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病害虫

ナメクジを駆除、防除する農薬、農薬以外の防除方法について

農作物の新芽を食害するナメクジ 病害虫

害虫としては非常にメジャーなナメクジ。ナメクジは葉っぱや農産物、果実を食べる食害をもたらします。ここではナメクジとはどういう虫なのか、その特性と、ナメクジを駆除、防除するための農薬、またその他の効果的な方法、対策についても解説します。

そもそも、ナメクジはどういう害虫?

ナメクジとは?

一般にナメクジはカタツムリと同じ有肺亜綱の柄眼目に属し、アフリカマイマイやヒメリンゴマイマイなどのカタツムリの一種と言えます。ナメクジ科・コウラナメクジ科・オオコウラナメクジ科など様々な科に属します。

多くの種類があるナメクジの中でも、日本でよく見られるのは、チャコウラナメクジ(コウラナメクジ科)が有名です。チャコウラナメクジはヨーロッパからの外来種で、農作物や花木等の園芸植物に食害をもたらします。

ナメクジは乾燥、高温を苦手とし、日中は落ち葉や鉢の下に潜んで生息しています。夜になると活動する夜行性です。移動の際に粘液を出すため、移動した(這った)部分が粘液でわかるのが特徴です。

春先に卵から孵化し、4月に入ると10mm程度の小さいナメクジが出没します。最も活動が活発になるのは梅雨時期と9〜10月頃になります。

野菜、果物、花を食害するので、これらを好むと思われがちですが、実は腐ったり、発酵したものの方を好みます。

どうしてナメクジは害虫なのか?

ナメクジは、葉っぱから、イチゴなどの果実、花木など、かなり広範囲の農業作物、園芸植物を食害します。食害のレベルも激しいもので、売り物にならなくなるほどです。また、見た目の不快さからも害虫とされています。

ナメクジに効く農薬

ナメクジは農作物の代表的な害虫のため、下記のように、サンアグロや住友化学園芸(ベニカなど)、ハイポネックスジャパン、サンケイ化学などのメーカーから多くの適用農薬が販売されています。

ナメクジに効く代表的な農薬

スラゴ 

スラゴは非常にメジャーなナメクジ駆除剤です。スラゴの有効成分(燐酸第二鉄)は天然にも存在する成分のため、イヌ、ネコ、家畜等が近づく場所でも処理でき、ナメクジ・カタツムリの被害がある全ての作物で収穫直前まで使用可能です。有機JASでも使用することができます。

粒剤で、希釈したりする必要はありません。発生を確認したら、パラパラと撒くだけと、使用も簡単です。同様の製品に燐酸第二鉄水和物を含有した「ナメトール」があります。

メタアルデヒド ナメトリン、ナメキール、ナメトックス、マイキラーなど

メタアルデヒドにはナメクジの誘引作用があり、ナメクジが薬剤を食べることで駆除するとができます。粒剤(ナメキールナメトックスなど)はナメクジを誘引して殺す誘殺剤で、水和剤(マイキラーなど)の方は、メタアルデヒドを水溶性製剤にしたもので、薄めて散布します。

このほか、カーバメイト系殺虫剤に誘引物質を配合したラービンベイト2(現在は製造中止)や、有機銅水和剤(ICボルドー)などが、ナメクジに効く農薬です。

※ナメクジに効く農薬は、他の適用害虫と異なり、RACコードが無いものも多くあります。農薬を使用する際にはラベルをよく読み、適用作物、用法・用量を守ってお使いください。

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RACコードとは??

RACコードとは、農薬を作用機構(農薬の効き方)ごとに分類して番号と記号を振ったコードになります。

例えば殺虫剤なら有機リン系は[1B]、ネオニコチノイド系は[4A]など、すべての農薬にRACコードが設定されています。

同じRACコードの農薬を繰り返し使うと害虫や病原菌に抵抗性がついてしまうのを、RACコードが違うコードの農薬を交互に使うことで防ぐことができます。「系統」とも呼ばれますが、RACコードの方が、より厳密に分類されています。 

殺虫剤は、IRAC(アイラック)コード、殺菌剤にはFRAC(エフラック)コード、除草剤にはHRAC(エイチラック)コードになっています。

殺虫剤はナメクジだけでなく、カメムシ類、カイガラムシ類やハダニ類、アブラムシ類、アザミウマ類、コナジラミコガネムシキスジノミハムシネキリムシ、ヨコバイ、ハモグリバエ、ハマキムシ、イラガ、ウンカ、メイガ、ハムシ、ケムシ、テントウムシダマシヨトウムシシンクイムシ、コオロギ、タマネギバエ、ダンゴムシ、ウリハムシアオムシ、ゾウムシ、ハバチ、グンバイムシ、モモハモグリガ、ハモグリガなど幅広い殺虫スペクトラムを持つものも多いので、うまく活用しましょう。

上記の農薬は水で溶かして薄めて使用する液剤や水溶性の粉剤、粒剤(粒状や顆粒)もあります。希釈方法等については下記をご参考ください。

防除する際のポイント

近年では、特定の農薬に抵抗性を持った害虫も多く発生し、農薬の効率的な使用のため、農薬のRACコードを確認して、タイプの異なる殺虫剤のローテーション散布を心がけること、また、農薬の使用量を減少させ、薬害を少なくするために、生物的、物理的、耕種的防除法を取り入れたIPM防除体系を組んで、統合的に実践することが重要になってきています。

IPM(総合的害虫管理)とは?

