チェンソーの用途は幅広く、立木の伐採、林業での枝打ち、枝の剪定、丸太の切断、木材の切断、薪割り等々さまざまに使うことができます。その際に必要になるのが、チェンソー燃料です。
この記事では、チェンソー燃料について解説します。
チェンソー燃料(混合燃料)とは?
チェンソー燃料には、ガソリンとエンジンオイルを混ぜ合わせた「混合燃料」を使用します。
ガソリン
ガソリンは、日本国内のガソリンスタンドやホームセンターなどで入手できる自動車用のものを利用します。
ガソリンスタンドでは「レギュラーガソリン」や「ハイオクガソリン」と区別されていることが多いですが、混合燃料にはレギュラーガソリンを利用するのが普通です。両者の主な違いは、オクタン価で表されるガソリンの燃えにくさの度合いです。オクタン価は最大100とされており、JIS規格(日本産業規格)では、レギュラーガソリンが89以上、ハイオクガソリンが96以上と定められています。オクタン価が大きいほどノッキング(異常燃焼)が起こりにくいため、高品質とされます。チェンソーを含む農業機械の取扱説明書では、オクタン価95以上のガソリンを使用することなどのように特別に指定されることもありますが、そうした場合を除けば安価なレギュラーガソリンを利用して問題ありません。
もうひとつ知っておきたいガソリンの区別が、「無鉛ガソリン」と「有鉛ガソリン」です。有鉛ガソリンは、オクタン価を大きくすることなどを目的に鉛を微量添加したものです。かつては有鉛ガソリンが主流だった時代もありましたが、日本では1980年代に使用廃止になっています。チェンソーを含む農業機械の取扱説明書では、無鉛ガソリンを利用するよう指定されていることがあります。しかし、現在の日本国内ではガソリンといえば無鉛ガソリンを表しているので、特に気に留めなくても大丈夫です。
エンジンオイル
一般に、エンジンオイルは多くの役割をもちます。潤滑、清浄、衝撃吸収、密封、冷却、防錆などです。そのため、エンジンオイル無しでエンジンを作動させると、ピストンがスムーズに動かないといったことが起こり、あっという間に故障してしまいます。したがって、エンジン回転数が高いチェンソーにおいては、エンジンオイルは特に重要な資材といえます。
チェンソーをはじめとする農業機械では、使用するエンジンオイルが取扱説明書に記載されていますので、指定のものを使うようにしましょう。なお、エンジンオイルには、2サイクルエンジン(2ストロークエンジン)用および4サイクルエンジン(4ストロークエンジン)用があります。チェンソーでは軽量小型の2サイクルエンジン(2ストロークエンジン)が採用されているため、ごく一部の例外を除いて使用するのは2サイクルエンジン(2ストロークエンジン)用のエンジンオイルであり、ガソリンと混ぜて混合燃料を作製します。
2サイクルエンジン(2ストロークエンジン)用のエンジンオイルは、JASO規格(日本自動車技術会規格)によりグレード分けされています。評価項目は、潤滑性、清浄性、排気性などです。グレード分けは3段階で、最も高性能のFD級、次いでFC級、そしてFB級となっています。FD級のエンジンオイルはスモークレスであったり、煤が付着しなかったりと性能面で優れています。
エンジンオイルはチェンソー専用というわけではないので、刈払機、草刈機、芝刈機、小型発電機、耕うん機、エンジンポンプ、ブロワ、ヘッジトリマーといった他の農機具とも共用できます。
混合燃料の作製方法と混合比
混合燃料は、誰でも簡単に作製できます。ガソリンとエンジンオイルを入手して、混ぜ合わせれば完成です。
ガソリンは、日本国内のガソリンスタンドやホームセンターなどで入手できる自動車用のものを利用します。ガソリンスタンドで購入する場合は、運搬するために携行缶を持参します。ガソリンは、給油中も気化するため火気厳禁であることはよく知られています。そのため、セルフスタンドで携行缶に自ら給油することは認められておらず、店員が給油することが法令により定められています。他方、エンジンオイルは、ホームセンターや通販サイトなどで購入できます。
