ネギ(葱、ねぎ)は、古くから薬効成分のある野菜として親しまれている作物です。主に東アジアでは食用として栽培されており、日本では普段から食卓に並ぶポピュラーな野菜です。よく味噌汁や鍋の具、薬味として使用されています。
英名で「Green Onion」や「Spring Onion」「Welsh Onion」など様々な呼ばれ方をしますが、日本で売られているネギは日本特有のものでヨーロッパなどで販売されているネギとは少し異なります。
実は、ネギはペットボトルで水耕栽培もできるのです。さらには、スーパーなどで購入したネギを再生して栽培することも可能です(リポベジ)。手軽に始めたいのであれば断然、水耕栽培をおすすめします。
この記事では、ネギ栽培の基礎知識とペットボトルを使った水耕栽培の方法を詳しく解説します。
ネギの基礎知識
作物名 | 科目 | 原産地 | 育てやすさ | 種の価格 (円/1粒) | 苗の価格 (円/1苗) | 収穫までの日数 (目安) | 栽培できる地域 | 作型 | 栽培方法 | 土壌酸度 (pH) | 連作障害 | 発芽適温(地温) | 生育適温 | 日当たり | 光飽和点 |
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ネギ | ヒガンバナ科 | 中国西部、中央アジア | ☆☆☆☆★ | 0.1円〜3.5円程度 | 10円〜500円程度 | 植え付け後、50日〜120日 | 全国 | 【根深ネギ】 春どり栽培 夏どり栽培 夏秋どり栽培 秋冬どり栽培 【葉ネギ】 周年栽培 | 露地栽培 プランター・鉢植え栽培 施設栽培 | 6.0〜6.5 | あり(1〜2年) | 20℃ | 20℃ | 日なた | 15〜25klx |
ネギは、ヒガンバナ科ネギ属の耐寒性のある多年生植物です。原産地は中国西部、中央アジアとされており、日本では奈良時代に渡来し、古くから親しまれている野菜となっています。
知っておこう!ネギの種類
ネギを栽培する上で、どのような種類があるのかを知っておくことは重要なことです。根深ネギや葉ネギ、小ネギなどさまざまありますが、それぞれ栽培や収穫の方法など、微妙に違います。ここでおさらいしておきましょう。
まず、ネギは大きく下記の2種類に分けることができます。
- 根深ネギ(青ネギ):主に白根を食用とするネギ
- 葉ネギ:主に緑葉の部分を食用とするネギ
ネギの呼び方はいろいろありますが、最終的には上の2つのどちらかに大別することができます。それでは、この2種類の栽培の特徴と主な品種について確認しておきましょう。
項目 | 根深ネギ | 葉ネギ |
---|---|---|
栽培の特徴 | 葉鞘が伸びるにつれて土寄せをすることで、葉鞘を軟白化させる。別名「長ネギ」「白ネギ」と呼ばれたりする。 | 土寄せはほとんどせず、長くて柔らかい葉を育てる。別名「青ネギ」と呼ばれたりする。 |
主な品種 | 深谷ねぎ、下仁田ネギ、上州ネギ、千住葱、越谷ネギ、矢切ネギ、株ネギ、赤ねぎ、徳田ねぎ、曲がりねぎ、九条太ネギ など | 難波葱、九条ネギ(九条葱)、岩津ねぎ、結崎ネブカ、観音ネギ、谷田部ネギ、地ネギ(真ネギ)、小ねぎ(万能ネギ) など |
ネギの水耕栽培には、葉ネギがおすすめです。葉ネギは比較的細く軽いため、ペットボトルや小さな容器(コップや瓶など)を使った水耕栽培でも安定して栽培できます。もちろん、長ネギ(白ネギ・根深ネギ)も栽培することは可能ですが、白根(軟白部分)を作るのは難しいため、青い葉(緑葉)の部分が多くなる可能性が高いです。
ネギのペットボトル水耕栽培の方法と準備
水耕栽培の方法は大きく2種類ある
根深ネギ(長ネギ・白ネギ)、葉ネギ(万能ねぎ・九条ネギ・小ネギ・青ネギ)のどちらを栽培する場合も、水耕栽培のやり方には大きく2種類あります。
- 購入したネギから育てる(リポベジ・再生栽培)
- 種から育てる
種から育てる場合は、スポンジなどの培地に種をまき発芽させる必要があります。また、収穫までに少なくとも2ヶ月以上かかるため、長期間栽培することになります。
逆に、購入したネギから育てる(リポベジ・再生栽培)の場合は、スーパーなどで購入したネギを使用することで手軽に始めることができますし、何より手間とかけるお金が少なくて済みます。
種から育てる場合と再生栽培の場合、2つの方法の特徴をまとめたので参考にしてください。本格的に水耕栽培を始める場合には、キットや容器、エアーポンプが必要となりますが、ここでは考えないことにします。
項目 | 種から育てる | リポベジ・再生栽培 |
---|---|---|
かかるお金 | 種の購入などの少額 | ほぼ無料 |
