バジルは、さわやかな香りとわずかな苦みのある葉、若い花穗を収穫する作物で、その豊かな香りは食材を引き立てるため様々な料理に使用されます。肉や魚、シチューなどのスープ類だけではなく、生のサラダとしても人気のハーブです。
バジルは、暑さを好み、気温の上昇とともにぐんぐん生長していきます。少ない手間で手軽に栽培・収穫ができるので、家庭菜園初心者の方でも気軽に栽培に挑戦することができます。
バジル栽培は通常、プランター栽培や庭での地植え栽培をされるケースが多いですが、実は水耕栽培も可能な作物です。ご家庭での水耕栽培は意外にも手軽にでき、衛生的で室内でも育てることができるためおすすめです。
この記事では、バジルの基礎知識と安く手軽にできる100均のものを使った水耕栽培の方法について解説します。
そもそも水耕栽培とは?
水耕栽培(Hydropinics)とは、養液栽培の一種で、固形培地を使用しないで栽培する手法のことを指します。水耕法、水栽培などとも呼ばれます。
水耕栽培と聞くと、上記写真のような植物工場を思い出す方も多いかもしれません。実は、上記写真のような栽培方法は、水耕栽培と呼ばず、ロックウール栽培(養液栽培における固形培地耕の一種)と呼びます。
画像左上にロックウールのスラブ(ロックウールが詰まった細長い栽培培地)があります。わかりますか?
家庭でできる水耕栽培のメリット
水耕栽培は、家庭菜園でも農家でも行われる栽培方法ですが、家庭で水耕栽培をするメリットはいくつもあります。
- 室内でも気軽に栽培できる
- 身近にある手軽なもので栽培ができる
- 土作りが不要である
- 無農薬・減農薬栽培がしやすい(虫がつきにくい)
- 水やりの手間を少なくできる
- 小さなスペースでも栽培できる
- 植物の生長が早くなるとともに、質が安定しやすい
- 見た目をおしゃれにすることで、インテリアとして楽しむことができる
室内でも気軽に栽培できる
土を使わず水やり(潅水)の必要もないので、室内でも気軽に栽培することができます。必要な日射量は植物によって異なりますが、日当たりの良い窓辺に置いておけば、問題なく生長します。日当たりの良い場所がない場合などは、栽培用の白熱球やLEDライトを使うことによって補うことができます。
身近にある手軽なもので栽培ができる
水耕栽培は、専用の容器や機器を用意しなければできないと思われる方も多いと思います。実は、植物によっては身の回りにあるものだけで栽培することが可能です。例えば、容器としてコップやペットボトルを使用することもできますし、植物の大きさや種類によってはエアポンプなどの設備も必要ありません。
土作りが不要である
通常、畑やプランターなど土を使う栽培(土耕栽培)の場合は、植え付け(定植)の前に土作りが必要です。土作りはその場1回限りのものではなく、毎作必要となりますし、何より適切な養分バランスを保つことが難しいという難点があります。
しかし、水耕栽培の場合は土を使わないため、そのような煩わしさからは解放されます。
根域の水分量の維持と植物を固定するためにハイドロボールが使われたりもします。
無農薬・減農薬栽培がしやすい(虫がつきにくい)
水耕栽培の場合は、室内で育てることも容易となるため、害虫や病気の被害に遭うリスクが下がります。ただし、ベランダやハウスなどで水耕栽培をする場合には、土耕栽培と同様に害虫や病気の被害に遭う可能性があるため、適切な防除が必要となることが多いです。
水やりの手間を少なくできる
家庭菜園でよく使われるプランターの場合、雨に当たらない場所(ベランダなど)で栽培していると土壌の水分量が下がって、やがて植物は枯れてしまいます。雨水などが入り込まないため、土壌水分の管理がしやすいですが、頻繁に水やり(潅水)をしなければ植物が生長しないという欠点があります。最盛期(果菜類の夏場の収穫時期など)には、1日に1回〜2回程度の水やり(潅水)が必要となることもあります。
水耕栽培の場合は、ある程度の容器の大きさであれば水を貯めておくことによって数日、そのまま持たせることもできます。
ただし、植物のステージによっては水の取り替え頻度を1日に1回にする必要があったりします。また、水の鮮度は水耕栽培の命であるため、定期的(少なくとも週に1回程度)の水の取り替えは必須です。培養液での栽培など、場合によっては藻が発生するなど不衛生な環境となりますので、なるべくこまめに取り替えることをおすすめします。