ガソリンとエンジンオイルの入手後は、いよいよ両者を混ぜ合わせます。混ぜ合わせる際には「コンビ缶」や「ツインタンク」などの商品名で知られる専用品を使うと便利ではありますが、手で持って振ることができるポリ容器であれば何でも構いません。ガソリン:エンジンオイル=25:1の混合比(割合)で作製する場合は、次表のようになります。なお、ガソリン:エンジンオイル=50:1の混合比(割合)で作製する場合は、表のエンジンオイルをそれぞれ半分量にして読み替えてください。
ガソリン(ml) | エンジンオイル(ml) |
---|---|
100 | 4 |
200 | 8 |
300 | 12 |
400 | 16 |
500 | 20 |
1000 | 40 |
市販されている混合燃料を利用する方法もおすすめ
誰でも簡単に作製できる混合燃料ですが、手間に感じる人もいるでしょう。その場合には、市販されている混合燃料を利用する方法もおすすめです。
製品化された混合燃料では予めガソリンとエンジンオイルが混ぜ合わされているので、そのままチェンソーへと給油することができます。そのため、手間なく手軽に利用できるメリットがあります。反対にデメリットとして、価格が高いことがあります。したがって、大量もしくは頻繁に使用する場合には自身で作製したいと考える人が多いはずです。
市販されている混合燃料を購入する際には、記載されている混合比をよく確認するようにしましょう。また、一度開封すると劣化が進むことは避けられないので、ある程度短期間で使い切れる容量を購入するようにしましょう。農林業用品メーカーであり、チェンソーメーカーである、やまびこ純正の混合燃料などもあります。
燃料ポンプ(プライマリーポンプ)
「燃料ポンプ」は、エンジンチェンソーの部品のひとつです。「プライマリーポンプ」や「プライミングポンプ」とよばれることもあります。
燃料ポンプには、チェンソー本体の燃料タンクに入れた混合燃料をキャブレターまで吸い上げて供給する役割があります。エンジンを始動させる際に、燃料ポンプを何度か手で押し、混合燃料をキャブレターまで吸い上げます。その後、チョーク操作、リコイルスターターロープを引いて、エンジンを始動させる流れとなります。
燃料ポンプは、耐油性ビニールが素材になっていることが多いです。そのため、混合燃料に接触しても直ちに溶けるようなことはありませんが、長時間接触すると劣化して破損してしまいます。作業終了後には、燃料ポンプからも混合燃料を抜くようにしたいところです。また、直射日光や高温低温も破損の原因になりますので、チェンソー本体を保管する環境にも注意を払うとなお良いでしょう。
一方で、燃料ポンプは、どんなに丁寧に扱っていても破損を免れない消耗品でもあります。破損した場合には、適合品を入手して速やかに交換するようにしましょう。
燃料で動作するエンジンチェンソー
燃料で動作するのが、エンジンチェンソーです。各チェンソーメーカーでは、さまざまなエンジンチェンソーを開発販売しています。
スチール(STIHL)
スチールのエンジンチェンソーは種類が多くラインナップされており、それぞれのモデルに、ガイドバーの長さなど異なる仕様が存在します。まずは、ここでまとめた分類、排気量(cm3もしくはcc)、質量(kg)、希望小売価格などからモデルを絞り込み、その後に仕様(ガイドバーの長さなど)によって最適な製品を選ぶとよいでしょう。
ハスクバーナ(Husqvarna)
ハスクバーナのエンジンチェンソーには、独自のX-TORQ® (エックストルク)、SmartStart®(スマートスタート)、AutoTune(オートチューン)といった優れた機能が採用されています。燃費がよく、排気ガスの少ないエンジンです。さらにエアインジェクション(遠心エアクリーニングシステム)によってフィルター清掃の頻度が少なくなっているほか、チョーク連動式のストップスイッチがトラブルを防ぐなど安全面にも最大限の配慮がなされています。
ゼノア(ZENOAH)
ゼノアチェンソーは種類が多くラインナップされており、それぞれのモデルに、ソーチェンタイプやバー長など異なる仕様が存在します(他の販売店と比べて著しく安価で販売されている場合は、同モデルの別仕様ということがありえますので注意が必要です)。まずは、ここでまとめた項目、排気量(cm3もしくはcc)、本体質量(kg)、メーカー希望小売価格などからモデルを絞り込み、その後にソーチェンタイプやバー長など仕様によって最適な製品を選ぶとよいでしょう。