手間 | 栽培期間が長くなるため手間がかかる | ネギの根っこを浸けるだけで良いので手間が少ない |
楽しさ | 発芽から観察でき、生長に合わせた管理を体験できるので楽しい | 一週間くらいで収穫できるまでになるので、生長を一気に観たいという方にはおすすめ |
ペットボトル水耕栽培で必要なもの
リポベジ・再生栽培の場合
リポベジ・再生栽培におけるペットボトル水耕栽培で必要なものは、主に以下の3つです。
- ネギの根っこ部分(下から5cm程度)
- ペットボトル
- 水耕栽培用の液体肥料・粉末肥料(あればでOK。水だけでも育ちます)
種から育てる場合
種から育てるネギのペットボトル水耕栽培で必要なものは、主に以下の4つです。
- 種
- ペットボトル
- 発芽、育苗用のスポンジ・容器
- 水耕栽培用の液体肥料・粉末肥料
購入したネギから再生するペットボトル水耕栽培(リポベジ)
種から育てるネギのペットボトル水耕栽培の手順とポイントをまとめましたので、栽培の参考にしてください。
手順
- 手順1事前準備
まずは、栽培するための道具を揃えましょう。ペットボトル栽培の容器を自作する方は「ペットボトルで栽培容器を作る方法(準備中)」を参考に容器を作成します。
編集さんカッターなどを使用してペットボトルを切るときには十分に注意しましょう。また、切り口はビニールテープなどで保護すると安全です。
ネギのペットボトル水耕栽培キットはほとんど販売されていませんが、他の野菜(バジルやミニトマトなど)のキットはよく販売されています。それらの容器を使っても良いでしょう。
ペットボトルは、飲み口や内側までしっかり洗ってください。ペットボトルの大きさは500ml 以上が良いでしょう。
編集さんちなみに、ペットボトルでなくても栽培はできますよ!ネギは倒れやすいのである程度深さのある容器が良いと思います。可愛いコップなんかに入れてもいいですね。
- 手順2根っこ部分の準備
さて、肝心な根っこ部分の準備です。根っこ部分は、下から5cm〜10cm程度残すようにしてください。料理で使うときに包丁で切ると思いますが、下から5cm〜10cm程度を残すように心がけてください。
編集さん根っこが複数あるときには、輪ゴムなどで束ねるとバラバラにならなくていいですよ。
もし、根っこ部分から長い根が出ているようであれば、切って取り除いてください。長い根は、古いことが多いので腐りやすいです。根は1cmくらいでカットして切りそろえると良いでしょう。
- 手順3スポンジで根っこ部分を包んで固定できるようにする
ここからは、独自の工夫です。ペットボトル栽培もやり方は千差万別。自分のやりやすいやり方を見つけてください。
私は、根っこ部分をスポンジで包んでペットボトルに固定しやすくなるようにしています。スポンジは水を給水しつつ、水には浮くため、水耕栽培においてはとても都合の良い培地代わりのものとなります。
- 手順4ペットボトルに根っこ部分を入れる
準備ができたら、ペットボトルに根っこ部分を入れましょう。
根っこを入れると言っても、根っこ全体を浸けてはいけません。根っこ部分から根が出ている場合は根が浸かるくらい、根がそこまで出ていないようであれば根っこ部分の下から1cmくらいを水に浸けてください。
編集さんこのとき、水に液体肥料を溶かしておく必要はありません。液体肥料を使うとしてもまず一週間は、根を水に慣れさせてからにしましょう。
- 手順5栽培・手入れ作業
これで栽培の準備が整ったので、あとは生長を見守っていきます。
ネギに限らずほとんどの植物は、光合成を行うことによって生長していきます。そのため、日当たりの良い場所で栽培をするようにしてください。屋外ではなく、室内で十分育つので、窓際などに置くとよいでしょう。
ベランダなど外でも栽培することは可能ですが、害虫や蚊など虫が寄ってきたり、直射日光に当たりすぎて焼けてしまったり(枯れてしまったり)することもあるので、注意してください。
水の入れ替えは、1日に1回、少なくとも2日に1回は行ってください(リポベジ・再生栽培の場合)。水耕栽培は水が命です。水が腐る前に変えてあげるのが成功のコツです。当たり前ですが、濁る前に取り替えましょう。
特に夏場は水が腐りやすくなるので注意が必要です。リポベジ・再生栽培の場合は、液体肥料を溶かした培養液でなくても、水だけでよく育ちます。
- 手順6収穫
ネギはだいたい1週間〜2週間ほどで再生し、収穫することができます。ある程度の大きさになったら、ハサミなどで切って収穫してください。
また、根っこ部分を5cm程度残して収穫するようにすると、継続して栽培、収穫ができます。
編集さん条件が良ければ7回程度、通常で3回〜4回程度繰り返し収穫ができます!
