ヒヤシンス(ヒアシンス)はチューリップやスイセンなどと並んで、花壇を彩る人気の秋植え球根です。葉と花とのバランスがよく、均整のとれた草姿でとても美しいです。ヒヤシンスの魅力は、その花色のバリエーションの豊富さと強く甘い香りでしょう。
日本では、10品種ほどが栽培されていますが、日頃見ているヒヤシンスの多くはダッチ系ヒヤシンスです。野生種の花は青紫色ですが、園芸品種は花色も豊富です。
そんなヒヤシンスですが、庭や花壇、鉢植えでの栽培のほかに水耕栽培(水栽培)という栽培方法も可能です。実は、ヒヤシンスは水栽培が容易で、すらりと伸びた白い根と綺麗な透明の容器がマッチし、さらに全体の美しさを引き立ててくれます。
この記事では、ヒヤシンスの基礎知識と100均(100円ショップ)のものを使った水耕栽培の方法、手順について解説します。
そもそも水耕栽培とは?
水耕栽培(Hydropinics)とは、養液栽培の一種で、固形培地を使用しないで栽培する手法のことを指します。水耕法、水栽培などとも呼ばれます。
水耕栽培と聞くと、上記写真のような植物工場を思い出す方も多いかもしれません。実は、上記写真のような栽培方法は、水耕栽培と呼ばず、ロックウール栽培(養液栽培における固形培地耕の一種)と呼びます。
画像左上にロックウールのスラブ(ロックウールが詰まった細長い栽培培地)があります。わかりますか?
家庭でできる水耕栽培のメリット
水耕栽培は、家庭菜園でも農家でも行われる栽培方法ですが、家庭で水耕栽培をするメリットはいくつもあります。
- 室内でも気軽に栽培できる
- 身近にある手軽なもので栽培ができる
- 土作りが不要である
- 無農薬・減農薬栽培がしやすい(虫がつきにくい)
- 水やりの手間を少なくできる
- 小さなスペースでも栽培できる
- 植物の生長が早くなるとともに、質が安定しやすい
- 見た目をおしゃれにすることで、インテリアとして楽しむことができる
室内でも気軽に栽培できる
土を使わず水やり(潅水)の必要もないので、室内でも気軽に栽培することができます。必要な日射量は植物によって異なりますが、日当たりの良い窓辺に置いておけば、問題なく生長します。日当たりの良い場所がない場合などは、栽培用の白熱球やLEDライトを使うことによって補うことができます。
身近にある手軽なもので栽培ができる
水耕栽培は、専用の容器や機器を用意しなければできないと思われる方も多いと思います。実は、植物によっては身の回りにあるものだけで栽培することが可能です。例えば、容器としてコップやペットボトルを使用することもできますし、植物の大きさや種類によってはエアポンプなどの設備も必要ありません。
土作りが不要である
通常、畑やプランターなど土を使う栽培(土耕栽培)の場合は、植え付け(定植)の前に土作りが必要です。土作りはその場1回限りのものではなく、毎作必要となりますし、何より適切な養分バランスを保つことが難しいという難点があります。
しかし、水耕栽培の場合は土を使わないため、そのような煩わしさからは解放されます。
根域の水分量の維持と植物を固定するためにハイドロボールが使われたりもします。
無農薬・減農薬栽培がしやすい(虫がつきにくい)
水耕栽培の場合は、室内で育てることも容易となるため、害虫や病気の被害に遭うリスクが下がります。ただし、ベランダやハウスなどで水耕栽培をする場合には、土耕栽培と同様に害虫や病気の被害に遭う可能性があるため、適切な防除が必要となることが多いです。
水やりの手間を少なくできる
家庭菜園でよく使われるプランターの場合、雨に当たらない場所(ベランダなど)で栽培していると土壌の水分量が下がって、やがて植物は枯れてしまいます。雨水などが入り込まないため、土壌水分の管理がしやすいですが、頻繁に水やり(潅水)をしなければ植物が生長しないという欠点があります。最盛期(果菜類の夏場の収穫時期など)には、1日に1回〜2回程度の水やり(潅水)が必要となることもあります。
水耕栽培の場合は、ある程度の容器の大きさであれば水を貯めておくことによって数日、そのまま持たせることもできます。
ただし、植物のステージによっては水の取り替え頻度を1日に1回にする必要があったりします。また、水の鮮度は水耕栽培の命であるため、定期的(少なくとも週に1回程度)の水の取り替えは必須です。培養液での栽培など、場合によっては藻が発生するなど不衛生な環境となりますので、なるべくこまめに取り替えることをおすすめします。