農地を取り巻く環境や病害虫の対象種の個体群動態を考慮しつつ、「生物的防除」「化学的防除」「耕種的防除」「物理的防除」を組み合わせることで、病害虫の発生を経済被害を生じるレベル以下に抑えることをいいます。

  • 「生物的防除」 病害虫の天敵を導入し、病害虫密度を下げる防除法
  • 「化学的防除」 化学薬剤を使用して行う防除法
  • 「耕種的防除」 栽培法,品種、圃場の環境条件等を整え、病害虫の発生を減らす防除法
  • 「物理的防除」 防虫ネット、粘着トラップ、光熱等を利用して病害虫を制御する防除法

(IPM・・・Integrated Pest Management)

生物農薬(生物的防除)

生物農薬とは、「農薬の目的に使われる生物を使い、病害を防除する農薬」のことを言います。

その生物とは主に、昆虫、線虫、微生物で、害虫(例えばアブラムシやアザミウマ、コナジラミ、ハダニなど)を捕食する、天敵に当たる昆虫や、昆虫に寄生するもの、センチュウ、また病原菌にあたる生物になります。

天敵導入による防除は、名前でこそ「生物農薬」と呼ばれますが、化学農薬ではなく、有機JASでも勿論使用可能です。

ナメクジの天敵はカエルやヤモリ、鳥類などになってくるため、市販されている生物農薬はありませんが、他の害虫に適用する生物農薬は多くあります。

生物農薬については下記に詳しく、具体的な製品も紹介していますので、ご興味ある方はご参考ください。

物理的防除

ナメクジの物理的、耕種的防除方法は、昔から様々な方法が存在します。下記情報を参考に、是非、様々な方法を試してみてください。

ナメクジが大好きなもので誘き寄せる

ナメクジはバナナの皮ソラマメ(そら豆)の皮、ビールが大好きです。庭や花壇、圃場の隅に設置し、(ビールの場合は、紙コップにビールを入れて土に埋める)一晩放っておくと、ナメクジが集まってきます。

集まったナメクジは、バケツやコップに、台所用の洗剤など界面活性剤が入っているものを少し混ぜた水を張り、その中に沈めれば呼吸できなくなって、死に至ります。

酢を希釈した液、塩をかける

酢を2倍程度に希釈した液体をスプレー等で直接散布、また塩を直接かけると浸透圧により、ナメクジの体内の水分が放出され、活動を持続することができなくなります。

耕種的防除

地面に直接、鉢やプランターを置かない

鉢と地面が接していると、その場所は日当たりが悪く湿気がありジメジメして、ナメクジの格好の住処になってしまいます。このため、スタンドや台、レンガなどを使って鉢、プランターを地面から浮かせることがナメクジ防除に効果的です。

生ゴミ、残渣が圃場にある時は太陽熱消毒する

生ゴミ、残渣はナメクジが大好きな場所で、産卵場所になります。透明ビニールを被せて半日以上置き、温度をしっかり上げて(40℃以上)、駆除するようにしましょう。

木酢やコーヒー殻が忌避剤になる

ナメクジは木酢やコーヒー豆の使用した後のカスを嫌うという説があります。このため、木酢や使用後のコーヒー殻を置くことはナメクジの発生を抑えることができるかもしれません。

しっかり除草する

圃場の周りに雑草が生い茂ると、ナメクジの住処となり、ナメクジの発生を促進してしまいます。圃場の周りの雑草はできるだけこまめに除草するのが、被害を少なくするのに極めて重要です。

除草については、以下のコンテンツが参考になります。

まとめ

植える苗や、播種(は種)、定植して生育している苗木、葉菜類、イチゴやダイコン、カブの葉などに多大な食害をもたらすナメクジ。

農作物の限らず、様々な花木、観葉植物の葉、茎にも被害が出ています。本記事が、適切に退治、防除を行うためのナメクジ対策の一助となれば幸いです。

ここで紹介した農薬は、JA販売店やホームセンターのガーデニング・資材、庭木コーナーにあるものもあります。ほ場で早期発見し、適切な薬剤や防除方法でしっかり発生を予防、ガードできると、農薬散布と言った農作業の回数を減らすことができます。

編集さん
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除草剤、殺虫剤を代表する農薬の液剤は、かなりの割合が原液で、水で希釈して散布するのが一般的です。希釈倍率に合わせて水と混ぜるのですが、希釈倍率が500倍、1000倍と大きく、g(グラム)やL(リットル)などが入り混じっていて、計算が難解だと感じる方も多いのではないでしょうか。

農家webかんたん農薬希釈計算アプリ」は、使用する農薬の希釈倍数を入力し、散布する面積などから薬量・液量を算出します。面積の単位や薬剤の単位も簡単に行えます。

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