小さなスペースでも栽培できる
土耕栽培の場合は、どんなに小さなスペースでも土を入れる容器が必要であるため、プランターや鉢植えが置けるくらいのスペースが必要となります。
水耕栽培の場合は、植物の大きさなどによりますが、小さいものではペットボトルやコップでも十分に育てることができます。実際にペットボトルでミニトマトやミニキュウリを育てることも可能です。
植物の生長が早くなるとともに、質が安定しやすい
水耕栽培の場合は、土耕栽培に比べて根域の状況がわずかに良くなったり一定になりやすいということもあり、生長のスピードが早くなる傾向にあります。
ただし、エアポンプによる酸素の吸入や培養液の濃度が適切であることが前提となります。
見た目をおしゃれにすることで、インテリアとして楽しむことができる
先述したとおり、水耕栽培は室内でもできるためインテリアのアイテムとしても使えます。
例えば、容器を綺麗な絵柄のコップにしたり、コップにマスキングテープを貼ったりするとより水耕栽培を楽しむことができるでしょう。
バジルの基礎知識と水耕栽培の時期
作物名 | 科目 | 原産地 | 育てやすさ | 種の価格の価格(円/1ml) | 苗の価格の価格(円/1苗) | 収穫までの日(目安) | 栽培できる地域 | 作型 | 栽培方法 | 土壌酸度(pH) | 連作障害 | 発芽適温 | 生育適温 | 日当たり | 光飽和点 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
バジル | シソ科 | 熱帯アジア、アフリカ | ★★★★★ | 200円〜500程度 | 50円〜1,000円程度 | 植え付けから30日前後 | 全国 | 促成栽培 半促成栽培 など | 露地栽培 プランター・鉢植え栽培 施設栽培 養液栽培 など | 6.0〜6.5 | ほぼなし(1年) | 20〜25℃ | 20〜25℃ | 日なた | 25klx |
バジルを育てるのに適している時期は春から夏の間です。通常、バジル栽培は4月頃〜5月頃に種をまき、7月頃〜10月頃に収穫をします。
室温を調整することで寒い時期でも育てることは可能ですが、部屋の温度には注意が必要です。発芽適温は20℃〜25℃前後、生育適温は20℃〜25℃前後なので、適した環境の場所、季節で栽培をしてください。
発芽適温 | 生育適温 |
---|---|
20〜25℃ | 20〜25℃ |
バジルの水耕栽培の方法
バジルの水耕栽培の方法はいくつかあります。今回は、家庭でも簡単にできる2つの方法を紹介します。
- スポンジを使って種から育てるバジルの水耕栽培
- バジルの水挿し水耕栽培(再生栽培・リポベジ)
それぞれの栽培方法について、必要なものと栽培の簡単な手順を紹介します。
スポンジを使って種から育てるバジルの水耕栽培
必要なもの
100均で用意できるもの
スポンジ
スポンジは、100均(100円ショップ)でも販売されていますよね。スポンジの形状はどれでもかまわないですが、材質には注意しましょう。通常の台所用スポンジは材質がウレタンとなっており、これは水耕栽培に使用できます。
スポンジのよっては、ネットに入っているものや裏側がタワシのような材質になっているものなどもありますが、使用するときには素のスポンジの状態にしてください。
栽培用容器
栽培用の容器も100均(100円ショップ)でそろえることができます。
例えば、100均で販売されている以下のものを栽培容器として使うとよいでしょう。
- 水切りざるセット
- プラケース+猫よけマット
- 可愛いコップやマグカップ
水切りざるセット
食器や食材の水切りなどに使える普通のもので大丈夫です。
小さいものであればセットで100円(税抜き)で販売されているものもあります。
容器とザルの間は、根を張るためのスペースを空けるようにしてください。
プラケース+猫よけマット
プラスチックの容器に猫よけマットを敷くことでスポンジの培地を浮かせることができます。培地を浮かせて、その下の培養液にどんどん根を張らせる方法です。
水耕栽培は工夫次第でどのようなものを使っても栽培することができます。プラスチックの使い捨てコップやペットボトルを使ってもよいでしょう。ご自身の栽培しやすいやり方を見つけてください。
肥料は販売されていないのか?