小さなスペースでも栽培できる
土耕栽培の場合は、どんなに小さなスペースでも土を入れる容器が必要であるため、プランターや鉢植えが置けるくらいのスペースが必要となります。
水耕栽培の場合は、植物の大きさなどによりますが、小さいものではペットボトルやコップでも十分に育てることができます。実際にペットボトルでミニトマトやミニキュウリを育てることも可能です。
植物の生長が早くなるとともに、質が安定しやすい
水耕栽培の場合は、土耕栽培に比べて根域の状況がわずかに良くなったり一定になりやすいということもあり、生長のスピードが早くなる傾向にあります。
ただし、エアポンプによる酸素の吸入や培養液の濃度が適切であることが前提となります。
見た目をおしゃれにすることで、インテリアとして楽しむことができる
先述したとおり、水耕栽培は室内でもできるためインテリアのアイテムとしても使えます。
例えば、容器を綺麗な絵柄のコップにしたり、コップにマスキングテープを貼ったりするとより水耕栽培を楽しむことができるでしょう。
ヒヤシンス(ヒアシンス)の基礎知識と水耕栽培の時期
作物名 | 科目 | 原産地 | 育てやすさ | 球根の価格の価格(円/個) | 収穫までの日(目安) | 栽培できる地域 | 作型 | 栽培方法 | 土壌酸度(pH) | 連作障害 | 発芽適温 | 生育適温 | 日当たり |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
ヒヤシンス(ヒアシンス) | キジカクシ科 | 地中海東部沿岸(トルコ、シリア、レバノン、イスラエル)からイラン、トルクメニスタン付近 | ★★★☆☆ | 150円〜500程度 | 球根から栽培して約3~4ヶ月後 | 全国 | – | プランター・鉢植え栽培 水栽培(水耕栽培) など | 6.5〜7.0 | – | – | 10〜20℃ | 日なた |
ヒヤシンスは、耐寒性が強く、全国で栽培できる秋植え球根です。積雪の多い地域でも庭植えで育てられます。土耕栽培の場合は、水はけの良いところに植え付けをして寒さにさらすと春には開花します。
多年草のため、そのまま土壌に植え付けたままでも次の春にまた花が咲く可能性がありますが、病害虫にもかかりやすいため基本的には1作での栽培となります。
水栽培の場合は、11月〜12月頃に栽培を始めて2月〜3月頃には花を咲かせることもできます。球根から根を出させるためには休眠打破が必要で、5℃〜10℃程度の寒さに3週間〜4週間程度当てる必要があります。しっかりと寒さに当てないと発根しませんので、注意しましょう。
ヒヤシンスは切り花としても人気ですよね。花屋のフラワーギフトにも使われているのを見かけます。
100均で用意できる水栽培の容器
ヒヤシンスの水栽培は、容器にもこだわりたいですよね。ただ、ガラス容器など綺麗な容器は思ったよりも値段が高かったり、うまく球根の大きさに合わないなどのリスクもあります。そこで、今回は気軽に試せる100均の容器を紹介します。
球根を支えられる形になっている花瓶
100均(100円ショップ)のセリアで、売られていた花瓶です。ちょうど口がつぼまっていて、球根が支えられるようになっています。ガラスの色も美しく、これが100円で買えるなんて思いませんよね。
球根を支えられるくらいの大きさの口を持った花瓶
これは100均(100円ショップ)のダイソー(DAISO)で見つけました。牛乳瓶のような形をしていて、口の部分で球根を支えられそうです。
ガラス製の保存容器
これも100均(100円ショップ)のダイソー(DAISO)で見つけました。ガラス製の保存容器ですが口の大きさがちょうど球根くらいかなと思います。ちょっと背丈が高いですが、十分使えそうです。
やっぱり球根の水栽培用の容器が欲しい
球根のサイズに合わなかったらどうしよう、なかなか良い容器が見つからないなど、困る方もいると思います。実は、球根の水栽培用の容器というものが多く販売されています。球根植物用なので、しっかりと球根を置く場所が用意されており、安心して使用することができます。もし、迷われている方がいたら選択肢の一つにしてください。
そもそも買わなくても大丈夫
容器にそこまでのこだわりがない方は、そもそも買わなくても身の回りのもので十分、水栽培(水耕栽培)ができます。例えば、ペットボトルを使用しても良いでしょう。
ペットボトルの上部1/3程度で切り、上部を逆さまにしてセットするだけで花瓶のような使い方ができます。特に容器にこだわらないという方は、これで十分栽培が楽しめます。
