木の伐採、枝の剪定などに繰り返しチェンソーを使用すると、いずれチェンソー刃を替えるタイミングがやってきます。チェンソー刃は、農具店、園芸資材店、工具店、金物店などで購入することができます。一方で、購入する商品が決まっているのであれば、店舗での買い物だけでなく、たとえばモノタロウ(MonotaRo)などの通販サイトでも注文することができます。機械類とは異なり、チェンソー刃は軽量のため、配送や受け取りの面でも気軽です。
この記事では、チェンソー刃について解説します。
チェンソー刃の構造
チェンソー刃(ソーチェン)は、カッター、ドライブリンク、タイストラップが繰り返し連結された構造になっています。そして、それぞれの部品を連結させる役目の突起が、リベットです。これら部品の種類を変えたり、並び方や頻度を変えたりすることで、チェンソー刃に異なる特性をもたせています(たとえば、竹切り用やカービング用では、フルカッターとよばれるカッター数を2倍にしたチェンソー刃が用いられます)。異なる特性をもたせたチェンソー刃は、用途が異なるため各々別製品となり、品番も異なります。
カッター
カッターには木材を削ると同時に、前のカッターが削った木屑を排出する役目があります。右カッターの次は左カッターというぐあいに、左右対称に同一間隔で取り付けられています。刃先には、硬い金属として知られるクロムがメッキ加工されています。これにより、鋭い切れ味と耐久性が長く維持され、目立ての回数を減らすことができるようになっています。
ドライブリンク
エンジンの駆動力が伝達されることにより回転する歯車が、スプロケットです。ドライブリンクは、このスプロケットとかみ合うことで、チェンソー刃を回転させる役割をもっています。また、ドライブリンクの足は、ガイドバーの溝の中を通るので、チェンソー刃とガイドバーの全体にチェンオイルを潤滑させる役割もあります。
タイストラップ(サイドリンク)
タイストラップ(サイドリンク)は、カッターとドライブリンクであったり、ドライブリンク同士であったりをつなぐ役割をもっています。リベットが付いているタイプと付いていないタイプがあります。
リベット
リベットは、カッター、ドライブリンク、タイストラップを連結させるための突起です。カッターかタイストラップにリベットが付いており、ドライブリンクの穴を貫き、反対側にあるタイストラップと固定されます。これにより、カッター、ドライブリンク、タイストラップの各部品が連結されています。
チェンソーメーカーごとの替刃
チェンソー刃を交換したいものの、どの替刃にすべきかよく分からないという人もいるでしょう。替刃メーカー(ブランド)は、次の3つのいずれかというのが実情です。
- スチール
- ハスクバーナ
- オレゴン
チェンソーメーカー(ブランド)ごとに、以下の通り替刃メーカー(ブランド)が対応します。ただし、スチール、ハスクバーナ、オレゴンの替刃は、それぞれ互換性があるものが多いです。したがって、以下で示すのは唯一の対応関係でなく、あくまで典型例であることにも留意してください。
チェンソーメーカー | 替刃メーカー |
---|---|
スチール(STIHL) | スチール |
ハスクバーナ(Husqvarna) | ハスクバーナ |
ゼノア(ZENOAH) | オレゴン |
共立(KIORITZ) | オレゴン |
新ダイワ(shindaiwa) | オレゴン |
エコー(ECHO) | オレゴン |
丸山製作所(MARUYAMA) | オレゴン |
マキタ(makita) | オレゴン |
リョービ(RYOBI) | オレゴン |
ブラックアンドデッカー(Black&Decker) | オレゴン |
ハイコーキ(Hikoki) | オレゴン |
ハイガー産業(HAIGE) | オレゴン |
山善(YAMAZEN) | オレゴン |
新宮商行(シングウ) | オレゴン |
東芝(TOSHIBA) | オレゴン |
ドルマー(DOLMAR) | オレゴン |
マッカラー(McCULLOCH) | オレゴン |
ホームライト(HOMELITE) | オレゴン |
主要な替刃
