EM菌を使った発酵有機肥料 EMボカシの使い方を簡単に解説します。家庭や農園で手軽にできる有機栽培ができるメリットや、具体的な使い方の手順をわかりやすく紹介しています。
EMボカシとは
EMボカシとは、米ぬかや油かす、魚かすなどの有機物資材にEMを混ぜて発酵させた肥料のことを指します。EMぼかし肥料と呼ばれたりもします。
そもそもEMとは、Effective Microorganisms(有用微生物郡)のことを指し、特殊な一つの菌ということではありません。EMは、乳酸菌や酵母、光合成細菌など、私たちの日常のどこにでもいる人間にとって良い働きをしている微生物の集まりのことを指します。
EMボカシは、有機物資材にEMを混ぜて「密閉状態」を保ちながら発酵させます。密閉状態で発酵させることを嫌気性発酵とも呼びます。嫌気性で発酵させることがEMぼかし肥料と他のぼかし肥料との大きな違いです。
EMボカシの成分比は主原料の配合によって異なりますが、N-P-K=5-3-2くらいのものが多いです。EMぼかし肥料は自分で作ることもできますが、信頼のできるショップから購入することもできます。
EMボカシの特長
EMボカシの最大の特長は、EMを増殖させたぼかしを土に混ぜ込むことで、EMがその土壌に定着してくれることです。EMで発酵させるため、有機物資材の分解が進むだけではなくEMも増殖し、その密度を高めてくれます。
EMボカシのメリットは、大きく3つあります。
- EMボカシの製造過程でEMが増殖し、その密度を高めることができ、土に混ぜ込むとその土壌にEMが定着しやすい。
- EMボカシを土に混ぜ込むことで、EMを増殖させるための基質も土に定着するため、土壌に混ぜ込まれたあとでもEMが繁殖する。
- EMボカシはEMによって有機物資材が分解され、植物体に取り込まれやすい無機質窒素(アンモニア態窒素や硝酸態窒素)が生成されているため速効性が備わっている。
また、EMを籾殻と一緒に生ゴミや残渣に混ぜ込んだり、EMボカシを生ゴミや残渣(植物の手入れで出てきたゴミ)と混ぜることで、生ゴミなども一緒に分解されて、そのまま肥料として使うことができます。
EMボカシの簡単な使い方・活用方法
完成したEMボカシ(EMボカシⅠ型、EMボカシⅡ型)は、主に3つの使い方・活用方法があります。
- そのまま施用する
- 生ゴミ堆肥、ぼかし肥料を作る
- EMボカシの浸出液を施用する
そのまま施用する
EMボカシは、元肥・追肥として使用することできます。ただし、ぼかし肥料は速効性を兼ね備えているとともに窒素も多く含まれているため、使い方には注意が必要です。効かせすぎると病害虫による被害を受けやすくなったりします。
私の印象ですが、速効性があるので、追肥として使用するほうが栽培しやすいかもしれません。元肥として使用して定植後に樹勢が強くなりすぎてしまう方を多く見てきました。
また、EMぼかし肥料を使うときは施用する前に一度、2〜3日程度天日干しすると乾燥し、散布しやすいです。
元肥としてEMボカシを使う場合
畑に元肥として施肥する場合、他の肥料を施用するときと同様のやり方で施肥します。以下に、やり方の手順例を説明します。使用するEMボカシの成分含有量によって量は異なりますので注意してください。
- 10㎡当たり3kg程度、土壌に散布する。
- 土壌の表層(10cm〜20cm程度)を耕し、EMボカシと土を混ぜ合わせる。
- 土に散水をし、水を含ませる。
- 2週間程度おいてから、播種、定植を行う。
元肥の場合、施肥から定植までの間を2週間以上空けることがポイントです。完成したばかりのEMボカシは発酵力が強く、作物の根に障害を与えてしまうことがあるためです。
ただし、EMボカシを密閉容器内で半年ほど熟成させると、障害を与えにくくなり育苗や元肥としても使いやすくなります。熟成によって、アミノ酸成分が増え、肥効も緩やかになるのでEMボカシを作ったときには、熟成させるものとすぐに使うものを分けておくと良いでしょう。
また、水稲の栽培(コシヒカリなど)にも使用できます。水田を耕起するときにEMボカシを施用することで土壌の肥沃さを高めるやり方があります。特に水稲の有機栽培をされている方がEMボカシを使われている印象があります。
追肥としてEMボカシを使う場合
追肥として使用する場合は、1ヶ月に1回程度、土壌に散布します。散布量は、樹勢やEMボカシの成分含有量によって調整しましょう。