ヒヤシンスの水栽培(水耕栽培)の方法
先述したとおり、ヒヤシンスの水栽培は比較的容易にできます。今回は、ヒヤシンスの水栽培の簡単な手順を紹介します。ヒヤシンスの詳しい育て方の記事もあります。
必要なもの
- ヒヤシンスの球根
- 栽培用の容器(ペットボトルなど身近にあるものでもOK)
簡単な栽培手順
- 手順1球根を発根させます。
ヒヤシンスの球根は、寒さに当たらないと根っこが出てきません。そのため、わざと寒さに当ててやる必要があります。
水栽培の場合は、球根のお尻の部分だけに水が当たるようにして冷蔵庫など5℃〜10℃程度の寒さの場所で3週間〜4週間程度栽培します。
用意した栽培容器が大きい場合には、発根するまでは小さなコップなどに入れておきましょう。水は、お尻の部分が水に当たるくらいで十分です。基本的に「球根は水に濡れると腐る」ということを覚えておきましょう。
少しずつ根っこが出てくると思いますので、根の伸びに合わせて水位を調整していくと良いでしょう。3日に1回程度は水を替えながら、根っこを伸ばしていきましょう。
編集さん冷蔵処理済みの球根はこの手間が要らない場合があります。
- 手順2発芽するまでは冷暗所で栽培する。
しっかりと芽を出してくるまで少し暗く涼しいところで栽培しましょう。
水の取り替えは可能な限り、3日に1回程度の頻度で行います。水位は、根っこの先が水に着くくらいでOKです。
- 手順3発芽したら、日当たりの良い場所に移して栽培する。
発芽すると生長のために光が必要となりますので、日当たりの良い場所に移します。ただし、直射日光は避けるようにしてください。
生長につれて、根っこはどんどん伸びてきます。水位は根っこの先のほうが触れるくらいで十分なので、徐々に下げていきましょう。
この頃になると生長も安定してきますので、水の取り替えは1週間に1回程度でかまいません。
編集さん肥料は基本的に必要ありません。球根の中に含まれている栄養素を使って生長していきます。また、暑さには弱いのでエアコンの近くや人間が快適と思う温度のところでは育てない方が無難です。洗面所やお手洗い、通路の窓際など15℃〜20℃くらいを保てる場所がおすすめです。
- 手順4花が咲きます。
生長につれて徐々に芽が大きくなり、そのうち蕾を付けます。蕾はどんどん大きくなり、1ヶ月程度すると花が咲きます(花が咲く時期は育ってきた気温によって変わります)。
- 手順5花が咲き終わったら・・・
花が咲き終わった球根は、球根に含まれていた養分を多分に使っているので、次の花を咲かせることは基本的に難しいです。再度ヒヤシンスを栽培したい場合には、新しい球根を購入しましょう。(土に移し替えて球根を太らせる方法もあります。)
ヒヤシンスの水栽培(水耕栽培)には栽培セットもある
球根や栽培容器の準備が面倒という方には、ヒヤシンスの水栽培セットがおすすめです。球根と栽培容器がセットになって届きます。球根を固定するための金具なども付いていて、まさにヒヤシンスの水栽培用のセットとなっています。
ヒヤシンスの水耕栽培のコツ
- 発根されるまではよく寒さに当てましょう。寒さに当たらないとうまく根が出てきません。
- 発芽後は日当たりの良い場所で育てましょう。
- 発芽後は15℃〜20℃くらいの温度の場所で育てましょう。
安く手軽に水耕栽培をはじめよう
今は100均(100円ショップ)でもさまざまな道具や容器が販売されているので、簡単に水耕栽培を始めることができます。プランターや庭での栽培まではちょっと・・・という方にも、水耕栽培は始めやすいので、可能な限り100均でものを集めて水耕栽培を始めてみませんか?
まとめ
球根植物は、「バルバスプランツ」とも呼ばれ、最近ではバルブベースを使った水栽培が、根まで楽しめると人気がでてきています。ヒヤシンスの他、ムスカリやクロッカスなどは水栽培に向いている球根です。ムスカリなどでコツをつかんだら、チューリップや水仙などにも挑戦してみましょう。品種別の育て方はこちらから探せます。
水栽培は、毎日水替えをしなくてもいいですし、虫などもわきにくくキッチンなどにも置けるので、手軽にガーデニングが始められます。サボテンや多肉植物なども水栽培やハイドロカルチャーで育てることもできます。『農家web』にはこのほかにも水耕栽培のコンテンツが豊富にあります。100均の苗やタネからも手軽に始められます。下記から育てやすい品種や育て方を探すことができます。