ポイント
ネギの水耕栽培(リポベジ・再生栽培)におけるポイントをまとめました。
- 根っこ部分は、最低でも5cm程度残す
- 水に浸けるのは根っこ全体ではなく、根の先の部分、もしくは根っこ部分の下1cm程度
- 水は1日に1回、少なくとも2日1回は取り替える
種から育てるネギのペットボトル水耕栽培
種から育てるネギのペットボトル水耕栽培の手順とポイントをまとめましたので、栽培の参考にしてください。
手順
- 手順1事前準備
まずは、栽培するための道具を揃えましょう。ペットボトル栽培の容器を自作する方は「ペットボトルで栽培容器を作る方法」を参考に容器を作成します。
編集さんカッターなどを使用してペットボトルを切るときには十分に注意しましょう。また、切り口はビニールテープなどで保護すると安全です。
ネギのペットボトル水耕栽培キットはほとんど販売されていませんが、他の野菜(バジルやミニトマトなど)のキットはよく販売されています。それらの容器を使っても良いでしょう。
ペットボトルは、飲み口や内側までしっかり洗ってください。ペットボトルの大きさは500ml 以上が良いでしょう。
また、種から育てる場合には播種・育苗用の容器が別にあったほうが便利です。ここでは、食品用のタッパーを使うことにします。
発芽・育苗用の培地も必要です。と言っても、普通のスポンジで問題ありません。スポンジを2〜3cm程度の正方形に切り分けておきます。
カッターなどで真ん中に十字の切込みを入れておくと、種が流れ出ることを防げます。
水耕栽培用のスポンジもあるので、それらを使用してももちろんOKです。
- 手順2播種
準備ができたらさっそく播種(種まき)をします。
まずは、食品用のタッパーなど小さくて少し深さのある容器を用意し、そこに2〜3cm角に切ったスポンジを並べます。
そして、スポンジに水を含ませながら、スポンジ全体が浸るくらいに水を注ぎます。
そのあと、1つのスポンジに対して、2〜3粒程度種を蒔きます。
そしてそのまま1週間〜10日程度放置すると、芽が出てきます。温度は、室内の温度(20℃程度)で問題ありません。逆に暑すぎる(30℃以上)と、発芽率が悪くなるので注意してください。
また、ネギは嫌光性種子のため、芽が出るまではなるべく日の当たらない場所に置いておくことをおすすめします。
- 手順3発芽
芽が出てきたら、日の当たる場所に移動してください。直射日光は、焼ける(枯れる)可能性があるので、避けましょう。
また、地上部が2〜3cm程度になってきたら、水を培養液に変えていきます。培養液は、ハイポニカやハイポネックスなどの水耕栽培用の液体肥料・粉末肥料を使います。
培養液の濃度は、水耕栽培用の液体肥料や粉末肥料のラベルに合わせると良いですが、最初のうちはさらに薄くして使用し、様子を見ると良いと思います。
ネギがある程度の大きさになってきたら、ペットボトルに移し替えます。スポンジごとペットボトルに移し替えると良いでしょう。このとき、ペットボトルに貯めた培養液に根の先が浸るようにしてください。
- 手順4栽培・手入れ作業
ネギに限らずほとんどの植物は、光合成を行うことによって生長していきます。そのため、日当たりの良い場所で栽培をするようにしてください。屋外ではなく、室内で十分育つので、窓際などに置くとよいでしょう。
ベランダなど外でも栽培することは可能ですが、害虫や蚊など虫が寄ってきたり、直射日光に当たりすぎて焼けてしまったり(枯れてしまったり)することもあるので、注意してください。