水稲栽培の追肥にもEMボカシは使えます。春の田植え直後などの時期に、水田に散布するようです。
ぼかし肥料全般の使い方については、下記の記事にて簡単に紹介していますのでぜひ参考にしてください。
生ゴミから作るEM生ゴミぼかし肥
生ゴミや収穫や手入れ時に出た残渣などを細かく切り、EMボカシを加えて発酵させるとEM生ゴミぼかし肥料と呼びます。完熟させたものをEM生ゴミ堆肥と呼びます。
すでにEMの増殖、有機物の分解が進んでいるEMぼかし肥料を使うことによって、分解が進みやすく土に馴染みやすいボカシ肥、堆肥となります。農家だけはなく、家庭菜園などにも使用できます。また、生ゴミぼかし肥料を作製しているときに出る発酵液も液体肥料(液肥)として活用することが可能です。
EM生ゴミぼかし肥料の含有成分は、窒素成分もそれなりに高く、EMボカシと同等と考えて良いでしょう。EMボカシから作るのは大変という方には、生ゴミ用のEMボカシが販売されているので検討してみてください。
EM生ゴミぼかし肥料の詳しい作り方は、下記の記事にて解説していますので参考にしてください。
EMボカシの浸出液を施用する
EMボカシを追肥的に施用する方法として、EMボカシの浸出液を液体肥料(液肥)として供給する方法があります。浸出液とは、EMボカシを水に浸け込むことで得られる液体のことです。それを灌水チューブやジョーロ、動力噴霧器などで供給します。
EMボカシ浸出液の作り方
- 手順1EMボカシをネット袋に入れる。
EMボカシを目の細かいネットの袋に入れます。ストッキング等、目の細かいものであれば何でもOKです。
使用する量は、水100Lに対して1kg程度が目安です(100倍希釈)。
- 手順2水を用意する。
貯水タンクやバケツなどに水を用意します。
- 手順3EMボカシを水に浸す。
ネットに入れたEMボカシを水に3〜6時間程度、浸します。
- 手順4EMボカシを取り出す。
取り出したEMボカシは、圃場に施用し、すき込んだりしましょう。
EMボカシ浸出液の使い方
EMボカシ浸出液は、速効性・栄養分ともに高い液体肥料(液肥)・培養液となっています。EMボカシの含有成分にもよりますが、使用する際には特性を知った上で使用してください。また、必要に応じて希釈してください。
面倒な方は購入がおすすめ
EMボカシは、もちろん自作することも可能ですが、結構大変だったりします。特に家庭菜園でちょっと使いたいなど、そのようなときには購入したほうが楽で確実にEMボカシの効果を得られます。
EMボカシは農家や資材店などが開発、販売している場合もあります。自らそのEMボカシを使って、栽培をしている信頼のできるショップも多いです。下記にEMボカシのおすすめの商品を紹介します。
EMボカシの作り方
EMボカシは、原材料(有機質資材)の種類によって2つに大別されます。
- EMボカシⅠ型:米ぬかや籾殻(もみ殻)にEMを混ぜて発酵させたもの
- EMボカシⅡ型:米ぬかや油かす、魚かすなどとEMを混ぜて発酵させたもの
詳しい「EMボカシⅠ型」「EMボカシⅡ型」の作り方は、下記の記事にて解説していますので参考にしてください。
参考:ぼかし肥料とは
ぼかし肥料とは、油かすや米ぬか、籾殻(もみ殻)、鶏糞(鶏ふん)など複数の有機質資材を配合させたものに土(土着菌)や発酵促進剤などを加えて、発酵させた肥料のことを指します。昔は有機質を土などで肥料分を薄めて肥効を「ぼかす」としていたことから、ぼかし肥料という名前がついたと言われています。
ぼかし肥料は、昔の農家では自分たちで独自で作っていましたが、化学肥料が発明されて窒素、リン酸、カリウム(加里)などの養分が手軽に補えるようになったことから、製造、使用されることも少なくなりました。しかし、近年は可能な限り化学肥料を使わない栽培方法(特別栽培や有機栽培)が人気となり、再び「ぼかし肥料」に注目が集まっています。
発酵させることにより、有機肥料(有機質肥料)に比べて植物が吸収することができるアンモニア態窒素、硝酸態窒素に無機化されるため、施してからすぐに肥料が効き始める速効性が備わっています。緩効性、遅効性という有機肥料の特長に、速効性を併せ持つことによって、より使い方の幅が広がる肥料となっています。
また、自分でぼかし肥料を作ることもできます。正直、良質なぼかし肥料を作るのは結構難しく手間のかかる作業なので、家庭菜園や園芸などで有機栽培に挑戦されたいという方は購入されることをおすすめします。