残念ながら、水耕栽培用の肥料が100均(100円ショップ)で販売されているという情報は聞いたことがないです。私自身も何件か100均をまわってみましたが、どのショップにも販売されていませんでした。
水耕栽培用の肥料は普通の肥料とは異なり、カリ成分が高めに設定されていたり、二次要素(多量要素)や微量要素も含まれているなど、普通の肥料とは組成が異なります。水耕栽培は根が直接栄養素を吸い上げる形になりますので、培養液の組成や状態がとても重要となります。必ず水耕栽培用の肥料を使用しましょう。
家庭で使える水耕栽培用の肥料として有名なものは「ハイポニックス微粉」や「ハイポニカ液体肥料」です。下記のページに水耕栽培用の肥料についてまとめておりますので、参考にしてください。
植物活力剤は厳密には肥料ではありませんし、水耕栽培では使えませんのでご注意ください。
簡単な栽培手順
- 手順1スポンジを3cmほどの大きさに切る。編集さん
大きさに決まりはありません。栽培容器の大きさや一つのスポンジで育てる株数によって変えるとよいでしょう。スポンジをそのまま一個使って、栽培してもよいでしょう。
- 手順2スポンジの中央に十字の切り込みを入れます。
切り込みを入れることによって、水をかけても種が流されず、かつ種が吸水しやすい状態となるため、発芽しやすくなります。
- 手順3栽培容器にスポンジをセットし、スポンジをよく湿らせます。
スポンジはよく吸水させておきましょう。種まきの後に水をかけると種が流れ出やすいため、種まきの前に湿らせておくことをおすすめします。
- 手順4十字の切り込みに種を2〜3粒程度蒔きます。
種を蒔くときには、ピンセットを使用すると良いでしょう。なければ、爪楊枝で位置を微調整したりしてください。
- 手順5種を蒔いたスポンジの上からティッシュペーパーをかけるか、栽培容器にサランラップをかける。
培地(スポンジ)の乾燥を防ぐため、ティッシュペーパーをかけます。ティッシュペーパーをかけたら、その上から霧吹きなどでさらに濡らしておくと良いでしょう。
編集さんトイレットペーパーなどをかけると記載している育て方もありますが、トイレットペーパーは中途半端に分解されてスポンジに残り、見た目も衛生的にも汚くなるのでおすすめしません。
もしくは、栽培容器にサランラップをかけておくことも有効です。その場合には、爪楊枝でいくつか空気の穴を開けておくと良いでしょう。
- 手順6直射日光の当たらない比較的暖かい場所に置いて、発芽を待ちます。
発芽適温は25℃前後なので、そのくらいの温度が維持できる場所で発芽を待ちましょう。通常であれば、1週間程度で発芽してきます。
編集さん一週間経っても発芽しない場合は、温度が低すぎるなどの問題が発生していると考えられます。適切な環境を維持できる場所に変えてみましょう。
- 手順7発芽後、間引きして日当たりの良い場所でそのまま育てます。
1つの培地に1つなど、ある程度の間隔が空くように間引きをします。間引きするときは、不要となる芽をハサミなどで切ると楽に安全に作業ができます。
水の取り替えは、可能な限り毎日行ってください。
- 手順8発芽から1〜2週間程度経ったら、肥料を薄く溶かして培養液で育て始める。
発芽後、苗が安定してきたら少しずつ肥料を溶かして培養液で栽培していきます。濃度は、使用する肥料によって異なりますので、肥料のラベルをよく読んで適合する濃度に薄めると良いでしょう。まだ、苗が小さいときにはそのさらに半分程度の濃度で栽培すると安心です。
培養液の取り替えは、少なくとも3日に1回程度は行うようにしてください。環境によっては、培養液が悪くなりやすい場合もあるので水の濁り具合などもよく観察してください。
編集さん培養液は、光に当たると藻が発生しやすくなります。培養液での栽培が始まったら、アルミホイルや布などで容器を包み、できるだけ光に当たらないようにしましょう。上部からも光が差し込むので、苗の周りにハイドロボールなどを敷き詰め、光を遮断するようにしましょう。
- 手順9大きく育てたい場合には、大きな栽培容器か、プランターなど土に植え替える。
容器の大きさが限られた水耕栽培だと、なかなか大きくなりづらいというのが実情です。
