガに適用があります。
またアクリル樹脂、有機溶剤を成分とし、その成分が付着することでドクガ類の毒針毛を固め飛散を抑えてしまう固着剤もあります。家庭園芸等でチャドクガの毒針被害を抑えたい方は試してみてください。
殺虫剤はヨトウムシだけでなく、カメムシ類、カイガラムシ類やハダニ類、アブラムシ類、アザミウマ類、コナジラミ、コガネムシ、キスジノミハムシ、ネキリムシ、ヨコバイ、ハモグリバエ、ハマキムシ、イラガ、ウンカ、メイガ、ハムシ、ケムシ、テントウムシダマシ、ナメクジ、シンクイムシ、コオロギ、タマネギバエ、ダンゴムシ、ウリハムシ、アオムシ、ゾウムシ、ハバチ、グンバイムシ、モモハモグリガ、ハモグリガなど幅広い殺虫スペクトラムを持つものも多いので、うまく活用しましょう。
上記の農薬は水で溶かして薄めて使用する液剤や水溶性の粉剤、粒剤(粒状や顆粒)です。希釈方法等については下記をご参考ください。
防除する際のポイント
近年では、特定の農薬に抵抗性を持った害虫も多く発生し、農薬の効率的な使用のため、農薬のRACコードを確認して、タイプの異なる殺虫剤のローテーション散布を心がけること、また、農薬の使用量を減少させ、薬害を少なくするために、生物的、物理的、耕種的防除法を取り入れたIPM防除体系を組んで、統合的に実践することが重要になってきています。
生物農薬(生物的防除)
生物農薬とは、「農薬の目的に使われる生物を使い、病害を防除する農薬」のことを言います。
その生物とは主に、昆虫、線虫、微生物で、害虫(例えばアブラムシやアザミウマ、コナジラミ、ハダニなど)を捕食する、天敵に当たる昆虫や、昆虫に寄生するもの、センチュウ、また病原菌にあたる生物になります。
天敵導入による防除は、名前でこそ「生物農薬」と呼ばれますが、化学農薬ではなく、有機JASでも勿論使用可能です。
チャドクガの天敵はスズメバチ、鳥類などになってくるため、市販されている生物農薬はありませんが、他の害虫に適用する生物農薬は多くあります。
生物農薬については下記に詳しく、具体的な製品も紹介していますので、ご興味ある方はご参考ください。
物理的防除
チャドクガの物理的、耕種的防除方法は、昔から様々な方法が存在します。これ一つで完全に防除できる、といった方法はありません。下記情報を参考に、是非、様々な方法を複数試してみてください。
チャドクガの病死虫をすり潰し、希釈して散布
茶の有機栽培で、チャドクガが大量発生して困っている農家の方が行っている防除法です。
チャドクガの幼虫の群れの中で死んでいる幼虫を拾い、その死骸をすり鉢ですり潰して1匹あたり1L(リットル)を目安に希釈し溶液を作ります。
この溶液を出来れば孵化直後を狙って噴霧器の鉄砲ノズル等で散布、噴射します。こうすることでチャドクガの病死体の中にあるウイルスが広がり、徐々にチャドクガの発生数が減少していくと言われています。
注意点はあくまで予防的に使用するという点。ウイルスの効果速度は安定しないため、速効性が求められないからです。
電撃殺虫機を設置する
チャドクガの成虫は蛾の一種で、夜の外灯に集まる習性があります。このため、灯りで感電死させる電撃殺虫機は、有効な防除方法です。(成虫を駆除できると産卵を防ぐことが出来、防除になります)
耕種的防除
チャドクガの物理的、耕種的防除方法は、昔から様々な方法が存在します。これ一つで完全に防除できる、といった方法はありません。下記情報を参考に、是非、様々な方法を複数試してみてください。
フェロモントラップを設置する
フェロモンルアーと呼ばれる蓋があるバケツのようなトラップの容器にフェロモン剤を設置することで、蛾の成虫を誘引・捕殺することができます。畑の周りに設置すると、チャドクガの成虫を捕殺できます。
しっかり除草する
圃場の周りに、雑草があると、チャドクガの発生を促進してしまいます。圃場の周りの雑草はできるだけこまめに除草するのが、被害を少なくするのに極めて重要です。
除草については、以下のコンテンツが参考になります。
まとめ
茶のような畑地の農作物に限らず、様々な花木、観葉植物の葉、茎にも被害が出るチャドクガ。本記事が、適切に退治、防除を行うためのチャドクガ対策の一助となれば幸いです。
ここで紹介した農薬は、JA販売店やホームセンターのガーデニング・資材、庭木コーナーにあるものもあります。ほ場で早期発見し、適切な薬剤や防除方法でしっかり発生を予防、ガードできると、農薬散布と言った農作業の回数を減らすことができます。
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