共立(KIORITZ)
共立チェンソーは、使い方や用途によって「トップハンドルソー」、「オールラウンドソー」、「プロソー」、「ルートカッター」、「GOGOシリーズ」に分類して整理すると、ラインナップを把握しやすいです。「竹切りソー」という分類もありますが、現在は新規での販売はなく、流通在庫のみとなっているようです。
新ダイワ(shindaiwa)
エンジンを搭載したチェンソーです。いずれも燃料には混合燃料(ガソリン:2サイクルオイル=50:1)を使用します。使い方や用途によって「トップハンドルソー」、「オールラウンドソー」、「プロソー」、「カジュアルソー」、「ルートカッター」に分類されています。「竹切りソー」という分類もありますが、現在は新規での販売はなく、流通在庫のみとなっているようです。
エコー(ECHO)
エコーには、燃料を使用するエンジンチェンソー、充電式の電動チェンソーの両タイプがあります。使い方や用途によって「トップハンドルソー」、「オールラウンドソー」、「50Vバッテリー」の3つのカテゴリーに分類されています。
丸山製作所(MARUYAMA)
人や環境に優しいecoエンジンが採用されています。また、ハンドガードを手前に引くだけで簡単に強くチェン張りができる独自の「eジャスト」という仕組みも採用されています。
マキタ(makita)
マキタのチェンソーとしてはバッテリーチェンソーが有名ですが、エンジンチェンソーも多く取り揃えています。動力源として混合燃料(ガソリンと2ストロークオイル)を使用するためバッテリーチェンソーと比べメンテナンスが面倒な反面、過酷な環境にも負けないパワーがあります。
リョービ(RYOBI)
リョービのチェンソーは、ホームセンターでも取り扱われていることが多いため、実機を見てから購入することができます。
ハイコーキ(HiKOKI)
ハイコーキ(HiKOKI)は、工機ホールディングス株式会社が展開する製品ブランドです。工機ホールディングスはかつて日立工機株式会社という社名の日立グループの会社でしたが、2017年にグループを離脱し現在に至っています。この沿革にともない、日立(HITACHI)ブランドで展開されていた電動工具などの製品が、新たにハイコーキ(HiKOKI)ブランドに刷新されています。
まとめ
チェンソーの用途は幅広く、立木の伐採、林業での枝打ち、枝の剪定、丸太の切断、木材の切断、薪割り等々さまざまに使うことができます。その際に必要になるのが、チェンソー燃料です。
チェンソー燃料には、ガソリンとエンジンオイルを混ぜ合わせた「混合燃料」を使用します。ガソリンは、日本国内のガソリンスタンドやホームセンターなどで入手できる自動車用のものを利用します。他方、エンジンオイル無しでエンジンを作動させると、ピストンがスムーズに動かないといったことが起こり、あっという間に故障してしまいます。したがって、エンジン回転数が高いチェンソーにおいては、エンジンオイルは特に重要な資材といえます。
ガソリンとエンジンオイルの入手後は、いよいよ両者を混ぜ合わせます。混ぜ合わせる際には「コンビ缶」や「ツインタンク」などの商品名で知られる専用品を使うと便利ではありますが、手で持って振ることができるポリ容器であれば何でも構いません。チェンソーごとに指定される混合比(割合)で混合燃料を作製します。
誰でも簡単に作製できる混合燃料ですが、手間に感じる人もいるでしょう。その場合には、市販されている混合燃料を利用する方法もおすすめです。製品化された混合燃料では予めガソリンとエンジンオイルが混ぜ合わされているので、そのままチェンソーへと給油することができます。市販されている混合燃料を購入する際には、記載されている混合比をよく確認するようにしましょう。また、一度開封すると劣化が進むことは避けられないので、ある程度短期間で使い切れる容量を購入するようにしましょう。
その他、チェンソーを長持ちさせるために忘れてはいけないのが、チェンソーヤスリ(丸ヤスリおよび平ヤスリ)やデプスゲージ調整器などの目立て道具を利用した日々のメンテナンスです。また、作業の際には、チャップスなどの防護服、手袋(軍手)や安全メガネなどの保護具を着用するようにしましょう。