日本国内で用いられる主要な替刃メーカー(ブランド)とその選び方を紹介します。チェンソーごとに、使用すべき替刃が取扱説明書に記載されていますので、通常はその記載にしたがって選ぶようにします。
スチール(STIHL)
スチール(STIHL)は、販売台数世界No.1のチェンソーブランドでありメーカーです。林業、農業、造園業、建設業向けの機械を開発販売しています。チェンソーのほかにも、コンクリートカッター、カットオフソー、クリアリングソー、チップソー、刈払機、草刈機、ヘッジトリマー、ブロワー、スイーパー、高圧洗浄機、コンビツール、ハンドツール、携行缶、防護用品なども手掛けています。
業界のリーディングカンパニーとして、革新的な技術や製品を世に送り出すとともに、ファンを楽しませるエンターテイメント性の高いコンテンツも充実させています。具体的には、カタログ、YouTube、ソーシャルメディア、ニュースレターの充実などさまざまな施策が講じられています。
スチール替刃の特長
スチールは、チェンソー刃(替刃)をはじめとするカッティングアタッチメントをスイスの自社工場で製造しています。その品質や耐久性は高く、とりわけスチール製のエンジンチェンソーや電動チェンソー(バッテリーチェンソーおよび電気チェンソー)と相性がよいです。
スチールチェンソー刃は、リンク内の穴で摩耗を減らすよう精密加工されていたり、カッターに硬質クロムメッキを施すことで目立ての回数を少なくする工夫がなされていたりします。また、チェンオイルを節約するスチールEマチックシステムやスチールオイロマチック潤滑システムも採用されています。
スチール替刃の種類と選び方
現在のスチールチェンソー刃(替刃)の種類は、刃の形状によって以下のように分かれます。なお、これら以外にも、カービング用チェン、レスキュー用チェン(RDR)、ハーベスターおよびプロセッサー用チェン、縦挽きおよび製材用チェンなどの特殊作業用も取り揃えています。
- マイクロチェンソー刃
- マイクロ3チェンソー刃
- スーパーチェンソー刃
- スーパー3チェンソー刃
- デュロ3チェンソー刃
また、これら刃の形状ごとに、ドライブリンクの厚みとピッチが異なるタイプが存在し、それぞれに4桁の数字が与えられています。したがって、この4桁の数字とドライプリンク数が分かれば、商品を特定することができます。
4桁の数字(チェンソー刃のタイプ)+000+ドライプリンク数=商品番号
スチールチェンソー刃(替刃)の種類と選び方については、別記事で詳しく紹介しています。
ハスクバーナ(Husqvarna)
ハスクバーナは、農林業機械や建設機械といった野外作業機の開発販売を行う世界的なメーカーです。同時に、「Husqvarna」のロゴマークでおなじみの製品ブランドでもあります。
日本においては、ハスクバーナ・ジャパン株式会社が事業展開を担ってきましたが、2007年に小松ゼノア株式会社と合併したことで「ハスクバーナ・ゼノア株式会社」が誕生、引き続きその役割を担っています。ハスクバーナ・ゼノアでは、それぞれの特長を活かし、ハスクバーナ(Husqvarna)とゼノア(ZENOAH)の2つのブランドを主として扱っています。特に、林業や造園業の分野において、チェンソー、ポールソー、ヘッジトリマ、ブロア、草刈機、刈払機、手押し式芝刈機、ロボット芝刈機、ガーデントラクター、ホビーエンジン、粉砕ポンプなどが信頼と実績のある製品として広く知られています。
ハスクバーナ替刃の特長
ハスクバーナには、純正のチェンソー刃(替刃)が存在します。特に、ハスクバーナ独自のチェンソー刃であるX-CUTシリーズは品質が高いことはもちろん、ハスクバーナチェンソーの性能を最適化し、その出力を最大限に引き出すように設計されています。耐久性と潤滑性に優れていることに加え、プレ・ストレッチされているため箱出しからすぐに使えます。
ハスクバーナ替刃の種類と選び方
現在のハスクバーナチェンソー刃(替刃)の種類は、チェンタイプによって以下のように分かれます。切削能力を高めたもの、滑らかな切り口を実現したもの、キックバックを抑えたものなどがあります。
- H00 1/4″ 1.3mm
- X-CUT C85
- H42 56dl / 3/8″/ 1.5 mm