植物は、根をたくさん張ることによって地上部の葉や茎がどんどん大きくなります。根の伸びる場所がなくなってくると、生長が止まってしまうのでさらに大きな栽培容器か、プランターなどに植え替える必要があります。ペットボトルなど、ある程度の大きさの栽培容器に移すことで、さらに大きく育てることが可能です。
もし、大きく育てたい場合の植え替え時期の目安は根が10cm程度、地上部が5cm程度になった頃です。
容器の大きさが限られた水耕栽培だと、なかなか大きくなりづらいというのが実情です。
植物は、根をたくさん張ることによって地上部の葉や茎がどんどん大きくなります。根の伸びる場所がなくなってくると、生長が止まってしまうのでさらに大きな栽培容器か、プランターなどに植え替える必要があります。ペットボトルなど、ある程度の大きさの栽培容器に移すことで、さらに大きく育てることが可能です。
もし、大きく育てたい場合の植え替え時期の目安は根が10cm程度、地上部が5cm程度になった頃です。
編集さん必ず土に植え替えないといけないというわけではありません。根が張りやすいように容器を変えたりすることによって水耕栽培でも十分生長します。
バジルの水挿し水耕栽培(再生栽培・リポベジ)
必要なもの
- バジルの株(スーパーなどで購入したものでもOK)
- コップなど栽培用の容器
100均で用意できるもの
コップなど栽培用の容器
栽培用の容器は、100均で販売されているコップなどで十分です。なるべく背丈の高いコップや花瓶などを使うと良いでしょう。
最近ですと、100均でもオシャレな容器が増えているので選ぶのも楽しいです。
簡単な栽培手順
- 手順1バジルの株の茎の先端から8cm〜10cmくらいのところを、茎を潰さないように斜めに切ります。
使用する株は、料理で葉を使用した後のものでかまいません。料理で使うときには付け根から新芽を傷つけないように切り、新芽(若い小さな芽)は残しておくようにしてください。
編集さん茎を斜めに切ることで、水の吸い上げの面積を大きくします。
- 手順2コップや瓶に茎の半分くらいが浸かる程度の水を入れて、日当たりの良い場所に置きます(直射日光はNG)。
水の取り替えは、毎日行ってください。
- 手順31週間ほど経つと根が出始めます。
20日ほど経つと、しっかりと根が張ってきます。
- 手順4プランターや紙パックに土を入れて、植え替える。
収穫するまで栽培するには、土に植え替えすることをおすすめします。特におすすめのやり方が紙パックに培養土を入れて育てる方法です。
紙パックを用意して、その底に複数箇所穴を開けます(水抜き穴)。その紙パックに土を半分程度入れたあと、バジルの根を少し広げながら植え付けます。植え付け後、3日間くらいは暗いところで休ませ、その後は日当たりの良い場所で栽培します。
水やりは2〜3日に1回程度で、必要に応じて肥料を施してください。
バジルの水耕栽培のコツ
- バジルは日当たりの良い場所を好むので、室内の場合は窓際などで栽培しましょう。
- 日当たりの良い場所がない場合には、栽培用のLEDライトなどを購入して当てることもおすすめです。それが難しい場合は、普段は室内で育て天気の良い日に短い時間でも外に出して日に当てることも有効です。
- バジルの生育適温は20℃〜25℃と比較的高温なので、夏場の栽培に向いています。
水耕栽培の育て方、ハイドロカルチャーの植え替えなどはこちらの記事も参考にしてください。
バジルはある程度の大きさになったら摘芯(摘心)しながら収穫すると草丈を抑えることができ、収穫量が増えます。
安く手軽に水耕栽培をはじめよう
今は100均(100円ショップ)でもさまざまな道具や容器が販売されているので、簡単に水耕栽培を始めることができます。プランターや庭での栽培まではちょっと・・・という方にも、水耕栽培は始めやすいので、可能な限り100均でものを集めて水耕栽培を始めてみませんか?
その他の水耕栽培のコンテンツ
ハーブの水耕栽培はバジルの他に、アロマティカス、イタリアンパセリ、大葉(しそ)、クレソン、ディル、パクチー、三つ葉、ミント、ラベンダー、ルッコラ、ローズマリーの育て方の記事があります。下記の記事から、それぞれのコンテンツにアクセスすることができます。
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