この記事では、窒素成分として使用される尿素肥料について、その特徴と使い方の簡単な説明、また硫安との違いについて解説します。
尿素肥料とは
尿素肥料の基本・特徴
尿素(CO(NH2)2)は、窒素を約46%含む窒素肥料です。尿素の公定規格は、主成分として窒素全量43%以上と定められています。実際に販売されているものは、その生産工程の違いなどから45%〜46%程度の窒素を含有しています。窒素成分が高く速効性があるため、主に追肥として活用されます。
尿素肥料は、リン酸(リンサン)、カリウム(カリ・加里)が含まれておらず、他の単肥と比較しても窒素成分が高いことが特徴です。実際に三大栄養素の単肥の成分を表にまとめたのでご覧ください。
肥料 | N(窒素) | P(リン酸) | K(カリウム) | 肥効のタイプ | 特性 |
---|---|---|---|---|---|
尿素 | 46% | – | – | 速効性 | アンモニアガスが発生しやすい。液体肥料として葉面散布もできる。 |
硫安 (硫酸アンモニウム) | 21% | – | – | 速効性 | 全量アンモニア態窒素。 |
塩安 (塩化アンモニウム) | 25% | – | – | 速効性 | 全量アンモニア態窒素。 |
硝安 (硝酸アンモニウム) | 32% | – | – | 速効性 | アンモニア態窒素16%、硝酸態窒素16%。 |
石灰窒素 | 20%〜21% | – | – | 緩効性 | アルカリ分を含んでいる。農薬成分シアナミドが含まれている。粒状・粉状がある。 |
IB窒素 | 31% | – | – | 緩効性 | 加水分解。 |
CDU窒素 | 31% | – | – | 緩効性 | 微生物分解。 |
熔成燐肥 (熔成リン肥) | – | 20%〜 25% | – | 緩効性 | アルカリ性資材。く溶性リン酸。マグネシウム(苦土)を含んでいる。リン鉱石や蛇紋岩などが原料。 |
過燐酸石灰 (過リン酸石灰) | – | 16%〜20% | – | 速効性 | 酸性資材。可溶性リン酸が15%以上。 |
重過燐酸石灰 (重過リン酸石灰) | – | 42%〜43% | – | 速効性 | 酸性資材。過リン酸石灰よりもリン酸成分が高い。 |
重焼リン | – | 35% | – | 速効性+緩効性 | 水溶性リン酸が16%。く溶性リン酸も含まれているので長く効く。 |
硫酸カリウム (硫酸加里) | – | – | 50% | 速効性 | 水溶性加里。副成分に、硫酸イオン(硫酸根)を含む。 |
塩化カリウム (塩化加里) | – | – | 60% | 速効性 | 水溶性加里。副成分に、塩素イオンを含む。 |
ケイ酸カリウム(けい酸加里) | – | – | 20% | 緩行性 | く溶性加里。可溶性のケイ酸を多く含む。 |
尿素肥料の注意点としては、以下の2つがあります。
先述したとおり、尿素肥料は速効性の窒素肥料です。そのため、追肥として使用することをおすすめします。
非正式なデータですが、土壌温度(地温)が30℃の場合、尿素が分解されてアンモニア態窒素に変わるまでに2〜3日、アンモニア態窒素から一般的な畑作物によく吸収される硝酸態窒素に変わるまでに1〜2日程度かかると言われています(土壌温度が低い場合は更に倍くらいの時間がかかります)。
尿素肥料の簡単な使い方
定期的な追肥としてもおすすめですが、窒素含有量が高いので窒素過多にならないように注意しましょう。また、窒素欠乏が起こっているときには葉面散布もおすすめです。野菜やバラ栽培、果樹、水稲など基本的にどのような作物にでも使用することができます。栽培方法、作物の種類や状況に応じて、適切に使用しましょう。
家庭菜園やガーデニングを楽しんでいる方向けのポイントは以下のとおりです。
プロ農家向けのポイントは以下のとおりです。
家庭菜園向けの使用量の目安
家庭菜園において、庭やポット栽培で使用したいという場合の一つの目安量を紹介します。あくまで一例ですので、まずは少なめから試してみると良いでしょう。
液体肥料として使う場合
家庭菜園などで液体肥料として使用する場合には、20gを10L程度の水で希釈(500倍)して使用してみましょう。樹勢に合わせて薄くしたり、濃くしたり調節しましょう。農園で使用する場合も同様の考え方です。
尿素を葉面散布する場合
使用にあたっては、商品ラベルの注意事項や使用方法をよく読むようにしてください。
希釈倍率は、対象の作物にもよりますが、200倍〜1000倍程度で検討すると良いでしょう。まだ一度も試したことがないという方は、まずは薄めから始めてみると良いと思います。濃度が高すぎると濃度障害を起こしてしまうため注意してください。
また、基本的には短期間での複数回の散布はしないほうが良いでしょう。散布するときには、可能な限り二度がけ(戻り散布)をしないことも重要です。
尿素と硫安の違い
少しだけ難しい話をします。尿素肥料と硫安(硫酸アンモニウム)肥料の違いです。窒素の保証成分量が違うことはわかったと思いますが、他に違いはないのでしょうか?
生理的酸性肥料である硫安(硫酸アンモニウム)や塩化カリは、分解・吸収される過程で発生する硫酸イオンや塩素イオンが植物に吸収されずに、硫酸や塩酸などの強酸となって土壌中に残ります。そのため、徐々に土壌が酸性化してきます。つまり、酸性化してくる土壌を石灰などのアルカリ資材で中和してあげる必要があります。
尿素は、土壌中で分解し炭酸アンモニウムになり、アンモニウムは作物に吸収され、炭酸が残ります。しかし、この炭酸は二酸化炭素と水に容易に分解し、二酸化炭素は作物や微生物に吸収されたり揮散するので、土壌が酸性化することは少ないのです。
尿素肥料の購入方法、価格
尿素肥料は、窒素肥料の中でも安価な資材です。価格相場は1kgあたりおおよそ250円〜600円程度です。
尿素肥料として販売されている商品については、含まれている成分に大きな変化はありません。そのため、自分の使用する量などによって選択されることをおすすめします。尿素肥料は、ホームセンターなどでも取り扱いされていますが、店舗によっては店舗に陳列されておらず取り寄せになる場合もあります。そのため、インターネット通販で購入されることをおすすめします。「少し高いかな?」と思われるかもしれませんが、インターネットで購入した場合も、そこまで大きな価格の差はありません。インターネット通販を使用することで店舗に出向く時間が削減されたり、肥料を運ぶ時間も減るので私は積極的に利用しています。