- H25 64dl / .325″/ 1.5 mm
- H64 84dl / .404″/ 1.6 mm
- X-CUT S93G
- H35リール100フィート/3/8″/1.3 mm
- H38PX 3/8″ 1.1mm
- X-CUT SP21G
- X-CUT SP33G
- H30 64dl / .325″/ 1.3 mm
スチールチェンソー刃(替刃)の種類と選び方については、別記事で詳しく紹介しています。
オレゴン(OREGON)
オレゴンは、アメリカ合衆国オレゴン州に本社を置くオレゴンツール(Oregon Tool. Inc.)が展開する製品ブランドです。世界100か国以上で製品が販売されており、日本ではオレゴンツールジャパン株式会社が販売を統括しています。
製品として、林業、造園業、農業、土木建設業などで使用される屋外作業機器が展開されています。具体的には、チェンソー、ハーベスター、ハーベスターバー、ハーベスターチェーン、グラインダー、チップソー、刈払機、草刈機、芝刈機、ブロワー、ヘッジトリマーおよびそれらの部品(パーツ)やアクセサリーなどがあります。丸ヤスリや砥石などのメンテナンス工具も充実しています。
オレゴンチェンソー本体の販売もありますが、それ以上にチェンソー関連用品が有名で、チェンソー刃(替刃)、ガイドバー、スプロケットは、ほとんどの主要なチェンソーメーカーに適用できます。
オレゴン替刃の特長
オレゴンのチェンソー刃(替刃)、つまりオレゴンソーチェンは世界No.1ブランドとされています。実際に、日本の主要なチェンソーメーカーほぼ全てで採用されています(マキタ、リョービ、共立、新ダイワ、丸山、ハイコーキ、タナカ、ハイガー、ゼノア、シングウなど)。海外チェンソーメーカーであるスチールとハスクバーナでは、純正のチェンソー刃が採用されていますが、オレゴンのチェンソー刃とも互換性があります。
オレゴン替刃の種類と選び方
オレゴンチェンソー刃(替刃)には、1~3字のアルファベットが与えられており、それぞれカッターのタイプと特性を表しています。特性には、たとえばローキックバックや自動目立てなどがあります。各アルファベットがもつ意味は、次の表の通りです。
ソーチェーンタイプ | A | AX | AP | BC | BPX | CJ | CJX | CK | CKX | CL | CLX | CP | DP | F | H | HX | HJX | J | JGX | JPX | JX | L | LGX | LPX | LX | M | R | RA | RD | PS | PX | S | SG | SL | VG | VPX | VX | VXL |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
カッターのタイプと特性 | マイクロチゼルカッター 25A:標準 27A:スキップ | マイクロチゼルカッター スキップ | 25AP:マイクロチゼルカッター バンパードライブリンク、標準 72AP:セミチゼルカッター スキップ | チッパーカッター 標準(11BCのみ) | 低振動マイクロチゼルカッター バンパードライブリンク、標準 | チゼルカッター(スクエア) 山型デプスゲージ、スキップ | デュラプロチゼルカッター(スクエア) 山型デプスゲージ、スキップ | チゼルカッター(スクエア) 山型デプスゲージ、セミスキップ | デュラプロチゼルカッター(スクエア) 山型デプスゲージ、セミスキップ | チゼルカッター(スクエア) 山型デプスゲージ、標準 | デュラプロチゼルカッター(スクエア) 山型デプスゲージ、標準 | チッパーカッター バンパードライブリンク、標準 | セミチゼルカッター バンパードライブリンク、標準 | マイクロチゼル、フルカッタ― | ハーベスター 標準 | ハーベスター 標準、アサリが大きいタイプ | ハーベスター スキップ、アサリが大きいタイプ | チゼルカッター 山型デプスゲージ、スキップ | チゼルカッター 山型デプスゲージ、スキップ | チゼルカッター バンパードライブリンク、スキップ | チゼルカッター 標準 | チゼルカッター 