培養液の交換は、3日〜5日に1回程度で良いです。暑い季節は、2日に1回程度変えると清潔な状態を保てます。
- 手順5収穫
ネギは播種から収穫までおおよそ2ヶ月以上かかります。ある程度の大きさになったら、ハサミなどで切って収穫してください。
またリポベジ・再生栽培と同様に、根っこ部分を5cm程度残して収穫するようにすると、継続して栽培、収穫ができます。
ポイント
ネギの種から育てる水耕栽培におけるポイントをまとめました。
- 播種・育苗用の培地はスポンジでOK
- 発芽したら光に当てて、水を細かな頻度で取り替える
- 播種〜収穫まで2ヶ月以上かかるので、お世話しつつ気長に待つ
水耕栽培は楽に試して失敗できる
水耕栽培は、普通露地栽培やプランター栽培のように土やいろいろな道具を使わなくてもでき、とても手軽にできる栽培方法です。特にペットボトルなど身の回りのものだけでできる水耕栽培は、失敗してもそこまでダメージがありません(精神的なダメージはあるかもしれませんが…)。
気楽に試して、うまくいけば美味しいネギを収穫して食べるくらいの気持ちで栽培すると良いと思います。極めていくと栽培のテクニックがいろいろ見つかるので、独自の道を極めるのも面白いです。
おまけ…そもそも水耕栽培とは?
水耕栽培は、養液栽培の一種で培地に土などの固形物を用いず、養液(培養液)の供給のみによって栽培する方法です。植物は、養分、水分、場合によっては酸素を培養液から吸収することで生長します。
水耕栽培の長所、短所は以下のように考えられます。
- 長所
- 土耕栽培のような連作障害が起きない
- 生育スピードが土耕栽培に比べて速く、再現性の高い栽培ができる
- 定植、収穫等の作業も比較的綺麗で楽に行うことができる
- 短所
- 作物の生理ストレスへの緩衝作用が弱く、生理障害が起きやすい
- 水伝染性の病害への緩衝作用が弱い
- 土耕栽培よりも肥培管理(培養液管理)が重要であり、常に植物と培養液濃度に注視する必要がある
先述したとおり、水耕栽培にもいくつか種類があり、主に下記3種類の方法が家庭菜園・プロ農家問わず主流となっています。それぞれの特徴をまとめましたので、栽培方法を検討するときに参考にしてください。コストについてはピンキリのため、ここでは取り扱いません。
方式 | DFT | NFT | 保水シート耕 |
---|---|---|---|
培地の有無 | なし | なし | なし |
根のある場所 | 培養液中 | 培養液中・空気中 | 湿気中(透水シートなど)・空気中 |
養分の供給源 | 培養液 | 培養液 | 培養液 |
水分の供給源 | 培養液 | 培養液 | 培養液 |
酸素の供給源 | 培養液 | 空気中 | 空気中 |
長所 | 栽培中の濃度や組成の変化が緩やか。 | 培養液の温度管理がしやすい、酸素欠乏症が起こりにくい | 酸素欠乏症が起こりにくい |
短所 | 作物によっては酸素欠乏症が起きやすい | 培養液の濃度・成分変化が起きやすい | 根圏に当たる培養液の濃度・成分変化が起きやすい |
栽培作物の例 | ミツバ、レタス、キャベツなどの葉菜類 トマト、キュウリ、イチゴなどの果菜類 | コマツナ、ホウレンソウなどの葉菜類 トマトなどの果菜類 | サラダナ、葉ネギなどの葉菜類 トマト、キュウリ、イチゴなどの果菜類 |
水耕栽培コンテンツ
スーパーで買ってきた、野菜やハーブをつかった再生栽培(リボベジ)は、このほかにも大根、人参、豆苗、三つ葉、小松菜、クレソン、バジルなどでも可能です。観葉植物としては、パイナップルやサツマイモもリボベジできます。