標準(.404″ 58L&59L) | チゼルカッター 山型デプスゲージ、標準 | 低振動チゼルカッター バンパードライブリンク、標準 | チゼルカッター 山型デプスゲージ、標準 | マルチカット | 縦挽きチェーン、マイクロチゼルカッター | 縦挽きチェーン、マイクロチゼルカッター | 縦挽きチェーン、セミチゼルカッター 標準 | パワーシャープチェーン 山型デプスゲージ、ガイダンスドライブリンク 標準(自動目立て) | 低振動シャンファーチゼルカッター 山型デプスゲージ、バンパードライブリンク 標準 | 低振動シャンファーチゼルカッター 山型デプスゲージ、標準 | 低振動シャンファーチゼルカッター 山型デプスゲージ、バンパータイストラップ 標準、アサリの狭いデザイン | チゼルカッター 山型デプスゲージ、バンパータイストラップ 標準 | 低振動シャンファーチゼルカッター 山型デプスゲージ、バンパータイストラップ 標準 | 低振動マイクロチゼルカッター 山型デプスゲージ、バンパードライブリンク アサリの狭いデザイン | 低振動シャンファーチゼルカッター 山型デプスゲージ、標準 | 低振動セミチゼルカッター ロングトッププレート、山型デプスゲージ 標準 |
オレゴンチェンソー刃(替刃)の種類と選び方については、別記事で詳しく紹介しています。
チェンソー刃の研ぎ方
チェンソー刃の切れ味が悪くなったと感じた場合は、まずは道具あるいは工具を用いて目立てをするようにします。目立てとは、刃を研磨あるいは研ぐ作業のことで、刃のシャープな切れ味を回復するために行います。目立ては鋸(のこぎり)などにおいても行う作業ですが、チェンソーは動力付きの刃物なので特に万全を期すようにします。目立てを何度か行い、チェンソー刃が寿命を迎えた際には、新しい替刃を用いる必要があります。
チェンソーヤスリ(丸ヤスリや平ヤスリ)、ヤスリホルダー、ゲージなどの道具あるいは工具を用いるのが基本ですが、津村鋼業(ツムラ)の「チェンソー目立機」や新興工業(エスケー)の「目立て職人」といった電動工具を用いる方法もあります。作業スピードアップや効率化が図れるほか、チェンソーヤスリの角度やデプスの調整が正確に行えるというメリットがあります。一方で、山林や森林などへの持ち運びには不向きというデメリットがあります。
まとめ
木の伐採、枝の剪定などに繰り返しチェンソーを使用すると、いずれチェンソー刃を替えるタイミングがやってきます。チェンソー刃は、農具店、園芸資材店、工具店、金物店などで購入することができます。一方で、購入する商品が決まっているのであれば、店舗での買い物だけでなく、たとえばモノタロウ(MonotaRo)などの通販サイトでも注文することができます。機械類とは異なり、チェンソー刃は軽量のため、配送や受け取りにも気軽です。
チェンソー刃は、カッター、ドライブリンク、タイストラップが繰り返し連結された構造になっています。そして、それぞれの部品を連結させる役目の突起が、リベットです。これら部品の種類を変えたり、並び方や頻度を変えたりすることで、チェンソー刃に異なる特性をもたせています(たとえば、竹切り用やカービング用では、フルカッターとよばれるカッター数を2倍にしたチェンソー刃が用いられます)。異なる特性をもたせたチェンソー刃は、用途が異なるため各々別製品となり、品番も異なります。
チェンソー刃を交換したいものの、どの替刃にすべきかよく分からないという人もいるでしょう。替刃メーカー(ブランド)は、次の3つのいずれかというのが実情です。チェンソーごとに、使用すべき替刃が取扱説明書に記載されていますので、通常はその記載にしたがって選ぶようにします。
- スチール
- ハスクバーナ
- オレゴン
チェンソー刃の切れ味が悪くなったと感じた場合は、まずは道具あるいは工具を用いて目立てをするようにします。目立てとは、刃を研磨あるいは研ぐ作業のことで、刃のシャープな切れ味を回復するために行います。目立ては鋸(のこぎり)などにおいても行う作業ですが、チェンソーは動力付きの刃物なので特に万全を期すようにします。目立てを何度か行い、チェンソー刃が寿命を迎えた際には、新しい替刃を用いる必要があります。